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同時多発テロがあってから、今日でちょうど4週間目。一昨日米軍(と英国軍)によるアフガニスタンへの爆撃が始まり、必ず何らかの報復テロがあるとの見方から、街にはこれまで以上の厳戒態勢が敷かれている。まず一番明らかなのが、軍用機の飛行。コレはもうむちゃくちゃ音が大きいのですぐ分かる。ゴゴゴゴゴゴ〜っという轟音(爆音?)には、それだけでもう恐怖心をあおられてしまう。
いつもの様に地下鉄West 4thの駅へ行くと、ホームに警察官が2〜3人いて周囲の監視に当たっていた。コレはテロ以来、私が知っている限りでは初めてのコト。10月6日の日記に書き忘れたけど、メッツのシェア・スタジアムにも警察官が異常に沢山いた。2ヶ月前に行った時からは考えられないくらいの数が。何でも今、NYでの犯罪件数は過去まれに見る程少ないのだという。確かにテロ事件以来、NY中どこを見ても警官だらけだもんね。
今までこのHPに書いたことはなかったけど、まぁ別に悪いコトをしているわけじゃないし(ちゃんと合法ビザで就労しているので)、うちの会社について、ちょっと書こうと思う。私が今働いている会社は、広告関係のコーディネート会社。社長がアメリカ人なのでアメリカの会社ではあるものの、クライアントはほぼ100%近くが日本の会社となっている。日本の広告代理店や制作会社がこちらで撮影するCFのコーディネートをするのが主な仕事。おそらく新聞などのメディアでご存じの通り、現在日本においてニューヨークに関するCFは、その殆ど全てがキャンセルされた。それでも一度でも日の目を見たモノはまだラッキーな方。沢山の時間とお金をかけて撮影されたのに、今回のテロによって全くのお蔵入りになってしまったCFも幾つかある。
でも、それだけならまだマシ。過去の作品だけでなく、未来の作品の企画までが今続々とキャンセルされている。各会社、特に代理店は軒並み海外出張を中止しており、実際、本来ならば今日行われるはずだった西海岸でのミーティングもキャンセルされてしまった。うちの会社はNYが本社だが、そういった理由でLAやロンドンの支社に来る仕事も全く同じ様に影響を受けている。テロによる経済的打撃は、これからジワジワと広がっていくに違いない。たとえ五体満足で無事だったからとはいえ、完全にその被害と無関係というワケではないのだ。もう起こってしまったモノは元に戻せないけれど、くやしいなぁ、ホントに...。
9月17日のロックフェラーセンター enlarge picture |
9月18日のロックフェラーセンター enlarge picture |
にはためく万国旗 Yahoo Galleryより |
友人から、“ロックフェラー・センターが星条旗だらけになっている”という話を聞いていたので、お昼休みにRFCへ行ってみた。ほっ、ホントだ、コレは強烈...。う〜ん、この光景を観て、皆誰も何も言わないのだろうか?私には凄く異常に映るんですけど...。
参考の為、テロ以前とテロ直後、そして今日のRFCの写真を並べときマス。
ココまで来ると、普段なら紀伊国屋のカフェでサンドイッチとアイス・コーヒーをランチにするのがいつものルーティーンなんだけど、何だかロックフェラーセンターはテロの次なる標的になりそうなので、さっさとブロードウェイへ戻った。”アメリカの富の象徴””ユダヤ資本””エリートクラスのオフィスが集まる所”と言えば、ねぇ...。10年くらい前、ロックフェラー・センターを日本の会社が買い取った時のアメリカ人の憤慨ぶりを思い起こすと、もし次なる標的がロックフェラー・センターだった場合、やっぱりその精神的ダメージは大きいと思う。
それから、以下にオノ=ヨーコさんによる看板の写真も載せときマス。コレは9月25日付けのNYタイムスに掲載された全面広告と連動したモノ。詳しくは以下の記事を読んでみて下さい。看板の場所は、7th Avenue沿い、48 Streetと49 Streetの間、西側にありマス。
今日はまた、ジョン=レノンの誕生日ということで、テロ直後から地道な活動を続けて来た”グローバル・ピース・キャンペーン”の全面広告がNYタイムスに載った日でもある。広告料が入金されたのがアフガンへの爆撃前だったので掲載されないかとヒヤヒヤしたが、予定日に無事掲載。原文(英語)はこちらから。日本語訳はこちらから。
タイムズスクエアの広告 enlarge picture |
Global Peace Campaignの広告(右) enlarge picture |
9.11の直後もけっこう憂鬱になった私だが、米軍のアフガン攻撃開始後の憂鬱さは、それに輪をかけて大きくなった様な気がする。やっぱりヒトって、”被害者意識”でいることの方がずっと楽なのだ。今、私達は明らかに”加害者”でしかない。私が払った税金で、毎日罪のない人達が殺されているのであって、その絶望感は深い。また、この”馬鹿げた”報復行動によってアメリカとテロリスト達の”いたちごっこ”は、この先何十年にも渡って繰り返されるだろう。それは例えオサマ=ビン=ラディンが何らかの形で処罰されることになっても、彼の意志を継ぐ子供達は後を断たないに違いない。私達がWTCへの攻撃にショックを受けたのと全く同じレベルで、彼等だって自分達の街や村が爆撃されてショックを受けているのだ。それは例えアメリカが勝利しようが何だろうが、変えられる事実ではない。アメリカが勝ったって私達のショックが消えないのと同じ様に、アメリカが勝ったからといって、アメリカに心まで服従するアフガンの人達、ムスリムの人達なんていない。いや、むしろ逆効果でしかないのではないか?そんな事、ちょっと考えれば中学生にだって分かるのに、アメリカ政府というのは、どこまで幼稚なんだか...。
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夜はNY映画祭で、今年のモントリオール映画祭でグランプリを受賞したイラン映画『BARAN』を観た。9月29日の映画祭では入口の警官は二人だったが、今日は三人に増えている。ともあれ、『BARAN』についての詳しくは映画のページに譲るが、久々に静かに泣かせてくれる素晴らしい作品だった。前から何度も書いている様に、この映画の主人公BARANは、アフガニスタンからの難民。舞台はイランだが、イラン青年の眼を通したアフガン難民の過酷な生活が綴られている。
主催者より、会場に姿を見せられなかったマジット=マジディ監督からの手紙が読まれる。今回のテロ事件や報復攻撃がなければ、監督は会場に来ることが出来たのだろうか?欠席の理由がアナウンスされることはなかった。この『BARAN』の前に『DOG』という南アフリカの短編映画が上映されたが、『BARAN』と同じく、監督は人種差別を淡々と描いていた。差別される人達に同情するわけでもなく、政治的なアジテーションするわけでもない。その“淡々さ”が、私にはツラかったし、染み込む様に心に残った。“これが映画というモノなんだな”、と思わせる。
世の中には、自分の信念を伝える手段が幾つか存在している。それはある人にはペン(パソコン?)によるモノかもしれないし、ある人にはスチール・カメラによるモノかもしれない。そして、“FILM(Motion Picture)”という一つのアートがある。人間の表情で、自然の表情で、映像の全てで全てを語る(私の場合、映画の会話はただのお飾りとしか思っていないので)。本当にイヤなご時世だけど、今夜は映画というモノのある時代に生まれて来た自分に感謝しなきゃと思ったくらい…。
(写真右:今週号ニューズウィークの表紙)
家に帰るとタイム誌とニューズウィーク誌が届いていた。この3週間、ライバル誌であるはずの両誌の表紙&テーマは同じモノが続いていて怖いくらい。2週間前は、両誌そろってオサマ=ビン=ラディンが表紙だったし、先週はガスマスク(生物兵器の驚異について)。で、今週はアフガン及びイスラム世界の特集、題して“Why They Hate Us?”。アメリカのジャーナリズムも、ようやっとこのテロの歴史的背景に目を向けて来た様だ。
私が今ここで書くまでもなく、旧ソ連がアフガニスタンを攻撃&侵略していた頃、ビン=ラディンの組織を含むタリバン政権を後押しして来たのは、他でもないアメリカ政府であった。言い換えれば、彼等を大きくして来たのはアメリカ自身であり、“昔の飼い犬に手を噛まれて”頭に来ている彼等(=アメリカ政府)は、ある意味コレも自業自得であることを(亡くなった人達に、その罪は全くないのだけれど)、明らかに無視している。私もイスラム社会やアラブ社会の複雑さにはお手上げなくらい全くの無知であるけれど、そこだけは目をつぶらずにはっきりとさせなければと思っている。
100万人と言われるアフガン難民の実質数は、テロの起こる以前ですでに300万人以上にも上っていたと言う。映画『BARAN』には、たった2家族のアフガン難民しか出てこない。それであれだけのドラマが展開しているのだから、例えば1家族を5人すると、あんなドラマがすでに60万家族分だけ存在していたという計算になる。それをアメリカは、あと何家族増やせば気が済むのだろうか?人殺しはもっての他だけれど、それ以外の傷だってキリがないくらいにある。今、彼等がやっているコトは、数え切れない程の人達を傷つけ、苦しめ、そして自分自身の今、自分自身の将来の首でさえ絞めつけていることに他ならない。
私がこんな所でこんな日記を書いたところで、世界が変わるわけではないけれど、少なくとも『BARAN』の様な映画を、一人でも多くの人が観てくれればなぁと思う。加藤哲郎さんのHPに書いてある、丸山真男の言葉「戦争は一人、せいぜい少数の人間がボタン一つ押すことで一瞬にして起せる。平和は無数の人間の辛抱強い努力なしには建設できない。このことにこそ、平和の道徳的優越性がある」を引用して、今日の日記はこの辺で…。
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早いもので、あれからもう一ヶ月が経ってしまった。この一ヶ月で、街はすっかり変わり果ててしまった様な気がする。私達は、もう元には戻れない歴史の転換期の歯車に乗ってしまったのだろうか。当たり前だけど、時を戻すことは出来ない。かと言って、神様によって世界がどの方向へ進むのか、最初から運命で決められているなんて私は思っていないから、ひたすら前向きに歩いてゆくしかないんだけどね。
一ヶ月前、最初の攻撃のあった時間には、TVで現場からの中継があった。行方不明者はいまだ5千人近くに上る。現場の掘り起こしだけでも、今年中には終わらないかもしれない。破壊することは一瞬にして出来るけど、精神的打撃も含め、後始末が永遠に終わることはないのだろうか。
の正面 enlarge picture |
セント・パトリックチャーチ enlarge picture |
の内部 enlarge picture |
“インディアン・サマー”(日本で言うところの小春日和)の名残なのか、今日は半袖でも十分なくらい暖かかった。昼休み、『地球の歩き方』オランダ版を買う為に紀伊国屋書店へ行って来る。ついでに今夜、消防署合同葬儀のあるセント・パトリックチャーチまで足を伸ばしてみた。それにしても、5番街の星条旗は、減るどころか増え続けるばかり。嗚呼〜、もう憂鬱になってしまうなぁ…。
先日の朝日新聞に、こんな記事が載っていた。日本の芸能人で、テロのお悔やみを言う人は多いけど、戦争反対まで唱える人はけっこう少ない様な気がする(作家なら沢山いますけどね)。私は別に宇多田ヒカルのファンというわけではないのだけれど、まぁ一応後輩だし(エラそうに)、ちょっと贔屓目にしている所もあるのかもしれない。
夕方、一昨日から繋がらなかったスイス航空への電話がやっと通じた。来週水曜日に飛ぶはずだった私の予約した便は、結局欠航になってしまっているという。先週一旦倒産したスイス航空は、取り敢えず巻き直しをはかっているものの、現在の便数は半分に減ってしまっているのだ。幸い同じ日の別の便に振り替えてもらうことが出来たが、これで予定の変更を余儀なくされる人達は沢山いるに違いない。くどい様だけど、テロの影響はこんな所にもじわじわと押し寄せて来ている。
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今日に限って残業で、ユニオン・スクエアに着いたらもう8時になってしまった。う〜ん、真っ暗だ〜。それでもやっぱり、沢山の人達がここ、ユニオン・スクエアに集まっていた。パフォーマンスをする人、大統領への手紙を読む人、手を繋いで歌を歌う人達、(いつもの事だけど)広場の真ん中で議論をふっかけている人達、そしてユニオン・スクエアの歴史をとうとうと説く牧師さんもいた。
20世紀の始め、ここユニオン・スクエアでは、低賃金で重労働を強いられていた女工さん達が集まって、夜な夜な(?)団結をしていたのだそうだ。ユニオン(=組合)スクエア(=広場)という名前の由来は、そこから来ているのだとか。なる程、テロ事件以来、この広場がアメリカ政府や権威に疑問を持つ人達の集まる場所であるという背景に、そういう歴史があったとは(ベトナム反戦運動も、この広場を中心に展開されたのだそうで)。8年間も、ユニオン・スクエアと言えばショッピングか映画を観に行く場所だとしか思っていなかった自分が、ちょっと恥ずかしい…。今日という日に沢山の人が訪れるのを警戒してか、4日前までは出入り自由だったジョージ=ワシントン像の背後はすっかり立ち入り禁止となっていた。
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帰り道、いつもの様にワシントン・スクエアを突っ切って行くと、NYU(ニューヨーク大学)の学生達が“アンティゴネ”のお芝居をやっていた。英語じゃなかったので、台詞もチンプンカンプンだったし、このお話がどういう部分で『9.11』と繋がってくるのかまるで分からなかったので(分かる方いたら教えて下さい)、そそくさと広場を後にする。
今夜会うはずだった友達と電話。実は今日、セントラル・パークで第1回“ニューヨーク-東京アニメフェスティバル”のキック・オフが開催される予定だった。勿論この日はテロ前のずっと前から予定されていた日付けで、テロ後も予定を変更せずに開催されるはずだったのだか、やはり報復が開始され、FBIからここ数日のうちにまた再びテロがあるだろうというアナウンスが発表されたことから、昨日、突如中止が発表された。こう言ったことで、長い時間を経て準備されて来たものが皆無駄になってしまうのは、本当にしのびない。今年のエミー賞も、どうなることやら…。
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家へ帰ると、大統領の記者会見がTVで放送されていた。前にも書いた様に、WTCの崩壊によって、ケーブルを持っていない人達は満足にテレビさえ観られなくなってしまっている。それは、地上派全局のアンテナがWTC第2タワーにあったから。代替策として、今CBSとFOXがエンパイア・ステート・ビルディングに臨時のアンテナを立てたが、映りはご覧の通り。私がドラマをよく観ていたNBCやABCは、いまだまるっきり映っていない。全米ネットワークの中枢があるマンハッタンのど真ん中で、全チャンネルが2局しか映らないなんて、正気の沙汰じゃないよな〜。NBCもABCも、早く新しいアンテナを立ててくれ〜〜〜。全然関係ないけど、今日は超人気のお化け番組『サバイバー』の3シリーズ目、第1回が放送された。大統領記者会見の後だったから、きっともの凄い視聴率を稼ぎ出したに違いない(私だって、そのままチャンネル合わせてたもんね〜(^_^;)。
夜11時のニュースで、民主党のNY市長選候補にマーク=グリーンが選ばれたことが発表された。ジュリアーニ現NY市長は、再選の出馬を表明していない為、これで来月の市長選挙は、共和党の億万長者ブルームバーグ氏と民主党マーク=グリーン氏の一騎打ちとなる。来年の“NYの顔”は誰になっているのだろう?それより来年のNYは、一体どうなっているのだろう?今はただ、新たなテロ、そして米軍による新たな殺戮が起きないことをひたすら祈るしかない。
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