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人間ってカメラを持つと人格が変わるっていうけれど、デジカメを買ってからの私はとり憑かれた様に毎日写真ばっかり撮っている。今日はフィルム・フォーラムで面白い映画をやっているから、という友達の誘いにも全然乗る気になれない。あと一週間でNY映画祭が始まれば、いやという程映画を観ることになるので、今はまだいいやという感じ。今日は蒸し暑かったけれど、とにかく良いお天気だったので、カメラを持って南へ向かった。
ハウストン通りと6番街にあるグラウンドでは、いつもと同じ様に子供達がドッジベース(大きい球を使った野球)で遊んでいた。こんな光景、今のアパートに住んでから週末ごとに繰り返し見てきた光景なのに、妙に愛おしくなってカメラに収めてしまう。
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ブルーム通りからブロードウェイへ向かう。この辺りの一帯=SOHOは、ベトナム戦争時、反戦・反骨のアーティストがたむろしていた場所だったというのに、今ではすっかり青山・六本木化(?)していて、星条旗ファッションまでがショーウィンドウに並んでいる。
先週と同じ様に観光客で賑わうチャイナタウンをかすめてブロードウェイをさらに南へ下る。ここは今だに一般の車両が通行止めになっているが、徒歩では入れる様になった。途中、星条旗やWTCの絵葉書、God Bless Americaのロゴの入ったTシャツが路上で所狭しと売られている。明らかに事件後、新たに作られた商品も多く、つくづく彼等の商魂には感服してしまう。
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黒人のお兄ちゃんも参加 enlarge picture |
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でも私には、それが本当に“多民族国家=多様性”をウリにして来たアメリカという国のリーダの言う台詞か?と首を傾げたくなってしまう。どうして二者択一しかない、なんて言うのだろう?第三、第四、いや、私達には何百・何千の選択肢があるはずではないのだろうか?とにかくもっと十分な時間をかけて欲しい。アメリカは、これまですでに何度も過ちを繰り返してきた。その反省もなく、また同じことを繰り返すなんて、自分で自分が恥ずかしくないのだろうか?感傷的&感情的になっているアメリカ人には気付かなくとも、世界の人達は知っているはず。都合のいい時だけ、「にわかアメリカ住民」になってしまう私としては、この国が世界に対して恥ずかしくない、潔い国であって欲しいと心の底から願ってやまない。
最後に。この日記に何度か登場するTの書いた記事が、今日付けのNYタイムス・マガジンに掲載された。最後まで望みを捨て切れない家族の気持ちを考慮して、彼はRayおじさんではなく、春から撮り続けて来た自身のドキュメンタリーに登場するリンカーン=クワッブルのインタビューを元にした記事を書いた。全文はこちらから読むことが出来る。
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今日は社長の誕生日パーティがあったので、いつもより少し遅く会社を出たが、友達のAはさらに遅くまで残業があるというので、一足先にクーパーズ・ユニオンへ向かった。
「America’s Speaks Out」と銘打たれたこのイベント、参加費は無料で誰でも入ることが出来たが、やはり学生か暇そうな中年以上の人が多くて、30代くらいの人達がすっぽり抜けている。イベントをコーディネートしていた面々は、いかにもこれから政治の世界で頑張りますみたいな良家のお坊ちゃん&お嬢ちゃん的若人(古い?)が中心になっていた。
冒頭で、詩人/女優/作家であるNadine Mozonが今回のテロ事件を題材に作った詩を朗読し、いよいよパネリスト達の登場(ちょっと「朝まで生テレビ」っぽかった)。メンバーは写真真ん中の左から…
0)Morgan Spurlock 司会者
1)Jonathan Alter Newsweek誌 コラムニスト
2)Peter J Awn コロンビア大学 宗教学学部長
3)Rodha Kumar コロンビア大学 戦争と平和学
4)Walter Russell Mead 米外交関係専門家
5)Marybeth Shinn NY大学 心理学前学部長
6)Henry Siegman 中東宗教学専門家
7)Michael Weinstein NYタイムス ニュースアナリスト
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大雑把に言えば、前者に属していたのが1)&6)、後者だったのが3)&4)&7)、2)と5)の二人は殆ど発言していなかったので分からない。特に1)vs.7)の討論は見モノだったし、4)の彼が東京大空襲におけるアメリカ軍の日本人虐殺についてとうとうと話始めると、会場がシーンとなる場面もあった。
7人のパネリストの中で私が一番好感を持ったのは、3)のロッダ=クマール教授。さすがに討論会では話が難しくて消化しきれない部分が沢山あったので、今度彼女の書いたものをじっくり読んでみようと思う。
前半部分が9時半で終了し、後半は翌日のNY市長予備選に向けての民主党候補者討論会となった。実はこの市長予備選はテロ事件のあった11日に予定されていたが、テロ後の混乱で、選挙は勿論中止になってしまっていたのである。
テロ後の功績が認められ、ここ数日間ジュリアーニ現市長の人気が高騰しているが、大統領と同じく、市長も二期で満了となる。パタキ州知事等が、特例として三期継続や任期の半年〜一年の延長を検討しているが、本人は体調の不調を理由に少なくとも三期目の立候補はしないというのが大方の見方。実は彼は昨年のNY上院議員選挙で、ヒラリー現議員の対立候補となる予定だったが、やはり体調の不調を理由に(本当の所はそれ以外に女性問題のスキャンダルもあった)立候補を辞退している。ともあれ、市長選に投票権のない私は、後半をスキップして会場を後にした…。
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(写真右:今週号Entertainment Weeklyの表紙)
あっという間の2週間が過ぎた。この“写真日記”もここまで長く続くとは思わなかったけれど、取り敢えずネタも尽きてきたし、ホームページの容量もパンパンになって来たので(この2週間だけで、過去1年分以上のメモリーを使い果たしてしまった)、この辺で一旦終わりにしようと思う。勿論、小さなことでは今後もチマチマ写真を取って追々載せていくことはあるかもしれない(せっかくデジカメ買ったんだし〜)。けれど、今回の様に逐一写真に撮っておかなければならない様な“異常な毎日”が二度と来ないように、ひたすら祈るばかりだ。報復“戦争”はまだ始まってすらいないので、今後がどうなっていくのか不安はつのるばかりだけれど…。
今週号のEntertainment Weeklyを買う。普段この雑誌はTV番組や映画などを紹介するナンパな雑誌なのだが、今週の表紙はやはり黒淵で、星条旗がモチーフになっていた。内容は、思っていたよりずっと濃くってお買い得。今回のテロで各メディアやアート(映画・TV・音楽・書籍・インターネット)にどんな影響が出たかということが特集されている。公開延期になったりお蔵入りになったりした映画やTV番組については、各紙も散々報道しているのであまり目新しいことはなかったが、“その日=9月11日”に、各メディアがどんな報道をしたのかの比較はけっこう面白かった。
(写真左:TIME誌MUSIC特集号の表紙。左下に宇多田ヒカルの顔もある)
前からこの日記に書こう書こうと思っていた事の一つに、各メディアのタイトルの付け方があった。例えば9月11日から12日まで、殆どのメディアは「America Under Attack」もしくは「Attack on America」というタイトルを付けていた。それが段々と「America Morns(喪に服す)」になり、「with Sadness」になり、一週間を過ぎると「America Rising」や「America Fights Back」となっていった。CNNだけは14日からずっと「America’s New War」なのだけれど…。
また、今回の同時多発テロをどう呼ぶかについても、各メディアによってまちまちで、とっても興味深い。それは、”Attack(攻撃)”であったり”Incident(事件)”や”Event(出来事)”であったり、”Disaster(惨事・災害)”であったり”Tragedy(悲劇)”であったり…。人によっても”WTC Attack”と言う人もあれば、”WTC Tragedy”と言う人もいる。
さらに英語に関して言うと、WTCの崩壊した場所を、各メディアは“グランド・ゼロ”と呼んでいた。私が生まれて初めてこの単語を耳にしたのは、広島の原爆資料館。“グランド・ゼロ”とは爆心地の意味だ。さらに神戸の震災が報道された時には、震源地を“グランド・ゼロ”と呼んでいた様な気がする。通常“グランド・ゼロ”とは、攻撃目標や爆撃地点を指すことらしいが、今回の場合は民間機の突入による建造物崩壊なので、最初はちょっと違うんじゃない?と思っていた。けれど、実際にこの目で現場のデザスターぶりを見て、「ああ、やっぱりグランド・ゼロかもしれない」と納得した。
もう一つ、今回は“Someone’s Loved One”という聞き慣れない単語をたくさん耳にした。例えば“Your Loved One”と言えば“貴方に愛されている人=貴方の愛する人”となる。被害者の“関係者”を指す時、被害者の家族・恋人・友人・同僚・知人・隣人・ルームメイト等、関係&呼び方は様々あるが、そう言った社会関係を全て取り払った“Loved One”という呼び方は、家族・婚姻制度やあらゆる社会関係にこだわらないニューヨークっぽいな、という気がしてしまった(もしかすると他の地域でも使っているのかもしれないけど)。
(写真右:おまけ。今日初めて目にしたKマートの無人レジスター。自分で買ったものを自分で精算&支払うことが出来る)
今日は昨日の寝不足がたたって、また風邪がぶり返してしまったので、先週から約束していた夕食会をブッチして、会社帰りにKinko’sコピーへ直行した。このホームページの写真をプリントアウトする為である。ある非営利団体が、来月初旬にSOHOのギャラリーで「9月11日に関する写真展」を開く。その展示写真は誰にでも応募することが出来るのだ。私は写真なんて全く勉強したこともないし、自分でも下手くそだな〜というのは分かっているのだけれど、まぁダメもとで応募してみようかなぁ…と。提出出来るのは3枚の写真まで。私は、トップページに載せた母子の写真、WTCの絵葉書を売る男の子の写真、そしてユニオン・スクエアで議論する4人の写真(縦長のもの)を応募することにした。
プリントアウトをしている最中、Tから携帯に電話がかかって来る。何と彼は今回の事件で亡くなったレスキュー隊員達の本を執筆することが決まったのだそうだ。7月分のNYタイムスの記事を読んだ出版社が執筆を依頼し、一昨日のNYタイムス・マガジンの記事を読んだ大手のエージェントが、ライターとして契約して欲しいと別々に申し込んで来たのだそうで。今年の頭には「レスキュー隊員の話なんて、誰も見向きもしてくれない」と、あんなにもがいていた彼だったので、普通なら「良かったね」と言う場面なんだけれど、こんな状況なので何と言ってよいか分からず、一瞬黙りこくってしまった。彼にもそれは分かった様で、「I’ll do my best(頑張るから)」と言ってくれたけど…。
この2週間で、私の何かは変わったのだろうか?もしかすると、ずっと後になってから「思えばあの日がターニング・ポイントだった」という日が、いつか来るのかもしれないが。
幸いなことに、私には今、2週間前の月曜日と変わらぬ日常が戻って来た。でも、前より一層、この「ありきたりの毎日」が大切に思える様になった気はしないでもない。この先、この思いが少しずつ風化していく様になっても、時々はこのページに戻って来て、無事に日常を過ごせることの大切さを再確認していこうかなぁ、と思っている。
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