Film Reviews - 映画評
以下のサマリーは、このページにリンクした日米記事からのモノです。
(冒頭の番号は、リンクページの記事に付けた番号と対応します。)
注:記事の選択はあくまで“私の主観”で選び、ピックアップしている部分も、“私の主観”で抜き出しています。
ぶっちゃけた話、“ネガティブ”な部分ばかり集めていますので、その辺は予めご了承下さい。
これらの記事の中にも(量的には少ないものの)、ポジティブなことも勿論書いてあります。
例えば撮影はよく撮れているとか、監督は爆発シーンを撮らせたら右に出るモノはいないとか…。
でも、まぁそういった誉め言葉は、ホームページやプロモーションでさんざん書かれていることでしょうから、
ここでは割愛しています。 悪しからず。m (_)m
文章は全て意訳&サマリーですので、原文に忠実に訳してはありません。
(#)の数字は、パラグラフの番号。
また、私はプロの翻訳家ではないので、訳の間違いも沢山あると思います。
お気付きの誤訳がありましたら、遠慮なくゲストブックの方でご指摘下さい。
New York Times, May 25th, 2001より |
by mook: この記事は、映画のレビューとしてNYタイムス付け映画評論家のA.O.スコットによって書かれています。
「パール・ハーバー」は、ジェリ=ブラッケィマーとマイケル=ベイが、「地上(ここ)より永遠に」をパクり、騒々しく、高価で、やたらと長い、ヒット作様に作られた映画である。
この映画はキャラクターに興味がないのと同じくらい、史実に興味を持っていない。(#2)
1時間に渡る、窒息してしまいそうなロマンチズムの後、敵は救世軍の様にやって来る。(#5)
俳優達の口から出るセリフのほぼ全部から、鉛のガチャンという音が聞こえる様に、この映画には、安っぽいシチュエーション・コメディのリズムがある。この映画に、5秒以上のカットはなく、1分以上のシーンもない(勿論、これは冗談ですけれど(^_^;)。(#6)
脚本も、ベイ監督の我慢できかねる演出も、キャラクター達に深みを与える十分な時間とスペースを与えてはいない。この映画は、ストーリーを語ることよりも、データを提供することに終始してしまっている。(#10)
(ストーリーはもっと面白くなったかもしれないのに)、この映画は、ひたすらバカバカしいレイフ、ダニー、そしてエヴリンの三角関係を展開するのに忙しい。また、ドリー=ミラーの話がなければ、少なくとも6つの無駄なシーンをカットすることが出来た。(#11)
「パール・ハーバー」は、現代性を重視するあまり、その歴史的正確さが犠牲になった(例えば、1941年は禁煙であった軍隊のことなど)。
「Jap」という言葉を何度か使いながらも、彼等は敵を人間的に描く努力を試みたが、それは十分ではなかった。東京襲撃の際、真珠湾攻撃の時とは裏腹に、その爆撃は完璧に爆弾を落とす側のみから描かれていたのだから。(#12)
貴方が「パール・ハーバー」に驚き、めまいをもよおすことはあるかもしれないが、感動したり啓蒙されたりすることはないであろう。そんなに酷い映画だと言っているわけではない。しかしこれは、完璧に金を浪費しまくったアベレージの映画である。
2001年5月25日が「屈辱の日」となることは難しい。連合国リーダーの言葉で引用されるべきは、ルーズベルトのそれではなく(「屈辱の日」という言葉は、ルーズベルトが真珠湾攻撃の後に使った有名な言葉)、チャーチルの「少ない結果に、沢山のお金を使うな」の方であろう。
CNN, May 24th, 2001より |
メガ・バジェット・メドロラマ「パール・ハーバー」でさえ、第二次大戦の5ヶ月間を語るには、“3時間”の長さしか要することはなかった。(当然、これは長すぎると言っているわけですね(^_^;)/#1)
ジェリー=ブラッケイマーとマイケル=ベイが、この映画を製作するに当たって「タイタニック」を何百回も観たことは明らかである。(#2)
彼等は、劇場の後ろに、救護用テントと、代わりばんこに食料を与えるシフトを用意するべきであった(つまりコレも長すぎるので、気分が悪くなる人&飢えてくる人たちの為にテントを用意すべきだと皮肉っています/#3)
この映画では、戦闘シーン以外の全てがコミック・ストリップの様に見える。(#6)
(エヴリン以外の女性キャラクターが、皆、男に飢えた様に描かれていることに関し)この様な単純な浅はかさが、この映画の最も恥ずかしむべき要素なのである。(#7)
(エヴリンとダニーのカップルに対するレイフを演じるベン=アフレックは)、まるでヨーヨーをどうやって扱うのかをノロマに悟る原始人の様である。(#9)
「プライベート・ライアン」になれない「パール・ハーバー」は、壊れたニンテンドーの「タイタニック」の様なモノである。(#11)
(真珠湾攻撃の後に東京襲撃があるということで)人々は、アメリカが敗者である姿に耐えながら劇場を後にしなくともよい。(#13)
しかし、もしそれまでに貴方の足腰の感覚が麻痺していなければ、貴方はラッキーである(つまり、映画があまりに長いので、映画のラストまでに足腰が麻痺してしまうだろうという皮肉です。/#14)
「パール・ハーバー」と「ハムナプトラ2」の違いは何か?ロケーションである。
この映画は、国旗(愛国心)を背後に隠した二流映画であり、国家の悲劇は億ドル単位のビデオゲームに成り果てている。プライドと名誉が、実際何らかの意味を持つということを思い出すのに、この国が、何人かの広告屋を必要としているとは、何とも残念なことだ。(#15)
これだけの殺戮と破壊のシーンがあるにも関わらず「パール・ハーバー」が、R指定でないことはそんなに驚く程のスクープではない。(つまりR指定にすると、この映画のターゲット層であるロー・ティーンが劇場に入ることが出来なくなり、興行成績に影響が出るということ。この件でディズニーが圧力をかけたことは明らかで、今さら驚く様なことでもないと皮肉っています。/#16)
浅はかな”パール・ハーバー”は、マンガ本爆弾」 Wall Street Journal, May 25th, 2001より |
by mook: この記事は、映画評欄に掲載されたもの。”ンゴ!ンゴ!ンゴ!”とは、いびきの音で、映画「トラ!トラ!トラ!」に対するシャレ(英語で書くと”ンゴ=Snore-ra”は、Toraにゴロが似ているから)。
「パール・ハーバー」は、たった一発の爆弾の様な厳かなテーマを掲げていながら、石頭(頑固という意味ではなく、オツムが足りないという意味)で、空っぽの心を持つ、商業的エンタープライズ映画である。233分の劇中、見所は戦艦アリゾナが沈没する瞬間のみで、後はしどろもどろのコメディ、怪しげな歴史、手探りのドラマと、馬鹿げたラブストーリーしか残っていない。(#1)
劇中日本軍は、海底の浅い真珠湾を、魚雷でいかに攻撃するかの工夫を凝らしていたが、ジェリー=ブラッケイマーとマイケル=ベイが、この映画の浅はかな部分をフィックス(=解決)することはなかった。
(宇宙規模の宣伝を展開する)マーケティング・ピープルは、12月7日を待たずに真珠湾攻撃60周年の記念行事をハイジャックし、この映画を「メモリアル・デー」にオープンさせた。(#2)
なぜグランド・セントラル・ステーション(NY)が、ロサンゼルスのユニオン・ステーションなのか?なぜ、レイフは英国に行くのに、列車に乗り込んだのか???答えは、プロデューサーとディレクターのみぞ知る、である。(#4)
ハワイアンの全く登場しないハワイのシーンにあって、唯一クレジットに見られた、それらしきキャラクターは、サモア人の用心棒(小錦のこと?)だけである。
この映画にとって、歴史は一つの要素であるが、商業もまた一つの要素である。ディズニーは、日本での興行成績を考慮して、過去の日本軍による残酷な歴史を無視するに至った。(#5)
どのラブロマンスも共鳴を呼ぶことはない。それは、マイケル=ベイがこの分野に全くの役立たずであるからか、それともこの映画のシーンが、(Overtone=大袈裟 とUndertone=無感覚の間で)息つく暇も与えず、のべつまくなしに移り変わるからなのか。
戦艦オクラホマの沈没シーンは「タイタニック」を想起させるが、それだけの費用をかけたこの映画が、「プライベート・ライアン」にかなうという考え方は忘れた方がよい。(#7)
子供達にとって、指先大の飛行機シーンは「スター・ウォーズ」を思い起こさせるだろう。(#8)
レイフとダニーのキャラクターは、(歴史の節目に出没する、映画のフィクション・キャラクター)フォレスト=ガンプの様に、B25に乗り込み東京襲撃に参加するが、彼等がヒロシマを爆撃したエノラ=ゲイに乗り込むことはなかった。(#9)
この映画に必要だったのは、戦闘シーンへのテクニカル・チャレンジと共に、フィルムメーカーによる人間性へのアプローチであった。ベイ監督は、「ザ・ロック」において、ショーン=コネリーとニコラス=ケイジというパワフルな俳優を得て、ハリボテのストーリーに血と肉を与えることが出来た。しかし、「パール・ハーバー」には、彼が最も必要とした、そういったキャストが欠けていたのである。(#11)
おそらくこの地球上に、この映画の脚本の決定稿に魅力を感じる俳優は存在しないであろう。ベン=アフレックは、しかめっ面でお説教を言いながら真面目に眉をひそめることと、真面目に眉をひそめながらしかめっ面でお説教を言うことの違いを見せることはうまいが(つまり、演技というものが元々出来ていないという皮肉)、ベストをつくしていたとは思えない。
「パ−ル・ハーバー」は、あらゆる技術を駆使し、たとえそこに魂が全くないとしても、エピック映画足り得るかもしれない。しかし、その、死すべきモノの苦悩を一番表しているキャラクターとは、他でもない…戦艦なのである。(#12)
Village Voice, May 25th, 2001より |
(#1〜3は、真珠湾攻撃と映画の一般的な説明)
一方、日本の陰謀はブリキの太鼓に合わせたロボットの様に高らかに宣言されていた。ハリウッドは70年代に問題作「トラ!トラ!トラ!」を日米合作で作ったが、「パール・ハーバー」では、ステレオタイプが復活している。ディズニーは、利益になる日本市場を考慮して、日本軍の中国侵略などを描かなかったにもかかわらず、である。(#4)
霞のかかった病院のシーンは、もしも“ヒロシマ”というタイトルの、ビッグ・バジェット“ER”映画が作られたらどんな風になるだろう、というアイデアを想起させた。(#6)
D.W.グリフィスも、オリバー=ストーンも、(この映画の様に)、歴史劇にソープ・オペラ(お昼時に放送される主婦向けのチープなドラマのこと)を直結させることは出来なかった。(#8)
ブッシュ大統領は、映画ファンではないらしいが、この軽くて薄っぺらい映画に何かナイスなことを言うであろうということは、想像に難くない。(#9)
その他、タイム誌、ニューズ・ウィーク誌、USA Today等の映画評を読みました。以上の評ほどキツくはないですし、ポジティブな部分もあるものの、全体的には4:6くらいの割合でネガティブっぽいことが書いてあります。
Chicago Sun Times, May 25th, 2001より |
by mook:筆者のロジャー=エバートは、名実共にアメリカ一番の映画評論家。このレビューは、彼の所属するシカゴ・サンタイムに掲載されたものです。
「パール・ハーバー」は、2時間に短縮できる3時間映画である。見所は、驚くべき陳腐なラブ・ストーリーに挟まれた、冗漫な40分間のスペシャル・エフェクト。この映画の演出に、美徳やヴィジョン、オリジナリティといったものは存在しない。
この映画は、真珠湾攻撃や第二次世界大戦を知らない世代をターゲットにしている様だが、もし貴方がそれらについて少しでも知っているなら、この映画よりも貴方の方が知識を持っているであろう。この映画に歴史的センスはまるでない。 攻撃の理由について語られているのは、日本が石油供給を経たれたことだけ。日本の帝国主義については?…何一つ語られていない。
東京襲撃の後、ドリトル隊は中国大陸へ不時着するが、ここに日中戦争の説明はなく、これでは観客がなぜ中国に日本人がいるのか分からないのではないだろうか?(#1〜3)
もしこの映画を日本人の観客が見たら、真珠湾攻撃における日本人の出番の少なさに不満の声が上がるのではないか?一人だけやけに目立っている山本五十六(マコ)を除けば、他の日本兵にパーソナリティやパッションは全くない。
当時の日本兵は、真珠攻撃の成功に際して喜ぶことはなかったのか???こんなポジティブなハリウッド映画の中でさえ、日本人役というのは(いつも通り)ネガティブでメランコリックな役回りを演らされてしまうのである。(#4〜5)
- - -レイフ、エヴリン、ダニーのセリフがいかにバカバカしくて笑ってしまうかという説明や、ニュースリールで“ダウンタウン ロンドン”というナレーションが入っていることに対する嘲笑(ロンドンにダウンタウンというモノは存在しない)など。(#6〜7)
真珠湾攻撃の際、病院のシーンには部分的にソフトフォーカスがかけられる。なぜ?この映画をPG-13(13歳以下でも両親同伴であれば見ることが出来るレイティング)にしたかったから?では、真珠湾攻撃の大虐殺はどうなるんだ?
黒人のキャラクター(キューバ=グッデンJr.)が登場するのはいいことだが、1941年のハワイにアジア人が全く存在しないことに関しては、どう説明をつけるのであろうか。(#8〜11)
30分以上も飛行機が爆弾を落とし、火の玉が上がり、人間が紙屑の様に飛び散るシーンを見ることに何の意味があるのだろうか?そんな肉の砕け散るさまを見て、誰が楽しんだり感動したりするというのだろうか?真珠湾攻撃は、ひどい、悲惨な出来事であった。3000人近くの人々が亡くなった。しかしこの映画は、その人々についての映画ではないのである。
この作品は特筆すべきアクション映画ではない。「パール・ハーバー」は、主題を提供してはいるが、インスピレーションを与えてくれるわけではない。(#12〜13)
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