*** Japanese American's History ***

日系アメリカ人の歴史などを。少しずつご紹介出来ればと思います。
新しいモノから順に上に足していきます。

Day of Remembrance 2002
「追憶の日 2002」
Mar 09, 02

下に詳しく書きましたが、ルーズベルトによる“大統領9066号”が発令された2月19日に合わせ、毎年開かれている『追憶の日』(以下DOR)、NYでは今年3月9日の土曜日に行われました。この2月19日前後には、大抵ロス・サンフランシスコ、シアトル等、日系アメリカ人の多い都市でDORが行われる為、NYと西海岸での開催時期は毎年多少の期間的ズレがあります。

今年は特に、大統領令の発令からちょうど60年目の年に当たるのですが、テーマはむしろそれよりも、テロ事件に呼応する日系アメリカ人の役割の様なものが、中心になっていました。やはり下の部分を読んで頂ければお分かりかと思うのですが、60年前、真珠湾攻撃直後の西海岸では日系人に対する差別、いやがらせが横行し、彼等は遂に砂漠の真ん中のキャンプにまで追いやられてしまったのです。
実はつい数年前に『The Siege』という映画が作られた時、テロ事件の犯人がアラブ人だということでアラブ系アメリカ人が即座に逮捕されてキャンプに送られるというシーンがあり、そのモデルは日系人の強制収容だと言われていました。そして今、それに似た様な現実が実際に起きている、アラブ系アメリカ人を全員強制収容するとまではいかなくとも、多くのアラブ人が不当逮捕され、拘束され、いまだ釈放されないでいるのです。真珠湾攻撃後、当時スパイとは何の関係もなかった自分達の父親を不当逮捕・拘束された経験を持つ、日系人の2世・3世達が、今同じ様な境遇にあるアラブ系アメリカ人の為に何か力になろうと思うのは、当然の成り行きでしょう。

冒頭のキャンドルライト・サービスの後(私は遅刻していったので、この部分は会場にいませんでした)、American-Arab Anti-Discrimination Committee(アラブ系アメリカ人反差別委員会)のモニカ=タラズィによる現状報告(写真右上)。
昨年の9月11日以来、アラブ系アメリカ人に関するケースは、11件の殺人事件、40件以上の解雇、200件以上のいやがらせ事件などが報告されていますが、警察に届けられるケースからして実数からは程遠く、まして委員会にまで報告されるケースとなればそのごくわずかな一部の数字に過ぎないのだそうで。今朝観た『The Laramie Project』なんかを観ていても思ったのですが、地方に行けば行くほど人々は近所の目を恐れ、ヘイトクライムが警察に報告されるケースというのはごく稀なんですよね。この200件という数字も、殆どが本人による通報ではなくて、近所の住民による報告だったそうです。

次は、ごちゃまぜのアジア系アメリカ人ティーンが中心にとなったGeneAsian Nextの寸劇3つ。(写真中)面白いことに(?)、パフォーマーの10人中(チャイニーズ・ヴェトナミーズ、フィリピーノ、コリアンの面々)、日系人は誰もいませんでした(^_^;)。特に最後の「私は私であって、アジア系アメリカ人でもなければ…」っていうのは、ちょっとありきたり過ぎって感じでしたけどね(^_^;)。
ラストは、Virgo Productionsによる" I've Got Your Back"。(写真左)マイケル&レズリー=イシイ、カレン=サムスキー、ヒューゴ=マハバールによるシンプルな4人芝居。冒頭はテロ事件の起きた9月11日から始まり、段々と60年前の大統領発令当時の状況と重なっていきます。こうしてみると、当時日系人が置かれた状況と、今のアラブ系アメリカ人の置かれた状況というのは、本当によく似ているんですよね。

後半は、皆の持ち寄った手弁当によるちょっとしたパーティ。今年の参加者は40〜50人だったかな。勿論、ティーンズなど新しい世代も沢山来ているのですが、やっぱり見慣れたお年寄りが段々と減っていっていくのは何だか寂しいですね。ただ、「ハーレムの母」と呼ばれ、つい数年前までNYの人々に親しまれていたユリ=コーチヤマさん(私も月に1〜2回はお宅にお邪魔していました)が、現在元気でサンフランシスコで暮らす姿をビデオで観ることが出来たのはとっても嬉しかった。私はとにかくこのイベントには毎年参加しているので、殆ど年に一度の同窓会に行く様な感じなんですけれど。
それにしても、私の知る限りこのイベントの参加者は、日系アメリカ人(もしくは他の人種のアメリカ人)ばかりで日本から来た日本人が殆どゼロという状況は何とも寂しい限り。昨日はこの後、数年来の友達4人で飲みに繰り出したのですが、彼等全員日系アメリカ人で、日本人は私一人だったんですよ。皆一生懸命日本のこと理解しようとしているんだけどなぁ。こうしてみると、これからの日系人アメリカ人の未来というのは、3世・4世・5世の世代と日本から来た日本人達がどれだけ交流していけるかというのが、大きなカギになっていくのではないかと思います。

Day of Remembrance 2001
「追憶の日 2001」
Mar 4, 01

“Day of Remembrance”(追憶の日)とは、毎年2月19日前後全米各地で行われる日系アメリカ人の集いのこと。今年NYの“Day of Remembrance”は3月3日に行われました。ここでやっと今日(!)、日本ではなかなか語られることのない日系アメリカ人の歴史について少しお話したいと思います。

<日系人の歴史・ベーシック>

日本人が初めてアメリカに入植したのは1860年頃、会津藩の「若松コロニー」が最初だと言われています(別グループのハワイ移民が最初という説もあり)。その後アメリカ政府との間にいわゆる「紳士協定」が締結されますが、**この紳士協定とはアメリカ政府が、日本人の子供をアメリカ人の子供と同じ学校(中国系はじめアジア系移民は当時深刻な迫害を受け、子供たちはアジア人だけの学校に通うことが義務付けられていた)へ通える様にする見返りに、日本政府が米国移民者向けのパスポートの発行を大幅に制限するという内容であった為、この時を境に日本人移民者と当時日本の占領下にあった韓国及び北朝鮮からの移民は急減少していきます。ですから太平洋戦争開戦直前にアメリカに移民することは不可能でした(**以降の記述は、メールで私の語述をご指摘頂いた、O・Mさんによるものです)。

そして、1941年末の太平洋戦争勃発。翌1942年2月19日には“Executive Order 9066=大統領令9066号”(陸軍に裁判や公聴会なしに特定住民を排除する権限を与えるもの)が発令され、日本人の血を引く者(アメリカで生まれアメリカ国籍を持つ2世や3世を含む)、または日本人と結婚した非日本人も含め、計11万人あまりの日本人家族が全米各地に建てられた10ケ所あまりの収容キャンプに強制送還されることになります。移動までの期間は場所によってまちまちですが、大抵の家族が1週間程度の時間しか与えられず、彼らは家も財産も全て諦めなければなりませんでした。ちなみにこの法令は、同じく当時敵国であったドイツやイタリア系の移民には適用されていません。

戦後60年〜70年代市民権運動の高まりと同時に、キャンプ収容によって失った財産を取り戻そうと日系人の間で Redress Movement(補償運動)が起こり、1988年8月10日、レーガン大統領は「1988年市民の自由法(通称、日系アメリカ人補償法)」に署名。アメリカ政府は初めて公式に日系アメリカ人に謝罪し、署名した日に生存している被強制収容者全員に対してそれぞれ2万ドルの補償金を支払うことに同意しました。

<Breaking the Silence>

戦後沈黙を守ってきた日系一世や二世達が、補償運動の高まりと共に、次世代に自分達の体験を語り継ごうと、毎年2月19日(↑大統領令発令の日)前後に「追憶の日」と称する集いを始めました。

最初のうちは各キャンプ地を訪問して体験談を語り継ぐというのが主流でしたが、世代交代と共に最近では二世三世、そして四世達によるパフォーマンスが中心となってきています。私はこの「追憶の日」、98年日本にいた年を除いて95年から毎年参加していますが、毎年コンサートあり、パフォーマンスあり、いろいろ志向を凝らした催しものが企画されています。今年は「Breaking the Silence」という詩集で西海岸では有名な日系人アクティビスト、Janice Mirikitaniを迎えて詩・俳句・即興芝居・そしてラップのパフォーマンスが行われました。Janiceさんはさすがに人を引きつけるパワフルな人、そして現在大学生のTaiyo Takeda Ebata君のラップはなかなかのものでしたよ。(カメラ持って行かなかったことを、めちゃくちゃ後悔!)

私は自分の脚本の為、これまで4人の日系人の方にインタビューをしてきたのですが、この1年でそのうち2人の方が亡くなり、去年とも合わせるとこれからインタビューしたかった方さらに2人が亡くなってしまったので、今年の追憶の日はなかなかつらいものがありました。私自身、日系人の歴史についてはかれこれ4年近くリサーチを続けているので、それこそ本が2〜3冊くらい書けてしまいそうなのですが、これから少しずつ彼らの歴史をご紹介出来たらなと思います。以下のリストはアメリカ人の友人にも役立てて欲しいので、日英両方で書きますね。

<日系人キャンプの歴史を知るのに役立つ映画>
Films, which are good to see for learning Japanese-American’s Camp History

“Come See the Paradise” : directed by Alan Parker 1990 - 「愛と哀しみの旅路」監督:アラン=パーカー
映画そのものとしては、決していい出来ではないです。ただキャンプとか、よくこれだけセットで作ったなぁ…と。概要をざっと知るには一番お薦めの映画。

“Snow Falli’n on Cedars” directed by Scott Hicks 1999 - 「ヒマラヤ杉に降る雪」監督:スコット=ヒックス
この映画も、これだけ金かけてるんだからもっと“出来のいい映画”として作って欲しかった。日系家族が収容所に連れて行かれるまでのシーンは資料をかなり忠実に再現。この辺はけっこう良かったのに、結局は“理解ある良き白人”が“可哀想な日本人”を助けてあげるという構図で…。まぁ原作が「わび・さび・禅」好きの白人だからしょうがないんですけどね(^_^;)。

“Strawberry Field ” directed by Ria Tajiri 1998 - 「ストロベリー・フィールド」監督:リア=タジリ
石川好原作の映画「ストロベリー・ロード」とは違います(^_^;)。1970年代、キャンプの歴史を知りたくて家を飛び出す多感な少女のストーリー。

“Days of Waiting” directed by Steven Okazaki 1990 - 「待ちわびる日々」監督:ステーブン=オカザキ
1991年度アカデミー賞最優秀ドキュメンタリー受賞。日本人と結婚したが為に自分も強制収容所での日々を送ることになったユダヤ人妻の物語。

“Rabbit in the Moon” directed by Emiko Omori 1999
昨年のサンダンス映画祭で最優秀撮影賞受賞。収容所での徴兵に反対した「No-No Boy」達へのインタビューが中心。

“Conscience and the Constitution” directed by Frank Abe 2000
こちらもやはりResisters「良心的徴兵拒否者」達のお話。彼らの歴史についてはかなり複雑な経緯があるので、また改めて別の時に詳しく説明します。

日系人のキャンプに関するドキュメンタリーは、私が知っているだけでも軽くこの他に10作品以上はありますが、取りあえずベーシックなものだけ。

<日系人の歴史一般について>
General Japanese-American History

“Japanese American” by Paul R. Spickard - Although you can easily find more than 10 books, called “Japanese American”, this is the one I recommend most as a basic.

“Nisei : the quiet American” by Bill Hosokawa - He is the biggest well known speaker from JACL (Japanese American Citizen’s League). Actually, talking about all generations.

“Breaking the Silence” by Yasuko Takezawa - 「日系アメリカ人のエスニシティ」竹沢泰子著- 社会学的見地からのちょっと学術的な本ですが、私には一番参考になりました。

「もう一つの日米関係史」飯野正子著 - 比較的最近出版された本なので、最近の日系事情まで網羅してあります。移民史・太平洋戦争・戦後の日系人など話題も豊富。

あとはまぁ、それこそ50冊は軽くありますが、残念ながら殆どが絶版になっています。

<日系人キャンプについての本>
Books about Japanese-American Relocation Camps

“Citizen 13660” by Mine Okubo – Her own biography with her drawings in the camp. She came to United States as an artist and passed away just last year.
邦訳版も出ていたはずなのですが、今は絶版になっているようです(邦題覚えていないのですが、おそらく「シチズン13660」だったと思います)。図書館などで見かけたら是非手にとって欲しい1冊。画家として欧州留学も経験し、キャンプの中でその様子を描き続けたミネ=オークボさんの自伝的画集。残念なことに彼女は昨年亡くなってしまっています。NY在住だったので、私が是非ともインタビューしたかった一人でした。

”Years of Infamy” by Michi Weglyn - 「日系アメリカ人強制収容所」ミチ=ウエグリン著 - This is not for the J-A leaning 101, but Michi Weglyn, who also passed away two years ago had done incredible research about camps with the government’s official documents.
かなり上級編の内容ですが、政府の公文書からキャンプ収容の経緯をここまで調べた書物は他にないと思います。日系人キャンプのリサーチをする人達にとっては、はっきり言ってバイブルの様な本。残念なことにこの著者のミチ=ウエグリンさんもNY在住でしたが、一昨年亡くなられています。

”Prisoners without Trials” by Roger Daniels - 「罪なき囚人たち」ロジャー=ダニエル著 - If you want to find out about legal POV of the Camps, this is the most basic and also most detailed book I would recommend.
キャンプ関係では著書の多いR=ダニエル氏(法的見地から収容所の是非を斬っています)の本の中でも、一番ベーシックでわかりやすく、しかも最新本なので詳細も盛りだくさん。

”The Journal of Ben Uchida” by Barry Denenberg - Diaries of Japanese American Boy from April 21, 1942 to Feb 16, 1943. A great book for kids.

”The Citizen of Topaz” by Michael O Tunnell - 「トパーズの日記」マイケル=タンネル著 - Another Japanese American Kids diary. This one is more like a class diary.
トパーズ収容所の中のクラス日記紹介を中心とした子供向けの本。

「自由への道、太平洋を越えて」カール=秋谷一郎著- つい先日亡くなったカール=秋谷さんの自伝本。NY在住なので、3年前にインタビューさせてもらった一人です。日本で教育を受けた帰米二世としての戦前・戦中・戦後の姿が描かれています。

「ユリ」中澤まゆみ著 - 本多勝一氏や吉田ルイ子サンの著書にも度々登場する“ハーレムの母”こと、ユリ=コチヤマさんの半生記。彼女も二世としてキャンプで戦中を過ごしました。やはり私がインタビューをさせてもらった一人。去年から西海岸の家族のもとに暮らしています。

キャンプ関係の本も日本語・英語合わせると100冊以上が出版されていますが、お薦めはだいたいこの辺りです。

<文学作品からキャンプを知る>
Literary books about Japanese-American Relocation Camps

”No- No Boy” by John Okada - 「ノー・ノー・ボーイ」ジョン=オカダ著 - This book is recognized as one of the first novels written by an Asian American. The story begins right after WWII, when Ichiro, who resisted join the army, comes back from the prison to his hometown. 
アジア系アメリカ人の書いた殆ど最初の小説として知られる記念碑的な作品。収容所での徴兵にノーと答えて刑務所から帰って来た、日系二世イチローの物語。

”Legend from Camp” by Lawson F Inada - 「キャンプ物語:序章」ローソン=F=イナダ著 - He is the third generation of J-A. This story is based on his family history.
自身の家族の歴史を元にしたストーリー。キャンプ以外の移民史も網羅。

”Beyond Manzanar” by Jeanne W Houston - 「マンザナールを超えて」ジーン=ヒューストン著 - Also written by the third generation. Interesting as a women’s POV.
やはり三世によるマンザナール収容所の物語。女性からの視点が特徴的。

「二つの祖国」山崎豊子著 - 「山河燃ゆ」というタイトルでNHK大河ドラマ化。細かい内容については、日系人会からのクレームも多々あった作品ですが、ベーシックな背景を知るには悪くない本だと思います。

「マンザナ、わが町」井上ひさし著 - 90年代初頭に書かれた戯曲。マンザナ−ル収容所の中で創作劇を作る5人の若い女性を中心に描かれたコメディタッチのお話。初級編としてはちょっと説明不足かもしれませんが、大好きな作品です。

…というわけで、映画と本に限ってざっとご紹介しましたが、勿論TV番組や舞台作品なども沢山あります。ウェッブ・リソースについては、いっぱいあり過ぎてまだ整理出来ていない為、またの機会に譲りますが…。

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