現在またはもうすぐ日本で公開になる映画のお薦めコーナー。
評価の満点は5つ星です。
"An Adolescent" - 「少女」****3/4
"The Isle" - 「魚と寝る女」****
"Final Fantasy" -「ファイナル・ファンタジー」***3/4
"BODY DROP ASPHALT" - 「ボディ・ドロップ・アスファルト」***1/2
「少女」 - ****3/4 |
Directed by : Eiji Okuda, Written by : Izuru Narushima, etc
Starring : Eiji Okuda, Mayu Ozawa, Akira Komichi
Related Site : Cinemoney
日本での公開は9月下旬から。
うわ〜、すっごく好きだったんです、この映画!!!もう何から書いてよいのやら…。今回この作品モントリオール映画祭で観たのですが、映画祭の中で観た作品の中ではダントツに良かった!!!も〜、もう一度観てしまおうかと思ったくらい。けどね〜、この作品も好き嫌いが分かれると思うので、誰にでもお薦め出来る作品という訳ではありません。その点、悪しからず。m(_)m
この映画に関して唯一残念だな〜と思うのは、脚本が原作本(連城三紀彦:著『少女』)に基づいている為、後半がちょっとタラタラ長く感じてしまう所。やはり原作から“切れなかった”部分が沢山あったみたいで…。でも、そこをバサっと切って欲しかった!!!構想期間ナント16年という異常に長い時を経て来ているので、切るのがツラかった気持ちはよ〜く分りますけどね(^_^;)。
この映画は、原作に惚れこんだ俳優:奥田瑛二が、「赫い髪の女」の神代辰巳監督による映画化を切望していた企画に基づいて作られたモノ。1995年に神代監督が他界してしまったのがキッカケで、自らメガホンを撮った彼の、ナントこれが監督デビュー作です。なんだかちょっと、キューブリック監督の他界後にその企画を引き継いだスピルバーグの「A. I.」を思い出してしまいますが、う〜ん、この作品は彼が監督して大正解だったのではないでしょうか???何てったって、映画のそこかしこに、彼の気迫・気概・気合をビンビンと感じるんですよ〜(私は知らなかったのですが、彼って2年程前に10代の少女との交際が発覚して大変だったのだそうですね(^_^;)。
観る前は、安っぽくてつまんないロリコンの話なのかな〜と思っていたのですが、いやはやパワフルな力でぐいぐい見せます。何てったって、脇役に至るまで、キャラクター達が本当によく描けている。
「皆月」では、ただのちんけなオッサンだった奥田瑛二。う〜ん、よいな、よいなぁ、この映画では。背中に刺青なんか彫っちゃってるし、淋しい主婦を騙くらかしてマンマとエッチしちゃう様なエグい警官の役なのですが、無理がないっすね〜。ヤラしい部分と純愛を貫く部分が矛盾なく描かれている。彼って、こんなスゴイ役者さんだったのか〜。
知的障害を持つ助政役の彼もいい。そう言った役をあくまでナチュラルに演じていた様な気がします。中盤の、映画「ギルバート・グレイプ」パクリシーン(?)でも、ディカプリオ顔負けの演技を披露していましたし。
室田日出男もすんごくいい味出してたし、意外にも素晴らしい演技を見せていたのが夏木マリ!!!少女との長廻しのシーン、奥田瑛二との絡みのシーン、すっごく良かった!!!彼女って、もともと歌手なんですよね?それで何であんなにうまいの?????
そしてそして、彼女なしではこの映画の存在自体が成り立たない、期待の大型新人小沢まゆ。いや〜、よくこんな娘見つけてきたな〜!!!まず、1)存在感がある、2)すっごくかわいくもなく、しかも生意気過ぎない…ちょっと10年前の裕木奈江を彷彿とさせるモノがありますよ、彼女。3)演技がうまくて自然…難しいシーン沢山あるんですけどね〜。しかも長回しばっかりだとゆ〜のに!4)肌がキレイ…コレは刺青のシーンが絡んでくるので、すっごく重要!そして…5)こういう映画に出ることを許した親はエライっ!脚本読んだら、フツーは引きます(^_^;)。いや〜、こうした条件を全て満たした彼女を見つけることが出来た監督は幸せモンです、ハイ。
実はこの映画の美術監督は、あの日比野克彦氏が勤めています(本人も、奥田瑛二の友人役としてカメオ出演)。助政の乗る自転車など、彼のセンスがよく出ている部分もたくさんあったのですが、少女の家のあちこちに目障りな程彼の落書きが描いてあったのはちょっとマイナスだったかな〜(^_^;)。
音楽も基本的には良かったですよ。劇中二回、いきなりフランス語の歌が流れてくるのですが、コレがまたいいんだな〜っ(>_<)。今月日本へ帰る友達に、サントラ買って来てって頼もうかと思っているくらいなんですぅ〜。特にラストでフレンチが流れちゃうシーンは、どの映画だか分からないのですが、ぜ〜ったいアレはどっかのヌーベル・バーグの映画からパクって来ているよね(…というより、オマージュ的な要素の方が強いと思うんだけど)。うん、映画オタッキーにはたまらない作品です、この映画。
「少女」はモントリオール映画祭の他にも、先月29日に開幕したヴェネツィア国際映画祭の批評家週間にもノミネートされていまして、8日の発表がちょっと楽しみ。先にも書いた通り、この映画には中盤ちょっと盛り上がる部分があり、殆どの観客はそこがクライマックスだろうと思っているのに、その後延々と話が続いてしまう分、ラストの後味が悪くなってしまうのですが、う〜ん、是非とも頑張って欲しいな〜。けど、このページの下の方を読むと、好評の為、「少女」の上映が一回増やされたと書いてありますね。やっぱり感触はいいのかな?おそるべし新人監督:奥田瑛二。次なる作品は、どんなモノを見せてくれるのやら…。
Seom (島) 「魚と寝る女」 - **** |
Written and Directed by : Kiduck Kim
Starring : Suh Jung, Yoosuk Kim
Official Site : Korean, nifty Cinema
Open in Japan Aug 25, 2001 / 日本での公開は8月25日から。
As you’ve provably heard a buzz from Venice International Film Festival last year, yes, it is a creepy, cruel, and bloody film from Korea. Nevertheless, I won’t call the heroine insane or crazy, it was somehow real to me. And this is definitely not another ”Audition” in Korea.
All you see is love. But it is not purely just love but is more like deep pathos. The world of this film is isolated and closed. Both leads almost do not speak anything (the heroine never speaks, though she is not a dumb). However, those beautiful and philosophical images tell you everything. Yes, there’ re murders, some bloody scenes, and sexes. But these are just side stories.
I understand that some women organization got offended and against this film, because it might gives the Western people a wrong impression of Asian women. It is surely an opposite portrayal of new ideal Asian women, which Asian (female) organizations try to correct from the old stereotype of them. However, this is not just about a Korean or Asian women but all women’s truth in a way. I think the actress, Suh Jung did incredibly great job for such a complicated character without any lines. As much as I want to see the director’s latest film, “Address Unknown” (selected to competition at Venice film festival this year), I’m dying to see her next film!!!
昨年度のヴェネチア国際映画祭で、「シバジ」「LIES/嘘」に続き、韓国映画としては史上3作目として正式コンペに選出されたこの「The Isle」。韓国映画界の異端児と呼ばれるキム・ギドク監督は、4作目のこの映画、そして今年は6作目の「宛先人不明〜Address Unknown」で、早くも2年連続ヴェネチア映画祭の正式コンペ選出という未曾有の快挙を成し遂げています。また「魚と…」は、今年のサンダンス映画祭では、ワールド・シネマ部門にも出品されていました。
昨年のヴェネチア映画祭では、この映画の上映中に失神者が出て大変な話題を呼んだそうですが、三池崇史監督の「オーディション」と並び、昨年のヨーロッパ映画祭ではまさにこの二作品が“Bloody Asian Cinema”として、人々の脳裏に刻まれたとか(ちなみにこの映画、フランスでは今春一足早く一般公開されています)。
お話は、浮気した恋人を殺し、湖の浮き船小屋へ逃亡してきた無口な男と、それに輪をかけて一言も口をきかない(きけないのではないらしい)湖に住む女の、まさに“情念”という言葉がふさわしい全編ドロドロ映画。
確かに男が女の情念の深みにずぶずぶとハマっていくという設定で、「オーディション」とこの映画では似ている部分があります。でも、私はこっちの映画の方が断然好きだな〜。それは私が三池監督を好きでないというのではなくて、私が村上龍氏のSM世界にどこか疑問を持っているからということ。
この映画にも、殺しあります。血もドバドバ流れます。異常ではないかと思う様なシーン(肉をそぎとったままの魚を泳がせたり、魚を切り刻んだり、電気ショックを与えてみたり、ここで書くとネタバレになっちゃう様なもっとスゴいシーンが目白押しなのですが)も沢山あります。でも、その動機の所在が「オーディション」と「魚と寝る女」では、全く違うところにある様な気が私にはするのです。
女(男)が男(女)にハマってしまう時に理由なんていらない。それはある日突然やって来て、ある日突然エスカレートしてゆく。この二人の関係は、段々と異常な方向へと向いていってしまうのですが、私は彼女の行動が単なる異常だとはどうしても思えないのです。それは私がアジア人で、欧米、特にアメリカの連中から見たら野蛮な血を持っているからなのかもしれないし(フランス人はけっこう共感してるみたいだけど)、単に私のキャラがそういうタイプなのかもしれない(コワイけど後者だったりなんかして)。
この映画が世界に広まることによって、アジアの女達が皆あんなWhoreでInsaneなヤツだと思われたら迷惑だから、こんな映画はどこかの闇に葬って欲しいという女性団体の気持ちも気持ちも分からないではありません。でも、この作品はやっぱりどこかに真実というモノを含んだ映画であると思うし、発表を妨げられるべきではないと思う。確かに彼女は、もの凄く強くて、そしてもの凄く弱い女です。明るい未来に向かっての、“理想の女性像”とはかけ離れた、いやむしろ逆行した存在ですらあるかもしれない。けど、ネタバレ→離れていってしまう彼を呼び戻す為、アソコに釣り針を入れてしまう 彼女の行動は極めて自然だとさえ、私には思えてしまいました。もう多分理屈なんかじゃないと思う。ネタバレ→こうすれば彼は戻ってくるなんて、彼女は全然計算してないんだと思うし…。
とにかく、この映画は主演のソ=ジュン(「ペパーミント・キャンディ」では、ちょい役出演)なしでは有り得ない映画。湖の中からぬっと現れる怖さもさることながら、体育座り(って分かるかな?)で船を漕ぐ、彼女のポーズがもうたまらないのです。やるせなさとオドロオドロしさを同時に表現出来る女優サンって、ホント貴重ですよね〜(そう言った役自体、なかなかお眼にかかることはないと思うけど(^_^;)。
無口だけど、突然激しさを見せる男役(台詞が殆どないので、キャラクター名もないに等しい)に、「江原道の力」では警官役として出演していたキム=ユソク。舞台出身の実力派なのだそうで、彼もなかなかユニークな俳優サンですね。
まぁ、キム=ギドク監督と言えば、アーティな情感溢れる映像が十八番。神秘的な湿地帯の美しい映像と、そこに展開されるオドロオドロしいドラマを、“そういうのが好きな人は”存分にご堪能下さい。ラストの哲学的っぽい部分は、アメリカではあんまり受けそうにないけれど、フランス人は好きそ〜だなぁ〜(^_^;)。
先にも書きました様に、2年連続でヴェネチアの正式コンペに選出された彼の最新作「宛先人不明」はかなり社会派の作品で、彼の作品には珍しく(?)ストーリー展開もしっかりとしているそうです。「魚と…」ですでに十二分に楽しめてしまった私には、今から観るのがとっても楽しみな作品。う〜ん、もう待ちきれな〜い。
「ファイナル・ファンタジー」 - ***3/4 |
Directed by : Hironobu Sakaguchi
Written by : Al Reinert, Jeff Vintar
Starring (Voice performance) : Ming Na, Alec Baldwin, Donald Sutherland, James Woods, and Steve Buscemi
Official Sites : English, Japanese, CNN Japan
Open in US July 11, Open in Japan in Fall /日本での公開は9月から
私はコンピューター・ゲームなるモノは、誰かの家に行った時子供に教えられてちょっとやってみるだけだったりするので、「ファイナル・ファンタジー」というゲームについてはまるっきり分かりませんし(この映画と繋がっているのかどうかも分からない(^_^;) 、新しいアニメ映画もおそらく「Bug’s Life」や「もののけ姫」以降はまるっきりご無沙汰していたので(リバイバルとしては先日「AKIRA」を観に行ってきましたが)、公開前はこの映画、観に行く気なんてまるっきりありませんでした。
ところがところが、やはり普段はアニメなど全く観ない連中から、「この映画だけは見逃すな。絶対にビデオで観てはいけない」と半ば脅されてしまい(^_^;)、いやいやというか、しぶしぶと観に行って来たのですね〜。
いや〜〜〜、想像以上の出来に驚き!!!CGというのは、いまやココまで進歩したんですね〜。観ていて「コレってアニメ映画なんだっけ?」って途中で忘れてしまうくらい。確かアニメの歴史から言うと、「白雪姫」が制作された時、“初めて人間を主人公にしたフルアニメ”ということで大変な話題になったらしいですが、初の全編CG長編映画「トイ・ストーリー」を制作したディズニーや、今やそのディズニーに追いつけ追い越せのドリーム・ワークスでもなく、ある意味インディー制作会社であるクリス・リー・プロダクションが、“主人公が人間の全編CGアニメ”という世紀の偉業(?)を成し遂げたというのも、ちょっと興味深いところです(配給はもちろんスタジオ系のコロンビア・ピクチャーズでしたけれど)。
まず、冒頭シーンで主人公=アキの顔のどアップが現れます。う〜ん、化粧品かなんかのコマーシャルかと思っちゃうようなきめ細かい肌(実際、現在は食料品や化粧品CMの殆どがCG映像を利用しています。またビレッジ・ボイス紙によると、この映画の総予算の3分の1が、アキの髪の毛の動きに費やされていたのだとか。ホントかな…?)。確かに最初の5分くらいは、キャラクター達の動きがぎこちないかな?とも思うのですが、それもすぐに慣れてしまうんですよね。なんたって、その昔(?)はアニメの人間が動いていたってちっとも気にならなかった世代なんですから、私は...(^_^;)。将来、生身の俳優サンを使った映画が完全になくなってしまうことはないんじゃないかと思いますが(少なくとも私が生きている間は)、マジでこれ、近いうちにお払い箱で職を失う俳優さんが続出するのは、遠い未来の話ではないかもしれませんよ(特にスタントマンとか、もういらなくなっちゃいますね〜(^_^;)。
まぁ、内容的なことはあまり期待しないで下さい。一言で言ってしまうと「風の谷のナウシカ」meets「スターシップ・トルーパーズ」かな?私、実は「スターシップ...」の方は観ていないのであまりいいかげんなことは言えないのですが、なんか出てくる怪物がそれっぽかったんで...。そうそう、前に「風の谷のナウシカ」をこちらの学校の友達に見せた時、「日本のアニメって、どうしてこんなにゲテモノばっかり出てくるの?」って聞かれたことがあるんですけれど。確かその頃、寮で「うろつき童子」のテープとかが出回っていたんですよね(私は観てないですけれど。あのシリーズは、なぜか街のビデオ屋さんにも沢山置いてあったりする(^_^;)。確かにこっちで流行ったアニメというと、「AKIRA」といい、「エヴァンゲリオン」といい、変なゲテモノが出てくるのが多いのです。なぜか...。
この映画にも「ナウシカ」にも登場する様なムカデ系の化け物が沢山登場するのですが、私はそういった意味でこの映画がナウシカ的と言っているのではありません。
まず、一人の”頭のイイ”女の子が、たった一人で地球を救おうとするという設定。彼女、はっきり言ってヒーローより全然頼りになったりするし…で、その地球を救う鍵がガイアだのなんだとゆ〜、エコロな理屈がこねられている所。そこに対立する悪役っていうのも、地球征服だの何だのっていうことより、単に頭が悪いだけなのね(^_^;)。あ、そうそう、その地球を救う女の子の”夢”っていうのがかなり重要なところもナウシカと同じ。最後のオチやラストシーンの風景まで殆どそっくり同じというのだから、ナウシカ・ファンはけっこう怒ってしまうかも鴨(^_^;)。
ただし、いわゆる”宮崎アニメの感触”は、そこにはまるっきりありません。これはまごうことなき”ハリウッド映画”。この映画が、全米2649館(およそ3000スクリーン)という日本人監督の映画としては過去最大の規模で公開されたのは、勿論アジア系アメリカ人の間で「ゴッド・プロデューサー」の異名を持つコロンビア/トライスラー前社長クリス=リーの後ろ楯があってのこと。監督やクリエィティブ・ディレクター等、主要部門の殆どを日本のスタッフが占めるも、脚本や美術監督はアメリカチームと、まさに日米合作映画と呼ぶに相応しい共同作業から生まれたこの映画。
主人公アキ=ロス博士の役を「ムーラン」の声やTVドラマ「ER」でお馴染みのミン=ナが演じているのも興味深いところ(彼女、日系の役だったりなんかするのかな???)他の声の出演も、アレック=ボールドウィン(このキャプテン役、もしかしてベン=アフレックが見てくれモデル?)、ドナルド=サザーランド、ジェームズ=ウッズ、スティーブ=ブシェミとかなり豪華だったりするのです。
まぁ、「自分の意見は押し付けない」のがモットー(?)のこのHPですが(^_^;)、もし少しでも最新のCG技術に興味がある方は、やはり劇場の大スクリーンで観ることをお薦めします。正直言って内容はないし、一人一人のキャラクター達もダサくてタイプキャスト的だし(彼等に感情移入出来る人達がいたらスゴイ)、テンポも間延びしていて2時間も観たらかなり飽きてしまう様な映画でして(ヒドい言い様ですね〜(^_^;)、そんなモノに2000円も払うくらいだったら他にもっと良質の映画があるはずだという方は、どうぞその様にして下さってかまわないのですが...(無責任な奴(^_^;)。
まぁ、各紙の劇評でもけっこう叩かれていましたし、ゲストブックにも書きました様に、残念ながらアメリカでは大ゴケしてしまったこの映画、アニメおたく王国:日本(?)での興業成績は、果たして...???
「ボディ・ドロップ・アスファルト」 - ***1/2 |
Written and Directed by : Junko Wada
Starring : Sayuri Oyamada, Makoto Ogi, Yoji Tanaka
Official Site :Japanese
Open in Japan August 8, 2001 / 日本での公開は8月4日から。
前衛映像作家としてはすでに数々の国際映画祭でその名を馳せている和田淳子監督による、初の長編作品。愛知県の主催する映像文化センター・オリジナル映像作品第9弾でもあります(けど、撮影はほぼ全て東京で行われているんですよね)。
一言で言えばコレは、「ポエトリー・ムービー」とでも言いましょうか。それでいて、かなり笑えます。一緒に観たアメリカ人の友達が「日本語だったらもっと分かるのかな?」と言っていましたが、いえいえ、この奇妙さ(?)は、言語を超越したモノがありますよ〜。
まず、オープニング・クレジットまでの20〜30分は、ひたすら小説家になりたい主人公の独白&アーティ・デジタル・イメージのオンパレード。それが、突然普通のナレティブ・ストーリーに早変わり。かと思うと、後半は彼女の書く小説のキャラクターや作品世界が交錯して、CGイメージのお広め会。
とにかく、いろんな意味で翔んでます。後半は、もうストーリーよりもCGアイデアの方が先に来ていたんじゃない?っていう気がして、ちょっと興醒めしてしまいましたが(でも、なかなか凄いイメージでしたよ。日本でも今年公開された台湾のシューリー=チェン監督「I.K.U」のCGチームと同じ面々です)、前半のポエトリー・イメージはけっこう好きだった私です。
主演の小山田サユリさん(映画「溺れる魚」にも出演)は、もう彼女がいなければこの映画の存在自体が成り立たなかったのではないかというくらい、この役にピッタリハマっていました。独特の透明感と中性的でありながら女の子女の子しているという魅力が、この映画をしつこくなく、あっさりとしたイメージにしています。また、劇中流れる“ピチカート5”の歌にもばっちりピッタリですね。
驚いたのは、「HERO」のバーテンダー役で一躍有名になった田中要次サンがほとんど主役級で出演していたこと。彼のイメージ(?)からはちょっとかけ離れた役だったので、思い切って新しい役を開拓したという感じでしょうか?
それにしても、パーティ・シーンのエキストラさん達は豪華な顔触れですよ。あがた森魚、鈴木慶一、手塚眞、大久保賢一、沼田元氣etcこれだけでも、和田監督の活動の幅の広さを感じさせます。
映像的には抜群のセンスを見せた和田監督ですが、やはり演出的にはキツイ部分もあったかも。ギャグの場合、演技はリアルさよりもタイミング。それが、随分ハズレている所があった様な気がしてしまいました。それを、「わざとハズしているのか、ウケを狙っているのか」見極めるところが難しい…。
ストーリー的には問題なくても、言葉のニュアンスがけっこうな意味を持ってくることも確か。例えば、東京の人達にとって「“初台交差点の吉野屋”がどんな意味を持ってくるか」、とかね。コレは説明出来ないぞ〜。そう言えば、主人公のおじいちゃんが臨終の床で言う「パンパンにだけはなるなよ」という台詞が、「Remember Hiroshima」と英訳されていたのには、苦心の程がうかがわれていましたね(^_^;)。
ちなみにタイトルの「BODEY DROP ASPHALT」は、英語的には「A Body Drops on Asphalt」となるので、英語タイトルでは全てが大文字で書かれています。映像イメージは世界共通のユニバーサルな言葉。それを、ポエムだけでなく、ストーリー性を持たせて世界に発進する和田監督、これからの作品に大注目ですよん。
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