*** Coming soon or now in Japan 2 ***

現在またはもうすぐ日本で公開になる映画のお薦めコーナー。
評価の満点は5つ星です。

"Lies" - 「LIES/嘘」***3/4
"Ratcatcher" - 「ボクと空と麦畑」***3/4
"CHONG" - 「青〜Chong」****
"The Source" - 「ビートニク」***1/2
"The Idiots" - 「イデイオッツ」***1/2

"Lies"
Gojitmal
「LIES/嘘」***3/4
04/24/01 (The English version will come soon)

Written and Directed by : Sun-Woo Jang
Starring : Sang-Hyun Lee, Tae-Yeon Kim
Official Sites :
Korean and English Japanese
Open in the United States December 2000, in Japan April 2001
日本での公開は4月28日から。

日本では、昨年頭「シュリ」の大ヒットを受けて、10月末から12月頭にかけて韓国映画の公開ラッシュが続きました。その時、「ペパーミント・キャンディ」「春香伝」「カル」、「美術館の隣の動物園」「太白山脈」 「グリーンフィッシュ」「スプリング・イン・ホームタウン」 と並んで同じ時期に公開されていたのが、チャン=ソヌ監督の話題作「BAD MOVIE」。
この映画は、実在のストリート・キッズを起用した”ドグマ・スタイル”のフェイク・ドキュメンタリーなのですが、 チャン=ソヌ監督は、自身も少年院入りを経験しながら大検でソウル大学(韓国の東大にあたる最高級の大学)へ入学し、学生運動を続けて逮捕・出入獄をくり返して来たという、いわば韓国社会の異端児というか、アウトロー的存在。そのチャン=ソヌ監督の最新作が、この「LIES/嘘」なのです。

彼の作品は、デビュー作「ソウルのイエス」から詩人:金芝河との対話を元にした「成功時代」、「ウムッペミの愛」「競馬場へ行く道」「華厳経」「私からあなたへ」、そして光州事件で精神的ダメージを受けた少女を描いた「つぼみ」まで、公開作は次々と話題、スキャンダル、そしてあらゆる論争を巻き起こして来たのだそうで。私は「LIES」以外の作品は未見なので、詳しいことは何とも言えないのですが、どの作品も韓国の映画賞:青龍賞などでは必ずノミネートや何らかの賞を受賞しているし、「華厳経」はベルリン映画祭のアルフレッド・バウアー賞を受賞しているということで、国際的にもその実力は高く評価されています。また、チャン=ソヌ監督自身を取材したドキュメンタリー映画も、イギリス人監督(だったかな?)によって制作されたそうで、ヨーロッパではすでにお馴染みの監督さんとなっています。

この作品「LIES」は、昨年7月のNYアジアン・アメリカン映画祭で米国におけるプレミア上映が行われ、12月に一般劇場公開。韓国映画としてはなかなかのロングランを続け、ビレッジボイス誌の批評家の中には、年間映画ベストの10以内にランク付けしている人もいたくらい。ちょうど同じくらいの時期にやはりこちらで上映されていた「月光の囁き」なんかとも並び評されていたりしました(こっちの人には、女の子のSって珍しい様で…)。
また、ベネチア国際映画祭では正式コンペ出品、その他トロント・釜山・東京国際映画祭等、世界の主要映画祭で上映され、各地で話題を呼んでいます。ところが、その過激な性描写とSM的内容から韓国本国では公開までに6か月の歳月を要したそうで(ちなみに原作本チャン=ジョンイル作「私に嘘をついてみて」は、猥褻文書として法廷でも何度か争われ、一時は発禁処分にもなっています。邦訳版も発売中)。それでも昨年の年間興行成績では、実に第8位の記録を残しています。まぁ、そんなこんなで韓国国内&世界各地で話題を巻き起こしたこの作品、満を期していよいよ日本での一般公開というわけ。

お話は、38歳の彫刻家Jと友人を介してテレフォン・セックスを始めた女子高校生のYが、Jの妻の不在をきっかけにして実際のセックスにのめり込み、やがてSMの世界にハマっていき…。という映像的にも後半はかなりエスカレートしていく唾ゴク(?)映画。
私がこの映画で一番印象に残ったのは、その主人公の女の子Yの変貌ぶりでしょうか。実はこのY役をやったキム=テヨンちゃん、ナント素人サン(なんかポルノ映画の様な響きだ…(^_^;)なのですよ。映画の冒頭、JとYへの本音のインタビューというシーンがあるのですが(二人が実際出会う前に撮影されたインタビュー)、この時の彼女(多分ホントに処女だったんでしょ〜ね〜。アレ、これってもしかして◯◯???)から、初めてのセックスの後の彼女、そしてSM行為が始まる時期から、それがエスカレートしていく辺りで二人の立場が完全に逆転していき、ラストの彼女は、もう本当にこれが同じ人なのかとは信じ難い程の変貌ぶり。女はやはりセックスで変わりますか…(an・anじゃないんだから…^_^;)。チャン=ソヌ監督は、ここまで計算して撮っていたのでしょうか???とにかく凄いっす。
一方、韓国ではすでに知名度のあった彫刻家のイ=サンヒョンは、時が経つにつれてすっかり彼女の奴隷状態。う〜〜〜ん、日本では映倫カットされてる(?)場面も含めると、二人のセックス・シーンはもう半端じゃないっす(^_^;)。それにしても、韓国ではなぜかあ〜ゆ〜芸術家タイプの、なよっとしたオッサンが女子高校生なんかにモテちゃったりするんですよね。その辺はちと不思議だったりする。日本の援助交際やってる女子高生で、オジサンにここまでハマったという話は、聞いたことないですもんね(^_^;)。

う〜〜〜んでもとどのつまり、この映画を”純愛映画”と評するかどうかは、かなり意見の分かれる所なのかも鴨。私はこれを観たのがアメリカだったので、SMの場面なんかは時々爆笑の渦だったりしたのですが(彼らは人間の悲しい性に向き合う繊細さなんか全然持ち合わせてないモンね〜(^_^;)。まぁ、監督やJを演じたイ氏にフランス文化の匂いがプンプン感じられる様に、この映画はどちらかと言えば欧州向き。ってことで、フランスのル=モンド紙なんかはこの作品を手放しで絶賛していたらしいです。私にはそんな高尚な見方は到底出来ないけれど、この映画がアブノーマルだとは別に思わなかったかな〜(それは自分がアブノーマルってことか???)。
冒頭で書いた、前作の「BAD MOVIE」が好きだったという人には、是非ぜひお薦めの1本。「BAD...」と同じ作曲家による音楽が、これまたニクイ雰囲気を醸し出しています。ま、淫乱とか猥褻とか、表現の自由だとか何だとか、難しい言葉ヅラはひとまずどっかに置いといて、とにもかくにも、韓国から遂に上陸のホットなセクシャル・アバンギャルド・ムービーを、まずはとくとご堪能あれ。

"Ratcatcher", "Choung", "The Source"
「ボクと空と麦畑」、「青〜Chong」、「ビートニク」
04/04/01

え〜、唐突ではありますが、今月4月は私が去年観てかなり好きだった3作品(後日ご紹介します「LIES:嘘」も含めて4本)が日本で公開されていますので、駆け足でご紹介しま〜す。

<「ボクと空と麦畑」 - "Ratchatcher" ***3/4 >
Japanese Official Site, English Official Site

95年カンヌ映画祭短編部門で最優秀作品賞を受賞したスコットランド出身の女性監督、リン=ラムゼイの長編第一作。舞台は70年代、ごみ収集のストで悪臭漂いねずみのはびこるスコットランド郊外グラスコーが舞台。この作品の脚本も、NHK-サンダンス・ラボの企画から始まっています。
ショッキングな事件に始まり、いじめられっ子の少女との淡い恋、孤独な少年の心を通して語られる研ぎ澄まされた世界。そこへ忽然と現われる麦畑の光景には、目を見張るものがあります。ラムゼイ監督は非常に独特の映像センスとリズムを持った人で、この作品は昨年のNYビレッジボイス誌が選ぶ批評家達のベスト映画2000でも軒並みベスト10入り、LAタイムズが選ぶ2000年の映画ではなんと堂々の第1位。これまで2000年ニューデイレクターズ・ニューフィルム映画祭を初め、各国国際映画祭で上映されています。

This is the first feature of Lynne Ramsay, who won for the best short film, “Small Death” at Cannes 1995.
The story takes place in Glasgow, Scotland 1970s. The time there was a sanitary strikes, so people were living within their garbage. A 12 year old boy sees the world sensitively and goes through his adolescence.
The filmmaker has such an enormous sense of image creation and take you into a vulnerable and breakable world.

<「青〜CHOUG」 - "Choug" ****>
Japanese Official Site

私がこの映画を観たのは、昨年のジャパン・ソサエティが主催する短編映画上映会。その日は合わせて5本の映画が上映されたのですが、その中でもこの映画の人気がダントツで1位でした。実はこの日、この映画の監督である李相日(サンイル)監督だけが唯一会場に来られなかった監督さんだったのですが、この映画に関しての質問を会場の人達がその他の作品の監督さん達にし始めて止まらなくなってしまうくらいの始末(^_^;)。一緒に観た友人(当時IFP所属で、短編映画を年間100本近く観ていた)にして、「これまで観た短編の中で、こんなに完成度の高い作品があっただろうか?」とまで言わしめたこの作品、昨年やはり一般上映された「あんにょんキムチ」と並んで、ぴあフィルム・フェスティバルでも堂々のグランプリを獲得し、この度やっとのことで一般上映にこぎつけました。
舞台は横浜(だったっけ?)のとある朝鮮高校。高野連に初めて県大会への出場が認められ、甲子園を目指すことになった在日三世の球児達。とはいっても、このお話、ティピカルなスポコン物語では決してありません。どちらかと言えば不良の部類に入るのがこの主人公達のユニークな所(?)。けれど、気になる彼女が日本人と交際していると知ってショックを受けたり、ひょんなことから友情にひびが入ったりと、起こる出来事はそんなにドラマティックなものでもありません。
この映画の一番の特徴はその映像センス。何気ないシーンなんだけど、心に残るようなショットが随所に見られます。ちょっぴりビートたけしの真似っぽい所もあるのですが、彼の実力から行ったら、自分独特の世界を築くのにそう長い時間はかからないでしょう。
現在この李監督、来年のワールドカップに向けて日韓合作のドキュメンタリーを制作中なのだそうです(公開予定は来年)。でも私としては、早く彼の長編フィクション映画が見たいなぁ…。

This is definitely one of the best short films I’ve ever seen. An amazingly skilled and talented brad-new director, San-Il Lee shows you so many memorable shots and remind you the bitter but loveable days of youth.
The story takes place in a Korean high school, which mostly the 3rd generations of Korean-Japanese belong to. I have to say just to see the unsealed world in Japan to Japanese people totally worth to watch.
You might notice that he sometimes copies the way of Takeshi Kitano’s filmmaking. Yet, I’m really sure that he doesn’t need much time to establish his own world.
I’ve heard that he is directing a documentary about the Korea-Japan World Cup 2002 nows. However, I cannot wait to see his first narrative film!!!

<「ビートニク」 - "The Source" ***1/2 >
Japanese Official Site, English Official Site

60年代を風靡したビート世代のカリスマ、アレン=ギンスバーグ(「吠える」)、ウイリアムス=バロウズ(「裸のランチ」)、ジャック=ケルアック(「路上」)が、1940年代NYのコロンビア大学で出会ってからのエピソードを中心に、3人を追ったドキュメンタリー。
ギンズバーグの顔と名前くらいは知っていたものの、その生い立ちを殆ど知ることのなかった私にとっては入門編としてとても面白い作品でしたが、一緒に見たビートニク・フリーク(?)には、何も新しい発見がなくて物足りなかったとか。
監督は1986年、"Precious Images"でアカデミー最優秀短篇賞を受賞したチャック・ワークマン、製作総指揮はヒロ・ヤマガタ。
ジョニー=デップがジャック=ケルアック、デニス=ホッパーがウィリアム=バロウズ、ジョン=タトゥーロがアレン=ギンズバーグに成り切ってそれぞれの作品を朗読。当の3人に対するインタビューは勿論のこと、ジェリー・ガルシア、ポブ・ディラン、シャーリー・クラーク、ノーマン・メイラー等の豪華特別出演も見物。

If you are not familiar at the “Beat generation”, you can learn a lot and enjoy. But if you are, just try to enjoy to see the performances / interviews by Johnny Depp (Jack Kerouac ), Denis Hopper (William S. Burroughs), John Taturo (Allen Ginsberg), and with other celebrity people such as Lawrence Ferlinghetti, Michael McClure, Ken Kesey, Bob Dylan, Gary Snyder, Norman Mailer, David Amram, Ed Sanders, Jerry Garcia, Amiri Baraka and Philip Glass.

The Idiots - Idioterne
「イデイオッツ」 - ***1/2

02/19/01 (Please see English part below)

Directed and Written by :Lars Von Trier
Starring :Bodil Jørgensen、Jens Albinus、Anne Louise Hassing, etc
Official Sites :
Dogma 95 - #2JapaneseKoreanPolandSpain
Opened in US Spring 2000 in Japan March 2001, 日本劇場公開は2001年3月。

<ドグマ95>

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース=フォン=トリアー監督が、この作品の前、そして「奇跡の海」の後に作った、いわゆる「イデイオッツ3部作」と言われる3作品の真ん中に当たる1998年の作品。この作品は、「ダンサー…」のページでも少しお話した“ドグマ95”認定、第2作目の作品です。「ダンサー…」は、いわゆるハリウッド映画的な制作部分とドグマ95の規則の両方を取り入れた作品でしたが、こちらは純粋にドグマ手法のみ。ここで改めて“ドグマ95”について説明しておきましょう。

“ドグマ95”は、1995年コペンハーゲンにて結成。撮影技術やテクノロジーに寄りかかる事によって、プロットや登場人物の心の動きが映画作りの中心から疎外されていくことに反対する映画監督が作ったグループの名前です。以下の10か条を守って作られた映画には、“ドグマ95”からの認定証が発行されます。

The Vow of Chastity (純潔の誓い)

1.撮影はロケーション撮影のみ。小道具やセットを持ち込んではならない。
2.映画とは別のところで音を作り出してはならない。そしてまたその逆も同じ。
3.カメラは手持ちであること。手ではできない動きや静止についてはこの限りではない。
4.映画はカラーのみ。人工的な照明は認めない。
5.オプティカル処理やフィルターは禁止。
6.表面的なアクションは入れてはならない。(殺人、武器などが出てきてはならない)
7.時間的、地理的な乖離を認めない。
8.ジャンル映画(アクション、SFなど)は、これを認めない。
9.フィルムのフォーマットはアカデミー35mmにすること。
10.監督はクレジットに載せてはいけない。

私は以前から何度も書いている通り、技術や予算だけによりかかったハリウッド映画には否定的なヒトなので、“ドグマ95”のポリシー自体には賛成です。でも、こうも禁止・禁止ばかりだと、これにもちょっと(?)という感じがしてしまいます。まぁ、1、2、3、4、5、7くらいは分かる気もしますが、6とか8になると何だか文部省だか映倫だかが言っているセリフの様にも聞こえるし、9だとなんか規格規定みたいな感じがして個性の疎外のような気もします。10はねぇ、やっぱり監督の名前は入れるべきじゃないのかな?その作品の“クリエィティブ的責任を取る”という意味で。

私は今のところドグマ95の作品としては、1作目として認定された「セレブレーション」(トマス・ヴィンターベア監督)、2作目の「イデイオッツ」、そして3作目の「ミフネ」(ソーレン・クラウ・ヤコブセン監督)を観ています。(第4作目に当たるクリスチャン・レヴリング監督「キング・イズ・アライブ」は、日本では同じく2001年3月10日からの公開が決まっていますが、アメリカでの公開はまだ未定。5作目はジャン=マーク=バール監督の「ラヴァーズ」。こちらも東京国際映画祭でプレミア上映されていますが、アメリカでの公開は未定)
う〜ん、確かにこれらの作品でヘンに音楽なんか入っちゃっていたり、アップショットのカットバックなんか入ってたらどうなるんだろう…。全然違う話になっちゃいますよね。小道具についても、この「イデイオッツ」の中で壁に逆さまにかけられたお面が出てくるんですよ(お話には全然関係ないので、殆どの人が見逃していると思いますが)。コレがなんかけっこう自然でいいかなぁ、とは思いました(でも意外とわざと逆さまにかけてたりして ^_^;)。あと、冒頭にろうそくの光だけで撮影しているシーンがあるのですが、何かキューブリックの「バリーリンドン」っぽくって、そこはなかなか好きでした。(実は監督、けっこう意識してたんじゃないでしょうか)

まぁ、話が話であるだけに、これら手法は一見成功しているようにも見えます。でも、下手すると全部ワンパターンにみえちゃうんじゃないかなという懸念も。勿論「セレブレーション」も「イディオッツ」も「ミフネ」も、それぞれ監督の個性がよく出ていて全く違う作品に仕上がってはいます。でも、何となくどこか同じに見えちゃうんですよね〜。コレは危険だ。ドグマっていうのは、本来“教条主義”という意味でもあるわけだし。まぁ、実験的に何かをすることにはおおいに賛成なので、これから彼らの作品群がどうなっていくのかが楽しみですね。

<なぜ、“イデイオッツ”なのか?>


またまた今頃、ストーリーについて。ちなみにこのお話、ドフトエフスキーの「白痴」とは何の関係もありません。最初ビデオ屋さんで間違えて“The Idiot”と言ったら「黒澤明の?」と聞かれてしまいました(^_^;)。そう、こっちの方は“The Idiots”と複数なんです。
「イデイオッツ」というのは、イデイオッツを装って偽善者達を笑い飛ばす健常者(っていう言い方にも語弊がありますが)グループの名前。ここに、何か悩みを抱えているカレンという女性が加わるところからお話は始まります。
彼らはレストラン・プール・工場・家庭やそれぞれの職場でイデイオッツを演じ、人々の生半可な同情心を揶揄して玩ぶわけですが、そうするうちに段々と彼ら自身の抱えている心の病がクローズアップされてくる、とまぁこんな筋書き。それにしてもそのハチャメチャぶりは凄いです。アメリカ版でさえあんなに修正が入っているのだから、日本版では修正どころかカットもけっこうあるんじゃないでしょうか。
トリアー監督はこのシナリオを4日間で書き上げ、撮影はデジカメで即興を中心に撮影されたとか。いわずもがな、ドグマ95のドキュメンタリー・タッチな臨場感はバッチリ出ています。でも正直この映画は、その破天荒なタッチとあまりにも重いテーマが先に立ち過ぎて、肝心のドグマ95が目指す「プロット」や「登場人物の心の動き」がおざなりになっている気がするのです。

インタビューで、トリアー監督は「石器時代"白痴"は死ぬしがなかった。だから"白痴"になるっていうのは贅沢なんだよ。進歩の証でもある。"白痴"っていうのは未来の人間なんだ」「(“イディオッツ”は)確かに表面的には知的障害者とどのように接するべきか、私たちがいかに彼らに感謝しているかについての映画だけど、もうすこし深いところでは、異常さを擁護する作品でもある」とこの映画について語っています。そのお題目の意味はよくわかるんですけれど(なんかいかにも福祉先進国デンマークの人が言っているなぁとも聞こえますけどね)、やっぱり“お題目”にしか聞こえなかったなぁ。監督自身、本当に偽善者の域を越えているの?って・・・。
同じくドグマ95の「ミフネ」でも知的障害者の弟が主人公2人の心を癒す存在として登場しますが、やはりトリアー監督「イディオッツ」の前後作「奇跡の海」でも「ダンサー・イン・ザ・ダーク」でも、ヒロインは“ちょっと足りない人”=“ピュアな心を持った人”として描かれています。これについては本当に賛否両論あって、この部分を受け入れるかどうかで、トリアー監督の評価、ひいてはドグマ95全体に対する評価も分かれたりするんですよね(詳しくは「ダンサー…」のネタバレページでもう少し突っ込んで書く予定です)。

私は正直、この「イデイオッツ」を観るまで盲目的なまでにトリアー監督の大ファンでした。でも、この作品の“中途半端さ”を観てちょっと見方が変わったかもしれません。まぁ、最初から私は彼の“映像作り”や“演出力”に惚れていたので、その部分については今でもファンであることに変わりはありませんけれど。日本でも公開された「キングダム」、私はまだパート2までしか観ていませんが、もうぶっとびの世界ですよね。「ER」なんか○○くらえって感じで。日本では未公開の「Zentropa」も凄いです。こちらはジャーマン・ノアール的な雰囲気でまた全然違った感じなのですが…。
ある意味、この作品ではエミリー=ワトソンやビヨークの様な“女神の不在”が影を落としていたのかもしれません。カレン役のボディル=ヨアンセンは、取りあえずうまいんだけど、やっぱり華がなかった。華があれば映画の全てがカバーされるってわけでは勿論ないんですけどね。

う〜ん、この映画アメリカでもさっぱりヒットしませんでしたが、日本でもトリアー監督のファン以外は見ないでしょうね。まぁ、こういう“実験映画”の後に「ダンサー・イン・ザ・ダーク」という大作を作ったということを知る意味で、ビデオで観る分にはいい作品かもしれないですけれど(^_^;)。

I totally agree with that “Dogma 95”against Hollywood filmmaking, which depends on too much its technology and leaves focusing on the plots and the character’s internal journey. However, I don’t quite like the way they mostly require “NOT to do” listing. It’s so dogmatic and restricting their own freedom, isn’t it?
Anyway, in this “Dogma 95 - #2” film, it is working to show the chaos of their “idiotism”. But, on the contrally, I don’t think he made a success to show the plot (first of all) and the characterization of the film at all.

Dir Trier says this film is about tolerance towards “different people” and “being idiot” is being a future form of the human being. Yeah, maybe that’s true. But I couldn’t see that he crossed the line over from the “hypocrite people”, whom this film is making fun of. As the same question to “Breaking the Waves” or “Dancer in the Dark”, I still haven’t figured it out how I can see his position towards those “retarded people”, which doesn’t pull me off from being a fan of his filmmaking, though.

Anyhow, if this film had an Artemis or something like Emily Watson or Bejork, it would have been much different. Bodil Jørgensen, however, unfortunately couldn’t be the one.
And I think “Dogma 95”is , though it’s against his will, just not for him but even holding down his talent, which his next film, “Dance is the Dark” is clearly showing the proof.

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