"1941" - ***3/4
"From Here to Eternity" - 「地上より永遠に」***3/4
"Tora! Tora! Tora!" - 「トラ!トラ!トラ!」***3/4
ケーブルTVでたまたま放送されていたので観ちゃったんですけれど、途中電話がかかってきたりしたので、観てない部分も15分程…(^_^;)。
まずこの映画、真珠湾攻撃とは直接あまり関係がないのですね。真珠湾攻撃から6日後、大日本帝国陸軍が西海岸の田舎町をハリウッドと間違えて大騒動が起きるという話。
監督のスピルバーグは、『ジョーズ』『未知との遭遇』に続いてこの作品を発表。公開当時はけちょんけちょんに貶され、以来コメディは作らなくなったのだそうですが、この作品だけを独立させて観るとけっこう面白いです。確かに、前2作でファンになった人達にとっては、「なんじゃ。こりゃぁ???」という映画なのでしょうけれど(^_^;)。
まず何といっても、ルーカス監督『スター・ウォーズ』のオビワン=カノビ役を断ってこの映画に出演したという三船敏郎がピカ一です(もし、彼が当時『スター・ウォーズ』をOKしていたら、オビワン役はユアン=マグレガーではなく、アジア系の俳優が演じていたのにね〜(^_^;)。
悪いけど、やっぱり日本語をちゃんと話せないMAKOとは比べ物にならないですよ〜。三船敏郎の役がきちんとリスペクトされた役柄になっているのも、スピルバーグの三船敏郎に対する尊敬振りが如実に表れているし…。それにしても、あくまで日本語で喋る日本軍と、あくまでもドイツ語で喋るドイツ人将校のすれ違いも面白かった(^_^;)。
映画の全体はとにかくドタバタ。前2作があったからこそお金を使い捲くることの出来たスピルバーグのはちゃめちゃぶりが私にはかえって心地よいくらいでした。公開当時は日の目を見なくても、後に評価の上がる映画というのは数多くありますが、この作品もその一本なのではないでしょうか。
「地上(ここ)より永遠(とわ)に」- ***3/4 |
Directed by : Fred Zinnemann
Starring : Burt Lancaster, Montgomery Clift, Deborah Kerr, and Frank Sinatra.
NYタイムズの「パール・ハーバー」評に、「パール・ハーバー」は、この映画をパクっただけだと書いてありましたが、全くその通り…、いや質的には依然こっちの方がずっと上なので、パクった分、こちらの作品の方がずっと恥の上塗りかな?
50年代と言えば、朝鮮戦争の真っ最中で、レットパージの吹き荒れる時代。そんな時、なぜここまで真正面からアメリカ軍部を批判出来る映画を作ることが出来たのでしょうか?(しかも作品賞をはじめ、アカデミー賞全8部門を受賞しているし)私にはちょっと不思議でさえありました。
まぁ、話の中心は一応2組のカップルの恋の行方だから、かろうじてセーフだったのかな???それにしても、デボラ=カーの方は、かっこいい大人の恋ですね〜。有名な海辺のキスシーンは、一瞬だけど、やっぱりキレイ(う〜ん、劇場で観たかった)。あの時代で、あれだけ強気で複雑な女性像がヒロインをやっていられたんだなぁ。モンゴメリー=クリフトも、体育会系ながらかなり好感が持てたし、バート=ランカスターはジェームズ=ディーンの原形ですか???好みじゃないけど、やっぱり良かった。ドナ=リードは、なんかポーレット=ゴタードみたいな雰囲気プンプンでしたね〜。
で、2〜3年前フランク=シナトラが亡くなった時、繰り返しクリップで見せられた、彼のオスカー受賞パフォーマンス。あれは、演技というより愛敬ですね。いい味出してるわ。彼が歌手だなんて知らない人が観たら驚くに違いないです〜。
主役はやはり白人ばっかりで、アジア人が脇役でしか出てこなかったのは「パール・ハーバー」と同じだけど(あの時代、チャイニーズがバリバリのチャイナ服を着ていたのは本当なんだろうか???)、それでも、取り合えず出ていただけでも「パール・ハーバー」よりはマシですかね。
真珠湾攻撃のシーンは有ネガの使い回しばっかりで、そういった苦労にはなかなか泣けたけど、これぞ真珠湾攻撃を”背景”にした”ラブ・ロマンス・エピック映画”ですよ。「パール・ハーバー」のスタッフ達は、一体どこに目をつけてパクりの研究をしていたのでしょうね〜(^_^;)。
「トラ!トラ!トラ!」- ***3/4 |
Directed by : Richard Fleischer, Kinji Fukasaku, Toshio Masuda
Written by : Larry Forrester, Ryuzo Kikushima, Hideo Oguni
Starring : Martin Balsam, So Yamamura, Joseph Cotton, Tatsuya Mihashi,
Takahiro Tamura, Eijiro Tono, Shogo Shimada, Junya Usami, Kazuo Kitamura, etc.
前々から名前は聞いたことがあったものの、戦争映画はあまり観ない性質なのでこれまで 観ようなどとは思ったことのなかった映画。実際、この映画を観るまで「トラ!トラ!トラ!」の意味さえ知らなかった私です(念の為、「トラ!…」とは、“我、奇襲に成功せり”という日本軍の暗号でした)。
日本映画史上にとって、なぜこの映画が有名かと言えば、この映画が初の日米合作映画であるというよりも、当初日本側の監督に決まっていた黒沢明“降板のナゾ”でしょう。すでに絵コンテまで準備していた彼がこの映画を降りることになった理由には、仁侠映画ばかり作っていた当時の東映と黒沢明のウマが合わなかったからだとか、彼のノイローゼがすでに相当な状態にまで達していたからだとか(これは、保険会社への嘘という説もあり。この数年後、黒沢監督は、首や手首を数個所切って自殺未遂を図ることになります)、いろいろな説が囁かれていますが、真相は“藪の中”。
…と言った余談はさておき、黒沢降板の後を受けて日本側の監督を引き受けたのは、今をときめく(?)深作欣二監督と、舛田利雄監督。結局観ていて、どのシーンをどちらの監督が監督したのかは分からなかったのですが(おそらくスタジオ・セットの部分と、それ以外の部分で分担していたのだと思いますが)、キャストが良かったせいか、なかなか重厚な仕上がりになっていました。
まず、全体的な印象から言うと、この映画、前半1時間半は、“単なる歴史のお勉強の為に見て下さい”という感じ。特にアメリカ側の部分はつまらなかった。全然面白いキャラクターがいないもんで。やっぱりこ〜いう戦争モノには、一風変わったヒーローがいないとね〜。
一方、日本側のキャラクター、前半に関してはとても良かった。山本五十六役をやった山村聡は、このキャラクターの持つ、威厳・キレのよさ等の全てを兼ね備えていてGood。やっぱり70年代までの日本映画って好きだなぁ。役者が揃ってるって感じで。若き飛行士役を演じた田村高廣は、ありし日の三船敏郎を思わせる、かわゆさとワイルドさが同居した愛嬌でめっちゃ好感が持てました(う〜ん、彼にもあんなに若い時があったのですね)。それと、印象に残ったのが、真珠湾攻撃を計画した変わりモノを演じた俳優サン(名前不明)。このキャラクター、黒沢明のアイデアだったのかなぁ…と思わず勘ぐってしまう私なのでした。
この映画では、日米ほぼ半分半分ずつのエピソードが語られるのですが、アメリカ公開版は144分、日本公開版は155分だそうで(私の観たのはアメリカ・バージョン)、アメリカ版ではどの部分が削られていたのかなぁ、と思います。ま、とにかく真珠湾攻撃に至るまでの日米のすれ違いについては、随分と細かく描かれていますね。コレを観ると、「真珠湾攻撃は奇襲ではなかった」というのは、けっこうアメリカ国内でも事実として浸透してるのか???、と思ってしまいます。何だかんだでこの映画、公開当時はそれなりにヒットしたそうですから。
日本側に半分のプロダクションを持ちかけたということで、もともと親日的なプロジェクトだったのでしょう。「Jap」という言葉は使われても、「パール・ハーバー」で使われていた様な「Jap Sucker」という言葉は使われていません。前半登場する日本の米国大使も日本側で撮影されていた為、従来のステレオタイプ化した日本人としては描かれていませんし。これだけでも、この映画は十分に画期的な映画だと言うことが出来ると思います。
ちなみに、私が「パール・ハーバー」の感想に書いた様に、2001年版では、ハワイにハワイアンらしい人が全く出てこないのですが、この映画ではちゃ〜んと出て来ますよ。サトウキビ畑で働くハワイアン、そして軍のメッセンジャーにアジア人の男の子(おそらく日系人という設定)が出てきます。この2つのシーンに関しては、アメリカ側のシーンに入っているので、彼等がいかに「パール・ハーバー」と比べ、PC的(Politically Correct)に進んでいたかということが分かります。
そしてこの映画のハイライト、真珠湾攻撃。まず朝焼けの戦闘機離陸シーンは、戦争映画を美化することが大嫌いな私でも、うっとりしてしまう程の美しさ。実はこの映画、一切の特撮なしで作られているそうです。それでどうやって、あんな重厚な戦闘機や空母の映像が撮れるのでしょうか???コレでほんとに、制作費「パール・ハーバー」より安いの〜〜〜???
戦艦や戦闘機の爆撃シーンの迫力は、もうはっきり言って「パール・ハーバー」なんてモンじゃありません。ビデオで観てあのリアル感だったのだから、大画面で観たら一体、どんなんだったのでしょうか。ちなみにこの映画、今ではほぼ幻となった(?)70ミリで撮影されています。ってコトは、つくづく凄い迫力と映像のキレイさだったんでしょうね〜。コレでなぜ、今さら大枚叩いて「パール・ハーバー」を作る意味があったのか、と〜っても疑問の私です???これじゃぁ、CGのちゃちさと監督の拙さを見せつける以外の何モノでもなかった様な…(^_^;)。
2001年版「パール・ハーバー」が、映画をハッピー・エンド(?)にする為、東京襲撃をラストに持ってきたのに対し、この映画は、アメリカ版でもナント日本側の映像=山本五十六のアップで終わります。勿論、この先太平洋戦争がどの様な展開になるかを示唆しながら…。でも、コレって凄くないですか???当時のアメリカの懐の深さに驚いたというかなんというか…。この映画観て、改めて2001年版「パール・ハーバー」のちゃちさ&後進性を実感してしまいました。
ただし、あんなに盛り上がっていた日本側のキャラクターが、何の結末らしい結末もなく終わってしまったのは、やはり残念。やはり“歴史戦争映画”の枠を越えられなかったということでしょうか。
まぁ、コレを機会に眠っていた(?)この映画を観る人が増えてくれればな〜と思います(戦争映画はイヤですけれど)。う〜ん、こんな夢の様な日米合作映画が過去に作られていたんですね〜。「パール・ハーバー」でのルーズベルトのセリフじゃないけれど、“この世に不可能なコトはない”っていうことを証明してくれた、私にとってはまことにEncouragingな一作でありました。
---------------------------
Back to Film Index