*** Late Reviews - その他のレビュー 4***

このHP開設前に観た映画の感想や、
リバイバルやビデオで観た映画の感想などなど。
評価の最高数は5つ星です。

「Blood: The Last Vampire」
「三文役者」「巨人と玩具」「炎上」「鍵」
「ナビイの恋」「Helpless」「バトル・ロワイアル」
"Boy's Choir" - 「独立少年合唱団」***3/4

このページの壁紙はあゆみさんのHPから頂いた素材を使っています。

"Blood: The Last Vampire" ***
Jan 31, 02

昨今の国際映画祭で世界に注目されながら、なぜか日本では一部の人達にしか注目されない監督がいます。アニメ界の異端児という言葉も、今ではもう似合わなくなってしまった押井守監督がその人。彼がいわゆるアニメおたくではなく、アメリカの一般映画ファンにも知られる様になったのは全米で1995年に公開された『攻殻機動隊』からでしょう。これは、いわゆる一般館で相当のロングランを記録したと記憶しています。
その後2000年日本で公開された『人狼』は、1999年2月NYでプレミア(私はこの時、ジャパン・ソサエティで観ました)、1999年秋にはフランスで一般公開されるなど、海外での話題が先行。この作品は、脚本・製作としての参加で、監督としてではなかったのですが、“押井守ブランド”が筆頭に来て話題を集めていたのは、想像にかたくありません。
6年ぶりの監督作『AVALON』は、昨年のカンヌ映画祭でオフィシャル・セレクションに選ばれ、今月開催されたロッテルダム映画祭でも特別上映、すでにフランス、オランダ、ロシアなどでの一般公開が決定しているので、アメリカでの上映も時間の問題と言われています。

さて、前置きが長くなりましたが、この『BLOOD』、アメリカでは昨年の8月にNYなど一部の地域で数週間に渡って劇場公開されました。この作品も『人狼』と同じく、その監督は押井守氏ではないのですが、“押井塾監修”ということで、そのスタッフは『人狼』と殆ど全く同じ。海外では勿論、“押井ブランドのジャパニメーション”ということでウリに出された作品でした。
そうなんです。この作品、『人狼』とストーリー的には何の繋がりもないのですが、かなり似通ってる部分があるので、できれば一緒に観ることをお薦めします。まず、その時代背景が全く同じ。どちらも1960年代、日本にまだ(?)革命分子がいた頃のお話です。その背景にはベトナム戦争があり、日本の政治腐敗がまだ手の届く所にあり、若者はまだ“組織と革命”を信じていた…、そんな一昔前のむか〜し話。

…というワケで、『人狼』との繋がりでこの作品を観ると、なぜこの作品が1966年の米軍基地を舞台にしているのか分かると思うのですが、そうでないとかなり唐突な設定かも鴨。それにしても全長48分とはやっぱり短いですよね〜。なぜ主人公の女の子がただ一人の“オリジナル”なのかとか、なぜ秘密組織みたいなオジサン達と一緒に行動しているのかとか、謎は遂にナゾのままで終わってしまうし…(^_^;)。
ま、この作品はお話のディテールや成り行きよりも、その映像を楽しむモノなのだと言われてしまえばそれまでなんですけれど…。確かに部分的にCGを合成した映像、特に霧の部分なんか劇場で観たらずっごくキレイな映像だと思うんですけどね。けど、1時間以下ってのは、アクションの醍醐味から言ってもやっぱり短すぎると思う。

それに、このお話の設定。高橋留美子原作『人魚の森』シリーズにそっくりなんですよ。永遠の生命を持つコワイ女の子(闘う女の子ではないけれど)と人喰いの猛禽類。特に正体を現してからの怪物達の姿なんて、人魚に成り損ねた怪物達の姿形にそっくりで、もしアメリカだったらとっくに裁判沙汰だよな〜というくらい。こうした指摘をしてる人って、私が言わなくたってもう他にも沢山いるんじゃないかとは思いますが…。

それはともかく、これはこの話のラストにも絡むのですが、押井塾の面々だけでなく、いわゆる60年代に学生運動を経験して来た世代のクリエィター達とゆ〜のは、なぜこうもいまだに“革命”とかその“挫折感”を引きずっているのでしょうか???
私が押井監督の存在を意識し始めたのは、『うる星やつら』のTV版から。タイトルはもう思い出せないのですが、主人公あたるの母親が太平洋戦争(だったかな?)の悪夢の世界に入り込むというエピソードがあったのです。コレは子供心(って程幼かったワケでもないですが、何歳だったっけ?)に衝撃だったな〜。その前だったか後だったかに彼、やはり『うる星やつら』の映画版、ビューティフル・ドリーマーで独特の暗い世界(これが原作マンガとはまるっきり違う世界)を描いて一躍脚光を浴びたはずだったと記憶しています。アニメのクリエイター達が世間からは鼻つまみモノの人生を送って来たということは想像に難くありませんが、それにしても、このペシミティズムの深さはナマ半かなモノではありません。この辺り、実は同じ日に続けて観た
手塚治虫の『メトロポリス』でも全く同じモノを観た様な気がしたので、続きはそちらの方に書きま〜す。

「三文役者」「巨人と玩具」「炎上」「鍵」
Nov 25, 01

最近ず〜っとサボっていた日本映画評、忘れてしまわないうちに駆け足で(^_^;)。

<< By Player - 三文役者 >>

近代映画協会何周年目かの企画で作られた映画で、昨年のモントリオール映画祭正式出品作品。今年は確か新藤兼人監督も招いてジャパン・ソサエティで上映会があったと思います。私がこの映画を観た理由は、一重に私が荻野目慶子ファンだからに他ならないのですが…(^_^;)。

この映画は、戦後の名脇役:殿山泰司の生涯を通して近代映画協会の歴史をも紹介しています。前半は殆どが上映作品の紹介と撮影時のエピソード。私的に言うとそっちの方が面白かったので、後半ありがちな伝記モノになってしまったのはつまらなかったかな。
私も一応、『裸の島』がモスクワ映画祭でグランプリを獲ったくらいのことは知っていましたが、他の近代映画協会の作品は『愛妻物語』くらいしか知らなかったので、他作品の紹介とても興味深かったです。特に『鬼婆』や『悪者』あたりは、『もののけ姫』の実写版かと思うくらいで、是非ともスクリーンで全編を観てみたいなと思ってしまいました。

竹中直人については、この作品で日本アカデミー賞主演男優賞を獲得しているので、とても期待していたのですが、私自身、殿山泰司の人柄にあまり馴染みがなかったので、竹中氏のモノ真似が似ているのか似てないのかさっぱり分からなかったです。コレは、やはり私の知らなかったコメディアンの物真似を演じたジム=キャリーの『マン・オン・ザ・ムーン』と全く同じパターンですけれど、こちらの方が脚本が良かったのかずっとキャラクターにのめり込めた様な気がします。彼が(え〜と誰の真似だっけ?)似てるか似てないかなんて、結局私にとってはどうでも良かったのですから。
残念なことに、17歳から60歳近くまでの殿山第二夫人を演じた荻野目洋子もいまイチだったな〜。映画『皆月』やドラマ『蛍の宿』もそうだけど、皆、彼女の魔性の魅力を分かってない〜。何だか彼女最近“イージーなアバズレ役”みたいのがタイプキャスト化してしまってますね(T_T)。彼女、スキャンダル事件の前までは、思いっきりサラブレッド女優だったのに(彼女が薬師丸ひろ子、杉田かおると共に実力派新人女優3トリオの一人であったコトを知る人は少ないでしょう。私は彼女の歌う『南極物語』の主題歌&永瀬正敏の歌う『みゆき』&『泣き虫甲子園』の主題歌という3枚のシングルレコードを今も大事に取ってます(^_^;)。

まぁ、最後のインタビュー場面とかは興味深かったんですけどね。あ〜ゆうの、海外の映画祭で見せて果たしてウケたものなんでしょうか?今や海外では、殿山泰司より竹中直人の方が有名ですからね〜。竹中ファンでこの映画の事情を知らない人が観たら、”What’s wrong with Takenaka?”ってコトになっちゃうかも鴨…(^_^;)。

<< Giants and Toys – 巨人と玩具 >>

前から観よう観ようと思いつつ、中々観ることの出来なかった名作。昨年から今年も好評につき再上映されている増村保造レトロスペクティブの一作品でもあります。
いや〜、この作品1958年だなんて信じられない!50年代とはとても思えないススんだ内容になってます。勿論、開高健の原作が良かったのでしょう。けど、映画的にもとてもよく出来てマス。やっぱり1950年代、日本映画の水準ってホントに高かったのですね〜。つい先日、柳美里原作のTVドラマ『ルージュ』を観たのですが、コレって『巨人と玩具』と基本的には全く同じお話なのでびっくりしました。しかも、『巨人と玩具』の方がずっと社会風刺が効いているじゃないですか。
いわゆる現代のシンデレラを演じた野添ひとみって、やっぱり凄いんですね〜。スターになってからの彼女、マジで別の女優さんかと思ってしまいました。で、やはり演技している所は初めて見た川口浩(水曜スペシャルの探検隊長ですよね?)。当時はヤサ男とゆ〜か、あ〜ゆう細線系の男優がウケたのでしょうか。なんか不思議です。
え〜と、もう観たのが先週なので、最後どうなったのか忘れてしまいました(^_^;)。それにしても増村監督、『卍』とは全然違った映画を作っていたのですね〜。私は増村監督の作品というと、まだこの作品と『卍』くらいしか観ていないので、もっともっと観なくっちゃ〜〜〜。

<< Kon Ichikawa Retrospective – 市川崑レトロスペクティブ >>

同時テロ事件の影響で、結局2本しか観に行けませんでした。観たのは『炎上』と『鍵』。
『炎上』は、ご存知三島由紀夫の『金閣寺』を映画化したもの。…とは言っても原作の設定とは随分変えてあります。う〜ん、つまんなかった(^_^;)。コレは市川作品の好き嫌い以前というより、三島由紀夫作品の好き嫌いにも関係しているのかも鴨。前にリンカーン・センターで観たオペラ『金閣寺』も寝てた私ですから(^_^;)。でもアレは、一緒に観てた友達も途中退席しちゃったくらいだしなぁ。ま、この作品を皆さんが映像化したがる気持ちは分かりますけどね。ちなみに映画版の主演は、あの市川雷蔵氏。う〜ん、彼は好きですけど、やっぱりチャンバラ系の方が似合っているのでは???

その点、同じく文学作品を映像化したモノとして『鍵』はとても面白かった。元々私が谷崎潤一郎を好きとかいう話もあるし、市川崑と言えばやっぱりコメディの方がよくないですか???もう観てから3ヶ月近く経ってしまったので詳しくは思い出せないけれど、特に前半のフリーズ画面がいい。アメリカ人の知人曰く、市川監督初期作品の特徴はあのフリーズ画面なのですって?全然知らなかった私(^_^;)。
それにしても、京マチコのエッチぶりはやっぱり魅力的だし、仲代達也が若い!!!北林谷栄サンはいつも変わらないですね。叶順子って誰????

ともかく、モントリオール映画祭で観た『かぁちゃん』でかなりがっかりさせられた私ですが、60年代前後はやはり皆野心的な作品を手掛けていたのですね。う〜ん、『黒い十人の女』とか本当はすっごく観たい作品沢山あったんですけどね。またチャンスがあれば色々観てみたいと思います。

「ナビィの恋」「Helpless」「バトル・ロワイアル」
Aug 09, 01

え〜、ビデオでささっと観てしまった作品群。一言(?)評だけでも残しておきませう。

<ナビィの恋>

昨年度、日本では批評家達からかなりの評判を受け、NYでもジャパン・ソサエティで上映された作品だったので、けっこう期待していたのですが、う〜ん私的にはいまイチでした。コレって多分、スクリーンで観ていたら随分と印象が違っていたのでしょうけれど...。
確かに「ウンタマギルー」を10年以上前にパルコ劇場で観た時は衝撃だったけど、アレもお話全然ないですもんね。最近私が薦めてビデオでしぶしぶ観た友達は大して面白くないと言っていたし...。やっぱり劇場で観るべきだったか?

一言で言うと、コレはウチナンチュー・ミュージックビデオ。もう音楽のシーンがやたらと多すぎ(音楽監修マイケル=ナイマンだしな〜)。最初は良くても、そのうち私は飽きて来てしまいました(^_^;)。
NHKドラマ「ちゅらさん」ですっかりお馴染みになった“おばあ”こと平良とみサンは良いのですが、他のキャストがね〜。「Over Time」や「ラブ・コンプレックス」でお馴染みの西田尚美サンは、私には全然ダメでした〜。ぶりぶりっ、って感じで…。第一彼女のどこがウチナンチューなの???スタッフはけっこう一流の人が揃っていたので、絵の方はまぁきれいに撮れていましたが…。

う〜ん、前作の「パイナップル・ツアーズ」同様、凄くいいと評判だったんですけどね〜。でも「パイナップル…」の方は、洞口依子&利重剛という異色キャストだから、機会があれば是非観てみたいと思っています。

<Helpless>

「EUREKA」が大のお気に入りだった私として、そして黒沢清監督に強い影響を与えたというこの作品に対して、やっぱり期待が大きすぎたかな〜。「EUREKA」を最初に観てしまったのがダメですね。確かにこの映画を5年前に観たら、かなり新しくて衝撃的だったと思う。でも、やっぱり「EUREKA」の完成度を観てしまった私としては、この作品は「ただの過去作品」でしかなかった…。

浅野忠信は、まだ今ほど人気が出る前ですよね。確かにいい味出してます。でも、この映画でやっぱり一番良かったのは光石研!!!さすがのバイ・プレイヤーですね。“コレ系”の映画には、もうなくてはならない存在。むしろ浅野氏の役よりずっと味わい深い役柄だったような気さえしてしまいます。辻香緒里も、透明感が出ていてかなりイケていました。

青山監督は、この作品と「EUREKA」の間に全然違う系の映画をナント6作も撮っているんですよね。う〜ん、人間信じて突き進めば必ず報われる時が来るってヤツですか〜〜〜。

<バトル・ロワイアル>

先月ダウンタウンで“深作欣二レトロスペクティブ”が開催されていまして、“仁義なき戦いシリーズ”をはじめ、約20作前後の作品が上映されていました。で、最新作のこの作品も、しっかりその中に含まれていたんですよね。
私は結局この作品をスクリーンで観ることは出来なかったのですが、アメリカの観客は劇場でけっこう笑っていたのだそうで・・・。う〜〜〜ん、確かに。殺し合いもこれだけ派手にやられると、もう滑稽の域に入ってしまうかもしれませんね(^_^;)。

それにしてもこの映画、日本ではティーンの間でバカ受けだったとか???何か映画の内容よりもそっちの方がコワイな〜。アクション映画だって、自分達とはちょっと違う世界の人達の殺し合いならともかく、自分の隣りにいる友人達と殺し合うなんて…。

ビートたけしの役は、あまりにもタイプキャスト化し過ぎて別に…って感じだったし(最後に出てきたあの絵は、明らかに彼が描いたものですよね)、生徒達もな〜。安藤政信=中学生ってやっぱり無理ありません(^_^;)?あと、主役のあの男の子、何ていう名前だったんだろう。「独立少年合唱団」の藤間宇宙系ですね。女の子みた〜い。やっぱり今はフェミニン系が受けるのかな???
最近は、任侠系でない他のジャンルにこだわっているみたいな深作監督。確かにぐいぐいと見せる力は持っていると思うのですが、出来れば今度はピースな映画を作って欲しいです〜(何か、中野裕之監督みたいっすね(^_^;)。

"Boy's Choir"
「独立少年合唱団」- ***3/4
05/27/01 (The English version will come Soon)

Directed by : Akira Ogata, Written by : Kenji Aoki
Starring : Atsushi Ito, Sora Toma, Hiroyuki Kagawa, etc
Official Site :
Japanese

Since I saw the trailer at a theater in Japan, this’d been the Japanese film I’d wanted to see most at theater. Although this won the Alfred Bower award at Berlin last year, it never had a chance to be shown in NY. I wonder it’s because this film is produced by Sunset Cinema Works (too expensive???). Yes, this was a typical SCW kind of movie that you see the purely beautiful Japanese countryside view and those nostalgic, naïve, and innocent relationship of vulnerable people like them in M/OTHER or EIREKA.

The story takes place in a boy school, which is far from Tokyo in 1970s, when the student movements were almost close to the muddy ending. One of the main characters, is Seino, a teacher, who used to join the student army. It seems that the valuation towards Seino is divided by two, which depends on if you know the student movement at that time. For those people who know it as a real time event, what Seino says sound like hypocritical. Even for me, who know about it as a historical fact, sounded not much realistic. However, I kind of attracted by his acting (physically?), so it was OK.

It is mainly about two boys’ relationship, which subtly indicates they almost love each other. Although I didn’t think the screenplay was establishing enough of the relationship, I, nostalgically liked to see it.
Sora Toma, who did Yasuo was absolutely the key cast of if this film could be able to shoot. His “Saint” girlish face and voice must be so hard to find (BTW, he resembles Ryohei Matsuda, the son of Yusaku Matsuda, who did the mysterious young guy in “Gohatto” very much. I bet you get confused them, but he was too old for that role). Yes, he was perfect for Yasuo, but I just hope he won’t be a type cast actor in the future.
Atsushi Ito, whom I’d never seen before, was already famous of a big reality show in Japan. No wonder he never looked nervous to act (I don’t think he did a great job for the stammering scenes, though).

One of the interesting things to see this film is how the director visualize the “Choir scenes”, which what you usually see is people just stand and sing. The director, Ogata, who won the several new director’s awards as one of the oldest new directors, did unexpectedly a great job. I’d never imagined that a choir training would be such a physical one, which was really enjoyable to see. I wonder how much of it was the idea by the writer, who’s been working with the director for long time (was the writer belonged to a boy’s choir???) Although the end was not really worked out, I also liked the relationship with the girl and Michio.

Anyway, I heard that it took 5 years to finish this film (BTW, it was shot at Gumma prefecture where a lot of low but good independent films have been shot). I don’t know what is the next project of the director, Ogata, but I’m really looking forward to seeing his next film and still longing for seeing this movie again on screen in New York

昨年日本へ帰った時、劇場で予告編を観て「これは絶対劇場で観たい!」と思い、NYでの上映に向けていろいろと画策していたのですが、どうも中々難しそうな雲行きになって来たので、遂にビデオに走ってしまった「今一番劇場で観たかった日本映画」。
言わずもがな、この作品は昨年度のベルリン映画祭で新人賞に当たる、アルフレッド=バウアー賞を獲得しています。噂通り、この映画はもう「サンセット・シネマワークス製作」という匂いプンプンの(「ミラマックス製作の映画」が、どれも段々似通って来ているのと同じ様に)映画でした。でもね〜、けっこう私は好きでしたね、この作品。

時は70年代初頭。東京では学生運動も終わりに近付き、泥沼の様相を見せ初めていた頃の人里離れた全寮制の男子校が舞台。そこに転校してきたどもりの道夫と、まるで聖女の様な天使の声を持った康夫、そして二人が所属する合唱団の顧問・清野を中心に話が進んで行きます。清野は過去に学生運動の闘士であったという過去を持ち、その影が二人の生徒にもじわじわと忍び寄って行くという設定。

う〜〜ん、この辺りの「学生運動話」は、それを知っている世代の人と、知らない世代の人の間でかなり評価が分かれる様ですね。私はこの辺り、知識としては知っているけれど、感覚としては全く知らないので、知っている人達が清野のことを「偽善者」とか「リアリティがない」と言うのを聞いてもピンと来ないんですけれど。ただ、彼がしつこく「革命はない」とか「もう終わったんだ」なんてあっさり言っているのを聞くと、いや〜そういうセリフは今の時代に書いたセリフだからそう言えるんじゃないの?とか思ってしまいます。やっぱりあの時代の彼らは、たとえそういう予感があっても、なかなか口には出したくなかったんじゃないかな。だって、自分の青春を賭けて信じていたものを全て否定してしまうわけでしょう?例えそれが、おろかで間違った考えであったとしても。
そういった意味で、清野役を演じた香川照之の評価はけっこう分かれる様です。私にはノープロブレムでしたけどね。でも、女闘士役の滝沢京子はちょっと現代的っぽすぎた様な。 岡本喜八や泉谷しげるの特別出演は、かなり時代を70年代に引き戻してくれましたが(^_^;)。やっぱいい味出してるわ、特に泉谷しげる。それといつものごとく、光石研は、ほんのちょい役でも印象的だ〜。

そしてやっぱり、この物語は何を隠そう(?)道夫と康夫の物語。脚本的には、二人がどうして仲良くなるのかという過程や、道夫のどもりがなくなっていく過程等、重要な部分のプロセスがいまイチ足りないので、不満といえばかなり不満なのですが、ビジュアル的にはけっこう良かったな〜。
まず、康夫役の藤間宇宙。噂通り、松田龍平クンにそっくりだ〜。あれは、外国人には絶対見分けがつきませんね(^_^;)。いや、やっぱりいい味出してます。言うまでもなく、彼の存在がなければこの映画は成り立たなかったでしょう。それから、主役の伊藤敦史クンも良かった(どもりのシーンは下手だったけど)。何でもバラエティ番組ですでに有名は子役なんだそうで、演技も慣れまくりって感じでした。
この二人の何とも微妙な関係がいいっすね〜。私は基本的に、男同士の友情モノはすごく好きなたちなので、それだけでこの映画の評価が高くなってしまいます(^_^;)。

そして勿論タイトル通り、この映画には合唱のシーンがたくさん出て来ます。驚いたのは、ただ突っ立って歌っているだけの“合唱”も、これだけビジュアル的にバリエーション付けて撮影することが出来るんだってこと。緒方監督、とても新人とは思えない様な巧みな撮り方を随分としていました。
あと、合唱部っていうのも、目標が高いと随分体育会系みたいな部活になるんですね。私、高校の時は吹奏学部にいたのですが、あそこまで腹筋とか呼吸の特訓しなかったもんな〜。
近所の女子高との合同訓練シーンは、けっこうときめいてしまいましたよ。終わり方がいまイチなんで、残念だったですけれど。

とにかく、このサンセット・シネマワークスの匂いぷんぷんの、“美しい日本の原風景ショット”や、なにげに中学&高校時代のノスタルジーに浸りたい人(合唱曲「大地の歌」なんか、中学校で歌ったりしませんでしたか〜?)には、出来れば劇場で鑑賞することをお薦めの映画。
脚本的にあまりまとまりがなかったので、やはり同じ仙頭プロデユーサーの「EUREKA」みたいに最後のテンポを早くしてくれたら、もっと好きな映画になっていたかもしれません。さてさて40歳の新人・緒方監督、次はどんな映画を見せてくれるのやら…。

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