*** Late Reviews - その他のレビュー 3***

このHP開設前に観た映画の感想や、
リバイバルやビデオで観た映画の感想などなど。
評価の最高数は5つ星です。

"Dust in the Wind" - 「戀戀風塵」****1/4
"Hong Kong 1941" - 「風の輝く朝に」****1/4

このページの壁紙はあゆみさんのHPから頂いた素材を使っています。

"Dust in the Wind"
戀戀風塵 - Lianlian fengchen
「恋恋風塵」- ****1/4
May 15, 01

Directed by : Hsiao-hsien Hou, Witten by : T'ien-wen Chu, Nien-Jen Wu
Starring : Tianlu Li, Jingwen Wang, Shufen Xin

今年は、候孝賢監督3年ぶりの新作「Millennium Mambo」(邦題…?)が完成したこともあり、ここNYではコロンビア大学主催の映画上映会が催されたり、先週から今週にかけてダウンタウンにあるScreening Roomにて、候監督の代表作レトロスペクティブが開催されたりしています。
私は「風櫃の少年」以降全ての候監督作品を観ていますが、中でも一番のお気に入りは何と言っても「非情城市」(“The City of Sadness” / 1989)。コレは、日本初公開時はもちろんのこと、こちらへ来てからも学校のクラスを初め何度かスクリーンで観ています。次に好きな作品は「童年往時」(”The Time to Live, The Time to Die” / 1985)。これは最初に観たのは劇場ででしたが、その後ビデオで何回か観ています。
そしてその次に好きなのが、これら二作品の間に作られた「戀戀風塵」(1987)なのですが、この作品、ナント10年以上前に観たっきりその後一度も観ていなかったので、殆ど詳細を忘れてしまっていました。

お話は、何の変哲もない若い男女の初恋物語。中学から幼馴染みだった二人が田舎から台北に出てきて…という、殆ど何もおこらない日常をひたすら淡々と描いていきます。
まず冒頭、何だか分からない点がトンネルの穴となって美しい景色が開けてゆく。この映画の大半は台北で撮影されていますが、だからこそこの郊外のわずかなシーンが引き立って見えるのかも。印象としては、台北以外のシーンの方がずっと心に残っています。
そしてあくまでも感情を抑えた若い二人。特にヒロインの辛樹芬はいいなぁ〜〜〜。同性の私が見てもそそられてしまうのだから、男性が見たらたまらない魅力をふりまいているのでしょうね。ああいう女の子に、そっけなく接する正晶文がまたイイ。特にバイクを盗まれるシーンでの二人のリアクションは、実にリアル。ああいう繊細な部分って、アメリカ人にはピンとこないらしいけれど、日本人にはビンビンに伝わるな〜〜〜。
そして、意外にもこの作品が映画初出演だという祖父役の李天祿。以後、候監督の作品にはなくてはならない存在となっていきます。う〜〜〜ん、彼のシーンってお話の展開には何の重要性もないのに、一番心に残ってしまいますね。幼い孫にご飯を食べさせようとするシーン、あそこはアメリカ人の観客にもバカ受けでした。それと、孫を徴兵に送り出す日、むやみやたらに爆竹を鳴らしたり…(ろうそくと間違えて爆竹に火をつけてしまったエピソードから続いて来ているんですよね)。ラストのインパクトについては、もう言うまでもありません。

実は意外にも、一度目に観た時から一番鮮明に覚えていたのが後半の難民のエピソード。あのお饅頭のシーンは、当時まだ中国・香港・台湾の関係、そして台湾政府のしてきたことを全く知らなかった私にとっては、衝撃のシーンでした。考えてみれば、台湾の歴史と言えば国民党のことくらいしか学校で習わない私達日本人にとって、候孝賢の映画は台湾の現代史を学ぶ上で、めちゃくちゃ役に立っていると言えるでしょう。それは、ひとえに候監督の脚本を手掛ける呉念眞や朱天文のお陰なのですが、どちらかと言えば歴史劇に焦点の当たった「非情城市」や「童年往時」、「戯夢人生」と比べ、人間関係の細やかな部分を中心に描くこの作品は別の面で彼等の本領を発揮した作品と言うこともできますね(特に、このお話は呉念眞や朱天文二人の実体験が随分基になっているのだとか)。

個人的には、新しい試みを色々やってみている最近の作品よりも、この作品前後の候作品の方が好きな私。果たして新作「Millennium Mambo」はどんな作品に仕上がっているのでしょうか???
ちなみに、この作品と同時に今年カンヌ映画祭のコンペ入りを果たした、同じく台湾出身・蔡明亮のレトロスペクティブが来月末からリンカーン・センターで始まります。これらの企画はもう数か月前から決まっていたのですが、ってことはこの2人、カンヌにはもう随分前から当確だったのでしょうね。日本の三監督も負けるな〜〜〜。

"Hong Kong 1941"
等待黎明 - Dang doi lai ming
「風の輝く朝に」 - ****1/4

Feb 10, 01 (Please see the English part below)

Directed by : Leong Po-Chih (梁普智)、Written by :John Chan (陳冠中)、Hong Kong, 1984
Starring :Chow Yun-Fat (周潤發)、 Yip Tung (Cecilia Yip/葉童)、Alex Man (萬梓良)
Available both on video and DVD – ビデオ&DVD発売中

日本での公開は確か80年代の終わり、高田馬場パラスの二本立て上映を観てきた友人が「コレは凄い映画だ!!!」と興奮して語っていたことを今でも鮮明に覚えています。それからナント10年あまり。念願叶ってや〜っと観る事が出来ました。 観終って…「う〜〜〜ん、あの時映画館で観れば良かったぁぁぁ!!!」

英語のタイトルを見ればわかる通り、場所は香港、時は1941年。お話は、いまをときめくチョウ=ユンファ扮するフェイ、子分思いの熱血漢カン、そしてカンの恋人ナンのトライアングル・ラブストーリー。
密航脱出に失敗したフェイは、日雇い労働の荷物運びをするうち米をヤミに横流ししているカンと出会い、その恋人米問屋の娘ナンと3人で再び国外脱出を計画。ところがその夜ナンの家は米騒動に合い、やがて日本軍が攻め入って来る…。

この映画は80年代後半のいわゆる“教科書問題”(文部省が検定で歴史の教科書の記述「日本軍の侵略」を「進出」に書き直させたり「南京大虐殺」の項目を削除したりしたことによって、中国・韓国その他アジア・太平洋諸国の反感を招き、国際問題にまで発展したこと。詳しくは“家永裁判”や“高嶋教科書裁判”辺りを調べてみて下さい)以前につくられた映画で、80年代後半以降に作られた中国・香港・台湾・そしてハリウッド映画と比べると、かなりサラリと日本軍の横暴ぶりを描いています。それでも、日本軍の軍人がやたらと刀で香港の人達の首を切ってみたり、あの有名な赤ん坊を放り投げて日本刀で串刺しにする写真が登場したり(この部分は日本版ではカットされているらしいですが、同じく鶏をほおり投げて2つに切り裂くシーンは出てきます)、当時ここまで描いていた人がすでにいたんだなぁ、と今更ながらちょっと感心。
日本人役でまともな日本語を喋っている人が全くいなかったのは、ちょっと悲しかったですけどね(^_^;)。

でも、この映画の中心はあくまでも男同士の友情と切ない恋の行方。はっきり言って、この映画はラブストーリーを観たい女の人にもかなりお薦めです。なんかこう、ささやかな“触れ合い”をきゅ〜んと描いているんですよね。ちょっと手が触れたりとか、目線が合ったりだとかの緊張感がよく出てる。ナンが疲れて眠ってしまう時、思わずフェイの肩に寄り添ってしまうのだけれども、それをフェイがカンの方にそっと向けてあげたりとかね。そういう細かい部分がとても印象に残る映画です。それにしても、さすがチョウ=ユンファ。ナンにキスされた時、直立不動になってて「ありゃ〜、これがチョウ=ユンファ???」、と思いきや、後にキスし返す時の彼は、しっかりチョウ=ユンファしてました(^_^;)。いや、しかし17年前の彼、若いっす。
ナン役のセリナ=イップは、全くの美人タイプではないのですが、チョウ=ユンファの想われ人として納得の魅力を振り撒いていましたよ。色気もなければ、清楚ってワケでもないし、何なんでしょうね〜、あの魅力は。やっぱり演出の妙だったのかな???
アレックス=マンは、どっかで見たことあるなぁと思っていたら、ウォン=カーウァイ監督の「いますぐ抱きしめたい」に出てたんですね。言ってみればティピカルなチンピラ役で、チョウ=ユンファとの友情も新しさなんて全然ないんですが、彼の魅力で救われてたところが大きかった気がします。

ちなみにこの映画の監督さんは、日本ではつい先日公開されたジュード=ロウ主演「クロコダイルの涙」(アメリカでのビデオタイトルは「IMMORTALITY」)のレオン=ポーチ。「風の輝く朝に」で国際的に飛躍した彼は、1991年ジョン=ローンと組んで「上海1920」というハリウッド映画の監督もしています(これもやっぱり友情モノらしいのですが)。
なんかこの「風の輝く朝に」、いい意味で香港映画って感じが全然しないんですよね。どちらかと言えば台湾映画に近い雰囲気。レオン=ポーチのハリウッド進出はジョン=ウーよりず〜っと早いものの、アクション映画じゃないからあまり表に出てくることがなかったのでしょうか?
う〜ん、まだまだ観たいけど観ていない映画、世の中にはた〜くさんありますね〜〜〜。やっと一つ観終わったと思ったら、付随してさらに同じ監督の映画が観たくなるという…、こっ、これは芋づる式だぁぁぁん(T_T)。

If you haven’t seen this film yet, you’ve missed one of the greatest Hong Kong films ever made. Yeah, staring Yun-Fat Chow and directed by Po-Chih Leong (the director of “Shanghai 1920” and “Immortality”)… Don’t you think only those things make you rush to see it?

As you see the English title, it takes in Hong Kong 1941, when Japanese army started invading all over Asia. Fay (Yun-Fat Chaw), his friend Kan (Alex Man), and Kan’s girlfriend Nan (Celina Yip) dream about going to San Francisco, but the Japanese army broke into HK around the day when they were planning to leave HK.

In the end of the 80’s you can find a lot of films in which you can see what the Japanese army have done in Asia such as in “Empire of the Sun”, “The Last Emperor”, films by Hsiao-hsien Hou, and other Asian films. But I think this is one of the first films made depicted about Japanese army in the 40’s besides Chinese or Korean films made right after the war.

However, this is not a resistance film but basically a triangle love story. Since Nan has been Kan’s girlfriend for long time, although Fay was falling in love with Nan (and so she was), he hesitates even touching her. There are bunch of memorable scenes, which shows subtle exchange of their hearts, which I loved.

Celina Yip doesn’t looks like the YOUNG CUTIE Yun-Fat Chaw’s love by picture, but it totally makes sense in this film. Wonder if it was the director’s job or Chaw’s…
Though the friendship bet Fay and Kan was so typical and nothing new, the charm of Alex Man saved the part.

Anyway, for me this film looks so far from a typical Hong Kong film and even closes to a Taiwanese film. Since I haven’t seen his other films (he actually made a Hollywood film much earlier than John Woo did), I’m very curious to see his others. Gee… I thought I’ve just reduced one film from my “must see list”, but the fact is… I add two more films (“Shanghai 1920” and “Immortality”) on the list (^_^;)

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