<<ランド・オブ・プレンティ ****>>
Mar 14, 06 下高井戸シネマにて
『クラッシュ』と同じく、911後のアメリカをテーマにした映画は数あれど、これは意外に”当たり”の作品でした。叔父役のベトナム戦争に絡むくだりや彼女の生い立ち、ストーリー展開やオチ、ラストシーン等は正直言って”ダサイ”の一言に尽きるし、主人公2人がアメリカ人という設定であるにもかかわらず、観ていて「あ〜やっぱりヴェンダースって全然アメリカ人じゃない(=アメリカ人を描けない)のね〜」とか思ってしまうのですが、やはり”アメリカ人”じゃない私には、アメリカ人じゃないがゆえの、アメリカに対する歯痒さを伴う切実な祈りみたいなモンが痛いほどよく分かるんですよね〜。
その辺り、やはりアメリカ生まれではないポール・ハギスの祈りとヴェンダースの想いは基本的には同じだと思うのですが、アメリカ人生活とゆ〜日常のリアリティレベル”だけ”が、アメリカにおける『クラッシュ』とこの作品との評価を分けたのではないかと私は思っています。次の作品では、さらにさらにアメリカというモノ(ヒト単位でのアメリカ社会)の奥にまで切り込んでいるのかな〜。でもどこかでやっぱり一線を画しているのじゃないかと密かに思っている私です(^_^;
<<GITOMO ****>>
Mar 09. 06 ストックホルムZita劇場にて
スウェーデンで観たスウェーデン監督によるドキュメンタリー。途中に入るスウェーデン語のナレーションはまるっきり分からなかったけど、インタビューの殆どが英語で行われていたので、おそらく90%以上は理解出来たのではないかと…。
ことの発端は911の直後、中東系のスウェーデン人がアメリカに留学した際突然逮捕され、グアンタナモ基地に拘留されたこと。これを機に監督はジャーナリストとして直接グアンタナモ基地を訪れます。グアンタナモ基地は最も公に開かれた基地として誰でも1泊12ドル出せば泊まることが出来るのです。ところが、アブグレイブ刑務所の事実が報じられるようになった頃から、グアンタナモでも同じようなスキャンダルが発覚。監督はクビになったりやめさせられたりした元軍人を追っていきます。前半のインタビューは、アグブレイブ後では決して撮れなかったもので(後に彼らは調査委員会の公聴会に出席しています)、これぞ時間をかけたドキュメンタリーの醍醐味という感じ。日本での一般公開は難しいと思うけど、一人でも多くの人達に観てほしい作品です。
<<TSOTSI ****1/2>>
Mar 08, 06 ストックホルムsaga劇場にて
3日前にアカデミー外国語映画賞を受賞したということで観てみました。いや〜パワフルな映画です。最初の10分からして凄い。スピーディな展開に、力強い映像&サウンド。これはインパクトあるわ〜。
で、途中から(若い母親との やり取り)辺りからソフトになっていくのね。さまざまなキャラが描かれた群像劇も見事。そして何よりラストの終わり方が好きでした。想像してるのと違ってたしね。赤ん坊の父親役も主人公以上にGOOD。単に”南アフリカ版『シティ.オブ.ゴッド』”というだけでは片付けられないモノがありました。
<<Efter Brylluppet (after wedding) ***1/2>>
Mar 07, 06 コペンハーゲンdogma劇場にて
コペンハーゲンの中心部にある5つ程の劇場全てで上映されていたこと、そしてポスターにやたらと批評家の五つ星マークが付いていたので観てみました。
いきなりインドのスラム街から始まるこの映画、始まって30分くらいして「あれ?こういう映画観たことある」とゆ〜ことに気が付きました。そう、去年のSKIPシティ映画祭でグランプリを取った『BROTHER』。どちらも長い海外生活を終えた主人公が本国に帰ることから、帰った先の家族が崩壊し始めるというもの。後で調べたら、やはり同じ監督でした。最近出版された「デンマークの映画監督」という本の表紙を飾っている人なので、こっちではかなり有名な監督なんだと思います。
役者は皆よかった。言葉は分からなくとも、その演技だけで何が起こっているのか分かったし…好みではないけれど、よく出来てる映画だと思います。あまりにもマイナーな話題なので、日本で興業に乗ることはないと思いますが…
<<ブロークバック・マウンテン ****3/4>>
Mar 05, 06 ブリュッセルUGCシネマにて
いや〜神様が降りてます、この映画。何だろう、何処がいいとか、細かいことはど〜でもよくなるくらい全てのショットに何かが宿っていました。映画ってこ〜ゆ〜時ホント不思議。何もかもがうまく撮れている時は撮影監督がうまかったとか、演出がよかったとか、役者が絶好調だったとか、部分部分の良さよりも、とにかくその全体のハーモニーが問題なのです。
とにかく切なかった。女性によって描かれたゲイストーリーだろうが、60年代カウボーイの話だろうが、監督が台湾人だろうがおかまいなし。時代・地域・性別を越えた普遍的な恋愛の切なさが丁寧に描かれていた。もぉ、それだけでい〜のです。よい映画でした。
普段は大の苦手なヒース・レジャー最高。もともと気になるギレンは言うまでもなし。妻たち、親たちもホントよかったね〜。台湾出身のアン・リーにどうしてあんなにも”アメリカ”が描けたのか。それは勿論プロデュサーであるJシェイマスとMハウスマンの力が大きいのでしょうけれど、結局オスカーを獲得した『クラッシュ』も、カナダ人監督による”アメリカ”だし、今裏の(=本当の)アメリカを描けるのは、アメリカに移り住んで来た非アメリカ人なのでありますね。
<<Celibataires **>>
Mar 04, 06 パリUGCにて
とにかく私はフランス語がまるで分からないので、ベタで分かりやす〜い大衆映画を観ようと思っていました。どっちかと言うと、作品そのものを観たいというより、大衆映画を通して今の若い人達のトレンドを見たかったし、そ〜ゆ〜映画を観にくる若者や彼らの反応の方に興味があったから。『オーケストラシート』が満席で観られなかったのは残念だったけど、そ〜ゆ〜意味ではこの映画もパーフェクトなものでした。
主役兼監督は、フランスですでに人気を確立している役者さんらしく、彼がプロポーズをしようと思っていた彼女に振られる所から物語は始まります。彼には歯医者やカメラマンの男友達といつも同じカフェに集まる女友達が一人います。元カノを取り戻す為に彼女に相談したりするのは、ラストがバレバレのお約束パターン。それでも途中の会話が面白いのでしょう。劇場中が笑いの渦に(最後のクレジットに"script doctore"とゆ〜のがあったので複数の人間によって相当推敲されているはず)
・・・にしてもベタな展開。パリを舞台にした昔ながらの青春グラフティといった感じです。結局分かった台詞は、皆のよく行くカフェで「ココもすしバーにすればもっと流行るんじゃない」「すいません。サケ!」という所だけ。それにしても、途中のインド式結婚式をぶち壊すシーンは少しやり過ぎだったのでは???
途中は相当古臭かったけど、最後パリで恋人達が歩くシーンはやっぱりサマになってました。デート映画にはぴったりだね〜(^^)
<<Le Soleil 太陽 ****>>
Mar 02,06 パリmk2にて
コレって日本で公開出来るのかしらん(後日、日本での公開が決定したと聞きました)。ホント、天皇をおちょくってるえ〜がなのです。おそらく“愛らしきもの”として作った人達はそんなに否定的に見ているわけじゃないのでしょうけれど、天皇にそれなりの思い入れがある人達が観たら切ないor怒りが込み上げるのどちらかだと思う・・・にしてもこの映画、海外の映画館で観るとまた違った見方が出来ますよ。日本じゃ笑えないような部分、海外だと皆かまわず大爆笑しているのですから(^^;)
それにつけてもソクーロフと尾形イッセーという異色のコンビ。いや〜素晴らしいです。天皇の顔やクセを真似られる俳優さんは他にもいるでしょうが、彼だからこその人間らしい味が出ていましたね。ソクーロフの演出もスゴイ。その映像美については言うまでもなく、海外の監督が日本を描く時の“なんちゃってさ”がないんですよ。勿論それは日本人監督の描くそれとは全く違うのだけれども、うさん臭くもないし、彼独特の世界観も貫かれていました。
彼がまたロシア人という第三者であったことも大きいと思います。アメリカ人が描いたらこうは描けないだろうし、コレを観る一般アメリカ人の反応もめちゃめちゃ興味がある所。(第一、殆どのアメリカ人がヒロヒトをヒトラーと同等の鬼畜だと思ってるんですから、あんな映画見せられたらけっこうビックリすると思う)。マッカーサーとのやり取りもオカシイ。
う〜ん、コレを日本人が日本で観ると、なかなか冷静には観られないのでしょうけれど、どんな観点で観るにせよ、コレはやっぱり日本人必見の映画でありまする。
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