評価の満点は5つ星です。
July 10, 2004 下高井戸シネマにて
久々に、体の内側から涙の突き上げて来る様な映画を観ました。私自身、『アフガン零年』や『父、帰る』を押しのけて、どうしてこの作品が今年のアカデミー賞外国語映画賞を獲得したのかどうも納得出来ない部分があったので、まずは作品をみなくっちゃという意気込みで見に行ったわけであります。う〜ん、確かにオープニングシーンの長回しからして、よく出来てる映画だな〜と思いました。911を含むアメリカの“野蛮な”の歴史を、皮肉っぽく折り込んでいる所もウマイし、フレンチ・カナダというちょっとひねった視点から、なおかつ普遍的な60〜70年代を語っている所も、アカデミー会員の心を大いにくすぐったに違いありません。
けどね〜、これだけ世界の『野蛮な歴史』(この映画の原題の意味は“蛮族の侵略”)、すなわち多くの人々が不本意な形で悲惨に死んでいった歴史を語っておきながら(すなわちそれが、主人公の教授としてのテーマだった)、金さえあれば結局自分だけは安らかに逝くみたいな結末が、安楽死なんかど〜考えても出来そうもないビンボーの私にはちょっと腹立たしかったです。ある意味「死」がキレー過ぎるんですよね。それはそれで、映画としてはキレーに観られるけれど、それって映画の中でテーマの様に語られている“野蛮行為による不本意で悲惨な死”とまっこうから矛盾してるでないの〜、とか思ってしまったのは私だけでしょうか???
June 26, 2004 シネリーブル池袋にて
実際、フェルメールには殆ど興味のない私ですが、フェルメール役のコリン=ファースが今最も好きな俳優の一人なのでやっぱ観に行ってしまいました(^_^;)。う〜ん、思ったよりは彼の魅力があまり出ていなくってちょっとがっかり。スカーレット・ヨハンソンも、あの奥方役の女優さんもそれなりに良かったんですけどね。終わりがすんごくあっけないんだよなぁ〜。確かに撮影や美術は凝っているんですけどね。あの暗さはやっぱり真っ暗な映画館の中でしか共有出来ない様に思います。
それにしても、あの絵の題名って『青いターバンの少女』じゃなかったっけ???確かマンガ『ギャラリー・フェイク』の中にあの絵にまつわるエピソードがありましたよね???
June 26, 2004 新宿東急にて
取り立ててハリポタファンとゆ〜ワケではないのですが、1・2作目としっかり観て来たモノとして思わず初日に観に行ってしまいました。それと私って今回のみ監督の務めを果たしたアルフォンソ=キョアロン監督のコト、『大いなる遺産』以来の大ファンなんですよね〜。…なので、全体的な雰囲気は前2作よりもずっと好きでした。とにかく暗〜〜〜い(^_^;)。それに、今回はもぉ〜完璧に主役の3人が“コドモ”ではなくなってしまっているので、やはりコドモ映画お得意のクリス・コロンバス監督の映画ではあり得ないっすよ。この選択はかなり正解だったと思います。
前作より引き続き、ハリーをオミソにしたロンとハーマイオニーの関係もますますビミョ〜になって来て、これからがますます楽しみ。それにしても今回はロンの出番少なかったなぁぁぁぁ。
Jun 19, 04 新宿文化シネマにて
言わずと知れた実話の映画化。その真相がまだ殆ど明らかになっていないだけに、大胆な脚色!!!いやはや、それにしても韓国の映画人達って〜のはどうしてこうも実話の映画化が得意なのでせうか。とにかく感嘆。
まず第一に、この映画が60年代後半〜70年代初頭を描いていながら、テーマの本筋が実は“いまだに残る”韓国の保守体質を思いっきり批判しているということ。上層部一部の人間が、下方の人間達を虫けらの様に見殺しにする…。コレを描きたいが為に、おそらくやり過ぎるくらいに実尾島にいた両者(特殊部隊も、空軍兵達も)をヒーロー的に描いているのですが、それはそれでふっ切って、思いっきりのアクション映画に仕立ててしまった所がさすがのカン・ウソク監督。前作『公共の敵』でも描いていたバッリバリの男の世界を思う存分描いておりました。
それにしても、今の韓国映画ブームの影響でか劇場には男女の若いカップルが多かった!映画を観終わって皆の眼が腫れているのを見ると、歴史や国境を隔てても、誰にでも感じられるモノは確かに存在するのだと、ちょっぴり希望を持った私なのでした。
June 17, 04 ヴァージンシネマ六本木にて
映画としては「なんだかな〜」の出来でしたが、なにしろキャストが豪華・豪華。ほんとにちょっとしか出てこないキャラに至るまで、こまい所にいろいろ出てましたね〜。井口昇カントクとか、手塚とおるキャラおいし過ぎ。
そして何といっても、サトエリ&実日子&村淳のコンビが最高。あの三人の今後を観たいだけの為に続編を期待さえしてしまうほど。実は主役がオミソになるという三角関係は、まさにハリーポッターのそれでして、コレって今世紀の新しいパターンなのかしらん???
ただ「CASHAAN」もそうだったけど、この二作品は60年代のアニメを観て育ったオタク世代の語る"愛"ってモンが、いかにバーチャルで血肉を持たないかってゆ〜のを如実に見せつけてくれてる代表的な作品だよなぁと思ってしまいます。
いわゆる"全共闘世代"が、戦後世代の泥と血と汗をひきずってもがきながら語ってた"愛"や"平和"を、その子供達はバーチャルな紙やプラウン管を通してでしか受け継いでいないんだモンね。だったら紀利谷カントクも庵野カントクも最初から、ただのバーチャル・オタクに徹して欲しかったと思ってしまうのです。取って付けたよ〜な紙っぺらの"愛"や"平和"はよけいだったってコトで・・・。
Jun 05, 04 韓国:大学路トンスンシネマテックにて
ソウルの恵化駅近く、スーパーの地下にある“映画オタク”的劇場で観ました。日本で言えば、ユーロスペースかシブヤシネマソサエティみたいな所でしょうか。劇場に併設して映画オタクご用達のシネマショップもありました。
初日に観に行ったので、男女のカップルで満席。ただし、事前にシートが予約出来るので、皆映画の始まる直前にダダーっと来て、クレジットが出た途端サーっといなくなってた(^_^;)。
さてさて、本編について。『猟奇的な彼女』と同じ監督&主演女優とあって、映画の雰囲気は前作そのもの。いや、完璧にチョン・ジェヒョンのアイドル映画ですよ。もぉ、とにかくカワイイカワイイ。台詞は、私の韓国語レベルでは、「僕は先生です」ってのと「僕は風だ」くらいしか分からなかったのですが、もぉ、映像を観ていればストーリーの全てが読めてしまうわっかり易いお話。
ただ、映画の後半少しクライマックスに入った所でX-JAPANの歌がかかるのですよ。ココは一番の泣きのシーンなんだけど、歌詞は全編日本語なんですよね。いや〜、泣いた泣いた。コレは私的にめっちゃヤラれましたわ。
それと、ラストシーンのオチに、『猟奇…』を観た人にしか分からない瞬間があるのですが、会場中が大爆笑してました。それだけ皆『猟奇…』を観てるってコトなんだよね。いやはや、改めて彼女の人気の高さを実感させて頂きました。あ、でも主演のカレも良かったよぉぉぉぉ〜〜〜(名前何だっけ???)
May 28, 04 渋谷シネマライズにて
うわ〜、この映画を観た直後に感想をどこかに書き留めていたのですが、どこかになくしてしまった…。ええ〜と、何を思ったんだっけ???
まぁ、半年以上もアレコレ賛否両論を聞いていた映画だったので、第一印象は「思ったよりヒドくないじゃん」ってコトかな?多分、この映画ほど観る人によって感じ方の違う映画もないんじゃないかと思う。一度、本当に全く言葉の通じない国で孤独感を味わったことのある人、そうでない人ではまた感じ方が違うと思うし、あとあの細か〜い、台詞のトリックが分かる・分からないで評価は分かれてしまうのでせう。確かに、この映画の脚本は細かい所でホントににくい演出をしているし(残念なことにあまり日本語訳には反映されていなかったけど)、その構成やエピソード一つ一つの網羅のし方も、かつて私が脚本のクラスで習ったお手本のよ〜な出来(いったい何人のスクリプトドクターを雇ったのかは知りませんが…)。ただ、それでアカデミー脚本賞なのかなぁ?確かにもの凄くそつなくよく書けた脚本であるかもしれないけど、でもそこに一つでも光輝く何かがあったとは思えないんですよね。
それにしてもまぁ、個人的にはけっこう身につまされる映画だったなぁ。だって私が今やっている仕事って、あの映画の中に出て来るアホでおバカな日本人コーディネーターなんだもん(^_^;)。
May 16, 04 新宿ピカデリーにて
ん〜〜〜、アニメの中で実写の人物が踊っている〜みたいな映画。けど、私的にはもう少し“突き抜けて”ほしかったな〜〜〜。そりゃ〜私とて彼のビジュアルセンスには興味を持ってあまりあるのですが、何かラストのいかにも“取って付けた”よ〜な“大宇宙平和賛歌”がちゅ〜とハンパでそらぞらしくってがっかり。
アレなら樋口可南子に捧げる(?)マザコンストーリーの方へつき抜けちゃったほ〜がよっぽどリアルで誠実な作品になったと思うんですけどね、私的には。
ま、観終った後、ど〜してアソコであの人が死んでないの?とか、アレって何だったの?的なツッコミ合いは十二分に楽しめる映画なので、大勢で観に行ってワイワイやるには打ってつけの作品ですけどね(^_^;)。
May 08, 2004 新宿武蔵野館にて
下馬評通り充分にクロウト受けする作品でしたが、コレは万人にオススメ出来る秀作 ですね。いや〜、日本の劇場で映画の途中に観客が拍手する作品って滅多にないと思 うんだけど(私的には少し泣きも入っちゃったし)。まず第一に脚本のMike White最 高。やっぱり細かいユーモアのセンスが光ります。そして誰もが認めるジョージ・ブ ラックのパフォーマンス。この映画はまさに彼の為にある作品と言っても過言ではあ りません。『殺人の追憶』『悪い男』に次いで、今年ナンバー3の快作でっす。
Apr 29, 2004 下高井戸シネマにて
ストーリーはいまイチとゆ〜先入観があったのですが、“トイ・ストーリー”的には 充分楽しめました。反面、多大に期待していた水中を表現するCGにはちょっとがっか り。別に大スクリーンで観なくてもよかったかも鴨。
Apr 25, 2004 南大沢TOHOシネマにて
パート1と比べて賛否両論ある2作目ですが、私は断然パート1派でした。や〜っぱ、 タランティーノにはただのバカだけやってて欲しかった感がありますね、私的には。 パート2のストーリー性は決して悪い出来ではないと思うのですが、それでも私はもっ とバカアクションを観たかったのよぉぉぉ〜。こりゃ〜、さらなる続編に期待ですねっ っっ。
Apr 24, 2004 シブヤ・シネマソサエティにて
う〜ん、よく出来た映画なんっすけどね。前作『ばかのハコ船』の衝撃があまりにも 大きかったので、それに比べるとちょっと落ちちゃうんだなぁ。男達のダメさ加減は 相変わらずなんだけど、長塚圭史のかっこよさが手伝ってか、ちょっと洗練されちゃっ た感があって…。一緒に観たKちゃん曰く、つげワールドはちゃんと再現されていた よ〜で、原作ファンにはそれなりに楽しめたかもしれませんけれど(^_^;)。
Apr 23, 2004 下高井戸シネマにて
いや、もぉこんなスゴイドキュメンタリーはありませんです。とにかく題材がスゴイ! 追いつめ方がハンパじゃない!“存在の耐えられない軽さ”の実話版が70年代の日 本で作られていたとは…。けど、上映当日いらしていた小林Pの話を聞くと、やはり このドキュメンタリーも“演出”の産物なのだとゆ〜ことが分かって愕然。この世全 ての出来事は演出と離れて考えられないのだと改めて実感させられてしまいました。
Apr 17, 2004 ユーロスペースにて
イラク、劣化ウランというある意味タイムリーな題材を扱ったTVっぽいドキュメンタ リーですが、テーマは半世紀前の広島・長崎、そして20年前のチェルノブイリにま で遡ります。ラスト30分の衝撃はけっこ〜大きいですね。
Apr 04, 04 下高井戸シネマにて
昨年のキネマ旬報日本映画第一位とゆ〜ことで、期待しすぎました。確かに美しく、よく出来ている映画ですが、ストーリーやどのシーンを取っても既視感が先に立ってしまいます。ある一定の歳以上の人達には、こういった予定調和的な映画をもう一度観たいという懐かしさはあるのでしょうけれど、個人的にはやっぱり何か新しさが欲しいですよね。コテコテの宮崎弁だけは、とっても新鮮でしたけど…。
Apr 02, 04 恵比寿ガーデンシネマにて
歴史的背景をベースにした、母と息子のベタベタのお涙ちょ〜だい映画だとばかり思っていたのですが、意外と骨太な作品なので驚きました。勿論、テーマはあくまで家族の絆なのですが、“敗者”としての東ドイツを非常に多面的に描いているのが良かったし、母の理想に合わせて東西ドイツ統一を違う側面から描こうとしている姿勢が面白かった。ここに描かれていなければ、私達には予想も出来なかったことが、当時の東西ドイツには日常茶飯事に起きていたのでしょうね。“2001年宇宙の旅”のパロディやら、宇宙飛行士を何と呼ぶかなど、ホント些細な言葉が違ったりとか。コレって、南北朝鮮にも同じことが言えるワケで、そういう視点で観ると何度も深〜く楽しめる映画です。
Mar 31, 04 渋谷シネパレスにて
いや〜、もぉかわゆい犬が沢山出て来るだけで、顔が歪んでしまうズルイ映画です。予想通り、3歳の子供が観ても分かるよ〜に、単純化して作られている映画ですが、役者達は(寺島しのぶと香川照之夫婦を除いて)皆と〜ってもクセがあって面白かった。特に、小林薫の役は、ヤナ奴でしたね〜。それがとっても良かったので、もっと出番が欲しかった。椎名桔平は、さすが実生活で二匹のラブラドルを飼っているだけあって、犬の扱いはお手のモノ。プラス、実在の訓練士のオッサン臭さやキツイ関西人っぽさを十二分に表現していたと思います。それにしても崔監督に、この役者達に、犬物語。う〜ん、ホント面白い組み合わせですね???
Mar 30, 04 シネセゾン渋谷にて
映画の殆どが、“あの事件の直前を描いてる”と聞いていたので、前半まるでかったるさを感じませんでした。それにしても、さすがラストはスゴイ。息も付かせぬとゆ〜のはあのコトですね。ま、オーソドックス的なウマさはあるのだけど、カンヌでパルムドールと監督賞を両方獲る程、目新しさがなかったのにはちょっち疑問でした。
前作『猟奇的な彼女』が大好きだったので、ちょっぴりは期待していたのですが、あ〜ん、がっかりでしたぁぁぁ〜。あのかったるさと、何の新しさもないストーリー、何とかならないのかなぁ???そりゃ〜『猟奇』も、確かにラストは安っぽいトレンディドラマみたいな終わり方だったけど、何てったって前半のパワーがあったから後半の涙も誘うとゆ〜モノで・・・。それにしても、この映画が日本でヒットしているとは。こ〜ゆ〜のが"韓国映画のレベル"と、人々に思われたらやだなぁ〜と少し腹立たしくすらなってしまうくらいの映画でした。まぁ、このクァク・ジェヨン監督、脚本を書く才はあると思うので、これからに期待。ど〜やら『猟奇的2』の企画も進んでいるらしいし、そっちの方は楽しみですね〜。
Mar 20, 04 シネフロントにて
NYで観た『攻殻機動隊』の記憶が全くないままに観ましたが、ストーリーは至ってシンプル。むしろ短くて物足りないと感じてしまうほどでした。それよりもやっぱりあの、プロローグが前作と全く同じシチュエーションで描かれているにも関わらず、7年の歳月を感じさせますね〜。あの場面は、劇場中が皆「ほぅ」と息を呑んでスクリーンを見つめていました。いいっすね〜、あ〜ゆ〜瞬間。映画館で映画を観る醍醐味でっす。
Mar 13, 04 アップリンク・ファクトリーにて
昨年のイラク戦争直後、小学2年生の娘を連れてバクダッドを訪れた吉岡逸夫監督のドキュメンタリー。行き先がイラクだとゆ〜のに、レトルトカレーや、パソコン、コンピュータを持ち込む辺りは、いかにも現代ッコの夏休み旅行とゆ〜感じ。言葉が通じないのに、現地の子供達と遊ぶ姿や、盗難に遭って泣きつかれる風美ちゃんの姿はけっこうリアル。個人的には、前作“笑うイラク魂”の続編的な部分は思い切って割愛して、子供の眼で観たイラクをもっと描いて欲しかったなぁと思います。
Mar 07, 04 下高井戸シネマにて
俳優さん一人一人は、そつなくウマイんですけどね〜。総合的には、ドコがい〜のか全くわかりませんでした。特に仲代達也はやはり圧巻ですね〜〜〜。
Feb 28, 04 新宿武蔵野館にて
『魚と寝る女』を観て以来、かなり注目していたキム=ギドク監督ですが、この作品にはホントやられたぁぁぁぁ〜〜〜という感じです。友人が配給・宣伝を担当しているのでお義理半分、ギドクファンとしての意地半分(?)で、初日の上映を観に行ったのですが、いやもう参りました。その質の高さに、もう悔しくすらなってしまうくらい。冒頭の10〜20分くらいから、「しまった、こんなに出来のいい映画だったとは…」と、興奮高ぶりまくり。私って、ホント自分の好きな映画、そしてよく出来てるなぁと思う映画に出会うと、もうそれだけで幸せで涙が止まらなくなっちゃうんですよね。この映画、全編殆どその理由で泣きっぱなしでした。一緒に観に行ってくれた友人が言っていましたが、私の場合、好きな映画であればある程、その映画に対する説明が舌っ足らずになってしまうのデス。やはりプロのライターではないので、「主人公の俳優がよかった」とか「キム=ギドクの演出は素晴らしい」と言っても、どう良かったのかうまく説明出来ない。ホント歯がゆいなぁぁぁ〜〜〜(>_<)。
まず第一に、『魚と寝る女』や『春夏秋冬…そして春』が、私に言わせるとかなり“情緒や情感に傾いた作品”であるのに比べ、この『悪い男』の特に前半は、もの凄くストーリー展開がしっかりしていると感心してしまいました。テンポも速いし、小道具の使い方、キャラクターの見せ方まで、きっち〜りと“映画の文法”にのっとっているし、しかもウマイ。普通、キム=ギドクと言えば映画界のアウトローとゆ〜か、奇をてらった演出というイメージがあるのですが、この正攻法な映画作りには正直驚き。いや、改めて見直してしまいましたよ(って、失礼な言い方だけど^_^;)。
主人公ハンギを演じたチョ・ジェヒョンの魅力は、私なんぞが書いても到底説明出来るほどのレベルではないので、他のレビューを参考にして下さい。もう、その存在感だけですべてよし。全編を通して1シーンしか喋らないという設定も、私が愛してやまない蔡明亮の映画と同じく“映画そのものの存在意義”を全ての観客に改めて見せ付けています(前にも書きましたが、“テレビドラマ”は、“ラジオドラマ”が発展したものだから、会話が中心。一方、“映画”のオリジンは“写真”であるから---映画はもともと“活動写真”だったワケで---会話は後から付いてくるオマケにしか過ぎないのです)。
それにしてもまぁ、キム=ギドクとゆ〜人はほんっとにロマンチストなんですね。あのマジック・ミラーごしに二人が触れ合うシーン。その切ないのなんのって。さすが画家とゆ〜か、あの感覚はもぉ、映画監督というより、アーティスト以外の何モノでもありません。
以前『魚と寝る女』を観た時は、彼の持つ“毒”が、毒のまま情念という名の純愛として描かれているなと感じましたが、今回の場合、ビジュアル的には同じ様に血や暴力と一緒に描いているにも関わらず、ほんっとにピュアで切ない純愛に昇華しちゃってるんですよね。嗚呼、この映画でまさかこんなに泣かされるとはまるで予想していなかったので、ほんとにほんっとにやられちゃいました。
この映画に賛否両論が巻き起こった理由は、容易に想像出来ます。ラストの展開と、フェミニスト的観点からの批判でせう。けど、ラストについては、この映画のタイトルをもう一度見直せば、やはりアレしかなかったと私は思うし、この映画をフェミニストうんぬんで語り始めたらそれこそ、この作品自体の存在意義を否定してしまうコトになる。そ〜ゆ〜所をつつく人達に限って、ハンギの持つパラドックス的な優しさなんぞ永遠に理解することは出来ないのだと思うし…。
それにしても、友人・知人とゆ〜贔屓目からでなく、この映画を日本でちゃんと劇場公開ベースに載せてがんばった人達に、心からホント感謝します。Yちゃん、同業者として、お疲れ様。そして、一人の映画ファンとして、有難う。
Feb 14, 04 Bumkamura ル・シネマにて
足掛け3年、待ち過ぎたぁぁぁ〜〜〜。いや〜、一昨年のヴェネツィア映画祭で監督賞を受賞したこの作品、やはり一昨年前のTokyo Filmexで見逃して以来、マスコミ試写の日なんぞは会社の代休を取ってでも観に行きたくてたまらなかったのに…。
私の場合、同監督の前作品であり、私にとっては不動の韓国映画No.1『ペパーミント・キャンディ』の存在が大きすぎるのですね。観終わった後のあの感動、あの衝撃、あの恍惚感を超えるって〜のは大変なコトですよ。同じ監督が作り、前作よりさらにさらに話題になっているのですから、そりゃ〜期待は自然と膨張しまくってしまうぢゃないですかぁ。
確かに素晴らしい脚本、素晴らしい演出、素晴らしい演技が三拍子揃った作品です。設定もいいし、フィルミングも完璧、主演二人の迫力と言ったら、そんじゃそこらの誉め言葉じゃまるで足らないくらいです。
でもね〜、いまイチだったんですよ、私には(勿論、200点満点で考えた時のいまイチなんですけれど)。まず、一番ダメだったのは、その“ダンサー・イン・ザ・ダーク”的な数シーン。予告編にもあるのでバラしますが、脳性麻痺のはずのコンジュが、いくつかのシーンで急に“健常者”に変身して踊り出すんですよね。それまで顔の歪みまくっていたコンジュの顔が、突然かわいらしい女性(=主演女優のムン・ソリ)になっている。観ている側としては、そのギャップに“ほぅ”となってしまうワケですが、それって現実の世界では永遠にムン・ソリになれない脳性麻痺の人達やその家族にとっては、ホントに失礼ではないですか?あれじゃぁまるで、ムン・ソリの時のみが“美しく”、現実の日常生活における“本当の美しさ”から逃げようとしているばかりか、否定しているかの様にさえ思えてしまうではないですか。私はここまで志の高い映画だったら、彼女の普段の姿にこそ、真の美しさを見出して欲しかったと思います。
監督は、デビュー作『グリーン・フィッシュ』でも兄弟の一人を脳性麻痺のキャラとして登場させており、彼自身、脳性麻痺の人達に興味があるのかもしれません。けど、コレってホントに一歩間違えると、ただ健常者vs.身体の不自由な人達みたいな構図を提示するだけで終わってしまう様な危惧が、ど〜しても私にはあるのです。例えば、この映画を観て構図的にすぐ浮かんで来るのは『ジョゼと虎と魚たち』。そう、歩くことが出来ず外の世界を知らないヒロインを、心優し〜いカレシが背中におんぶして連れ出していく。確かに女の子がカレシをおんぶするという逆の構図はなかなか描きにくいかもしれませんが、な〜んか気になるんですよね、あの構図。女の子は守られるべきモノ…例えば白人男とマイノリティーの女の子みたいな、強い男が弱い立場の女を守る…。実際、両作品のヒロインは気が強くて頭がよく、とても誇り高いプライドの持ち主であるというのは、作り手の側がすでにこの構図に気が付いていて、少しでもこのパターンを和らげようとしているのだと思いますが(それだけ、作り手の側がキャラクター達の関係をよく分かっているということだから、裏を返せば、両作品の脚本は何度も推敲して書かれているものだということが出来ますけれど)。
嗚呼、久々に長〜く書いてしまいました。でも実際は、この作品に対する私の見方が単に他より100倍厳しいというだけであって、ホント、コレはと〜ってもいい映画です。そのピュアな純愛は、誰の心をも打つと思うし(やっぱそのクライマックスには泣かされちゃいました)、とにかく主演二人の迫真の演技は一見の価値アリ。ソル=ギョングとゆ〜役者さんは、ほんと〜に役ごとにまるで別人なのですよ。最新作『実尾島(シルミド)』も空前の大ヒットと聞きました。これからますます注目の役者さんですね。それから、いまや韓国の文化大臣にまでなってしまったイ=チャンドン監督、これからも作品を作り続けていって欲し〜です。
Feb 11, 04 テアトル新宿にて
『豚が井戸に落ちた日』、『江原道の力』、『オー!スジョン』など、ユニークな作品を作り続けるホン=サンス監督の最新作。いや〜、いつもながらクセのある作品なのですが、コレはかなり一般の(?)お客さんにも受け入れ易い方なのではないでしょうか?
いやもう、その恋愛のリアリズムといったら文学的なまでに(?)逸品。こりゃ〜絶対自分の経験に基づいてますよね(^_^;)。コレを観ると、男性にとっての理想の女性像(夢見る次元ではない、生身の次元での)がありありと見えて来ます。ミョンスクの魅力とソニョンの魅力。一人には多分、一生“愛してる”と言えない(言いたくない)だろうし、一人には一生(いやがられても)“愛してる”と言い続けるのでしょう。でも、それって彼がミョンスクを愛していなくて、ソニョンを愛しているという単純なモノではないのです。男は同時に、タイプの違う二人の女を愛することが出来る。それこそ、あだち充の『みゆき』みたいな永遠のテーマが、この二時間のドラマに凝縮しているんですよね。ストーリーも設定も極めて散漫に見えるのですが、ホント濃い〜映画です。
役者三人もとにかく素晴らしい。『殺人の追憶』で、今最も好きな韓国人俳優キム=サンギョン。いや、ぶっくり太って、いかにも売れない“プレイボーイ”役者を好演。かなりの存在感を見せ付けていますが、この映画を観ただけで『殺人の追憶』に抜擢してしまったポン=ジュノ監督の先見性にも、改めて感心しました。それと、ソニョン役のチュ=サンミもい〜ですね〜〜〜。男にとっての“永遠に追いかけたい女”ってゆ〜のがすんごく分かるんですよ、彼女を見ていると。分別アリ、経験アリ、○○アリ、このクールで謎めいた彼女は、完璧に“押し”と“引き”を弁えているのですね。こんな具体例を何人も知っているに違いない、“放浪”のホン=サンス監督。この作品を期に、ヨーロッパだけでなく、日本でももっと紹介されていって欲しいモノです。
Feb 07, 04 新宿東急にて
…とにかくもぉ、全然ダメでした。つまんなかったぁぁぁ〜〜〜。私てっきり、原作が悪いのかと思っていたのですが、観終って原作をくまなく知る友人に聞いて、この三作目がいかに原作とかけ離れて作られたかを知りました。
とにかく、主役のフロドが主人公である必要性が全然ないんですよね、この描き方じゃぁ。原作を読み込んだ友人の話によると、フロドとサムの台詞が入れ替わってるシーンもあったりして???なんで、なんで、なんで???
それにつけても、戦闘シーンの多いこと、多いこと、多いこと。まるで、戦争礼賛えーがぢゃないのぉぉぉ。“フロドの為に”だったら、人殺ししてもいいわけ???アラゴルンやエルフ達も、人数数えながら一人一人殺していくなんて、アレじゃ南京大虐殺だよね。それを面白がって見ている若者が、日本にもアメリカにも一人でもいるのかと思うと、ホントやるせなくなってきちゃいます。一話目は好きだったのにな〜。二話目もそれなりに楽しめていたので、この終わり方には、ほんっと幻滅してしまいました。P=ジャクソン監督、ミラマックスの影響力が無視出来るトコで、も〜いっかいこの作品の完結編を作ってほし〜です。ふぅ…。
Feb 08, 04 下高井戸シネマにて
コレは、『北京バイオリン』とま〜ったく同じ次元で“ズルイ映画”ですね。だって、マリア・カラスの声を聞いてるだけで、もぉそれだけで満足してしまう映画なんだもん。けど、それは“映画そのもののよさ”を見る目を盲目にさせてしまう。確かにおフランスやオペラ好きのおば様方を満足させるには充分の映画だと思います。それだけの要素は全部揃ってるもんね。けど、この“絵空ごと”を作り上げた監督は、おそらく彼自身ゲイなんでしょう。いや〜男優達の選び方がハンパじゃありません。他の作品も観てみたいモノですね。
Jan 31, 04 シアター・イメージフォーラムにて
いや〜〜〜、な〜〜んか、めっちゃ“いい映画”ではないですかぁぁぁ!!!“赤坂真理”x“荒井晴彦”x“寺島しのぶ”と聞いただけで、ただのセンセーショナルなエロ映画だとばっかり思っていた私…。嗚呼、そんな自分が恥ずかしくなってしまうくらいピュアで直球勝負の純愛映画でした。
シュチュエーションは至って現代的な、むしろ病理的とでも言えるモノだし、そこに荒井晴彦が脚色して寺島しのぶが脱ぐなんて、てっきりエロおやじしか喜ばない映画だと思っていたのに、コレはも〜全ての世代に観て欲しい“よく出来た映画”です。まず、こんな単純なロードムービーをきちんと演出してみせた廣木監督に脱帽。そして、な〜んといっても大森南朋クンのせくしーなことっっっ!!!いや〜、コレはこの映画を観た半分以上の女性がもうメロメロになってしまうんじゃないかしらん。そうそう、世の中には彼みたいにホントに優しい人だっているのです。あの、最後の方の原作にはない“五十嵐食堂”のシーン。そこに彼の優しさが凝縮しています。久々に、もう一度観たいと思わせる日本映画の登場なのでありました。
Jan 31, 04 下高井戸シネマにて
まぁ〜、いい映画なんだけど、な〜〜〜んも起こらない映画でしたね。もちろん子供達はかわいいし、先生もいい人。一度は教師になろうと思ってた私にとっては、ホントに理想バリバリのよい映画なんだけど、一方では「だから何なの?」と、ゆ〜感じ。NHKスペシャルかなんかでみせられたら、また違った感想だったと思うんですけどね(^_^;)。
Jan 24, 04 渋谷シネ・アミューズにて
熊切監督と加瀬亮クンのトークショーもあり、かな〜り期待して観に行ってしまったのですが、期待大きすぎたなぁぁぁぁ。熊切監督の作品は、一作目の『鬼畜大宴会』も『空の穴』もだ〜〜〜い好きだったので、なおさらのこと。けっこ〜フツーっぽくってがっかり。おまけに、撮影監督が『アカルイミライ』の柴主さんだったので、ほとんどまるで同じ世界でした。それも残念の要因だったかも鴨。
Jan 25, 04 下高井戸シネマにて
昨年の米アカデミー賞外国語映画賞を受賞したということで無理矢理見ましたが、いや〜長かった〜〜〜(^_^;)。別に悪い映画でも何でもないし、確かに良く出来てる映画ではあるかもしれないけれど、け〜きょくアメリカ人て〜のは、ユダヤ人が主人公で、エキゾチックな映画がイイ〜ワケね。こ〜んな映画はもう50年も作られているような気がして、今更感がモリモリの作品なのでありました。ちゃんちゃん。
Jan 17, 04 ポレポレ東中野にて
いや〜〜〜、噂以上に美しく、私好みの映画でした!!!とにかく私はあの世界観が好きですね。これまで同じよ〜な映画は百と作られて来たし、ちっとも新しくはないんだけど、とにかく好みなんで許しちゃいます。まず第一に、主人公の男が血だらけになりながら黙々と臓物を串に刺していく。それだけの日々…。それがい〜んだな、コレが。でも、ま、彼ルックスはい〜んだけど、演技はいまイチ。アレはど〜見てもインテリのモノ書きに〜ちゃんには見えません。寺島しのぶは、期待が大きすぎただけにまぁまぁとゆ〜感じ。キレイな時とそ〜でない時の差が激しいトコはよかったですけどね(^_^;)。
私的には、タイトルの赤目四十八瀧を大画面で観て心癒されよ〜という目論見があって劇場へ足を運んだワケですが、残念ながら、瀧のシーンはホント短かった。でも、キレイでしたよ。それだけで劇場へ行く価値はあると思う。3時間近くの映画の長さも、私にはまるで苦痛ではありませんでした。
Jan 04, 03 南大沢ヴァージンシネマにて
コレも期待が大きすぎました。ホント、よく出来てる作品だと思うんだけど、私には物足りなかった。犯人なんて最初の15分くらいですぐ分かっちゃったし(あんなに分かり易いミステリーもないと思うけど…)、映画そのもののテーマも、私には極めて単純明快なモノでした。いまや賞を総なめのショーン=ペンとティム=ロビンスも、私にはうまくて当たり前の二人ですからね〜〜〜。それに比べれば、全然期待してなかったケヴィン=ベーコンが意外にうまくってびっくりしたくらい。ローレンス・フィッシュボーンは、何だかお間抜けで可哀想な役でしたね〜〜〜(^_^;)。
Jan 03, 04 三軒茶屋中央にて
昨年さんざん「隠れた傑作」という噂を聞いていたので、期待が大きすぎたな〜〜〜。確かによく出来たまさに“珠宝”の作品ではあると思うけど、それ以上には響いて来ませんでした。ヒロインが私の好みでなかったってのも大きかったと思うけど…(^_^;)。
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