評価の満点は5つ星です。
Dec 26, 03 ユーロ・スペースにて
最後へ来て、今年第2位の作品を観てしまいました。…とゆ〜か、さんざんその評判を聞いていたので、今年中に観ておかなくては、とあせったのが本当の所。ちなみにアメリカでの公開タイトルは、直訳で“THE SON”。う〜ん、確かに意味的にはそうなんだけど…(^_^;)。やっぱこの邦題ウマイですよね。それだけで、本編の厳かさがかなりプラスされていると思う。
そのドグマ的な撮影方法は、前半30分くらいがちょっとタルく感じるので(でも、後になってみるとどれもが重要な伏線であることが分かる)少し気になりますが、中盤そのストーリーの軸とペースがクリアーになるに従って、もうその方法以外には考えられなくなって行くのですね。主演3人の演技がとほうもなく(!)素晴らしいのは、ここで一々書く必要もないでしょう。で、その心理描写と緊張感。オリヴィエの心の内は手にとる様に分かるし、一見唐突そうに見える全ての出来事の展開も、私にはこの上なく自然に感じられました。唐突な終わり方には賛否両論ある様ですが、私にはもう、「これしかない!」ってくらいに思えるし…。
テーマは重いし、物語も地味だけど、私にはこ〜ゆ〜映画こそが映画の中の映画なんですよね。ホント。
Dec 25, 03 シネ・クイントにて
“新しい恋愛映画”と銘打っていますが、この上なくオーソドックスなノスタルジック恋愛映画でした。原作は数十ページしかないのに、かなり膨らませているよね〜。意地っ張りで強情なジョゼが、「帰れってゆ〜たら帰るんかい!」と泣きながら彼の背中を叩くシーンは、原作にはなかった(とゆ〜か、めちゃくちゃ変えてた)のですが、何だかリアルで妙に切なかった。んで、すぐに同棲始めて、な〜んにもないさびれた海に行って、ラブホでしけこんじゃったりなんかして、で、あっさり別れちゃう。アレ?もしかして、そんなコトって皆やってんだ???
この愛すべき“しみったれさ”って、映画にすらなってしまうのね???何だか自分の20代前半とモロ重ね合わせて観てしまったので、ツラかったな〜。…とゆ〜か、最後の「オレが…逃げた…」とゆ〜のが、自分の(多分一生消えない)罪悪感と重なり合って、もぉ全然冷静に観れませんでした。映画としても、よく出来てると思いましたけどね(^_^;)。
Dec 24, 03 新宿文化シネマにて
2003年度“裏アカデミー作品賞”として評判の高いこの作品。けど、移民としての苦労を肌で感じていない日本人には、あまりピンとこない作品かもしれません。私は個人的に、NYで一時的移住者としてかなり(?)苦労をした経験があるので、冒頭の入国シーンの緊張感や、エアコンのエピソードなど、相当感情移入して観てしまいましたね〜。あと、お祭りでのボール投げシーンでの緊張感も秀逸だったし。とにかく話はこの上ない程シンプルなんだけど、テンポと緊張感が職人技とゆ〜シャリダン監督の一作品。イヴに観るには完璧なデートムービーでした(^_^)。
Dec 23, 03 下高井戸シネマにて
いや〜、噂には聞いていましたが、よく出来てますね〜。単なる青春の甘酸っぱいノスタルジックな映画かと思っていましたが、映画作り的にもしっかり作ってあるし、主演二人(+親友の女の子)の魅力を最大限に引き出している。何と言ってもよく描けていると思ったのは、“この二人じゃなきゃダメなの”という、あの独特で不思議な相性が見事に表現されていること。誰かと誰かがカップルになるって、結局は美男美女とか、吊り合いとかじゃないのよね。あの、“二人にしか分からない”秘密の世界が、ホント細やかにしかも説得力を持って描かれていました。それだけで、この映画はもう“上質な恋愛映画”の資格を十二分に得ていると思う。監督の、これからの活躍が楽しみです。
Dec 23, 03 レンタルDVDにて
今年10本ほど観たDVD新作作品の中で、唯一感想を書こうと思った映画です。いや〜、何と言っても、その脚本がウマイ!!!主演3人の演技も素晴らしかったし、社会派アラン=パーカーの力量バリバリ全開という感じです〜。そのメッセージ性だけでなく、単純にサスペンスものとしても楽しめるので、途中全く飽きることなく最後まで観ることが出来ました。日本ではまるっきり当たらなかった様ですが、残念ですね〜。けど、ま、この新人脚本家の次回作に期待ですっ!!!
Dec 20, 03 ポレポレ東中野にて
巷ではインテリ系(?)自傷映画として話題になっている映画ですが、実は純粋なる肉体系(?)切り裂きムービー。今や天下のフランソワ=オゾンと共同脚本を務めるマリナ=ドゥ=ヴァン来日の際、ほとんど2週間近くアテンドを務めたのですが、本人は意外にもマッチョなお嬢様でありました(^_^;)。今月頭にはアメリカでも一般公開。興行成績はいまイチだったものの、批評家のウケはすこぶる良かった様で…。彼女の二作目に期待ですねっ。
Dec 18, 03 恵比寿ガーデンシネマにて
言わずと知れた、巨匠7人による10分短編のオムニバス。私的ベストは、1.ヴィクトル=エリセ、2.ジム=ジャームッシュ、3.アキ=カウリスマキ、4.スパイク=リー、5.チェン=カイコー、6.ヴィム=ヴェンダース、7.ヴェルナー=ヘルツォークでした。
一緒に観た某映画監督は、ベスト1がチェン=カイコーと言っていたので、まぁ人それぞれって感じですね。けど、私的上位2人は、やっぱうまいな〜と思いました。エリセ監督は、その映像と皮肉。ジャームッシュ監督は、そのリアリティを10分で表現し切った所に感服でっす。
一般公開は、2004年3月13日より
今年のカンヌ映画祭で新人監督特別賞を受賞し、今年度ゴールデン・グローブ外国語映画賞にもノミネートされている話題作。最初はただ、タリバン政権崩壊後初めて作られたアフガニスタン映画というだけで、正直その内容や質までそんなに期待はしていなかったのですが、観てびっくり。さすが小さな頃から映画に慣れ親しみ(それこそ、ニュー・シネマパラダイスを地で行ったような少年時代!)、モスクワ大学で本格的に映画制作を学んだエリートだけのことはあります。それこそ、この映画には“重み”がある。監督が3400人の中から選んだマリナという少女の存在そのものにも、幾重に重なった歴史の重みが映し出されています。今年、NHK日本賞を始め、やはり数々の賞をこの映画のメイキング、『マリナ〜アフガニスタン・少女の悲しみを撮る』を観てから観ると、ラストの唐突さですら現実を直視しなければならない私たちへの衝撃となって心に突き刺さる映画です。
2004年公開予定。
今年のヴェネツィア映画祭、正式コンペ出品作品。いや〜、ベタベタの恋愛映画です(^_^;)。青島(チンタオ)って、もともとヨーロピアン・テイストを持ってる街だとは思っていましたが、ホントもう何だかフランス映画のよ〜な部分ばかり撮っているのね。イケメン2人のリウ・イエとイーキン・チェンも良かったけど、何てったってカリーナ・ラムちゃんが良かったです。
前作『10話』の路線にあるこの作品、タイトル通り5つのシークエンスのオムニバスなのですが、台詞が一つもないっっっ!監督曰く、この映画は寝るのが正しい…そうで。で、観た数少ないシーンが後になる程心に残ればそれでいいのだそうですが、まさにそんな“神業”の映画。それにしても、最後のシークエンスはスゴイ…。特に○○○○の嫌いな私には、一生忘れられない映画となることでせう(^_^;)。
デビュー作でカンヌ映画祭新人賞を受賞して以来、カンヌ常連となったムラリ=ナイール監督の最新作。まさに大人の寓話とも言うべきブラックユーモアテイストで、ユニークさで言えば他に類を見ない映画です。けど、ただ変わってるだけじゃないんですよね。さすが国際映画祭の常連だけあって、その実力も確かなもの。また、実際監督に会って話して分かったのですが、ちょっと変わったストーリーの根底には痛烈な社会批判も込められていて、深く読めば読むほど面白い映画なのでした。
事前の試写に間に合わず、この映画祭にてワールド・プレミアされたこの作品。いや〜、最初からハイビジョンの大画面で観ちゃったのでスゴイ迫力。ある意味“キャラバン”の様に、その広大な自然を楽しむことも出来る映画ですが、私は主人公の少年が持つ、あの朴訥さがよかったな〜〜〜。それだけでもう、ラスト泣けちゃいましたよぉ〜〜〜。
お話は、オーソドックスな血の繋がらない父と息子の心温まる触れ合い(?)ストーリー。前半は、ボスニア紛争の過酷な現実が子供の視点で描かれていて、教育映画としても良く出来ているかなと思って観ていたのですが、後半、私的にはちょっと興醒めだったかな。
何のことはない、普通の人たちの日常を切り取ったオムニバス。けど、泣けたなぁ〜(>_<)。私は特に中盤の工事現場でのシーンがお気に入り。嘘を付き合う男女の孤独。う〜ん、字幕翻訳の人の力もあるかもしれないけれど、とにかく脚本の台詞が良かった。淡々としてるけど、実に力のある作品だと思いましたね。
Dec 07, 03 下高井戸シネマにて
いや〜、全然期待しないで気軽に観てしまったけど、いい映画でないの〜〜〜!…とゆ〜か、正確に言えば、出てる人達の「言ってるコト」がよかったね〜〜〜。特に、パンフで竹中直人氏がタイトルにまでしちゃった「シャロン・ストーンっていいヤツじゃん!」そぉそぉ!!!私も一番、ソコにびっくり致しましたですよぉ。「人には子供的なものを捨てるべき時期がある。あえて若い時期と決別するの。でも、若い時に成功すると、捨てる時期が分からないわ。次の自分が不安でね。だから捨てることには勇気が要る。でも捨てることは人生の荷を軽くすることよ。古い自分を潔く捨てて、また新たに歩き出すの。」(パンフより抜粋)いや〜、彼女のこの一言を聞いただけでも、この作品を観た意味がありました。軽〜い気持ちで、何度も何度も観るのがいい映画って感じですね。
Dec 06, 03 日比谷シャンテにて
あの井筒監督が、虎の門の『こちとら自腹じゃ!』で号泣した一作。う〜ん、確かに一度でも映画を作ったことのある人なら、その猥雑な様で実は計算され尽くしたその映像に、溜め息をついてしまうことは必至ですが、そうでない人達には、正直どうなんだろう???私個人としては、『ウェルカム・トゥ・サラエボ』で散々叩かれた彼の過去をよく覚えているので、いや〜ソレに比べればよくやった!と思いっきり拍手でもしたくなるんですけどね。あと、『ひかりのまち』やら『24アワー・パーティ・ピープル』の監督らしく、やはりその音楽の使い方は絶品。
けどね〜この作品、見方を変えれば、“ロンドンに着いたら”それで全ては解決するのか????とゆ〜所に大いに疑問の私です。だって、じゃ〜着けない人は幸せじゃないの?行けない人達は?ロンドンに行くしか自由を獲得する手段はないの???
ちょっと考えてみれば、本当に一番いいのは、生まれ故郷にいながらにして自由を得られること。生まれ故郷にいながらにして、それがイコール幸せであること…なんじゃないのかなぁ???そりゃ〜、難民を受け入れるなとは言わないけれど、本来なら、難民が故郷を捨てなくてもいいようにしよ〜とゆ〜のが究極の望むべき道なのではないかと、思わず考え込んでしまった私なのでありました。
Nov 26, 03 TOKYO FILMEX2003にて
イランの巨匠モフセン・マフマルバフ監督の次女、撮影当時若干13歳だったハナ・マフマルバフによるドキュメンタリー。姉であるサミラ・マフマルバフの最新作『Five in the Afternoon』の、いわばメイキングであるこの作品、作品全体の質としては正直「どうかな〜?」という部分もありますが、登場する4人の素人さん達の個性と、ハナ監督の奔放でのびやかな視点が観る者の顔をほころばせます。今回の映画祭で、この作品が審査員特別賞を受賞したのは、そういった理由からなのでしょう。裏読み的には、イランやアフガニスタンという国そのものに興味がある人々には必見の一作。『アフガン・零年:OSAMA』の監督、セディク・バルマク監督が何気にちょい役出演していたりして、知ってる人にはけっこ〜笑えます(^_^;)。
Nov 24, 03 TOKYO FILMEX2003にて
いや〜、面白いとゆ〜のは聞いていましたが、いろんな意味で面白い作品でした。まず、初監督作品とは思えぬ、監督の技量と度量に感心、感心。そして、賛否両論はあるものの、ラストのオチ、私は大好きでしたよ。だって結局、テーマは“ちっぽけで愚かな地球人”ってことでしょう?そこにホロコーストが絡んで来ちゃったりするのは、西洋人的には耐えられないよ〜でしたが、悲しいかなそれが現実なワケで…。
まぁ、途中のグロ描写にはさすがにツライ私でしたけどね…(^_^;)。
Nov 23, 03 下高井戸シネマにて
前半は良かったんですけどね〜。さすが、『タイタス』のテイモア監督、ビジュアル感はバ〜リバリ。フリーダ=カーロのファンでもそうじゃなくても結構楽しめる出来になってるんじゃないでしょうか。けどね〜後半、特にトロツキーとの絡みはいらなかったと思う。せっかくの前半のテンポも台無しとゆ〜感じでした(^_^;)。
Nov 22, 03 丸の内プラゼールにて
FILMEXの合間、息抜きとして観に行ったのですが、まぁ〜長いこと長いこと…(^_^;)。今回FILMEXで審査員を務めていた大学院時代の先生と高校時代の友達、プラス・アメリカ人1人、日本人1人と観に行ったのですが、それぞれの反応の違いが面白かったなぁ。まず、右隣にいた高校時代の友達は、ラストで泣いていました。おそらくコレが、日本の若い人達の一番一般的な反応なのではないでせうか?一方、左隣にいたリチャード先生は、「頼むよ〜、もういい加減にして欲しい。あまりにもナイーブ(注:アメリカ英語で使うナイーブは、思いっきりネガティヴ)だ。」だそうで。これはまぁ、辛口批評家達の一般的な反応だったと思う。私は…とゆ〜と、最後30分までの所では、まぁ、ハリウッド版“乱”とか“影武者”をやりたかったのね〜。と、まぁ許せたんだけど、いくらなんでも最後の30分は「やめてくれよ〜」だった。結局アメリカって〜のは、世界全部の国を自分の力でど〜にかせんと気がすまんのね。ったくぅぅぅぅ…。コレ最後まで観て「素晴らしい」とか平気でゆ〜アメリカ人がいたら、私はもう、その無神経さだけで許せんよ、もぉ。
監督のエドワード=ズウィックは、私の一番好きなアメリカのTVドラマ“ONCE and AGAIN”のエグゼクティヴ・プロデューサーであり、自らカウンセラー役で出演もしている人とゆ〜コトで、かなり尊敬していたのですが、あのラストで全てがぶち壊しだぁぁぁ〜〜〜。実をゆ〜と私、2年前、この映画の美術監督が日本人K氏に決定しかけてた時に、現地アシスタントをやらないかと言われていたのですが、結局K氏ではなく、美術スタッフ全員がアメリカ人になってしまった為、この映画に関わることがなくなっちゃったんですよね。だから僻みも半分入っているかもしれないけれど、アレはただ“七人の侍”の背景セットに色付けただけでしょぉ〜。そりゃぁ勿論、過去のハリウッド映画が描いて来た日本に比べれば、ずっとマシに作り込んでいるかもしれないけれど、文句を言い出したらキリがないしね〜〜〜。ま、殺陣だけは、思ってたより迫力ありました。最近は日本映画でもヒドイからね〜(^_^;)。
…にしても、試写の段階ではまだあったとゆ〜、T=クルーズと小雪の濡れ場はどぉしちゃったのですか?アメリカ版には入っているのかなぁ…???
Nov 22, 03 TOKYO FILMEX2003 オープニング作品
『魚と寝る女』を観て以来、すっかりギドク・オタクになってしまった私としては、こ〜んな誰が観ても感動してしまう様な作品には一抹の寂しささえ感じてしまいます(^_^;)。とにかく、誰が観ても良く出来てると言わせる作品なんじゃないでしょうか。春夏秋冬を人の一生に例えた、ある意味分かり易くてシンプルな物語なのですが、とにかく深い。個人的には春のオチが好きですね。それが最後までず〜っと引きずられていくのですけれど。
冬以降に登場する監督自身による立ち回りは圧巻。キム=ギドクはココに来て、ホント“一段上がってしまった”という感じかな。ギドク・オタクの私としては、『魚…』で描かれる男女のドロドロ関係の方がず〜っとプラトニックに感じられるのですけどね(^_^;)。
FILMEXの上映では、最後の歌に日本語訳はついていたのに英語訳がついていなかったのがとても残念。私は歌のところでかなりぐ〜っと来ていたのに、一緒に観ていたアメリカ人勢は皆ぽか〜んとしてました(^_^;)。
Nov 15, 03 下高井戸シネマにて
下高井戸シネマで2週間に渡って開催された“小沢昭一的シネマのこころ”の中でのトークショー、この日のゲストは中山千夏さんでした。小沢昭一さんの話とゆ〜より、“しとやかな…”の主演女優、若尾文子にまつわる逸話の方が面白かったかも鴨。
どちらも川島雄三監督作品でしたが、特に“しとやかな…”は、新藤兼人脚本による川島演出という異色の一本。殆ど1ロケーションによる長まわしの作品で、まるでお芝居の様でした。出演者全員が毒を持つという珍しい新藤作品を、なぜ川島監督が演出することになったのか???その晩の主役、小沢昭一も端役ながら強烈なインパクトを残していました。う〜ん、面白かったなぁ。
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