*** Just Watched 49 - 最近観た映画 49 ***

評価の満点は5つ星です。

「殺人の追憶」「公共の敵」「ドッペルゲンガー」など

<<殺人の追憶 Memories of Murder *****>>

03, 11, 09 東京国際映画祭:オーチャード・ホールにて

いやもぉ…。とにかくその素晴らしさに、何度も何度も溜め息をついてしまいました。映画は時に、言葉には表せない“重み”を持つことがある。この映画には紛れもなく、その“重み”がありました。とにかく映像が“映画的”なのです。これはもう、オーチャードホールの大画面で観たからという理由だけではないでしょう。冒頭から、そのどっしりとした造りに圧倒されてしまうのです。
言うまでもなく、“出来のいい映画”の条件にはいろいろあって、“脚本”“演技”“撮影”“音楽”その他もろもろの要素が複雑に絡み合うのが映画作りの醍醐味である所なのですが、とにかくこの作品はどれもがいいっっっ!!!

まず、脚本。いや〜、ホント緻密に書かれています。もしこの脚本が、綿密に書かれた推理小説か何かを元にしていたとしても、その出来は一級。なのに、この脚本は実際に起きた連続殺人事件に基づいて書かれているというのだから、オドロキ!!!!!!とにかくうまいっっっ!もぉ、どこからどこまでが実話なのか殆ど分かんないんですよ。勿論、田舎育ちの中年刑事とソウルからやって来た大学出のエリート刑事がコンビを組むところなんかは、やっぱフィクションなんでしょうけれど、でもその“お約束”を実にうまく料理してのけている。“第三の殺人”が、彼の推理によって明らかにされるくだりなんかはかなりスリリングだったし、ゾクゾクしたくらい。それに、彼が女子学生の背中にばんそうこうを貼ってあげて、それが後半で PAY OFFしていく辺りなんか、かなりうまい!最近の韓国って数人で脚本を書くのが一般的になって来ましたが、ほんっとに細かいPAY OFFがあちらこちらに散りばめられていて、思わず感心してしまいます。いやはや、それにしてもあれだけの“被害者”と“容疑者”をよく一本のストーリーにまとめ上げたと思う。ただただ感服でありまっす。

そして、役者達の演技。いや〜〜〜キム・サンギョンせくし〜過ぎっっっ(>_<)!!!!!実はこの上映の前に舞台挨拶があって、私ってば一番前の席でキム・サンギョンを間近に見ることが出来たのですが、“普通にカッコイイ俳優”という印象しかなかったんですよね。確かに冒頭の方では、まだ小奇麗なエリート捜査官だったのですが、段々とボロボロでモサモサになっていく辺りから、もぉ完璧に私好みだぁぁぁ〜〜〜。嗚呼、今からもぉ、彼の主演作『気まぐれな唇(英題:Turning Gate/原題:生活の発見)』の公開が待ち切れない〜〜〜!役作りとは言え、すっかりデブっちゃったソ=ガンホは置いといて、パク=ヘイルはその顔のごとくタダの坊ちゃんではありませね。うま〜〜〜いっ。ココではいちいち書きませんが、他の脇役も良かったぞ〜いっ!

いや〜、撮影&照明もとにかくどっしり落ち着いていて素晴らしかったし、今回韓国映画は始めてという日本人の作曲家(名前何だっけ?)の音楽も良かった。特にラストね。何だかすっごく韓国語映画っぽかったよ〜〜〜。
それにしても何にしても、やっぱりポン=ジュノ監督の才能は並大抵のモノではありません。
『ほえる犬は噛まない』もスゴイなと思ったけど、とにかく飛び過ぎ。30代半ばにしてコレなんですから、次はど〜なっちゃうんでしょうね???
最後に。この実話の舞台は1980年代の半ばでして、私ってばけっこうつい最近とか思っていたのに(冒頭では現代と殆どギャップがない様に思えるんですよね)、2003年の世界が出て来た途端、この20年の時の流れに愕然としてしまいます。さらに20年後にこの映画が観られる時、果たしてこの作品は“現代歴史劇”となるのでしょうか?それとも普遍的な不滅の名作として後世に残るのでしょうかね。いや〜、20年経ったらまた大スクリーンで是非観たい、そんな思いにまで馳せさせられてしまう様な一本でした。

<<公共の敵 Public Enermy ****>>

03, 11, 07 東京国際映画祭:イイノホールにて

あうあう、と〜っても面白い映画だったのに、次の日に観た『殺人の追憶』↑の出来の凄さにあっと〜されてしまい、あまり覚えていません(^_^;)。
まるで70年代の日本の刑事モノを彷彿とさせるよ〜なベタな映画です。私は個人的にこ〜ゆ〜映画が大好きなので十二分に楽しめましたが、まぁ大半の日本人には受け付けられないと思います。韓国映画、特に刑事モノにはお決まりのカリカチュア的な部分や中途半端なギャグ。コレを受け入れられるかどうかで評価は分かれる所でせう。
…にしても、ソル=ギョングの熱演には誰もが圧倒されること間違いなし。こ〜ゆ〜破天荒でダークなヒーローって、30〜40年前には日本にも存在出来たんですけどね。やっぱ時代性として日本では死滅してしまったのかな???

<<しあわせの法則 Laurel Canyon *>>

03, 11, 03 東京国際女性映画祭:ウィメンズプラザにて

監督が私の行っていた大学の先輩であるリサ=チョロデンコということで、殆どお義理で観たのですが、いや、つまんな〜い(>_<)。キャストがフランシス=マクドーマント、クリスチャン=ベール、ケイト=ベッキンセールとゆ〜豪華な顔ぶれでありながら(んでもって、見るからにかなり予算をかけた映画だと思う)、ただ空まわりしてるだけなのよね〜。『あの頃、ペニー・レインと』を意識したのかしないのか、類似品の駄作に成り下がってしまった様でとても残念。デビュー作『High Art』は個人的にもかなり支持出来る作品であっただけに、次回作に期待しませう。

<<片腕カンフー vs. 空飛ぶギロチン Master of the Flying Guillotine ***>>

03, 11, 02 東京ファンタスティック国際映画祭:新宿ミラノ座にて

『キル・ビル』で栗山千明が演じていたキャラの持つ武器は、この作品からインスパイアされたものなのだとか。さすが伝説の香港クラシック。笑えるし、ゾクゾクさせられるし、スカッとさせてくれますね。それに今回初めて付けられたという日本語字幕がコレまた超 トボけていて面白かったです。やっぱ、こ〜ゆ〜B級アクション映画の王道は“濃い〜悪役キャラね”。その分、主人公が少しだけ薄れちゃった感もありますが、今回60歳を超えて来日したとゆ〜王羽(ジミー・ウォン)のその迫力!!!けど、当の本人を見るまで、彼が本当に片腕の人だと信じて疑わなかったのは私だけではなかったはず…(^_^;)。

<<ドッペルゲンガー Doppelganger ****1/2>>

03, 11, 01 渋谷シネ・アミューズにて

一般的に“ドッペルゲンガー”と言いますと、“超常現象”=“怖い“とゆ〜イメージがありますが、今回はそ〜いったイメージを逆手に取ってコメディ&ロードムービーにしてしまった所がこの映画の面白い所。いや、観る前に散々賛否両論を聞きまくっていましたが、私は大好きでしたね。『アカルイミライ』よりはずっとずっと黒沢ワールドの原点を押さえているし、そのくせ新しい部分がたくさんあったと私は思います。

例えば、これまで私は黒沢監督の映画の中にこんなかわゆいラブストーリーがあったことを知りません。コメディ部分しかり、それだけで黒沢監督、今回は本当に突き抜けてくれたと思う。実はこの日、黒沢監督と直接お話する機会があって、「今回、もしかしてチャップリンの“モダンタイムス”を意識されてます?」と聞いてみたのですが「そんな指摘は初めてですね。いや、特に意識はしていなかったです」というお答え。けど、あの“キカイ”といい、あの“ラストシーン”といい、初めてコメディとかわいらしいラブストーリーを描いた黒沢監督の中には、無意識のうちに“モダンタイムス”の影があったのかも鴨???

「さらば龍門客棧」「キル・ビル」「クジラの島の少女」など

<<さらば龍門客棧 - Goodbye Dragon Inn - Bu San 不散 ****>>

Nov 01, 03 東京国際映画祭:シアター・コクーンにて

今年のヴェネツィア映画祭コンペティション部門で話題になった作品だけに、業界パスを持っている人の間でもチケットの入手が殆ど絶望的だったのですが、運良く映画祭の“ゴールドパス”を持っている人にくっついて入ってしまいました(^_^;)。いや〜、ファンにとっては嬉しい新作だけど、過去に蔡明亮監督の作品を観ていない人にとっては拷問のよ〜な映画だと思います。はは(^_^;)。
この映画について一言で言ってしまうと、潰れ行くある映画館の一日。それを単純に“ビデオ・DVDに取って変わられる寂れた映画館への悲哀とノスタルジックな映画への愛”と片付けてしまうことなかれ。全編を通して台詞が10コあるかないかの、それこそ映像と劇中劇だけのこの映画、やはり天才・蔡明亮にしか出来ない神業としか言い様がないと思います。あのテンポ、あのアングル、あのリズム、あのショット、そしてあのタイミング!!!!!とにかく観客のことなど微塵も考えずにひたすら自己の作品を黙々と創る彼(けど、決して自己中な人ではないのです。むしろ、その反対だと思う)。蔡明亮監督の映画を観ていると、本当に「神様、この世に映画というものを与えてくれて有難う。そして、この世に蔡明亮という人を生み出してくれて有難う」と感謝せずにはいられなくなってしまうのです。それだけ蔡監督の映画は、“映画”しているし、“蔡明亮”している。この素直で、自然な個性の前には、私はただただもう、ひれ伏すしかないのです(何だかハタから見ると、ワケのわからない文章をとうとうと書いていますが、私的には本当にそう思わずにはいられないのですね、コレが)。
最初にも書いた通りこの作品、蔡監督オタクの人にとっては、常連キャラクターのオンパレードで楽しめること間違いなしですが、それ以外の人達にとってはイライラさえしてしまうかも。残念ながら、一般の配給は難しいでしょ〜ね〜〜〜(^_^;)。

<<不見 - The Missing ***3/4>>

Nov 01, 03 東京国際映画祭:シアター・コクーンにて

これまた先日の釜山映画祭でニュー・カレント部門グランプリを受賞しただけに、チケットがなかなか取れなかった作品。10数年前蔡明亮監督に見出されるまで、ただの素人だった李康生が初めて自ら監督をした長編映画。予想通り、蔡監督のスタイルをそのまま踏襲した様な映画でしたが、なかなかどうして。映像的にも、演出的にも力はかなりあると思います。脚本も自分で書いているし、最後のオチなんてかなり笑える。けどね〜、どうしても偉大なる(?)蔡監督の作品と比べられてしまうのがツライですね。2作目は思い切って全く違うモノを作って欲しいなぁ。

<<キル・ビル - KILL BILL ****1/4>>

Oct 29, 03 ヴァージンシネマ六本木ヒルズにて

ここんトコ、期待が大き過ぎてコケる映画があまりにも多かったけど、いや〜〜〜コレはかなりイケてました。素直〜にオモシロイ!!!!!とにかく“オタク・おバカ”映画の集大成!いや、ここまでやってくれれば拍手モンですよ。特にルーシー“修羅雪”姐ぃが一面雪の庭園で腰を落とす最初のシーン(なぜか斜めのアングルになっていた)。あそこの格ッコ良さには思わず涙が出てしまったし…(けど、ルーシー・リューは、動きがあきまへんなぁ。腰浮きすぎ(^_^;)。栗山千明のシーンなどは、女の私ですらヨダレが垂れそ〜になってしまったのだから、ロリコンでマゾの男どもには鼻ぢモンのことでせう。
いやはや、タランティーノとゆ〜人間そのものはど〜も好きになれないけど、彼に才能があることはやっぱ認めなきゃなりませんね。例えば保安官の車のフロントに並べられたサングラス。あのワンショットで、彼の性格全てを語ってしまうのだから大したモンです。あと、言うまでもなく音楽のセンスね。今から後編が楽しみです。

<<トーク・トゥ・ハー - TALK TO HER ****>>

Oct 18, 03 下高井戸シネマにて

う〜ん、しまったぁぁぁ。期待大きすぎたぁぁぁぁ。確かにすごく良く出来ている作品です。脚本もよく練られているし、どの役者も皆イイ。けど、とにかく観る前にあまりにも色々な人の“感想”や“コメント”を聞きすぎて、妄想が膨らみまくってしまっていたのです。嗚呼、つくづく想像力とゆ〜のは恐ろしい。当たり前のことだけど、先に観た人達は、その映画についてのブリーフメントを言葉にする、そしてその言葉と与えられた何枚かのスチールを基に私は私なりのストーリーや動画を作り出してしまうワケです。当然そこにはA→B→CとC→B→Aのギャップが生じてしまうワケですね(なんだか中原昌也氏的、映画本編とはまったく接点のない感想だなぁ、今回は)。正直、主役の4人があんなに縦横無尽に交わるとは予想していなかったので、ヘンな意味でがっかりしてしまった私。特にラストはね。私的には『オール・アバウト・マイ・マザー』の方が性に合っている気がします。

<<アイラヴ・ユー - I LOVE YOU ***>>

Oct 17, 03 ラピュタ阿佐ヶ谷にて

↓『アイ・ラブ』シリーズの第一弾であり、撮影監督:岡崎宏三特集上映の一本として観て来ました。いや〜、コレはもう教育映画のノリですね(^_^;)。何とゆ〜か、今井正監督がらみのこぶしプロダクション制作なだけに、脚本も女性で「キクとイサム」のノリみたいな…。それでも尚且つ、この“スタンダード”は多くの人達に観て欲しい。知ってはいても、頭では分かっていても、なかなか見えない世界が、この映画の中にはあるのです。

<<アイラヴ・ピース - I LOVE PEACE ***3/4>>

Oct 16, 03 有楽町朝日ホール・完成披露試写会にて

大澤豊監督、『アイ・ラヴ』シリーズの第三弾。今度の舞台は日本とアフガニスタンの両方にまたがっています。お話はかなりベタなのですが、やっぱり最後は泣かされる。第一、地雷で足を無くしたアフガニスタンの少女が自力で歩ける様になるなんて、それ見せられただけでもう泣かされますからね。それって映画的にはある意味ズルイ。けど勿論、この映画は一人でも多くの人々に観て欲しいです。それにしてもこの披露試写会、秋篠宮妃までが観に来ちゃったモンだから、もぉすんごい騒ぎでした(^_^;)。

<<座頭市 - ZATOUICHI ***3/4>>

Oct 11, 03 渋谷シネパレスにて

う〜ん、コレも期待が大き過ぎた〜〜〜。私ってば、あの抜きで散々使われていたタップダンスのシーンが劇中、しかも殺陣のシーンに挿入(ゴットファザー:パート1みたく)されるものだとばっかり思っていたので、かなりがっかりしてしまいました。まぁ、私の場合、オリジナルの『座頭市』をちゃんと観ていないので、ダメージはそれほど強くはありませんでしたが、オリジナルに詳しい某有名監督は「(オリジナルに比べて動きが)遅い」と嘆いておりました。最初は「ええっ???」と思ったパツ金頭については、それほど皆異論はない様でしたけど(^_^;)。けど、つくづく北野武とゆ〜人は、少年に対する眼差しが暖かい(?)ですね。少女の格好をして舞を舞う弟のシーンでは、ちょっと泣けちゃいました。

<<蛇イチゴ - Wild Strawberry ***1/2>>

Oct 04, 03 渋谷シネ・アミューズにて

この映画の評判も、もう一年以上前から散々聞いていたのでちょ〜っと興醒めしちゃったかなぁ。「とにかく脚本がウマイ」とゆ〜のを耳にタコが出来るくらい聞いていたので、ちょっと期待が大きすぎたかも。まぁ、確かにウマイけど、マスター・ピースという程では…(^_^;)。でも20代半ばでココまで書ければ、この先が楽しみですね。とにかく役者サン達は皆素晴らしかった。特に普段は嫌いな宮迫博之が、この時ばかりは本当に愛らしく見えましたね〜。

<<クジラの島の少女 - Whale Rider ****1/2>>

Oct 03, 03 恵比寿ガーデンシネマにて

某アメリカ人映画監督から、「コレは絶対観なきゃダメ」と脅迫され、けっこう楽しみにしていた作品。観てみたら、モロ“ナウシカ”のストーリーでした。けど、まぁ原作があるから、宮崎氏の方がパクったのか違うのか…。いやはや、しっかりと作ってあります。一見、先住民、少女の成長物語、家族の葛藤と、スタンダードに受け入れられ易いモノを並べつつ、しっかりと才能を見せ付けている所がこの監督のスゴイ所。次回作が楽しみです。

<<北京ヴァイオリン - Together ***1/2>>

Sep 28, 03 下高井戸シネマにて

いや〜、コレはただただズルイ映画です。何てったって、あのヴァイオリンだけでもう泣かされちゃうもの。父と子の真実のストーリーとか、お膳立てだけでもぉズルイ。後半はひたすらボロボロに泣かされてしまったお陰で、映画そのものがいい出来なのか悪い出来なのかまるで分かりませんでした。師匠役を陳監督自身が演じているのもズルイ。あ〜、もぉ全てがズルイ映画なのでした。それはそうと、サントラ欲しいなぁ…。

<<D.I. ***>>

Sep 22, 03 下高井戸シネマにて

昨年のカンヌ映画祭で審査員賞や国際批評家賞などを総なめした噂の映画とゆ〜コトで観に行きましたが、う〜〜〜ん。やっぱ日本人には難しいんじゃないかとゆ〜のが正直な所。はっきり言って、劇場の誰も笑っていなかった…(^_^;)。コメディとゆ〜のは、つくづく文化圏を越えるのが難しいですね。イスラエル・パレスチナ問題が身近で日常茶飯事に語られる中東・欧米ではまだしも、極東地域の日本人にとって、イスラエル・パレスチナの根深〜いゴタゴタは、やっぱ一夜漬けの知識では笑えませんよ。あと、笑いのツボとかテンポとか、逆に所変われば随分違うモノだなぁ〜と実感してしまったくらい。ま、最後のカンフーもどきのアクションシーンには、おそらく全世界ドコの人達でも笑えるのでせうけれど…。

「アバウト・シュミット」「アダプテーション」「過去のない男」など

<<アバウトシュミット About Schumit ****1/2>>

Sep 21, 03 下高井戸シネマにて

ひゃ〜、さっすが黒澤明監督の『生きる』を参考に作られただけあって、ある程度トウの立った年代にとってはかな〜り身につまされるモノがある映画。けどまぁ、この映画がカップルの間で記録的な興行記録を飛ばしたとは!!!

約8年半アメリカに住んでいた私にとって、アメリカ人の家族(特に郊外の中流家庭に住む人達)の見得の張りぶりは、見ているだけで疲れるモノがありました。渡米するまではアメリカ人に“本音”と“建前”は存在しないと信じ込んでいた私にとって、これはホントに衝撃的なことで、表では大げさ過ぎるくらい楽天的な事を言っておきながら、相手が帰るとめちゃくちゃな悪口を言ったりね(別に、その人の性格がずば抜けて悪いというワケでもなく、殆どの人達が皆そうだったのでオドロキ)。
確かに日本でも結婚式の準備は大変ですが、アメリカでの準備もかなり気合入ってますよ〜。ウェディングの直前に花嫁やその家族がパニくる姿も、私は何度も見てきたし…。そ〜ゆ〜意味で、この映画はほんと〜にリアルに“アメリカ見得社会の裏側”を的確に描いていると思います。
その大げさなるポジティブな体裁があるからこそ、普段表に出ることのない“本音”が際立ってくる。アメリカ映画で、いまだかつてここまでストレートに“本音”を引きずり出して来た映画があったでしょうか???

もちろん、ジャック=ニコルソン演じるウォーレンの気持ちには、地球上に住むいわゆる先進諸国の殆どの人達が共感出来ると思います。“人生とは何か”この、人々が問いかけてやまないクエスチョン。その答えが、あの最後の“絵”なんですよね。1本の線でぐちゃぐちゃ〜っと結ばれた二つの手と手。この“シンプルさ”が答えなんだと思います。ホント〜に。

<<アダプテーション Adaptation ****>>

Sep 20, 03 渋谷シネマライズにて

あまりにも待ち過ぎた傑作…とゆ〜ことでせうか。期待大きすぎたなぁ〜〜〜。やっぱ『マルコビッチの穴』の衝撃が大きすぎたので、その反動が大きかったみたい。そりゃ〜、よく出来た映画ですよ。今回だって発想という点では、他の映画に十分引けを取らないレベルだとは思います。けど…、私にとってはどれも眉唾ものだったかも鴨。

実際、映画学校なんぞに行って脚本の書き方…特に脚色(アダプテーション)のクラスなんかを取ってしまった私にとって、この映画は笑えないな〜〜〜。原作本にアンダーライン引きまくって、そこに印刷された原作者の写真と思わずにらめっこしてしまう(苦笑)。あの映画に何度か登場した“STORY"とゆ〜本は、事実私の行っていた大学院の教授達でさえ読んでいた脚本マニュアルのベストセラーなのであります(^_^;)。

ま、前作『マルコビッチの穴』同様、実在の人物を取り混ぜながらあり得ない虚構を描くという点ではまたしてもやってくれたチャーリー=カウフマンでしたが、いかんせん最後にドナルドが口にする説教クサイ台詞はちょっと私にはがっかりだったかなぁ。さてさて、“描けない”とゆ〜最後のネタをすでに使ってしまった彼が次に描くのは何なのか、今からかなり楽しみですねぇぇぇ。

<<コントラクト・キラー/過去のない男 The Man without a Past ****1/2>>

Sep 20, 03 下高井戸シネマにて

いや、噂通りの“ゆる〜い”映画ですね〜〜〜。けどね、この二作を続けて観て思うのは、“シンプルに生きること”が何てカッコイイんだろ〜〜!とゆ〜こと。両作品とも、主人公の男は殆ど生活用品を持っていない。人間関係のしがらみもそれほどなく、ほんと〜に淡々と生活している。いわゆる先進諸国において、それは“恥ずかしいこと”とされているハズなのに、この映画はそれらを暗に批判しているのか、本当に“粋”に描かれているのです。例えば『過去の…』の後半部分で主人公の男が、どう見ても似合わないスシを危なげに頬張る。本来なら白い眼で見られそうな何とも無様な光景を、カウリスマキ映画はこれでもか〜とゆ〜程に愛らしく描くのですね。う〜ん。

それにしても、フィンランドとゆ〜国、暗いぞ。どんなに暗いのか、行ってこの眼で確かめたいくらい。けどまぁ、『コントラクト…』で描かれるイギリスの暗さを見ると、これはおそらくカウリスマキの作風なんでしょ〜ね(^_^;)。

「英雄-HERO-」「エデンより彼方に」「パンチドランクラブ」など

<<英雄 HERO ****3/4>>

Sep 17, 03 ヴァージン南大沢にて

映画の感想って〜のは、つくづく観る前の前評判に左右されるモンですね〜。いやはや、観た人達皆から「映像はキレイだったけど、ストーリーはいまイチだったよ」と言われていたので、逆に「なんだ〜、いい話でない〜〜〜」とゆ〜のが私の感想でした。ストーリーそのものが『羅生門』仕立てになっているのは聞いていたので心の準備が出来ていたし、その分むしろラストの哲学的なオチ(?)に感心してしまった私なのでありました。なんとゆ〜か、非常に納得のゆく終わり方でしたね、私的には。だから後味がめちゃくちゃ良かった。

その映像の美しさについては、語られ尽くしているでしょうから敢えてここでは書きません。まぁ、その昔は色と映像だけで売ってた(?)張芸謀なのですから、私的にはそれ程インパクトなかったですけどね。それにしても、彼のクロサワに対する対抗心とゆ〜か、こだわりにはびっくりしました。『羅生門』張りのストーリーだけでなく、長空との雨のシーンもやはり『羅生門』そのもの。荒原での馬のシーンや趙国の屋内シーンなど、クロサワ映画ファンにとってはどこかで観たことのあるシーンばかりが目白押しだったでしょうね。
役者に関して言えば、マギー=チャンがダントツ。いや〜、かっこよ過ぎる〜〜〜。トニー=レオンも前半はいまイチだったけど最後は良かった。チャン=ツィーイーはもぉ、顔が現代的過ぎて彼女だけ浮きまくっちゃってるのよね〜(^_^;)。
ま、この作品はさすがにあと1回くらい、劇場で観たいな〜と思っておりますです。

<<エデンより彼方に Far From Heaven ****1/2>>

Sep 13, 03 日比谷スカラ座にて

うほ〜、久々に“良質の映画をじっくり観た”とゆ〜感じでした。トッド=ヘインズ監督の作品は、短編の頃からず〜っとチェックしていた私だったので、前作『ベルベット・ゴールドマイン』で「もうダメか?このヒトは???」とゆ〜がっかり感からの反動は大きかった!!「うわ〜、このヒト、こんなにしっかりとした映画作れるんじゃ〜ない〜〜〜っ」って。
言うまでもなく、この映画は50年代アメリカのメロドラマ映画をパロって作られているのですが、それを逆手に取ってなお計算し尽くされたその脚本!!!!私はまず、この脚本の素晴らしさにまいってしまいました。「このヒトって、こんなに力のあるヒトだったのかぁぁぁぁ〜〜〜」

トッド=ヘインズ監督が自らゲイとしてゲイ差別の映画を作り続けて来たことは今に始まったことではありません。それを、彼がここまでストレートに人種差別を描くとは正直言って本当に意外でした。最初から最後まで「な〜んか裏があって、こんなことやってるんじゃないか???」と穿った見方をしていた自分が恥ずかしくなるくらい、今回ヘインズ監督は真正面からストレートにこの作品を作っていたのです。いや〜、真面目な題材を、真正面から、正攻法でしっかり作り上げたこの監督、やはりタダものではありませぬ。
あ、そ〜そ〜、ジュリアン=ムーアはやっぱりすごかった。
『めぐりあう時間たち』の彼女なんか比じゃ〜ありませんよ。あと、デニス=ハイスバートがサイコ〜。これからの注目株でっす。

<<パンチドランクラブ Punch-Drunk Love ****1/2>>

Sep 05, 03 恵比寿ガーデンシネマにて

1年以上も前から、もぉ、観たくて観たくてしよ〜がなかったのに、な〜ぜか客の入りが悪くて打ち切りとゆ〜ではありませんかぁぁぁ!!!仕事を途中でぶっちして、すべり込みセーフ!いやぁぁぁぁ〜観に行ってよかったぁぁぁぁ!!!
主演二人の良さもさることながら、とにかくあの全体に流れる“異様な雰囲気”がサイコー!!!冒頭のオドロカセサウンドも最高だし、途中に流れるワケわかんないパーカッションもいいっ!

それに何と言っても、このタイトル通り、恋って〜のは、周りの人から見ると異様だったりするんだけど、本人達にとってこんなにもピュアに盛り上がるモノはないのです。その辺り、主人公の二人と周りの温度差がほんっとによく表れていてよく出来ている作品だと思います。
『ブギー・ナイツ』で惚れ込んで、正直『マグノリア』でがっかりしていた私だったので、コレは嬉しいオドロキの私でした。

<<エルミタージュ幻想 Russian Ark ****>>

Aug 15, 03 下高井戸シネマにて

昨年のTOKYO FILMEXオープニング作品。当初見逃して以来、絶対に大スクリーンで観なきゃぁと思いつつなかなかチャンスがありませんでした。いや〜、これはもう、現代の動く絵巻物ですねぇぇぇぇっ。言うまでもなく、90分、ワンショット!!!カメラがひたすら途切れなく動く動く〜〜〜。いや〜、さすが、ラストの舞踏会シーンはただただ圧巻です。このカメラワークを編み出したって〜だけで、ソクーロフは歴史に残る天才であります。あと、この邦題考えた人、ウマイっ!座布団3枚って感じです(^_^;)。

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