*** Just Watched 46 - 最近観た映画 46 ***

評価の満点は5つ星です。

The Voices of a Distant Star
「ほしのこえ」 ****3/4
Feb 22, 03
下北沢TOLLYWOODにて

脱サラしたサラリーマンが、たった一人で脚本から作画・動画・編集など全てをこなした25分の短編アニメーション。いや〜、噂には聞いていましたが、期待より何十倍もすんごい作品でした。
マスコミやTVで紹介された時、その精密な映像はすでに観せられていたので、一人で描ききったとは思えないその映像美に対するオドロキは思ったほどではなかったものの、その脚本の巧みさにはめちゃめちゃ感心してしまいました。

アニメファンの友達いわく、既成のアニメ作品に影響を受けた部分がそーとーあるらしいのですが、それを差し引いてもまだ、この作品の脚本に関するオリジナリティは特筆に値するモノだと思います。携帯電話を通した21世紀の織姫・彦星神話がここまで詩的に描かれているとはね〜。それは、同時上映された新海監督の短編第一作、『彼女と彼女の猫』を観ても明らかなこと。男性なのに、ど〜してこんなに女性の繊細な部分を描くことが出来るのかなぁぁぁ???

今夏公開になるという『雲の向こう、約束の場所』も、より壮大なテーマと広がりのある背景がさらに面白そう。第二の宮崎駿とまでは言いませんが、次世代の押井守くらいにはいくんじゃないでしょうか?これからの活躍を見守って行きたい監督さんですね。

「Jam Films」 ***1/2
Feb 15, 03
渋谷シネ・アミューズにて

ショートフィルムのオムニバスなら『刑事まつり』派の私ですが、こちらもロングラン大ヒットを記録して話題の作品。いや〜、ホント今邦画って面白いですね。
え〜、昨年の5月、すでに『the messenger』と『cold sleep』を観てしまっていたのですが、その後少し再編した部分もあった様ですね。一番好きだったのは北村龍平監督の『the messenger』。一度目の印象よりさらに面白かった。何てったって魚谷佳苗がいいっ!!!決してウマイ女優さんではないのですが、存在感がありますね。北村一輝もいい〜っ!!!それと、噂通り堤幸彦監督の『HIJIKI』も良かった。アレもやっぱり佐々木蔵之介とゆ〜俳優さんに負ってるところが大きいと思う。

他はいまイチだったかな〜。中くらいだったのは『ARITA』と『JUSTICE』。『ARITA』の方は発想は面白いのに、あのタラタラ感がダメ。『JUSTICE』の場合、演出は面白いのにストーリー性が殆どなくて残念でした。
『けん玉』とか『Pandra』とか、一体なんなんでしょ〜ね〜。キャストにばっか乗っかってて、一体何の話なの???『Cold Sleep』に至っては、前に観た時も思ったけど、ただセットで遊んでるだけって感じだし〜〜〜。

けど、まぁこれだけの顔ぶれがそろったオムニバス、やはり一見の価値はあったと思います。一つ一つの作品に対する評価はどうあれ、コレが一同に集まるとさすがにインパクトありますね〜。オープニングのアニメーションも良かったし。
さてさて、『帰ってきた刑事まつり』に続き『Jam Films2』の撮影もすでに終了している様ですが、今度は一体どんな作品群になるんでしょ〜ね〜〜〜。

Under the Sand
「まぼろし」 ***
Feb 02, 03
下高井戸シネマにて

『8人の女たち』をなかなか観に行けないので、ビデオでいいかなと思ったこの作品についつい走ってしまいました(^_^;)。

言い尽くされてるとは思いますが、30そこそこの男性が60歳近い女性を細やかにそして丁寧に描いた作品。話はひたすら淡々と進んで行くのですが、ある意味妙な緊張感があるし、ところどころに散りばめられた幻想的なビジュアル部分は秀逸。登場人物の殆どがハイソな人々であったのは鼻についたけど、一人でいる時、そしてエッチしている時のシャーロット=ランプリングの存在感はやっぱりスゴイ。

『愛の嵐』からもう30〜40年経っているとゆ〜のにね。そんな彼女の魅力を十二分に引き出したオゾン監督の力量とゆ〜のにも、いまさらながら感心してしまいますデス。

「アフガン 戦場の旅」 ***3/4
Feb 08, 03
アップリンク・ファクトリーにて

友人に付き合って何気なく観たこの作品。ドキュメンタリーそのものとしてはもの足りない出来だなぁと思ってしまいましたが、その内容にはかなり“目からウロコ”でしたね。同時多発テロ直後から、アフガニスタン、そしてパキスタンへ飛ぶ世界中のジャーナリスト達。自身もその一人としてかの地へ旅立った東京新聞の記者、吉岡逸夫氏が、自分と同じ立場にいる記者達にインタビューを行ったドキュメンタリーです。

確かにジャーナリストというのは、見た目はカッコイイ。知られざる戦場の姿を生のままでお茶の間に届ける…その使命感や自分自身の中にある好奇心からジャーナリストになった人は多いと思います。けど、何だかんだで本当の所は“火事場泥棒”だったりするんですよね。火事のまん前に飛び出していって、火事の様子を他の人に見せて金を儲ける。
実際、同時多発テロの時“フツーに”NYに住んでいた私としては、テロ直後からNYに押し寄せて取材をしまくる報道陣達に疑問を持ち続けていたものです。確かにあの時、尋常ではない風景が街のあちらこちらにあった。けど、私達のほとんどは“フツー”に生活をしていたワケで・・・。その点、陥落直後のカブールに着き、あまりにも平穏な街の風景を見て拍子抜けをしたという記者達の声は、もっと表に出てもいいんじゃないかと思います。

マスコミで流される映像=“商品”は、送り手も受け手もその両方が、“ツクリモノ”であると承知している限り、勿論、無用の長物ではありません。けど、そのジレンマは“送り手の側”にも常に存在している。普段なかなか垣間見ることの出来ないその姿を赤裸々にさらけ出したこの作品は、受け手である私達にとっても一見の価値があるような気がします。

Sweet Sixteen
「SWEET SIXTEEN」 ****3/4
Feb 02, 03
新宿武蔵野館にて

昨年度のカンヌ映画祭最優秀脚本賞受賞ということで、1年近く公開を待ちわびていた映画です。う〜ん、確かにこの脚本はスゴイ。おそらくこの映画をもう一度観ることが出来たら、その細やかな伏線の張り方に、再び唸ってしまうことでしょう。けど、コレっていわゆるハリウッドフォーミュラー的な起承転結ではないのですね。その“リアルさ”において、この脚本は群を抜いているのです。

いや、それにしても、この映画の一番のスゴイところは、その“素”なキャラクター達でしょう。主人公のリアムを演じたマーティン=コムストンは、スゴイスゴイと聞いてはいましたが、想像以上に素晴らしくてオドロキ!15歳の微妙なココロの動きを見事に表現しておりました。特に母親に対する愛情の部分なんて、下手すればただのマザコンになっちゃうのに、イタイんだな〜、コレが。それに、やはり演技は初めてだというシャンテル役のアンマリー=フルトンも掘り出しものっ!!!脇を固めるプロの俳優陣も素晴らしかったでっす。

“映画のリアリティ”について改めて考えさせられるこの1本。二番館でかかる時は絶対にもう一度観なくっちゃ〜。ここ数ヶ月内に観た映画の中ではダントツにNo.1の作品でしたっっっ。

West Side Story
「ウエスト・サイド物語」 ****3/4
Jan 18, 03
テアトル銀座にて

これぞ、本当に“劇場で観なければならない映画”ですねっっ!今回はデジタル処理された新しい映像と音楽で、しかも劇場は普段舞台の上演に使われているテアトル銀座。いや〜〜〜〜、すんばらし〜〜〜〜〜。この作品を観たのは、勿論これが始めてではありませんが、もぉ、まるで違う作品のよう!特に大勢のダンサーが踊りまくるシーンなんか、端っこの人達までよく見える見える!!!

それと私の場合、この作品を観たのってNYに住む前だったんですよね。だから冒頭のシーンにワールド・トレード・センターがまだ映っていなかったなんて(この映画が撮影されたのは、WTCが着工される前の1961年)考えてもみませんでした。映画の前半ではあんなにNYでのロケーション・シーンがあったことも。私が住んでいたアパートの1ブロック南の小学校前もしっかり映っていましたよ。
それに、NYに8年半住んでみて身に染みるほど味わった“よそモノ移民”としての悲哀も、この映画の中でこんなに語られているなんて以前に見た時はまるっきり考えたこともなかったし。う〜ん、当時これだけ移民の役者さん達を集めてこれだけ社会的な要素を盛り込んだ作品とゆ〜のは、ホント画期的だったんでしょうね〜〜〜。

単なるミュージカル映画としてだけでなく、映画作品としての質も超ピカ一。コレは一生のうち、少なくともあともう一回は巨大スクリーンで見たい作品ですね。

「刑事(でか)まつり」 ***
Jan 12, 03
シネマ下北沢にて

現在大ヒット公開中の“Jam Films”がメジャーの邦画短編集だとすれば、こちらはその対極をなすインディーの邦画短編集。言い出しっぺの篠崎誠監督をはじめ、今や世界では国際映画祭常連の黒沢清&青山真治、やはり国際映画祭出品作を持つ万田邦敏、奥原浩志、廣木隆一、堀江慶、脚本家としてはキャリアの長い高橋洋、西山洋市、そして佐々木浩久、山口貴義、市沢真吾という12人の怒れる(?)監督が集まりました。

ただし、制限時間以外殆ど全くと言って制約のなかった“Jam Films”に対し、この作品群には三つの掟がありました。
1.主人公は刑事であること!
2.完成尺は10分を1秒でも越えてはいけない!
3.1分につき、最低でも1回はギャグを入れること!

う〜ん、確かにギャグ満載の面白おかしな作品群ではありましたが、ひゃ〜〜〜、内輪ウケ過ぎる〜〜〜(^_^;)。実際、篠崎監督や黒沢監督など、この企画に参加した殆どの監督が映画美学校で教えているので、スタッフやロケーションの殆どが映画美学校絡みなのですよ。私の場合、試写会などで映画美学校はいろいろとお世話になっているので、スタッフやロケーションなどには馴染みがあり、その点でもかなり楽しめたことは楽しめたのですが、それ以外の人にはね〜〜〜(^_^;)。ま、でも実際無理矢理付き合わせた友人はこれら監督のことを全く知らずに観に行ったにも関わらず、けっこう楽しんではいた様なので、まぁ、最初から学生自主映画祭のようなつもりで観に行けば、それなりに楽しめるのではないかと思います。

私的に一番好きだったのは、青山監督の『NOと言える刑事』でした。話もシンプルで面白かったけど、何てったって助演の黒沢清監督がカッコイイ〜〜〜〜♪そして、黒沢監督自ら演出した『霊刑事』も、予算と時間ほとんど全くゼロであそこまで撮れるんだな〜とひたすら感心。特に映画美の第一試写室前であそこまでコワイ映像が撮れるとゆ〜(第二試写室前にシーンはそんなにコワくなかったけど)のはオドロキでした。奥様が演奏したというシンプルなピアノの音色も耳に残ります。後は、脚本家出身ということで高橋監督の『アメリカ刑事』と万田監督の『夫婦刑事(めおとでか)』も面白かった。一緒に観た友達は、『スローな刑事にしてくれ』も面白かったと言っていたし…。
チラシの裏に“帰ってきた刑事まつり 近日公開予定”と書いてありましたが、続編、やるんでしょうかね〜。“Jam Films2”も計画が進んでいるそうですから、こちらの方も是非、対抗して続編を作って欲しいモノです。

Gangs of New York
「ギャング・オブ・ニューヨーク」 ***3/4
Jan 04, 03
品川プリンスシネマにて

殆どの評で「大味過ぎる」と言われている、その通りの映画でした。まぁ、多大な年月と費用をかけたその意気込みは買いますけれど、それだけじゃ〜ね〜〜〜。今回、私にとって一番の注目所はその脚本陣。原作者のジェィ=コックスは別として、大好きな『ボビー・フィッシャーを探して』や『シビル・アクション』を監督し、『シンドラーのリスト』などを書いたスティーブン=ザイリアン&『ユー・キャン・カウント・オン・ミー』を監督し、『アナライズ・ミー』やブロードウェイショーの戯曲も手掛けるケネス=ローナガンという私の大好きな脚本家二人が組んだということでめっちゃ期待していたのですが、ダメだったな〜全然。3人のコミュニケーションがうまく取れなかったのか、たまたまこの作品には彼らのソリが合わなかったのか…。キャラの描き方も中途半端だったし、いいなぁと思うセリフもまるっきりなかったし。う〜ん、コレは私的にかなり残念な部分でした。

キャストについては、皆あまりにも「ディカプリオは良くなかったが、D=D=ルイスは良かった」と口を揃えて言うので「ま、こんなモンか?」とゆ〜感じ。ディカプリオはね〜、やっぱこうした大河ドラマに丸顔は似合わないでしょ(^_^;)。D=D=ルイスについては、『存在の耐えられない軽さ』以来、演技うまくて当たり前と思っているんでね〜。あまりスゴイとかは思わなかったです。

最後に。皆さんご存知の様に、この映画は同時多発テロ事件の影響でその公開期が1年程遅れたのですが、確かにもしこの映画がテロ事件直後に公開されていたら、東海岸の人達はかなり非難を轟々と浴びせていたんじゃないかと思います。それは、この映画の暴力性にあるのではなく、この映画の中心にいる人達の多くが“アイルランド系移民”であるということ。この映画には、寝返って警察官になり後に見せしめにされるアイリッシュや、火事場に駆けつけていながら喧嘩ばかりして火を消さないアイリッシュの消防士達など、テロ事件後、殉職しアメリカ愛国心の象徴としてヒーロー視されたアイリッシュ達や彼等をサポートする人達が観たらとても許せない様なキャラクターが沢山登場するのです。コレは確かに非常にマズイ時期でしたね。さてさてあれから1年以上が経ち、アメリカは果たしてこの映画を受け入れられるだけの心の準備が出来てきたのでせうか…。

Doing Time
「刑務所の中」 ****1/4
Jan 03, 03
渋谷シネクイントにて

まず、コレが『月はどっちに出ている』などを監督した同じ崔洋一による映画なのかとびっくり。あの血潮がほとばしるような力強さはどこへ???とにかくもう、“計算しつくされた映画”でした。音楽といい、映像の見せ方といい…。海外評で「小津の再来」とまで言われる意味がこれでよく分かりました。

まぁ、この映画を観た殆どの人が言う様に、コレを観ると本当に刑務所ってゆ〜のが極楽な所に見えてしまいます。勿論、同じ部屋に入る人が皆あんなにおとなしくて面白い人だとは限らないのだから、実際はあんなに楽しいコトばかりではないのでしょうけれど(^_^;)。いや〜、それにしても劇中に出て来るご飯のおいしそうなコト!!!かなりお腹がすいた時に見たので、もぉ地獄のよ〜でしたよぉぉぉ。
フツー、“刑務所モノ”と言えばすぐ頭に浮かんで来るのは
『網走番外地』ですが、やはり本当にムショに入って来た人が書いたモノだと信憑性が全然違いますね。いわゆる特殊言語が沢山出て来るので、一緒に観に行ったアメリカ人の友達に通訳するのがめちゃ大変でした(^_^;)。

キャストはまぁ、バラエティに富んでいましたが、どのキャラも「いるよね〜、あ〜ゆ〜人」って感じだったので、キャラとしての個性はあまり見受けられなかった様な。普段から個性派のバイプレイヤーと言われている様な人達が一同に結集していたので、勿論見ごたえはありますけど、やはり全体のトーンをかなり抑えて作ってあるので、その辺はそんなに濃すぎず〜って感じでしたけどね。そうそう、ちょい役カメオで椎名桔平さんが出演していたのですが、実は彼、岩城正剛という本名でエグゼクティブ・プロデューサーも務めていたんですよね。だったらもっと出演すれば良かったのに〜(^_^;)。

Minority Report
「マイノリティ・レポート」 ***3/4
Jan 02, 03
吉祥寺東亜興行チェーンにて

吉祥寺で友人と会っていて、ふと観てしまったこの映画。映画オタクの間では甚だ不評だったこの作品なので、全然期待しないのが良かったのかな、まぁまぁ失望せずに観ることが出来ました。
私的にはキレイに作られ過ぎていて、まぁ後味は悪くないんだけどもの足りなさも残るという感じ。その点、
『A.I.』は、もしラストが20分削られていたならば、あっちの方が全〜然良かったと思う。何とゆ〜か、スピルバーグの思い入れ(=マザー・コンプレックス)をめちゃめちゃ感じるのね、『A.I.』は。けど、それがこの作品では、あくまでも“未来は自分で選択出来る”とゆ〜お題目で固められてしまっているので、そこがつまらなかった所以なのか…。

見所と言えば、やはりその類まれな未来世界のビジョン。コレは『A.I.』よりずっと良かった。トム=クルーズはマッチョな肉体ばかりが目について×。その点、コリン=フィアーズは良かったなぁ。T=クルーズより全然かっこよかったよ〜〜〜。けど、あのオチは何だか『L.A.コンフィデンシャル』にそっくりで全然頂けませんでした〜。サマンサ=モートンはね〜、もっとうまい女優さんなのにもったいない役でしたねぇ。その他、『Oh!ブラザー』のティム=B=ネルソンや、『イン・ザ・ベッドルーム』のウィリアム=マトサー(T=クルーズの従兄弟)のカメオ出演は楽しめました。

ま、最近は絶不調のスピルバーグ監督。次回作『Catch me if you can』では久々のコメディに挑戦とゆ〜コトで、どんな作品を見せてくれるのでしょ〜か???

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