評価の満点は5つ星です。
「AIKI」 ****1/2 |
Written and Directed by : Daisuke Tengan
Starring : Haruhiko Katoh, Ryo Ishibashi, etc
テアトル新宿にて
本年度ヴェネツィア映画祭正式出品作品。私がこの映画を観たかった理由はた〜くさんあります。私自身が昔合気道をやっていたこと、ウリ通り“元気の出る障害者映画”とゆ〜モノを観てみたかったということ。けどまぁ、いちばんの理由は監督・脚本が私の大好きな天願大介氏であるとゆ〜コトでしょうか。
天願大介氏は、言わずもがな日本映画界の巨匠:今村昌平氏の息子さん(アレ?私ってば二作続けて巨匠の息子作品を観てしまったんだな〜)。『赤い橋の下のぬるい水』など、最近では脚本家としての方が有名になってしまいましたが、もともとの短編デビュー作『妹と油揚げ』などは思いっきりディレクターとしての才能を発揮した作品でしたし、長編デビュー作『アジアン・ビート〜アイラヴ・ニッポン』もビジュアル的な面白さを存分に見せてくれていましたから。いまだに私の好きな日本映画5本の指に入る作品かもしれません。
それにしても、彼の脚本っていっつも私のツボを押さえまくっているのよね〜。いや〜、思ったと〜りの“天願大介的”作品でした。終わり方も、まさに“天願的”だったし、キャラも自暴自棄な主人公&エキセントリックなヒロイン、変わりモノのオヤジ達にマッチョな敵集団。コレってもぉ、それこそ彼のいつものパターンですよね。
ただし、今回は主人公とその師匠に実在のモデルがいるので、そこがちょっと違ったかな。
キャストに関して。う〜ん、加藤晴彦は車椅子のさばき方とか合気の技とか頑張ってるのは分かるけど、主役としては線が細すぎるよね〜。ともさかりえは、サマ子のいい加減さを良く出してはいたけれど、エッチシーン下手過ぎ(^_^;)。この映画の一番オイシイ所を全部持ってっちゃたのが石橋凌。それにしても太りすぎ〜〜〜。火野正平や桑名正博も良かったけどね。佐野四郎や永瀬正敏がカメオ出演してたのには笑っちゃいました。
冒頭にも書いた様に、大学時代には合気道部に所属してた私ですが、この映画に出て来る大東流合気柔術とゆ〜のは私のやってた流派とは違うので微妙な違いはありました。けど、“抗うのではなく、相手を受け入れる”という合気の精神はまったく同じ。実話が元になっているとは言え、障害者を主人公に置いてこれほど爽やかなスポ根マンガが誕生したとは何とも頼もしい限りです。天願監督、これからもまだまだ、いろんなジャンルを撮り続けて欲しいですね。
「CQ」 ****1/2 |
Written and Directed by : Roman Coppola
Starring : Jeremy Davies, Angela Lindvall, etc
シネセゾン渋谷にて
昨年のカンヌ映画祭正式出品作品。あの(まるでフリーダ=カーロのよ〜に眉毛がくっついてる(^_^;)フランシス=コッポラの息子が撮ったとゆ〜コトで話題にはなりましたが、実際あまり期待はしていなかたのですよ。一足先に長編を撮ったコッポラの愛娘ソフィア=コッポラの『バージン・スイサイズ』は、前半良かったけど後半コケてたしね(^_^;)。な〜んかビジュアルばっかで話の内容全然ないんじゃないかと思ってました。
それがそれが、1ヶ月程前に観た友人が「この映画観るなら、絶対映画館じゃなきゃダメだよ〜」とゆ〜ので、かなり半信半疑で観に行ったんですよね。いや〜、面白かった!無理矢理付き合わせた友人二人もめちゃくちゃ気に入っていましたよ。
確かにこの映画一番の見所はそのビジュアル。とにかくめっちゃお金かけてます。コレって東北新社、もしかすると台本の段階から買っていたのでしょうか?な〜んか日本資本の匂いも少ししていたよ〜な。
とにもかくにもこの映画には、映画への愛が沢山たくさん詰まっています。いや〜、コッポラ家って〜のは、もうそれこそ想像を絶するよ〜な映画一家なんでしょうね。この映画観てると、ローマン=コッポラがいかに小さな頃から映画漬けになって育って来たのかがよく分かります。
けど、ソレがただの“映画おたく”(もっと具体的に言うと、“バーバレラおたく”)で終わっていないところが、やはり巨匠の血のなせる技なんでしょうか?もぉ、おたくスレスレのところで、好きな映画への皮肉も盛りだくさん。あくまで冷静な視点で書かれたその脚本に脱帽です。
キャストは皆にじゅう丸。『The Laramie Project』などで大好きなジェレミー=デイヴィス、メジャー作品としては初の主演ですね。私にはいつもの情けなさに満足してたけど、一緒に観た友達はけっこ〜かっこよかったと言っていました。どっからどう見ても完璧なモデル型のアンジェラ=リンドヴァルは、その肢体もさることながら、ノーメイクの時とのギャップが良かった。も〜誰だかわかんない所がスゴイ(^_^;)。
『Rushmore〜天才マックスの世界』で大好きになったローマン=コッポラの従兄弟:ジェイソン=シュワルツマンは、いつものよ〜にめちゃ良かったし、普段は大嫌いなビリー=ゼーンも今回の役にはぴったり!!!
いや〜、とにかく往年のヨーロッパテイスト満載の映画です。おそらくこの映画の内容の殆どがローマン自身の経験や妄想から生まれているのでしょ〜けれど(イタリアでのクレイジーな大晦日とかね)、それにしても脚本うまくまとまっていたと思いますよ。さぁ、デビュー作としてはお決まりの自分体験をテーマにしていながら、あまりにも大作でスタートしてしまったローマン=コッポラ氏。次なるプロジェクトが楽しみですね〜。
「水の女」 ***3/4 |
Written and Directed by : Hidenori Sugimori
Starring : UA, Tadanobu Asano, etc
渋谷シネマライズにて
足掛け9年日本を離れていた浦島花子の私は、『名探偵濱マイク』の2話目(だったかな?)を観た次の日、友達に向かって思いっきり「あのユーエーって誰?」と聞いていました(^_^;)。そのUAが、私の最近の注目俳優の一人村上淳(Border Line、とらばいゆ)の奥サマだと知ったのは、つい1ヶ月ほど前のこと。いや〜、世間知らずでし〜ません(^_^;)。
そして、彼女と同じく旦那サマ=俳優&奥サマ=歌手とゆ〜カリスマカップルの旦那である浅野忠信。これだけ日本映画に出まくっていながら、実は私“ナガセ派”であったりなんかするので、『アカルイミライ』&『曖昧な未来、黒沢清』を観るまで殆ど注目することはなかったのです。
その、個性派x2のこの映画。う〜ん、二人共ぜ〜んぜんっ演技してないっっっ!!!もぉ、“存在してる”だけなのね(^_^;)。けど、その独特な存在感がスゴイ。はっきし言って、キャラはない、ストーリーもないこの映画、もぉ、この二人の存在感だけで見せてくれました。
私がもともとこの映画をみたくてしようがなかった理由は、この映画が昨年のサンダンス映画祭でNHK/サンダンス脚本賞を受賞していたから。えっ?脚本賞???と驚かれるか方も多いでしょう。ホント、ど〜してこのキャラクターのカリスマ性とビジュアルイメージだけで成り立っているこの映画が、UAの存在などまるで知らない海外で脚本賞を獲ったのか???出来上がったビジュアルを観て賞を獲るならまだ分かるんですけどね〜。う〜んナゾですぅ〜〜〜。
先日、監督の杉森秀則氏にちらっとお会いする機会があったのですが、まるで“雨男”のよ〜な人でした(^_^;)。あ、でもヘンな人ではなくて気さくないい人でしたけどね。TVでドキュメンタリーなども撮っていたそうですが、いまはもっぱらCMの方にお忙しい様で。うん、彼の作品、CMでなら十分何本も観ていたい気がします。
誰もが言う通り、ビジュアルは美しくシネマライズの様な大画面の大きな劇場で観るのはいいのですが、お家の小さなTVモニターではどうなのでしょう???一番の難点は浅野演じる宮澤のキャラクターがまるっきりなかったこと。彼はど〜見ても“火の男”じゃなくて“水の男”だもんね〜〜〜(^_^;)。脇の小川真由美や塩見三省がまるで良くなかったのも残念無念。それと、お父さん役のあの人、ホントにまさか、あの元広島カープの江夏豊???
ま、これだけ独特の世界を持っている杉森監督なのですから、次回作でも何か面白いモノを見せてくれるんじゃないかと期待しています。
Musíme si pomáhat 「この素晴らしき世界」 ****3/4 |
Directed by : Jan Hrebejk
Starring : Bolek Polívka, Anna Sisková, etc
Official Site : Japanese
下高井戸シネマにて
一昨年の米アカデミー外国語映画賞ノミネート作品。けど、私がこの映画をずっと観たかったのはそれだからではありません。第二次世界大戦モノを戦後2世代のギャップを隔てた私達の世代に、果たして描けるのかという興味が、個人的にはいつも付きまとっていたからです。
いや〜、面白かったです。この映画。そして泣かせてくれました。ストーリー展開はいかにもありがちなモノを繋ぎ合わせていた為、何も目新しいことはなかったし、ドキドキのサスペンスでもありませんでした。けどね〜、私はこの手の“お笑い人情モノ”に弱くって…(^_^;)。
舞台はチェコの田舎町。反ナチの夫婦が、ひょんなコトから元雇い主のユダヤ人息子を匿ってしまったからさぁ大変。妻を目当てに足しげく通うナチ党員に見つかりそうになってハラハラドキドキ…。そして物語のエンディングで戦争が終わって、彼らの立場が再び逆転することは誰もが分かっているのですが、それにしても“そう来たか〜”という感じ。いやはや私的なツボにぴったりハマってしまいました。
この映画に好感が持てる第一の理由は、何と言っても主人公ヨゼフの不思議な魅力でしょう。ハンサムでもないのですが、そのとぼけたルックスの奥に秘めた力強い意思がたまりません。妻のマリアもいいんだな〜。コレは掘り出しモノの女優さんです。ダビデもなんかソレらしかったし〜〜〜。それにしても、ヨゼフにマリアにダビデとゆ〜3人のネーミング、これもまた意味深でたまりませんわ〜(理由を言うとネタバレになっちゃうので飛ばします)。
この脚本家と監督の二人は、高校からチェコ国立映画学校まで同級生だったとか。監督のヤン=フジェベイクはTVや舞台の監督を務めたことがあるとはいえ、これが長編映画3作目とは思えぬ力量ですね。本年度にもまた新作を発表しているそ〜なので、こちらの方も是非観てみたいです。
「夜を賭けて」 **** |
Directed by : Sujin Kim, Written by : Shoichi Maruyama
Starring : Taro Yamamoto, HyoGyon Yang, etc
Official Site : Japanese
渋谷シネ・アミューズにて
一言で言うと、めっちゃ“体育会系の映画”です(^_^;)。いや〜、邦画・洋画を問わず、80年代以降こんなに体臭のプンプンする映画があったでしょうか???も〜、叫ぶわ、跳ぶわ、殴るわ、ちゃぶ台ひっくり返すわ(少なくとも3回はひっくり返していたと思う)で、巨人の星かあしたのジョーかってな感じの映画でしたね〜。
言うまでもなく、監督は劇団新宿梁山泊座長の金守珍。正直、90年代に実際の梁山泊の芝居を観まくってしまった私にとって、この映画はちと物足りないモノでした。そりゃ〜、同じモノを目の前のライブで見せられるのと、スクリーン上の二次元で見せられるのでは、前者の方が迫力あるに決まってますもんね。そう言った意味では、これ以上ない程“芝居的”な映画でした。まず役者さん達の動き&撮り方がモロに芝居的だし、演技もこれ以上となく芝居的。最初から割り切って“芝居を観ているんだ”と思えば、それはそれなりに楽しめるんだと思いますが、“映画的”に観よう観ようとすればする程、その芝居的な演出にはちょっぴりシラケを感じてしまいます。そりゃ〜元々芝居の演出家でありながら、映画監督第一作目でいきなりアカデミー監督&作品賞を受賞してしまった『アメリカン・ビューティー』のサム=メンデス監督と比較してしまうのは、あまりにも酷ってモンですが、実際私はそのことを考えながら観てしまいましたね(^_^;)。
私にとって、それよりも一番のモンダイだったのは、一人一人のキャラにほとんど個性が感じられなかったこと。『光の雨』や『GO』では大好きだった山本太郎が、ただ叫んでいるだけの肉の塊にしか見えなかったのは甚だ残念。肉体の線は太いのに、顔の表情にはちょっと華が足りない様な気も。う〜ん、どうしてもこの役をやりたかったそうなので、ちょっと気張り過ぎちゃったかな???もしかして彼は脇役の方が光るタイプなのか、それとも私が脇役にこそ惹かれるタイプなのか…(^_^;)。その証拠に私、今回脇を固めていた山田純大には思わず惹かれちゃいましたね〜〜〜。もうある意味、主役を喰ってた様な???それでも彼の出番が殆ど茶番だったのはしごく残念。
韓国の女優さんで今回ヒロイン役を射止めた柳賢慶は、清楚と強さを併せ持ったルックスでは十分及第点を取ってはいるものの、やっぱりただのお人形さん以上ではなかった様な。一緒に観た友達曰く、山本太郎と柳賢慶の二人はもう70年代の本宮ひろ志マンガの世界なのね(^_^;)。梁山泊時代から大好きだった六平さんも、今回はな〜んかただ叫んでちゃぶ台ひっくり返しているだけだったしな〜〜〜。
他のアパッチ族のメンバーもまるで個性なし。脇も樹木希林、清川虹子、風吹ジュン、李麗仙、唐十郎、奥田瑛二など演技派の豪華メンバーを揃えていながら、彼らの良さが殆ど出ていなかったのは残念です。
またまた一緒に観た友人の感想を引用しますと、「この話って、一つのヤマ(お宝)を狙ってのサクセスストーリーか何かだと思ってた」…お客さんはかなりいたのじゃないかと思います。私も、あの伝説の“アパッチ族”をこの映画はいかにして見せてくれるのだろうか?と思っていたのですが、その辺のワイルドさを画面の躍動感の中で見ることは残念ながら殆どありませんでした。それよりも、日常のダラダラ感&馴れ合い感が先行してしまった様でちょっと残念です。言わずもがな、このストーリーの原作は、直木賞にもノミネートされた梁石日の同名小説。機会があれば、原作の方も読んでみたいなと思います。
さて、5年の歳月と5億円の費用をかけた映画監督作品第一作。金守珍監督の次なるプロジェクトは芝居なのか映画なのか…。
Noam Chomsky in Our Times 「チョムスキー9.11」 **** |
Directed by : John Junkerman
Official Site : Japanese
渋谷ユーロスペースにて
表向きの肩書きはマサチューセッツ工科大学教授、または言語人類学の第一人者というノーム=チョムスキー。実際私は、アメリカに住んでいた時のルームメイトがチョムスキーの大ファンであるということを除けば、彼のことを全く知りませんでした。それがたまたま、私が大学院を卒業した時に来たゲストがモハメド=アリと彼の二人だったんですよね。その時、学生達にとってアリがいまだに超人気モノであることにも驚きましたが、チョムスキー氏がモハメド=アリに負けず劣らずの人気を誇っているのにもビックリしたものです。
そして、あの2001年9月11日。直後から“反テロ戦争”という言葉を使い出したブッシュ大統領に、真っ先に否と声を上げたのは、他でもないこのチョムスキー氏でした。テロからほんの数日で、チョムスキーのテロに対する声明がまたたく間にメールであちこちに送られていったのです。この時、私は彼が単なる左派のオピニオンリーダーなどではなく、“アメリカ、そして人類の良心のシンボル的存在”であることを思い知らされました。アメリカでは、テレビや新聞などの表メディアとは対照的に、雑誌、自費出版、ホームページやメールなどといった裏メディアで次々にチョムスキー氏の言動が紹介され、改めてアメリカの多様性を見せられた様な気がします。
今回、このアメリカでは左派の神様の様なチョムスキー氏のドキュメンタリーを、日本のプロダクションが製作したというのは、とても興味深い所。監督は、やはり同じプロダクションと組んで“老人と海”というドキュメンタリーを監督したジャン=ユンカーマン。この組み合わせならどんな作品になるのかは大体予想が付いていたのですが、いや〜頭に冠の付く“マジメ”極まりない映画でしたね〜〜〜(^_^;)。
それが、日本で大ヒットロングランするとは誰が予想出来たでしょうか???私の友達なんて、始まって3〜4週くらいで観に行ったのに、並んで並んだ挙句結局劇場に入れなかったとか。いくら席数の少ないユーロスペースとは言え、こうした大ヒットにはびっくりしました。最初はただのモーニングショーだったのに、オープン4ヶ月目の今でモーニング+レイトショーx2回の計3回も上映しているんですよ〜。コレはすごい。
一体どんな客層が観に来ているのかと思ったら、その殆どが大学生って感じの若い層でした。皆、どっから情報を得て来ているのでしょうね???ま、ちょうど今大学の教授なんかになっている世代というのはチョムスキー大好き世代なのでしょうから、おそらくそういった先生方の影響なのだと思います。実際、大学で英文学を専攻していた友人は、大学の教科書でチョムスキーの著作を使っていたそうですし…。それにしても、彼の日本での知名度の高さには改めてビックリしました。
純粋に映画作品としては、ただのストレートなドキュメンタリーで(チョムスキー氏へのインタビュー&講演の様子をただ単純に繋げただけ)、ある意味ナント芸のない映画なんだろう…とも思いましたが、ま、これまでチョムスキー氏の発言を活字の上でしか見たことのない人達にとって、彼の生の声が聞けるというのは大きなポイントだと思います。活字での彼の発言だけをなぞっていると、その内容のシャープさからして、普通はどんなコワイ人かと思ってしまいがちなのですが、実際の彼というのは本当にソフトな語り口で、アメリカ左派のカリスマ性なんて微塵も持ち合わせていないんですよね。それどころか、いつも奥さんの尻に敷かれているとゆ〜のが、かわいらしくて微笑ましかったくらいです(^_^;)。いや〜、この映画は日本やアメリカだけでなく、もっと世界中の人達に観て欲しいなぁ。
あ、ちなみにこの映画、“9.11”とゆ〜タイトルを冠しているので、“あの日”のことについての部分があるのかな?と観に来る人には期待ハズレですので悪しからず。いわゆるグラウンド・ゼロの場面はほんの2〜3秒しか出てこないし、チョムスキー氏は、あくまでも2001年9月11日を歴史の一点としか捉えていません。あの日の前からアメリカはもっとひどいテロを他国に対してやっていた。だから、9.11だけを特別視しすぎるのはアメリカの傲慢さの現れであるし、9.11という日は世界全体という視点で見れば、歴史のターニングポイントでも何でもないということ。そこの所、9.11という謳い文句に吊られて劇場に足を運んでしまった人達にとっては、いささか不満の残る作品かもしれません(^_^;)。
「フラワー・アイランド」 - "Flower Island" **** 「猟奇的な彼女」 - "My Sassy Girl" ****3/4 |
今年の釜山映画祭で、あのドナルド=リチー氏がtop priseを与えた一作。73歳と72歳という実在のカップルが、脚本に乗っ取ってひたすらいちゃいちゃしまくるというセミ・ドキュメンタリー。いや〜、噂には聞いていましたが、最初から最後まで二人がとにかくエッチしまくるしまくる!!!けど、この映画はポルノでもなければエロ映画でもありません。男性の目から観るとどうなんだか分かりませんが(同僚の女の子二人と観たので)、女性の目から観ると、この作品は“純愛映画”なのですよ。微笑ましいし、可愛らしいし、羨ましい。「幾つになってもああいう風でいたいよね」という感じ。
ま、書かれた脚本とは言え、二人の痴話ゲンカのリアルなことリアルなこと。そしてま〜、声だけ聞いてると、何だかまるで10代のカップルみたいなのね〜(^_^;)。ちょっとしたことでエスカレートし、ちょっとしたことで仲直りする。やっぱ、男女の・・・もとい人間の生き方とゆ〜のは、とにもかくにも気の持ちようなのですね。そう、「もう歳だから」というのは、自分で自分にリミットを付けているだけのこと。いろんな意味で、この二人から学ぶことは山程あります。
生エッチをそのまんま見せるというのは、同じく韓国映画の『LIES/嘘』という作品を彷彿とさせます。一方で性に対する厳しい掟の残る韓国ですが、その対極をなす性の解放にも、独特のスタイルがあるのですね〜。
最後に。この『死んでもいい』という邦題は、韓国語の原題をそのまま直訳したものなのですが、英題の"Too Young to die"になると意味的にはまさに逆のことを言っているので面白いです。けど実際、映画の内容からすると、英題の方がぴったりしているんですよね。そうそう、70代だって恋愛の終わりにはまだまだ早いのです。特にこのカップルは全くの美男美女ではないという所が最大のセールスポイントかも鴨。要は何でも気の持ち様なんですよ〜〜〜(^_^)。
昨年度ベネチア国際映画祭・観客賞受賞、及びTokyo Filmex2001でグランプリを受賞した作品。他にも数々の国際映画祭に出品されていながら、日本でもアメリカでも一般公開されていない貴重な作品なので、遠路はるばる(?)浦和まで行って参りました。いや〜、雨の中わざわざ観に行った甲斐がありましたよ。良かった〜〜〜。
いきなり17歳の女の子が公衆トイレで赤ん坊を産み落とすという衝撃的な場面から始まるこの映画、ストーリーはこの10代の女子高生、美しき20代の歌姫、そして生活の為に身を売ったものの思わぬ災難に遭遇した30代の主婦、という3人の女性のロードムービー。このソン・イルゴン監督は、もともとカンヌ映画祭などで短編映画賞を総なめにした人なので、どちらかと言うとビジュアル系の監督さんなのかと思っていましたが、めっちゃ心理劇系なのですね〜。3人の女優さんは皆良かったです。30代の主婦を演じた女優さんは、元々舞台女優さんなんだそうですが、舞台の演技からは程遠い静かで地味な演技が印象的。20代の彼女は、本当のオペラ歌手か何かなのでしょうか?いや〜キレイな声してました。10代の彼女は、20歳前の女の子が持つまだ蕾の様なボーイッシュさが最高でした。
『密愛』といい、韓国にはこうした女性監督による女性の生き様を描いた良質の映画がいくつも存在するということ、実にうらやまし〜です。確かに興行的には難しい映画かもしれませんが、こうした映画がもっとどんどん日本でも上映されるとい〜ですね。
昨年、『友へ/チング』と共に韓国の興行成績をぬりかえまくったラブコメ映画。今年のニューヨーク韓国映画祭でも上映され、一番人気を誇った作品です。世に出る出ないは別として、スピルバーグのドリームワークスがハリウッドでのリメイク権を獲得。あの『セックス&ザ・シティ』の脚本家がシナリオを書く予定なのだとか。
いや〜、面白い、面白い!…と噂には聞いていましたが、最後ボロボロに泣かされるとはね〜〜〜。そうなんですよ。前半は確かにめちゃ笑わされます。“猟奇的”というと、韓国では“エキセントリックな”という意味なので、殺人とか血みどろのお話は一切出て来ません。けど、ゲロゲロシーンとかはあるので、ちょっと引きます(^_^;)。女の子の様に育てられたキョヌが、破天荒な女の子(ナント役名がない!)に振り回されるというまるでマンガの様な展開。これは元々インターネット上で発表された実際のラブストーリーが元になっているのだとか。だから見た目はマンガ的なコメディっぽく見えるのに、ディテールはもの凄くリアルなんですよね。“女性は男性に従順でなければならない”という仕来たりが日本よりさらにキビシイ韓国で、こうした型破りな女性が若い人達から熱狂的な支持を受けるのも興味深い所ではありますし。
主演のチャン=ジュヒョンについては前からイイ、イイとの話を聞いていたので、その魅力にさほどオドロキはしませんでした。まぁ、あんなにかわゆい女優さんは近年他にいませんけどね。それにしても驚いたのが、キョヌ役のチャ=テヒョン。それまで殆どTVドラマにしか出演したことなかったそうですが、うまいうまい!!!ただのダメ男ではなく、深い味わいのある優しい男を演じているではありませんか〜。そう、このカップルって、女の子の方はいくらエキセントリックであれ、ルックスのかわゆさにかなり助けられているけど、男の子の方の魅力はなかなか出すの難し〜ですもんね。いやいや彼はビックな掘り出しモンです。
劇中に挿入されているさまざまなパロディ映画も見所の一つ。ジョン=ウーやウォン=カーウヮイなどの香港映画から、『夕立/ソナギ』などの昔話まで、この辺りのお遊びだけでもかなり感心度の高い作品です。実はこの映画、日本では『火山高』のパッケージ(おまけ)作品として買われたそうですが、もしかすると『火山高』を上回るヒットになるかも鴨。
ラストの“延長戦”部分は原作にはなく、後で劇場版として付け足されたそうです。そのトレンディドラマちっくな展開には、キライと言う人も多くいると思います。けど、私はなんだか泣かされちゃったな〜。やっぱこの辺りは二人の役者さんの魅力に尽きるのかもしれません。
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