評価の満点は5つ星です。
"11'09"01" - 「セプテンバー11」****3/4
"Donnie Darko" - 「ドニー・ダーコ」****3/4
"Y Tu Mama Tambien" - 「天国の口・終わりの楽園」****
「セプテンバー11」****3/4 |
世界的に有名な映画監督11人が、2001年9月11日=11/09/01をテーマに、11分09秒01フレームの短編を製作したオムニバス映画。今年のベネチア国際映画祭でプレミア上映され、以後全世界での上映が予定されています。
日本語の公式サイトはこちらから、フランス語の公式サイトはこちら。
Ken Loach (England)
社会派映画の監督として知られるケン=ローチは、このプロジェクトの代表者でもあります。彼の作品は、1973年に起きた“もう一つの9月11日”(民衆で選ばれたチリの新政権が、アメリカに後押しされた軍のクーデターによって倒された日のこと。以後チリは数年間に渡って軍による暗黒時代が続いた)について。現在イギリスに住むチリ人男性が、テロ犠牲者の家族に向かって手紙を書くという形式で語られています。
Claude Lelouch (France)
いかにも『男と女』を監督した、クロード=ルルーシュ監督の作品という感じ!!!フランスからやって来た耳の不自由な女性写真家とアメリカ人ツアーガイドの恋。9月11日の朝、彼はWTCのガイドとして出かけて行くが…。まぁ、オチはあんなモンでしょうか。予想通りにストーリーが運んでしまったので、割とつまらなかった様な。
Danis Tanovic (Bosnia-Herzegovina)
『ノーマンズ・ランド』のタノビッチ監督が、9月11日のボスニア・ヘルツェゴビナの1日を描く。紛争で夫を失った妻たちは、同時テロについてラジオで知るが…。『ノーマンズ…』とは全く違ったタッチで、私としてはちょっと意外な作品でした。でも、けっこう好きかも。
Mira Nair (India)
現在ニューヨークに在住しているミーラ=ナイール監督(近作は『モンスーン・ウェディング』)が、テロ後、実際にあったイスラム系家族について描いたもの。テロの後、行方不明になったイスラム系青年が、犯行に関与したとして家族は白い眼で見られる様になるが…。この話は、私もNYにいた時かなり話題になったので知っていました。着眼点に拍手。
Idrissa Ouedraogo (Burkina Faso)
『ヤーバ』や『掟』のイドリッサ=ウェドラオゴ監督の作品。ビン=ラディンらしき男を見た少年達が、賞金稼ぎの為にその男を追う。ビン=ラディンに関する部分はちょっとコメディ・タッチで、この映画のテーマから外れる様な気がしたものの、ブルキナファソの社会背景を浮かび上がらせているという意味では好感が持てました。
Amos Gitai (Israel)
エルサレムでの自爆テロ取材でスクープを取った女性レポーターの所へ、同時多発テロ事件のニュースが転がり込んでくる…。死者数人のテロと死者数千人のテロを対比させている所が◎。それと、この作品って最初から最後までワンシーン・ワンカットだったと思います。何回撮り直したんだろう???
Samira Makhmalbaf (Iran)
さすが、『カンダハール』を監督したマフマルバフ監督の作品という感じ。イランに亡命したアフガニスタンの子供達が、学校の先生から9月11日のニュースを聞くという内容。まだ“テロ”も“宗教”も知らない子供達の素直な意見が印象的。
Youssef Chahine (Egypt)
エジプトの巨匠ユーセフ=シャヒーン監督が、事件翌日の記者会見でテロに関する質問に答えられず、過去のテロ事件で死んだアメリカ人兵士の亡霊と共に問答を繰り返すという異色の作品。おそらく監督自身、テロをどう捉えてよいのか分からず、相当悩んだのだと思います。
Alejandro González Iñárritu (Mexico)
『アモーレス・ぺロス』の監督サンとはとても思えない、前衛アート的な作品。細かい所はよく覚えていないのですが、11分の殆どが黒み映像に音だけ。それが白みになったりサブリミナル的映像(WTCの崩壊場面)が織り込まれているのですが、サウンドとビジュアルを微妙にずらしている所に色々な意味を考えさせられました。
Shohei Imamura (Japan)
11作品の中で一番ワケの分からなかった作品。“聖戦”(おそらく太平洋戦争)から生き延びて戻ってきた男が、人間であることをやめヘビ男として生きるというもの。一応最後にオチはあるのですが、日本からの(そして東アジアからの)唯一の作品として「コレかよ?」…って感じでちょっとカナシかった。
Sean Penn (United States)
アメリカからの代表として、どうやってショーン=ペンが選ばれたのかはわかりませんが、なんか結果的にはアメリカ人の持つエゴイズムを露呈してしまったみたいで皮肉ですね。他の国の監督達が今回の同時多発テロを問題提起の出発点にしながら、その着地点を普遍性という所へ置いているにも関わらず、この作品だけは、ある意味“自分さえよければいい”みたいな小さな閉じた世界へ帰結してしまっている。う〜ん、“一人勝ち”になって久しいアメリカは、こうも“アメリカ”と“それ以外の世界”でしかモノを見られなくなってしまったのか…。
本当は、このホームページで事件後1年経った自分なりの想いを書こうと思っていたのですが、まるっきりまとまらず頭は混乱するばかりでした。
けれど、この『セプテンバー11』という作品を観て、まだまだ皆混乱しているんだなぁということを改めて実感。自分なりの考えがまとまって形になって行くには、やはり数年…あるいは数十年の年月を必要とするのかもしれません。2001年9月11日を境に、世界が変わり始めていることは確かですが、それが一体どんな歴史を形作って行くのか、それはまだ誰にも分からないし、まぁ、ある意味自分達で舵取りをしていかなければならないのですよね。
「ドニー・ダーコ」****3/4 |
Written and Directed by : Richard Kelly (II)
Starring : Jake Gyllenhaal, Jena Malone, Drew Barrymore, etc
Official Site : English
シネマスクエアとうきゅうにて
最初の5分を観て「あぁ〜っ。またしても新しい才能が出現してしまった」と思いました。冒頭は、ひっじょ〜に何の変哲もない東海岸郊外のスケッチなんですよ。それが何かもう、尋常じゃないモノを感じさせるのですよね、しょっぱなっから。
う〜ん、この映画のジャンルって何なんでしょう???ホラー、サスペンス、SF、謎解き、学園モノetc, etc…そのどのカテゴリーも軽々と越えてしまっているという感じです。う〜ん、私は好きだなぁこの映画。去年のサンダンス映画祭に出品したのは時期が悪かった〜〜〜。だってある意味、この映画ってちょっち『メメント』とだぶる部分があるんですよ。だからどうしても比べられちゃったんだと思う。そこが惜しい〜〜〜〜〜〜〜っ。
この映画って〜のは、『メメント』や『シックス・センス』の様に、ラストが分かっちゃうとめちゃめちゃつまんなくなるので、ストーリーについて書けないのがツライです。けどね、この『ドニー…』と『メメント』や『シックス・センス』に共通して言えるのは、ラストが分かっていてもう一度最初から観ると二度楽しめるという所。だから、けっこうリピーターのお客さんも多い様です。
久々に“コレは〜〜〜っ!”という映画を観たので、数ヶ月ぶりにパンフとゆ〜モノを買ってしまったのですが、パンフを読むとこの映画の背景となる“1980年代”について書かれたモノばかりなんですよね。確かにこの映画の背景には1988年のアメリカ大統領選挙、つまりレーガン時代の終焉があるワケなのですが、この映画を監督したリチャード=ケリーは1975年生まれ。つまり88年には13歳だった計算になり、この映画の主人公達よりさらに下の世代となるのです。う〜ん、こんな風に若い世代から見たレトロ感覚(でもちょっと覚えてるみたいな)で描かれた時代背景とゆ〜のも、この映画の魅力の一つです。
…にしても何にしても、この映画の最大の魅力はその俳優陣の魅力でせう。“October Sky”(邦題:遠い空の向こうに)でブレイクしたジェイク=ギレンホールは、とにかくスゴイぞぉぉぉっ!実際、『遠い空の向こうに』を観た時は、私があの映画を嫌いだったこともあって全然印象がよくなかったのですが、この映画での彼はまるで別人!アンチ・ヒーロー的なキャラであり尚且つ心優しき高校生という複雑なキャラを見事に演じきっていて、ただただ感嘆してしまいました。ん〜、もしも他の作品でこのキャラを越えることが出来るとしたら、彼は本当の天才役者だと思います。
ヒロインのジェナ=マローンは、『海辺の家』『イノセント・ボーイズ』等、今年最も露出度の高い若手女優の一人。今後も『Cold Mountain』など大作への出演が次々と決まっているので楽しみですね。いかにも隣のクラスメートとゆ〜感じのオネェちゃんなのですが、何気に演技もうまいしなぁ。
脚本に惚れ込んで、自らエグゼクティブ・プロデューサーに名乗り出たドリュー=バリモアは、物語の鍵を握る教師役としても出演。まぁ、役者としての彼女は好きじゃないけど、プロデューサーとしての彼女ってなかなか賢い選択をしていると思います。彼女の恋人教師役を演じたノア=ワイリーは、またまたお堅い職業がよく御似合い。けど私的にはけっこう好きなんですよね。この人。
そして、いきなりカリスマ・メンタルインストラクターとして帰ってきたパトリック=スゥエイジ。う〜ん、ファンが観たら一体どう思うのでしょうか…(^_^;)。
で、リチャード=ケリー監督の新作はまだ公式には発表されていない様ですが、私が映画出資者だったら絶対に黙っていないよな〜〜〜。コレは、『ストーリー・テリング』のトッド=ソロンズ監督や、『ザ・ロイヤルテネンバウムズ』のウェス=アンダーソン監督に続く、新しいインディー映画監督の誕生だぁぁぁっ!驚いたことに、東京では単館上映でありながら、意外なヒットを飛ばしているので、この調子でもっと拡大していくのかもしれません。
「天国の口・終わりの楽園」 **** |
Written and Directed by : Alfonso Cuarón
Starring : Maribel Verdú, Gael García Bernal, Diego Luna, etc
Official Site : English
恵比寿ガーデンシネマにて
次に観た『ドニー・ダーコ』↑の印象があまりにも強烈だったので、カンドーが半減してしまいました。嗚呼、もったいないっっっ!や〜っと観るまで1年も待ったとゆ〜のにね〜〜〜〜(^_^;)。
この映画の存在を初めて知ったのは去年のモントリオール映画祭(その後、ヴェネチア、トロント、NY等の国際映画祭でも上映)。グランプリにノミネートされていたので大体の内容は知っていたし、私がけっこう好きだった『大いなる遺産』と同じ監督だったので、ず〜〜〜っと観たいなと思っていました。アメリカの主要映画賞でも、その殆どの外国語映画賞にノミネートされていたし、何てったって今は亡きグッドマシーンの数少ない外国配給映画ですから。
それにしても、3月のNY公開を皮切りにアメリカで外国映画(しかも字幕モノ)が半年以上のロングランを記録するのは異例のこと。4月中旬の時点で日本に帰国した時、日本での配給先がすでに決まっていたのでわざと観ないで来たのですが、あ〜待ちきれなかったぁっっっ!(>_<)
ま、これだけ話題になった映画なのですから(ちなみに地元メキシコでは歴代興行の新記録を樹立したのだそうで)、絶対ハズレはないはずだっ!と普段ハリウッド映画を専門に観ている友人を連れて観に行ったのですが、うわぁぁぁぁ〜〜〜っ!こんなにボカシだらけの映画だったとはぁぁぁぁっ!!!!ファースト・シーンからひたすらエッチ・エッチの連続で、う〜ん、最後までこの調子だったらどうしよう?友達に申し訳ないっっっ!と焦り果てていたくらいで…(^_^;)。
右上のポスターを観て頂ければお分かりの通り、この映画は一言で言うとネタバレ→3Pの映画です。映画を観た後、このポスターをもう一度見ると「おい、おい、おい…」とツッコミたくなったりして。
けど勿論っ!“それだけの映画”だったら、誰も評価しないですよ。やっぱり映画っていうのは、ラストを気に入ると後味全てがよくなるモノでして。ラスト15分くらいとその前の部分とのギャップが、私には心地良かった。…とゆ〜か、アレってラストのオチ=ネタバレ→ルイザは、自分が余命幾ばくもないことを知ってて敢えてあの二人と寝たとゆ〜コト。…でなきゃ、やっぱタダの○○○○だもんね。ネタバレ→男の子二人の成長ぶり…というか変貌ぶりも、前半がハデな分妙にリアルで何だかカナシかった。
それにしても、ビーチボーイズならぬ男の子二人がい〜〜〜〜〜んだな、コレが。とにかく“脂ぎって”ます(^_^;)。も〜、“アレ”することしか頭にないのね。それがメキシコ男児の国民性かどうかは分かりませんが、いやはやアッパレ。それが段々とエスカレートして来て、この映画の原題”Y Tu Mama Tambien”=And Your Mother, Tooにまで来ちゃった時にゃ〜とにかく絶句。ココへ来て、このお話は絶対原作付きに違いないっ!って思ったんだけど、後で調べたら原作はないんですね〜。監督と、やはり自身で監督業もこなす彼の弟と一緒に書いたのだとか。ま、まさかこれって実話が原作〜〜〜(^_^;)???ちなみにこの脚本は、昨年のヴェネチア映画祭で最優秀脚本賞を受賞しています。
そうそう、アルフォンソ=キュロソン監督と言えば、すでに『リトル・プリンセス』や『大いなる遺産』という二本のハリウッド映画を監督しているので、どんなオッサンかと思っていたら、まだまだめちゃ若いんですね〜。それにしても、前二作のリリカルな作風からは180度の転換。いや〜、とても同じ監督さんが撮った作品とは信じられません。スタッフも前作からの伝手で、ニューヨークの人達が多く絡んでいるとゆ〜のに、作風はまったくの純メキシコ風。それも、私が訪れたことのあるメキシコ・シティーやグアナファトとはまるで違った独特の雰囲気がたまりません。
主人公を演じたガエル=ガルシアは、『アモーレス・ぺロス』で見せたうるうる眼がかなり大人びて来て、知らなかったら同一人物とは気が付かなかったかも鴨。今年だけでも3本のアメリカ映画、そして来年は英米共同制作する『モーターサイクル・ダイアリーズ』で、若き日のチェ=ゲバラを演じます。
『夜になる前に』で、一足早くアメリカ映画に出演していたディエゴ=ルナは、来年度公開が予定されているケビン=コスナー監督&主演の『Open Range』にも出演。実は彼とガエル=ガルシアは私生活でも友人同士なのだそうで、劇中での息もピッタリでした。両者共、この先アメリカ映画への出演が目白押しなので、お互いよきライバルになりそうですね。
…と、まぁ。若きパワーとやはり若さ故のザラザラ感が一体となったこの映画、こうして観終わってもなぜNYで大ヒットしたのかよく分かりません。
けどまぁ、この作品で一山当てたキュロソン監督の次回作は、なんとあのハリー=ポッター:アズカバンの囚人と、またまたリリカル大バジェット路線へ逆戻り。う〜ん、なんかちょっと飛躍し過ぎている様な気もしますがね(^_^;)。
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