評価の満点は5つ星です。
"On the Way" - ***1/2
"King of Comedy" 「喜劇王」****
"God of Cookrey" 「食神」***3/4
"MIIB" - 「メン・イン・ブラックII」***1/2
「山の郵便配達」「心の香り」「一瞬の夢」
"The Spirit of the Beehive" 「ミツバチのささやき」***
Directed by : Jae-Eun Choi
Official Site : English
渋谷シアター・イメージフォーラムにて
昨年のモントリオール映画祭やバーゼルでのビデオアート映画祭、そしてニューヨークのジャパン・ソサエティ等でさんざん話題に上っていたので、観たいな〜、観たいな〜とずっと思っていた作品です。う〜ん、噂通りの“ビジュアル・アート・フィルム”でした。確かにこの映画は、“ドキュメンタリー”とゆ〜カテゴリーでは括れませんね。
基本的コンセプトは、“(人間を含む)全ての生物にボーダー(境界線)はない”ということ。韓国人である崔在銀監督が、日本に占領されている頃の韓国から出発し、アウシュビッツからベルリン、そして現在の板門店に戻ってくる。そこにはニュースフィルムと作者の撮影した自然のデジカメ・フッテージがあるだけで、インタビューもなければ新事実も出てこない。まさに“神の視点”で見た地球の姿しか映し出されていないのです。
う〜ん、私にはど〜しても“好みのドキュメンタリー”という傾向があるのでね〜。『A2』のページにも書いた通り、作者の主観的視点の見難い作品はど〜もダメなのですよ。第一、ベルリンの東西分断や韓国・朝鮮の南北分断をテーマに環境ビデオみたいな映像を見せられたってね〜。私の中では、正直どうもしっくりと来ませんでした。
コンセプトの中身としては賛同するし、“こ〜ゆ〜作品があったっていいじゃないか”という意味では、多いに評価する作品なんですけどね。ちょ〜っと期待が大き過ぎたのもまた事実。まぁ、崔監督の次の作品にも注目してみたいと思っています。
"God of Cookery" 「食神」 ***3/4 |
『少林サッカー』を観るまで全くのノーマークだったチャウ=シンチーが、『少林…』の直前に主演・監督した野心作。このタイトルを聞いて、漫才またはスラップスティック張りの笑いの連発を想像していた貴方…(かく言う私もそうでした)、残念ですがそ〜ゆ〜映画では全くありません(^_^;)。
勿論確かに笑える映画ではあるんですけどね。でも、King of Comedy=喜劇王ってゆ〜のは、どっから出てきたんでしょうか???おそらく、前の作品“食神”にかけているのでしょうけれど…。
そう、この映画の主人公は至ってフツーの人。まぁ、演技にかけては並々ならぬ情熱を持っているし、行き過ぎた所もあるかもしれないけれど、それに“超”が付く代物でもないわけなのです。
正直、『少林サッカー』があまりにも人並み外れた超人集団の集まりであるので、この映画に出てくるキャラクターには、ちょっと物足りなさすら感じてしまうかもしれません。『食神』のキャラクターも、けっこう超人的な人たちが多いので、この映画はむしろチャウ=シンチーの映画としては特殊な方なのかも鴨。
けど、彼の映画の“ちょっとハズれたリアリズム”が好きな私としては、かなりお気に入りの映画でしたよ。映画の撮影現場であるとか、エキストラ達の虐げられた日常(そう、ロケ弁もらえるのってゆ〜のは、けっこう嬉しいモンなんですよね〜〜〜)等など。むしろチャウ=シンチーのキャラクターがスーパーマンではなく、自分で細々と演劇をやったりして地道に努力している所とかね。後半、警察が絡んで来る辺りになってくるとちょっと荒唐無稽という感じでアヤシくなり過ぎてしまうんですけれど…。
それにしても、映画学校の授業でジョン=ウーについてレポートまで出してしまった私としては、彼のジョン=ウー映画バリバリ再現シーンなど、ただただひたすら感動するしかありませんでした。そう!お決まりの教会・白い鳩・ステンドグラス・両手に構えた銃・クロスカウンター、そしてスローモーション。おまけにジャッキー=チェンまでがカメオ出演してしまうのですから、コレは見逃せないっっっ!私なぞ、ブルース=リーについての知識なんかな〜んにもないのですが、多分ファンが観たらゾクゾクのシーンってゆ〜の、沢山あるんだと思います。
そして、コレまた香港映画一般に弱い私にとっては『Wu Yen』に続いて2度目に観たセシリア=チャン。何とコレが映画デビュー作なのだそうですが、それにしてはすっかりの貫禄だなぁ。『食神』や『少林サッカー』のパターンとは違って最初から両思いモードなれど、天下のスター・チャウ=シンチーにちっとも引けを取っていない所がスゴイ。チャウ作品には珍しくキスシーンなんかもあるし(でも一筋縄のキスではない所がチャウ作品だ〜)、何しろ職業病で足を腰に絡ませてしまう彼女がとにかくカワユイのです。今やチャウ映画には常連のカレン=モクも、今回は大女優の余裕を見せていました。それにしてもアクション・シーンうまいよな〜。彼女って、アクション映画には出演したことあるのでせうか???
やはり『食神』『少林サッカー』と比べると、どうしても小振りな作品に見えてしまうかもしれませんが、目立ったCGも特殊撮影もないこの映画の方が、かえってチャウ=シンチーという人そのモノの暖かさが滲み出ていて、私はかなり好きですね。これからも作り続けられるであろうチャウ作品の中では、ユニークな地位を保ち続けていくのだろうと思います。
最後に。パッケージの真ん中に写っているダルメシアン、劇中に全く登場してこないのですけれど、何か意味でもあるのでしょうか?けっこう気になって気になって仕方のない私です(^_^;)。
『少林サッカー』を観た後、まずこの映画を真っ先に観たくて観たくてしようがなかったのですが、何処に行ってもビデオが貸出中でして、や〜っと順番が回って来ました。う〜ん、さすが『少林サッカー』のネタ映画と言われる程、まるっきり同じ様なシーンがた〜〜〜くさん!!!裏切り・リベンジ・コンテスト・屋台のブス女(PICですんまそ〜ん)が主人公に恋してお水ボディコンに変身したり、挙句の果ては少林寺かいっっっ!!!
いや〜、もし私が『少林サッカー』を観る前に、この映画を観ていたらどうだったでしょうね〜。ホント、この映画を何倍にもパワーアップしたのが『少林…』なのですよ。感無量になってたか、メジャーになるのを寂しがってたかのどちらかでしょうね、多分。それにしても、コレを観て『少林…』のCG技術の細かさに改めて納得しました。そっか〜、チャウ=シンチーは5年以上も前からCGや特殊撮影の技術を磨いていたのですね。ど〜りで、サッカー映画を撮る為だけの、にわか技術ではなかったワケだ。
この映画を語る上で必ず話題に上るカレン=モクのおっかない姉御ぶりは、すがすがしくさえ(?)ありました。私の場合、カレン=モクはウォン=カーウヮイの映画でくらいしか見た事がない(つまりアイドルである彼女のコトはまるっきり知らない)ので、逆にブスの彼女でしっくりいってしまったくらい。けど、後半『少林…』の時と同じ様な展開になってきてしまったので(勿論、こっちの方がオリジナルなんですけれど)、ちょっと興醒めしちゃったかな。こうして二作品を通して見てみると、もしかしてチャウ=シンチーって何だかんだ言って女の子の顔はキレイに越したことがないと思っているのかなぁ(少なくとも、潜在意識の所ではね)。ま、かっこいいチャウ=シンチーのことですから、ただキレイな女の子と当たり前に恋愛している方が勿論ずっとつまんないんですけれど。
けど、結局は“純愛”派なんだな〜〜〜。コレって香港映画の定番なのか、それともチャウ作品独特のカラーなのか。三作品ともベタの恋愛ではなくて、すっごくカワユイ恋愛なのね。で、今回テーマ曲の一つってナンカ聞いたことあるなぁ、と思っていたらナント村下孝蔵『初恋』の広東語バージョンだったりなんかして。『喜劇王』の劇中、セーラー服で登場するセシリア=チャンといい、チャウ=シンチーって実はかなり初恋コンプレックスがあると私は見ましたが…。
日本の料理マンガも料理番組も殆ど見た事のない私なので、はっきり言って比べ様もないのですが、コレってやっぱしかなり日本の料理マンガ&番組をパクっていますよね。当時は問題にならなかったのかなぁ???
それにしてもチャウ=シンチーはかわゆい。『少林サッカー』のパンフ内にあったインタビュー写真で白髪だらけのチャウ=シンチーを見て一瞬「ありゃ〜」とか思ってしまったのですが、『食神』での全頭白髪姿を見てソソられちゃった私は、50年後経っても彼のファンであり続けるであろうという確信を持つことが出来ました(^_^;)???
「メン・イン・ブラック II」 ***1/2 |
Directed by : Barry Sonnenfeld
Starring : Will Smith, Tommy Lee Johnes, etc
Official Site : English
渋谷パンテオンにて
おバカ映画と分かっていながら、夏休み映画の恒例としてついつい観てしまう情けない私(^_^;)。ま、この映画も去年何ヶ月もかけて、ちゃ〜んとNYでロケ撮影していましたからね〜。あ〜、あの時撮影してたのって、最終的にはどう編集されているのだろう?とか、そ〜ゆ〜下らない理由もあったりなんかして。そう、昨年は何ヶ月にも渡って、NYのあちこちで『スパイダーマン』とこの『MIB2』が撮影されていたのですよ。あの時は、え〜っ、最終的に映画が公開されるのは1年以上も後???…と気が遠くなっていたモノですが、いざ1年経ってみると早いですね〜。
…と、いつもの様に長い前置きはこのくらいにして、まずは全体の感想から。うぉ〜、短いっっっっ!え〜オドロクべきことに全長88分(アメリカ版のモノ。Imdbより)しかないのだそうで、あの『チャーリーズ・エンジェルス』でさえ90分越してましたからね〜。こりゃ〜短いっ!ま、それだけ映画の内容がジェットコースター的で、あっと言う間に終わってしまったということも出来るのですが、ある意味ちょっと尻切れトンボでもあったかな。
そ、もしも貴方がこの映画に、ラストは敵とどうやって闘うんだろ〜みたいなお決まりのアクション映画的クレッシェンド・エンディングを期待しているのだとしたら、この映画は大ハズレの出来であると言わなければなりません。けど、私はね〜、けっこう好きだったんですよ、この映画。私はどっちかと言えば、そういったアクション映画的フォーミュラよりも、会話の妙とかニクイ演出みたいな方が好きなんでね。あと、やっぱりセットではなくてちゃ〜んとNYでロケやってるトコね。ホント言うと、実はもっともっとワールド・トレード・センターに絡むシーンもあったそうなのですが、舞台が2002年7月なので、やはりWTCの影はキレイに全て消去されていました(T_T)。最後のオチが自由の女神に絡むモノで良かったですね。で、なかったら映画作り直してたかもしれないし…。
今回監督や殆どのスタッフがパート1と同じなのですが、脚本家が違う人物であったので、パート1とは会話の部分で随分と違うトーンになっていましたね。今回は何しろスラングが多い多い!!!もう、字幕付きで見ててセーフ・セーフって感じの部分が沢山ありました(^_^;)。ストーリーは前作品の5年後ということになっていて、主演2人のキャラクターが以前と違っているという設定だから随分助かってるとは思うのですが、それにしても私には別人みたいに思えたくらい。やっぱり脚本家が変わると、映画全体のトーンというモノも随分変わるんですね〜。前回はよりコミック色(アメコミ的)が強かった様な記憶がありますが、今回はもっと2人のキャラクターが映画的に書き分けられていた様な。MIBは、2話目に来て、すでにはっきりと原作コミックスと決別出来ちゃったんだなぁ。この点、同じくアメコミをシリーズ化したライバル映画(?)『スパイダーマン』とは一線を画していると言った所でしょうか。まぁ、『スパイダーマン』のオタッキー・カルト路線も、アレはアレでけっこう好きなんですけれど。
つい先月、『ALI』を観てしまったので、ウィル=スミスのイメージギャップはかなり大きいですね(^_^;)。ま、でも、本来W=スミスとゆ〜人は『Six Degrees of Separation』みたく、もともと演技派路線で売ってた正統派俳優なのですが、ラッパーやっちゃうMIB路線の方が個人的には好きかな。マジで主題歌のCD手に入れよ〜かな、とか思ってるし…(^_^;)。
トミー=リー=ジョーンズについては、良くもなく悪くもなく。あまり印象には残りませんでした。いや〜、それにしてもララ=フリン=ボイルは最高!あの配役はパーフェクトでしたね。普段からエイリアンみたいに細いからなぁ、あの人は…。下着メーカー、ヴィクトリアズ・シークレットのモデルのかっこして出てくるというアイデアも最高でした。余談ですが、今回この映画の大手マーチャンダイス宣伝作戦は凄かった。宇宙人のイミグレの所にバーガー・キングがあったり、使ってる電話がスプリントだったり、乗ってる車がベンツだったり…。そうそう、マイケル=ジャクソンとか、渦中のカリスマ主婦マーサ=スチュワートのカメオ出演にも思いっきり笑えました。ど〜でもいいけど、この映画のメイン・テイストってけっこうキャンプ・キャンプしているのですが(M=ジャクソンやM=スチュワートだけじゃなく、T=L=ジョーンズが郵便局長をしていた田舎の笑える部分なんかも含め)、もしかしてこの脚本家ってゲイだったりなんかして…。あと、宇宙人が徘徊を許されているのがイースト・ビレッジだけ、とゆ〜台詞も、妙に説得力があってコレも大笑い出来ました(^_^;)。
…と、まぁ、かなりNY&オタクテイスト満載の映画なので、全ての人々にとって満足の行く映画かどうかは分かりませんが、個人的には十分に楽しむことの出来る作品でした。この勢いだと、パート3の製作はカタイですよね。さらにパワーアップした続編を期待しています。
"Heartstrings" 「心の香り」***3/4 "Xiao Wu" 「一瞬の夢」***3/4 |
千石の三百人劇場で2ヶ月に渡って行われている“中国映画の全貌2002”より、取り敢えず『太陽の少年』他、以下の3本を観ました。
言うまでもなく、昨年度ミニシアターにおいて観客動員数第一位を記録した映画です(ちなみにアメリカでは未公開)。う〜ん、確かにいい映画だと思うし、悔しいことにしっかり泣かされてしまったのですが(「泣かないぞ〜」と、けっこう気合を入れて観てたんですけどね(^_^;)、やはり『太陽の少年』を観てしまった直後だったので、改めて『太陽の…』がいかに偉大な映画であるかを再認識してしまいました(^_^;)。あ〜、こ〜ゆ〜観方はいかん、いかん、もの凄くアンフェアだなぁ、と自分でも思いつつ…(^_^;)。
まずは撮影。そりゃ〜、中国映画、いえいえ世界中に存在する撮影監督の中でも1,2を争う実力を誇るクー=チャンウェイの映像(『太陽の少年』)と比較する方が可哀想ってモンなのですが、なんだかやけに映画全体がベタっとした緑ばかりで窒息しそうな感じなんですよね。色としては青の次に緑が好きな私も、さすがにこの深緑攻撃にはちょっとうんざり。まぁ、ある意味コレがこの映画の強烈な印象の一つであって、好きだという人にとってはたまらないモノなのでしょうけれど…。
それと、話には聞いていた通り、ほんっとアクションとしては“郵便配達”以外何もないんですね〜。それでよく一本の映画作っちゃうよなぁ。『イル・ポスティーノ』とか『かしこ』とかは、主人公が郵便配達屋さんというだけで、ドラマの中心は意外と外の世界だったりしてましたから。
ご覧になった方達はお分かりの通り、この映画のテーマは父子の触れ合い(うわっ、歯が浮きそ)でして、言葉少なで淡白な親子関係を持つ日本人、特に中年以上の観客層にこの映画が圧倒的支持を受けたのは、非常に納得のいくところ。ソレはまだいいのですが、『初恋のきた道』的安っぽい回想シーンは頂けなかったなぁ。まぁ、あの映画に比べれば、こっちの映画の方がずっとずっと好きですけれど。終わり方に関してはかなりさっぱりしていて、その部分はかなり好感が持てました。父役の役者さんが素晴らしかったのは、私がここで書くまでもないですね。
余談ですが、このフォ=ジェンチイ監督はチアン=ウェン監督と同じく俳優出身で、田壮壮監督の『盗馬賊』なんかにも出演していたのだとか。『山の…』の後の作品もどこかの映画祭で賞を取っていたと思うので、これからの作品にもじっくり注目して行きたいと思っています。
ホウ=シャオシェン監督『冬冬の夏休み』が大好きなある人に勧められて観に行ったのですが、やっぱりそ〜ゆ〜映画でした(^_^;)。最近、アンチ子供ネタ映画を自称している私なので、ちょっとヤバイかな〜とは思っていたのですが、かなりウェルメイドな映画であったので、観終わった感想としては満足しています。そうそう、こまっしゃくれた男の子と頑固一徹な老人との触れ合い…とかいう、最近特にありがち〜〜〜な話ではあるのですが、ディテールがよく出来てるので、その点は騙された気にはなりません(^_^;)。こういう言い方、大っ嫌いなのですが、やはり一言で言うと“心に染み入る”映画です。
ま、ストーリーは至って単純。上に書いた様に頑固老人と現代っ子そのままの孫の触れ合いにプラス、老人カップルの清い恋愛なんかも絡んで来ちゃって、もしプロットだけ見せられたら私、絶対に観に行かない映画だったと思います(^_^;)。
コレも映画の誉め方としては、あまりしたくないのですが、やっぱり子役の二人は良かったです。特に男の子の方ね。やっぱり京劇がウマイということで選ばれて来た子なんでしょうけれど、あのナマイキさがなんとも二重丸。で、日本では『大地の子』出演でお馴染みのお爺さん役はやっぱりウマイ。まぁ、最初から彼はうまいに違いないと思って観てしまったので、あまりオドロキみたいのはなかったのですが…。
孫周(スン=ジョウ)監督による第2作目は、現在日本で公開中『Breaking the Silence - きれいなお母さん』。最近殆ど女優活動を展開していないコン=リーが出演したがったくらいなのですから、彼女よっぽど脚本を気に入ったのか『心の香り』を気に入ったかのどちらかなのでしょうね(またもや子供ネタのお話なので、多分劇場には観に行かないと思うけど)。『心の香り』では、ハワイやモントリオールの映画祭で田壮壮や謝晋監督に続く久々の大型新人とまでもてはやされた様ですが、新作が少ないな〜。今度は、子供ネタ以外の新しい新境地を見せてくれることを期待しています〜〜〜。
今、世界が最も注目する中国人監督の一人、ジャン=ジャ=クー監督の長編デビュー作。私は先に3時間20分とゆ〜超大作(?)である『プラットフォーム』を観てしまっていたので、2時間弱というのはむしろ短く感じるくらいでした。けど、この独特なテンポで90分以上というのは、慣れない人にはちとツライかも(^_^;)。
この作品も『プラットフォーム』と同じく、全編を通して職業俳優を一切使わないドキュメンタリータッチ。けど、『プラット…』と比べれば随分とストーリー性も話のオチもあるんじゃないかと思いました。そう考えると『プラット…』ってホンっとに思い切って作ってあるんだなぁ、と改めて感心してしまうのですが。
『プラット…』でも主人公を演じた王宏偉は、頭でっかちで、ホントこれほどカッコよくない映画の主人公がかつていただろうか、とゆ〜くらいカッコの悪い出で立ちなのですが(大抵の俳優さんは、顔良くなくてもスタイルは良かったりするでしょう?)、『プラット…』の時と同じく、ストーリーが進んでいくにつれて段々魅力的になっていくんだから不思議ですよね。特に今回は、ラブストーリーの輪郭が『プラット…』よりもはっきりとしているので、中々ジーンと来てしまうシーンなどもありました。
あ、でも同じ主人公を(しかも顔が悪くて冴えないヤツ)使って、淡々とした映画と撮るなんていうと、ちょっと蔡明亮監督の映画を想像してしまう人もいるかもしれませんが、二人の作風はまるで違いますので、悪しからず。どちらも強烈な個性を持っているという点では一緒なんですけどね。
けどまぁ、この映画の原題『小武』が“ウーちゃん”で、蔡監督の小康“カンちゃん”を彷彿とさせる部分があったり、『プラットフォーム』での主人公の役名が明亮であったりするのは、もしかしてクー監督、蔡明亮のファンだったりなんかして???
実を言うと、『プラットフォーム』を観た時、なぜこの監督がこんなにも世界三大映画祭からちやほやされて絶賛されまくっているのか良く分からなかったのですが、この作品と照らし合わせてみてかなり分かった様な気がします。コレ観てからあっちを観ると、クー監督の自信とか個性とかがよりはっきりして来るのですね。やっぱ映画もナマモノだなぁ。順番間違っちゃうと見える部分も見えなかったりしますもんね。
と、まぁ、中国映画界に久々に強烈な個性の監督が登場か?とゆ〜コトで、今年のカンヌ映画祭コンペに入賞した『Unknown Pleasures』や、短編の『In Person』
など、まだまだこれからの活躍が楽しみなクー監督。外野の雑音に負けず、このまま個性バリバリの映画作りを続けていって欲しいと思います。
El Espíritu de la colmena 「ミツバチのささやき」 *** |
Written and Directed by : Victor Erice
Starring : Ana Torrent, Isabel Tellería, etc
テアトル・タイムズスクエアにて
『エル・スール』『マルメロの陽光』を監督した、スペインのヴィクトル・エリセ監督による長編デビュー作。なんと1973年、殆ど30年近くも前に作られているんですね〜。この映画もやはり、とある映画監督から「観るなら絶対に映画館で観なきゃね〜」と釘をさされていたので、今までビデオに手を出さず、我慢していた作品の一つです(^_^;)。
う〜ん、そうやって何年(何十年?)も待ち続けているのも、ある意味考えモノかもしれません。『ラスト・タンゴ・イン・パリ』を観た時もそうだったけど、この映画もやっぱり、まだ私自身がスレる前(?)の20代前半に観ていたら、もっと素直に観られたかもしれなかったので。つくづく映画とゆ〜のは(も?)、観た時の状況に左右されてしまうモノですね〜(^_^;)。
ストーリー等については、あちこちに書かれているでしょうから、ここでは割愛します。ストーリーの舞台になっている1940年代のスペイン地方部とゆ〜のは中々奥が深く、主人公アナをめぐる人達の部分(父親・母親・ナゾの脱走兵など)に関して、いろいろと深読みの出来る作品なのですよね。けどまぁ、怒涛の忙しさの直後、ほぼ1週間ぶりに映画を観た頭ウニウニの私に、そんな余裕はありませんでした(めちゃめちゃ言い訳してるなぁ(^_^;)。
だから今回この「ミツバチのささやき」に関する感想、かなりやけくそヤケクソになってます。まだ未見の方には殆ど参考にならないと思うし、作品に対してもけっこう失礼な感想かも鴨(クドイようですが、このHPの内容は、あくまで私の日記です(^_^;)。
…とゆ〜ワケで、私の“アンフェアな”第一印象は、「な〜んか、80年代の中国映画みたい」でした(ただし、あくまで映像的な部分の印象です。内容的には全然違いますので悪しからず)。勿論、70年代に作られたこの映画が、80年代の映画をパクっているはずもないのですが、それだけ私にとってはインパクトが薄くなってしまったということですね。仮にもし私がこの映画を70年代に観ていたら…、という言い方も出来ますが、それはそれで年令的にこの映画の理解なんて到底不可能だったと思いますし(^_^;)。
後は、自称“アンチ『I am Sam』(観てないけど)”の私として、この映画と同じ様に“かわいくて演技のうまい子役が主人公の映画”には、どうしても入り込むことが出来なかったのですよ。え〜、そりゃ〜、もう主人公のアナと姉のイザベルのかわいさ&演技のうまさといったらありません。けど、ソレはもう最初から分かっていたことなんでね〜。つくづく前評判を聞きすぎてから映画を観に行くのは考えモンですね(コレばっかし)。
(以下、このパラグラフはちょっとネタバレ)
ただ私的にいいなと思ったのは、少女が単なる純真無垢の象徴としてだけ描かれているのではなかったというコト。この映画で重要な役割を持つモノの一つに、少女の見た(かもしれない)“精霊”の存在というのがあるのですが、コレが他の映画にありがちな“少女の純真な心が精霊に通じて云々…”という展開になっているのではなくて、この“精霊(=彼女にとっては、映画で見たフランケンシュタイン)”が、彼女の遠い将来に忍び寄る(?)大人の世界や、舞台の背景になっているスペイン内乱、ファシズムの暗い影などを暗示していたというところでしょうか。だからこの映画って、基本的にはめっちゃ暗いです(^_^;)。それもかなり救いのない様な暗さだったりなんかして。
個人的には父親のキャラについてもっと詳しくみてみたかったです。原題の意味は『蜜蜂の巣箱の精霊』。もしこの映画に原作があるのなら、このお父さんと蜜蜂の間にはもっと哲学的な関係があったはず。コレが私には殆どよく見えなかったし、二人の娘との関係もあともう少し見たかった。
それに、お母さんのキャラクターね。やっぱこの映画って原作あるのかな?彼女が手紙を書いている相手については、あまりにもナゾで(まさか、あの負傷兵じゃないですよね???)ちょっと欲求不満だったかも鴨。あと、ど〜でもいいけど彼女ってなんかクローネンバーグ監督による『クラッシュ』のデボラ=アンガーにめちゃめちゃ似てませんか???
10年に一度というこれまた寡作のエリセ監督の最新作は、今年のカンヌ映画祭でプレミア上映された『Ten Minutes Older: The Trumpet』。これは、チェン=カイコー、スパイク=リー、ヴィム=ヴェンダース、ジム=ジャームッシュ、アキ=カウリスマキ監督とのコラボレーションという、なんとも豪華な短編オムニバス作品。日本ではいつ公開になるのでしょうか?う〜〜ん、待ちきれな〜〜〜い。けど、それまでに『エル・スール』と『マルメロの陽光』を観ておかなくっちゃぁぁぁっ。
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