評価の満点は5つ星です。
"Chapliniana" - ****
"No Such Thing" - ***
"Shot in the Heart" - ****1/2
"Stolen Summer" - *
"Take Care of My Cat" - 「猫をお願い」 ***
NY映画オタクの殿堂、フィルムフォーラムが主催する『The Great American Comedy』の一部として特別上映されたモノ。この企画は先週から始まり、向こう10週間に渡って開催される予定です。上映の前には、フィルムフォーラムのマネージャーがわざわざ壇上に立って、この上映までの経緯を話してくれました。
アメリカン・コメディの特集に、当然チャップリンは欠かせないモノ。ところが現在、チャップリンのメジャー作品の殆どが今年から来年にかけて予定されている全世界規模のレトロスペクティブに向けて配給権が抑えられ、今回のシリーズでは上映出来ないそうなのです(ちなみにそのこけら落としとして、私がこれまでに観た全ての映画の中でダントツ1位で大好きな『独裁者』が、今年のベルリン映画祭で特別上映されました)。
そこで頭を捻ったフィルムフォーラムの主催者達が、配給権にひっかからないフィルムばかりを集めたのが今日の上映会。殆どの作品で、ピアノが生演奏されていました(昔のサイレント映画のBGMは、その殆どが劇場での生演奏だったんですよ〜)。数年前やはりフィルムフォーラムで行われた“小津安二郎サイレント・レトロスペクティブ”でもピアノの生演奏&弁士による語りが行われていたので、私にとっては初めてではありませんでしたが、いいですね〜。
なんてったってチャップリンは、私にとって不動の神様(女グセが悪かろ〜と、晩年は才能がなくなってしまお〜と、好きなモノは好きなのでっす!)。勿論ビデオは何本も持っていますが、彼の映画はやっぱり銀幕のスクリーンで観なければ!!!!!もぉ、始まってすぐなんて私ボロボロに泣いてしまいました。チャップリンをスクリーンで観られるだけで、最高にシアワセなので〜す(^_^;)。
冒頭は、チャップリン映画の予告編を幾つか集めたモノ(残念ながら『独裁者』はなかったケド)。特に『街の灯』『黄金狂時代』『モダンタイムス』については、何度も何度も観ているので、次にどんなギャグが来るのかもうすでに全部分かっているのですが、それでもやっぱり大声出して笑ってしまうんですよ〜。劇場だと、観客が同時一斉に笑うからいいですよね〜。う〜〜〜〜ん、この感動何回でもいいから味わいたい〜〜〜。
そしてお次は、チャップリンのプライベートを捉えた貴重なドキュメンタリー映像。コレも私は何度か観ていたし、アッテンボロー監督による伝記映画『チャップリン』でも、このドキュメンタリーに収められていた場面がそのまま再現シーンとして使われているので、私にとってはそんなに目新しいモノでもなかったのですが、やっぱい〜わ〜〜〜〜〜(ただの大ファンってだけの私(^_^;)。
そしてその後、ビデオにもなっていないという貴重な作品“The Bond”へと続くのですが。この作品、実はチャップリンには珍しい“プロパガンダ映画”としてチャップリン研究家の間ではちょっと名の知れた作品でもあります。友情、愛、そして結婚というテーマの後、“自由へのBOND(この場合はお金のコトです)”と題し、トランプ・チャップリンがお金の入った袋を軍へ寄付していきます。最初に軍の勧誘ポスターによく登場する有名なアンクル・サムがチャップリンからお金を受け取り、彼が労働者にお金を渡すと、今度は労働者が銃を兵隊に渡していく。そして最後にはその兵隊がムッソリーニのファシスト軍の制服を着た兵隊をやっつけるのですね〜。確かこの映画が作られたのは1928年だったかな?彼はこの後、徹底的な平和主義者に転向し、1940年には『独裁者』を製作。ファシスト政権やナチズムに強く反対しているのは勿論のこと、自分の過去の作品を否定するまでの非暴力主義と壮大な国際平和を唱える様になっていきます。この作品の一つ前である『モダンタイムス』で資本主義における労働疎外、そしてこの作品の一つ後である『殺人狂時代』で核爆弾の使用に強く反対したチャップリンは、これら3つの作品によってFBIからマークされる様になり、終に国外追放となってしまったのは、皆さんもご存知の通り。彼の後の人生を踏まえてこの作品“THE BOND”を観る時、その意味合いは非常に複雑なモノになって面白いです。
そしてその他、チャップリンのモノ真似で当時人気を博したある女優さんの短編映画。え〜、名前メモしたのですが、どこに書いたか忘れてしまいました(^_^;)。この短編は、実際にこのモノ真似上手な無名女優がタレント・オーデションへ行き、チャップリンのモノ真似で一仕事するのがその内容。彼女はチャップリンの作品『チャンピオン』のモノ真似をするのですが、本当に似てるんですね〜、コレが。ただ歩き方や仕草が似ているというだけじゃなくて、何かもうその“雰囲気”がそっくりなんです。チャップリンの持つ“暖かさ”とか“悲しさ”とか・・・。彼女は女性だから勿論チャップリンと顔が似ているワケでは決してないし、寸分違わぬコピーなんて誰も出来るはずがないのだけれど、もうその“コアの部分”をしっかり抑えているので、細かいことなんか全然気にならないんですね〜。うん、コレは本当に貴重な映像でした。
それからもう一つ、アニメ映画『フィリックス』の短編が上映されたのですが、このエピソードではフィリックスがハリウッドへ行って役者になろうとするんですよね。で、スタジオのディレクターの所へ行って、いろいろな演技をしてみせる。その最後に彼の言う台詞というのが、「こんなオリジナル(これまで他にない)な演技も出来るよ」。で、彼の演じてみせるのがまるっきりのチャップリン。そこへ本物のチャップリン(漫画バージョン)が出てきて、フィリックスが一言。「僕がハリウッドで職を得られなかったのは、おまえのせいだ〜」。つまり、フィリックスは自分こそがたった一人のオリジナルだと思っていたのに、実はもう先に同じコトをやってた人(=チャップリン)がいるのを知って、チャップリンに八つ当たりをしたというワケです。う〜ん、コレはけっこう面白かった。
実は用事があって、最初の1時間しか観ることの出来なかったこの『CHAPLINIANA』。短編を集めたモノとは言え、私にとっては見ごたえ十分でした。フィルムフォーラムではこの後、幻の名作と言われる『HANDS UP』という映画も上映されていたのですが、どうしても都合が合わなくて観ることが出来ませんでした。(>_<)。
いや〜、短編映画と言えども、やはり侮れないです。こうした作品こそ、やっぱりきちんと映画館で観たいモノですね〜〜〜。
Written and Directed by : Hal Hartley
Staring: Sarah Polley, Robert John Burke, etc
Official Sites :English
いや〜、見事にコケてくれました(^_^;)。ハル=ハートリーってけっこう好きで一応全作品観ているんですけれど、ど〜しちゃったの?って感じ。しかも前作の『ヘンリー=フール』はかなり好きだったので、オドロキでした。まぁこの作品、昨年のカンヌ映画祭で招待上映された時にかなりけちょんけちょんの評だった為、ある程度の予想はしていましたが、ここまでヒドイとはね〜(^_^;)。
まず最初に。ハル=ハートリーにコメディの才能はない様ですね。もう、コレっきりにした方がいいと思います(^_^;)。すでに内容すら忘れてしまいましたが、いちお〜笑いのシーンっていうのが何箇所かあったんですよ。けど結局は場内で明らかに"ハズした〜"ってな感じの苦笑が漏れるばかり(^_^;)。う〜ん、そ〜いうシーンが2〜3個所はあったんですよね、少なくとも…。
あとこの映画って、殆ど主演のサラ=ポーリーのプロモーション・ビデオみたいなモンで、ファンは喜ぶだろうけど、他の観客は…ねぇ…(^_^;)。
え〜大雑把に言うと、この映画は『美女と野獣』『エレファントマン』『フランケンシュタイン』をぜんぶ足して割った様な作品。コレを"各作品へのオマージュ"と解釈して見れば、まぁまぁ見られないこともないのですが、そ〜ゆ〜のを全部ふっ飛ばしてみると「なにコレ〜〜〜〜?」というのが大方の感想でしょう。特にラストなんかクラシック映画としての『フランケン…』を意識しているから、わざと(?)セットがちゃちかったりして、最新CG映画を見慣れている私達が何も考えないで見るとね〜(^_^;)。
お話は、婚約者が消息を断ったアイスランドへ謎を解くために向かった少女(…と言っても19歳とかだったと思う)が飛行機事故に合い、奇跡的に助かった後、アイスランドで"死ねないモンスター"と出合って一騒動…というもの。かなり荒唐無稽な内容なのですが、"ファンタジーとスレスレの位置にある"為、非常にその中途半端さが気になる作品となってしまいました。
一番の敗因は、その"モンスター"に殆ど魅力がないコトかな?彼の顔はモンスターの特殊メイクによって終始見ることが出来ないのですが、うまい俳優さんって変装しててもカリスマ性がありますもんね〜。
サラ=ポーリーはいつも巧いんだけど、他の作品と比べるといまイチだったかな〜。モンスターといる時の彼女はまだいいとして、NYに戻って来てからのバカっぽい彼女は、ファンでも怒るんじゃないかっていうくらいバカっぽかった(^_^;)。モンスターと出合ってから彼とうち溶けるまでの過程も、あまり説得力なかったし、キャラとしては非常に中途半端に描かれていた様な気がします。
ヘレン=ミレンも、勿論いつも巧いんだけどこの作品ではな〜。非常に"のっぺりとした"悪役だった様な…。彼女だったら本当はもっと出来るでしょ〜〜〜。
『ヘンリー・フール』からのカメオ二人。ジェームス=アーバニアックはホテルのコンセルジュ、ハートリー監督の奥様でもある二階堂ミホは同じホテルのメイド役でちょい役出演していましたが、どちらもいまイチでした〜(T_T)。
ともあれ、日本ではかなり人気の高いハートリー監督ですがら『現代のおとぎ話』とか何とか言って大大的に公開されるのでしょうね〜。ハイ、この映画最初から"おとぎ話を観に行く"というつもりで観に行かないと、コケまくってしまいますよ〜〜〜(^_^;)。
Directed by : Agnieszka Holland, Written by : Frank Pugliese
Staring: Giovanni Ribisi, Elias Koteas, etc
Official Sites :English
1週間のみの限定上映。
も〜何ヶ月かぶりに、"ちゃんと出来た映画を観たな〜"という気がしました。話と配役が地味過ぎるので殆ど話題には登らない映画ですが、私的満足度は100%。『ノーマンズ・ランド』を観て以来、久々の大ヒットです。
『ヨーロッパ・ヨーロッパ』『秘密の花園』や『ワシントン・スクエア』でお馴染み、ポーランド出身のアグニシェカ=ホランド監督の最新作。彼女は他に、レオナルド=ディカプリオ主演『月と太陽に灼かれて』を監督したことでも有名なのですが、こちらの作品私の方は未見です。
この作品を観た一番の理由は、勿論私がホランド監督の大大ファンだからに他ならないのですが、まず彼女の作品の特色とも言うべきヨーロッパ色のかけらもない、このアメリカ・アメリカしたストーリーを一体何故彼女が選んだのか興味津々でした。まぁ、そんなコト言ってしまえば、『ワシントン・スクエア』だって彼女の作品らしくないと言えばらしくないのですが(一応、コスプレものという所でセーフ?)、このお話は何と言っても、ユタ州ソルトレィクにある刑務所が舞台。ど〜しちゃったの?彼女???って感じ。
けど、全体的な印象はやっぱり彼女の作品という感じでしたね〜。時々出てくる幻想シーンや回想シーンなんか、彼女の本領発揮しまくりって感じだったし、主人公の青年のナイーブさなんかやっぱりこれまでのホランド監督作品に通じるモノがありました。
ホランド監督は、日本でもある程度知られていると言えば知られていますが、主演2人がそんなに有名でないのと(でもこれから有名になるかな?)、話の内容があくまでも地味・地味なので、この映画が日本で公開される確立は極めて低いでしょう(T_T)。内容を一言で言ってしまうと、死刑宣告をされた兄と彼に面接に来た弟との執行直前の数日間の触れ合いを描いた映画です。そう、刑務所での面会会話が作品の中心になっているティム=ロビンス監督『デッドマン・ウォーキング』とこの映画って、設定的にはちょっと似ているところがあります。
けど、監督が違うと、似た様な設定をこうも違って撮ることが出来るんですね〜。二人の関係がめちゃくちゃ湿っていて(?)、あくまでも1対1の対象的な関係として描かれた『デッドマン…』に比べ、『Shot…』の方はお互い兄弟であるのにその間には常に距離がある。勿論、勢いあまってどちらかが感情的になってしまう場面もあるのですが、それでも『デッドマン…』の様な"湿り気"はどこにもないのです。コレはどっちがいいとかいう次元ではないんですよね。私はどっちも好きなんだけれど、とにかく違う。それにしても両監督共、AとBが、ただ面と向かい合って延々と話をするというこの単調極まりないシーンをいくつも何十分も見せておいて、あくまで観客を飽きさせない…。う〜ん、コレはつくづくスゴイぞぉぉぉ。
おそらくこの映画を観る多くの人が考えるだろうと思うのですが、このお話って十分お芝居でやれるんですよね。…っていうかむしろ芝居向けの様な気がしました。でもホランド監督、あくまでも映画的にきちんと撮っていましたね。いや〜、やっぱ天才ですよ彼女は。
さて、監督のベタ誉めはこのくらいにしておいて、この映画を評価するのに主演二人のお手柄を無視するわけにはいかないでしょう。
まずはジョバンニ=リビシ。う〜ん、彼って『ボイラー・ルーム』とか『モッド・スクワッド』なんかのポスターで(作品自体はどちらも未見)顔はよく観ていたんだけど、好みのタイプでないので、わりと無視してたんですよ。『プライベート・ライアン』に出てた彼のこと、あんましよく覚えていないし。子役では昔からいろんな映画に出てる役者さんなんですね。で、G=リビシとA=ホランド????って、全然合わないよ〜、と最初かなり拒否反応があったのですが、それは全くの間違いでしたっっっ。
いや〜〜〜〜〜〜〜、うますぎ。こっ、コレは『ストーリー・テリング』のマーク=ウェーバーにも匹敵する才能だぁぁ。とにかくその演技を見ているだけで、「おおっ、そう来るか〜?」みたいに驚かされてしまうのです。彼の演じるマイケルの性格自体からして、コレはホランド監督の演出力が強大なパワーを持っているのは明らかなコト。けど、いくらホランド監督が素晴らしい演出家とはいえ、この演技は予想以上だったに違いありません。ナイーブでそれでいてシャープで、泣きの場面もわざとらしさを通り越して、何か違うものになっている。そう、マーク=ウェーバーの演技もそうだけど、これはもう私の想像範囲を超えた演技なのです。"いつも巧い役者さん゛とか゛カリスマ性のある俳優゛というのは、この世にゴロゴロしていますが、こ〜ゆ〜゛サプライズ゛をくれる役者サンってなかなかいないですよね。これからの彼が、楽しみ楽しみ…。ど〜でもいいけど、ソルトレイクにいる時の彼がヘンな花柄みたいなシャツを毎日毎日着ていたのは、妙に印象的でした。刑務所に入っている兄の方は毎日着替えていたのにね(^_^;)。
そしてその兄役を演じたエリアス=コテアス。うまい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ。もうこの作品で私、大ファンになっちゃいましたよぉぉぉ。彼の作品で一番有名なのはアトム=エゴワイアン監督の『エキゾティカ』。この映画での彼は、映画オタクの間でかなり評判高いです。それ以外に私が見たのは『シン・レッド・ライン』くらいかな。けど、彼って実は『コラテラル・ダメージ』とか『ノボケイト』とか、私が頼まれても一生見ない様な映画にちょい役でけっこう出演しているんですよね。なんてもったいな〜〜〜〜いっっっ!いや〜、とにかく巧いです。彼の場合、G=ラビシの様なサプライズ演技はそんなにないのですが、その代わり゛味がある゛。こ〜ゆ〜人、隣にいたら絶対私は惚れちゃうなぁぁぁぁぁぁっ。彼がたとえ殺人鬼で死刑囚であっても気にしない(???)。怒り、悲しみ、やるせなさ、彼の存在感の中にその全てが詰まっているのです。う〜ん、彼の素晴らしい演技を世に広める為にも、この映画は是非とも日の目を見るべきだぁぁぁっ。
他は、父親役にサム=シェパード。この人もなんだか最近はタイプキャスト化して来てるなぁ。私好きなんですけど、かなり印象薄かったです。母親役のエイミー=マティガンは、『ララミー・プロジェクト』の時とまるで別人みたいで、ネット検索するまで全然気がつきませんでした。若い時と歳を取ってからのギャップがうまく出てましたね〜。エリック=ボゴシアンは、けっこう印象的な役だったんですけれど、後半の出番が…(^_^;)。
…というワケで、HBOのTV映画として一旦は昨年の10月に放送されてしまった作品ですが、ちゃんと劇場で観て良かった〜〜〜。興行的には大失敗の映画と言えると思いますが、こんなハイクオリティで素晴らしい出来なのですから、十分誇りを持っていい映画だと思います。是非、発売中のビデオを買いたいんですけれど、$50(約7000円)は痛いな〜〜〜(^_^;)。
Written and Directed by : Pete Jones
Staring: Aidan Quinn, Amara Balthrop-Lewis , etc
Official Sites :English
2週間のみの限定上映。
HBOの『プロジェクト・グリーンライト』というTV番組によって誕生したというユニークな経緯を持つ(名目上の?)インディー映画。TV番組とタイアップをして製作された映画と言えば、日本では『未来日記』などがありますが、この映画の場合はちょっと違うので少し説明をしておきますね。
『グッド・ウィル・ハンティング』によってミラマックスという映画製作&配給会社にオスカーをもたらしたマット=デーモン&ベン=アフレックの二人が、彼等の親友でもあるモーレツ・プロデューサー(?)クリス=ムーアと組んでシナリオ・コンテストを開催。そこで優勝した脚本家&監督に対しミラマックスが100万ドルの予算を出して映画を製作し、その過程をドキュメンタリーにして毎週少しずつ見せた…というのが、この番組の内容です。
いや〜、思っていた以上に泥沼の映画製作でした。私もインディー映画だったら数本その製作に関わっているので、大体どんな混乱(?)が起きるかの予想はついていたのですが、ここまでヒドイとはね〜(^_^;)。まず、監督がシロウトであるが故の時間超化モンダイ。これはインディー映画にはよくあるコトなんです。監督が自分のイメージを映像化する時、こう撮るみたいのがあまり具体的に分かってないから、すっごい時間のロスが出る。その辺が経験ある助監督やプロデューサーによってフォローされるのならまだいいのですが、運悪くメイン・プロデューサーのクリス=ムーアは撮影中、夫人の出産に立ちあう為にLAへ。残ったプロデューサー2人(中堅ベテランと新人P)の仲がめちゃくちゃ悪いと来たモンでさぁ大変だぁぁ。
インディー映画とは言え、スタッフの殆どがユニオンのメンバー。だから6時間ごとには必ず食事を取らなければならないのです。もし、その時間が少しでもオーバーすれば多大な罰金を払わなければならないし、かと言って、撮影が終わらなければ困る。ロケ撮影が多かったので、まさに日照時間との戦いでした。…に加えて主人公が二人共子供!!!子役には、一日何時間以上働いてはいけないという規定があるので、コレもまた時間との戦い。おまけに予算がわずか100万ドルと来たモンだから、撮影日数もろくに確保できないし、もう踏んだり蹴ったりの状況なのでした(^_^;)。100万ドル(約一億三千万円)って、けっこう多大な額みたいに聞こえますが、ココ最近のインディー映画では、スターが全くいなくてかなり規模が小さなモノでも軽く2〜300万ドル超えるのは当たり前。私が数年前にインターンをした『ハピネス』も、当初220万ドルの予定が、結局最終的には300万ドル超えてましたから。
…で、そんな悪条件に加えて二人のプロデューサーは喧嘩ばかり。中堅ベテランの方がエグゼクティブPのクリスに告げ口をして、新人Pの方が一時はクビになりかける一幕も。う〜ん、ココまで来るとヤラセか?と思ってしまう程(^_^;)。おまけに悪天候や子役に関するハプニングが続きまくって、よくまぁ取りあえず全部撮影しましたね〜(^_^;)。
編集に入って、あまりにも使えないフッテージが多いので追加撮影を願い出たものの、結局ミラマックスから追加予算のOKが出ず、出来あがったのがこの作品。ま、それでもサンダンス映画祭でプレミア上映されたんですから、幸せですよね〜。
前置きがあまりにも長くなりましたが、さてさて本編の映画の方は…。
え〜、何はともあれたまには゛めちゃめちゃ出来の悪い見本を見る゛というのもいいですね〜(^_^;)。
まず最初に私、どうしてこの脚本がコンテストに優勝したのか全く分かりませんでした。確かに話のコンセプトというか、目の付けどころはいいんですよ。互いに゛天国へ行く方法゛を探す、カトリック家庭で育つアイリッシュとユダヤ教会牧師の息子二人の友情物語。コレって、やり様によってはかなりいい映画になったと思います。けどね〜、台詞があまりにも゛頭デッカチ゛過ぎるんです。まぁ、頭のいい男の子が多少こまっしゃくれた長い台詞を話すのはいいんだけれど、その会話にまるっきりリアリティがないのね。そう、ちょうど英会話教室のスキット・クリップか何かでAとBが会話している様な感じ。Aが「○○○…」と話すとBが「△△△…」と答え、それに対してまたAが「□□□…」と答える、みたいな。ミラマックスのことだから、脚本ディべロップの段階でも相当手直ししたはずだと思うんだけれど、それでアレ〜?って感じでした(^_^;)。
編集の方も、ご存知の通りアメリカでは監督に編集権がないので、とにかくバッサ・バッサと切ってありました。雨の野球場のシーンなんか、あんなに苦労して撮ったのに、全部切ってあったモンね(^_^;)。エキストラで来た人達怒ってるんだろ〜なぁ。それから、やはり苦労しまくって撮っていた海での泳ぎシーンもしっかり切ってありました。その他でも、特に前半など、リズムを取る為に場バッサ・バッサと切ってあった部分が超多数。これで監督の意向を組んでカットの数が少なかったら、一体どうなっていたコトか…(^_^;)。
美術、撮影、編集etc. 一流のスタッフを揃えてこんなんですからね〜。いかに新人監督の映画に”お蔵入り”の作品が多いのか、コレで納得がいくハズです。他にも細かいコトを言えば、コンティニュイティ・プロブラム(同じシーンでプロップ等の位置が変わったりしていること)なんかもアチコチに。例えばピートの父親と兄が喧嘩しているキッチン・シーンなど、ショットによって壁に吊るされた背景のマグカップが1つになったり2つになったり…(^_^;)。映画って、本来こ〜ゆ〜見方をするのは邪道極まりないコトなんですけどね(^_^;)。
ま、個人的にこの監督サンは全然好きではないのですが、一言「このままミラマックスに踊らされただけで終わるな〜!」と私は声を大にして言いたい。この先このまま“一発屋”で終わるか、それとも自力で何らかの道を開くか?ソレは皆彼次第だ〜…って当たり前か(^_^;)。
それにしても、この映画でけっこう大損したらしいミラマックス、『プロジェクト・グリーンライト』第二弾はなくなってしまいましたが、企画としてはかなり面白かったので、出来れば続けて欲しかったです。日本で今、アメリカやイギリスのTV番組をリメイクしまくってるらしいですが、この番組のリメイクに取り組む制作会社、どっかにないでしょ〜かね〜。
Goyangileul butaghae 「猫をお願い」 - *** |
Directed by : Jae-eun Jeong
Staring: Du-na Bae, Yu-won Lee, Ji-young Ok, etc
Official Sites :English & Korean
ニューディレクターズ・ニューフィルム映画祭にて限定上映。
一言で言って、この映画は『友へ/チング』の女の子バージョンです。幼馴染みだった仲良し5人が、社会に出るにつれてどんどん離れていってしまう。学生の時には友情関係に大した影響も与えていなかった家庭環境の違いが、年齢を重ねるごとにどんどん大きくなっていく。そこに全く正反対のAとBがいて、狭間に立って悩む友達がいるという構図も基本的には『チング…』と全く同じ構図ですね。舞台がソウルでなく田舎過ぎない仁川(インチョン)であるという点もよく似ています。ただし監督のチョン=ジェウンはQ&Aの時、この映画製作はすでに4年前から始まっていたと言っていたので、『友へ…』のパクリでは決してありません。
粗筋を簡単に言えば、高校卒業まで大の仲良しだった5人組(うち二人は双子同士)が、社会に出てゆくと同時にバラバラになっていってしまうというストーリー。5人の間に、一匹の捨て猫が介在していることから、このタイトルが付いています。
まず一言で、この映画長い…。ある意味このドラマって10話くらいの連続ドラマ向きなんですよね。最初の20分くらいとか、非常に良く出来ているんだけど、後半はちょっと息切れ気味。まぁ、ラストの20分は話が随分流れるので、中盤の中弛みが何とかなっていたら、随分違った印象の作品になっていたのではないかと思います。
ラストがね〜、「アレで終わるか?」という感じ。私から観ると、ちょっと逃げ腰っぽく見えたので少しがっかりしてしまいました。「おいおい、ソレで片付けるなよ〜」みたいな。確かに韓国の女の子達の社会環境というのは、日本人の女の子に比べるとずっとシビアでして、今はああするのが精一杯というコトもあったのかもしれませんけどね。
やっぱり圧倒的な印象を残したのが、『吠える犬は噛まない』のぺ=ドゥナ。美人じゃないのに、独特な個性がありますね。これからも応援したい女優さんです。他の女優さん達はいまイチ印象薄かったな〜、残念ながら。
携帯文化を最大限にビジュアル化したチョン=ジュヨン監督、特に最初の5分間のビジュアル・インパクトには目を見張るモノがありました。この作品、なんと彼女にとって長編第1作目なのだとか。興行的にはそんなにヒットしなかったそうですが、批評家のウケはすこぶる良く、この映画祭以外にはベルリン映画祭やロッテルダム映画祭、釜山映画祭などでも上映され、すでに世界の注目を集めています。う〜ん、ホントにこれからが楽しみな監督さんですねっ!!!
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