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評価の満点は5つ星です。

"The Laramie Project" - ****
"Training Day" - 「トレーニング・ディ」***3/4
"Harmful Insect" - 「害虫」**1/2
"Monsoon Wedding" - 「モンスーン・ウェディング」***1/2

"The Laramie Project" - ****
Mar 10, 02

Written and Directed by : Moises Kaufman
Staring: Christina Ricci, Steve Buscemi, etc
Official Sites :English
HBOによるプレミア放映は3月9日。

この作品は、アメリカでは劇場公開作品としてではなく、最初から有料ケーブルTVであるHBO(このページ下を参照)にて独占放映されたものです。しかしながら、この作品は今年のサンダンス映画祭ではオープニング映画として上映されていますし、近年HBOで製作されるTV映画はその多くがエミー賞を受賞するばかりか、海外では一昨年日本で劇場公開された『RKO281〜ザ・ディレクター』や、ヨーロッパで昨年劇場公開されたエマ=トンプソン主演の『Witt』等、後に劇場公開されるものも多いので、TVドラマのページではなく、敢えてこちらの映画ページに書きました。

この映画は、2000年8月のNYオフブロードウェイ公演を含む全米各地で公演された同名の舞台がオリジナル。舞台の戯曲・演出を務めたモーゼズ=カウフマンを中心に、映画用の脚本を再構成、インディー映画界ではすでに老舗の貫禄まで持ちつつある製作会社グッドマシーンとサンダンス・ラボががっぷりと組み、中堅演技派の俳優をこれでもかという程揃え、話題の種類にも事欠かない作品です。

コトの起こりは1998年10月、ワイオミング大学の学生であるマシュー=シェパードがララミーに住む地元の若者に誘拐され、殴る蹴るの暴行を受けた後、半日以上もフェンスに縛りつけられたまま放置され、病院に運ばれた後死亡したという事件。コレって日本ではあまり話題にならなかったかもしれませんが、殺人の理由が彼がゲイであることによる、いわゆる“ヘイトクライム”であった為、当時全米ではすざまじいリアクションが沸き起こっていたのです。
特にNYではデモや座り込みなど、さまざまな動きが起こっていたのは私の記憶にも新しいところ。同じくゲイに対するヘイトクライム殺人事件には、映画『ボーイズ・ドント・クライ』のモデルになったブランドン=ティナ事件がありますが、あの時は一部のリベラル紙が話題にしていただけで、有名人や大統領までがコメントを出す程ではなかったと思います。

この映画が『ボーイズ・ドント・クライ』と大きく違うところは、被害者のマシュー=シェパードがキャラクターとして一切登場しないこと。物語はあくまでもこの事件についての聞き取りを執拗に続けたNYを拠点とするテクトニック・シアターの面々(メンバーの多くはゲイ)と、インタビューを受けたララミーに住む人達を中心に進んでいくのです。いわゆるドキュ・ドラマみたいな感じですね。事件の当事者&関係者達と、その事件を題材に映画や舞台を作ろうとする人達の葛藤を描くという点では、映画『光の雨』のパターンに近いのかな?私自身はまだ『光の雨』観てないんですけどね。
この作品は、監督であるモーゼズ=カウフマンを初めとする10人近くの若者が計200人近くのララミー在住者に対して行ったインタビューを元に作られています。タイトルの『ララミー・プロジェクト』というのは、劇中に出てくる『エンジェル・プロジェクト』(事件後、全米から集まったゲイに反対するデモンストレーショングループを、天使の衣装を来た地元の有志が取り囲んだというもの)のことを意味しているのかもしれませんが、それよりもむしろメインの意味はこの長期間に渡る辛抱強い聞き取り調査のことを指しているのだと思います。

全体の感想…。いや〜〜〜〜、短かすぎるっっっ!たった90分あまりしかないんですよ〜〜〜〜。私には30分以下にしか感じなかったなぁ。実はこの番組、昨日の夜8時がプレミアでタイマー録画する予定だったのですが、夜中過ぎに帰ってみたらちゃんと録画されてなくて、朝4時15分からの再放送を録画してたんですよね。で、お酒も入っていたし録画したまま寝て、後でゆっくり観ればいいやなんて思っていたのです。で、最初の1分、観始めたのが間違いだった…。気が付いたらあっという間に全部観てしまって、時計はもう朝の6時を廻っていました…(^_^;)。
この“短い”という感覚、ある意味では“まとまってるし、飽きない”ということで随分とポジティブなものなんじゃないかと思います。けど、裏を返せば“表面をさらっただけ”というか、“ディープな部分まで描かれていない”と言うことも出来ます。

確かにサンダンス映画祭上映後の批評として、「ただ事実をなぞっているだけ」とかいう批判はいくつか聞いていたのです。究極の群像劇というか、メインキャラクターだけでも20人以上いるので、何がなんだかわけがわからないという批評はもの凄く理解出来ます。例えば、「コレは聞き取り作業をしていたテクトニック・シアターのストーリーなのか」それとも「ララミーに住む人達のストーリー」なのか、どちらも中途半端でよく分かんないんですよ。他にも、「ゲイの人達にフォーカスを置いているのか」と思えば「ゲイに反対する人々、どちらとも付かずにいる人」のことも描いている。これは公正な立場ということで両者を出してきたのは分かるし、作り手側がゲイの立場に立っていることは明らかなのですが、少し中途半端な印象も残りました。ゲイの人達の告白も、すでに私達が何百回と聞いてきたようなモノが多く目新しさは全くなかったし、私的な欲を言えば、テクトニクス・シアターの人達と地元の人々との葛藤は、もっともっと描かれるべきだったと思うんですよ。自分だったら、むしろそこを中心にしたんじゃないかと思うし。

でもね〜〜〜〜。いや〜〜〜〜、思いっきり泣かされちゃいました〜〜〜〜〜〜〜〜。特にこの日、Day of Remembaranceから帰って来た直後だったので、私自身が“差別”というものに関してセンシティヴになっていたからなのでしょうか?
先週末、舞台『メタモルフォーゼズ』を観に行った時もそうだったんですけれど、最近の私って人々がピュアに、ひたむきに、そして朴訥に何かしている姿を見ると、もうそれだけで琴線かき乱されちゃうというか、涙腺氾濫しまくってしまうんですよね。最初から最後まで、もうず〜っと泣きっぱなしだったなぁ。

作り手の想いが、どこか底辺のところから見る人の心を揺さぶってしまうという点で、この作品と『ボーイズ・ドント・クライ』には大きな共通点があると思います。世の中には不条理で哀しい出来事がのべつまくなしに起こっている。それらの出来事は、人々が「こうでありたい」と願う平和な心を絶望のどん底につき落とし、人々はもがき、「なぜ?」と問いかけ、それでも何かせずにはいられない。この「なぜ?」という問いの答えはこの先1000年経っても解決されることはないでしょう。それでも人々は問い続け、悩み、絶望の淵でもだえるしかないのです。この想いが、『ララミー…』と『ボーイズ…』両作品に共通する、ある意味では地獄を見たものにしか表現出来ない底力なんでしょうね。
監督&脚本を務めたモーゼズ=カウフマンは、この『ララミー…』以前にオスカー=ワイルドについての戯曲を書いていますが(内容も当然ゲイに関することなんでしょうね、O=ワイルドなんだから)、映画の監督はこれが初めて。第一回監督作品としてはあまりにも出来がよかったので、撮影監督やチーフ編集がよっぽど経験ある人に違いないと思っていたのですが、両者ともインディー映画を数作品手がけただけで、ベテランとは言い難い人達だったので、ちょっとびっくりしました。まぁ、製作会社のグッドマシーンとゆ〜のは、けっこう脚本なり撮影なりいろいろうるさいアドバイスをする所ですから、プロデューサーの助けとか、サンダンス・ラボの助けとかの存在はかなり大きかったと思いますけれども。

そしてやっぱり忘れてならないのは、その豪華過ぎる(?)キャスト陣。さすがグッドマシーン製作だけあって、トッド=ソロンズ監督関係のキャスティングが…(^_^;)。『ハピネス』のキャメリン=マンハイムやディランーベイカー、『ストーリーテリング』のマーク=ウェーバーとかね。う〜ん、マーク=ウェーバー(写真右上)ってクセが有り過ぎて人気俳優になる可能性はほぼゼロだと思うけど、私好きだな〜〜〜。とにかく今一番注目している俳優サンです。今回はマシュー=シェパードを殺害した若者の役を演ったんですけれど、さぞかし難しい役作りであったと思います。殆ど台詞なかったしね。あ、関係ないけど、そう言えば私がもう一人若手として注目しているピーター=サスガートも『ボーイズ・ドント・クライ』ではブランドンを殺した二人のうちの主犯を演じていたっけ。コレって偶然だけど、どちらもヘイトクライムの殺人者役ですね(^_^;)。

他に一番驚いたのは、激痩せしたクリスティナ=リッチ。うぉ〜、人間頑張ればあんなにダイエット出来るものなの???『バッファロー69』ではプクプクだった彼女が、この映画では殆どガリガリの世界でした。びっくり!!!あと、彼女のお母さん役をやった女優さんって今回初めて観たのですが、私的には一番注目した女優さんでした。
舞台版オリジナルの『オーファンズ』でその昔トリート役を演じたテリー=キニー、やっぱり巧いですね〜。そつがない演技というか、逆にいうそれ以上のモノでもないんですけれど。
あとは、一場面だけだけど『ユー・キャン・カウント・オン・ミー』で去年オスカーにノミネートされたローラー=リニー、最近ご無沙汰だったジェネイーン=ガロファーロ、そしてスティーブ=ブシェミ。この3人ははっきり言って、ただNYに住んでるからキャスティングされただけだったりして(ちなみにグッドマシーンはNYベースの製作会社^_^;)。スティーブ=ブシェミは、な〜んでこんなちょい役で出るんだろ〜な〜と思っていたら、最後にちゃ〜んと見せ場がありましたね。そりゃ〜、そうですよね。いくらカメオ出演だからと言って、彼の役にはきっと何かあるだろうと思っていました。
若手と言えば、やはりNY在住者のサマー=フェニックス。最近『The Believer』で観ましたが、相変わらず下手でした(^_^;)。めちゃくちゃちょい役だったけど…。
ジェレミー=ジャクソンは最近観ないな〜と思っていましたが、まだまだ大学生の役やってるとは…。けど、ラストを飾るにはもう少しカリスマ性が欲しかった(^_^;)。

この作品、中堅俳優ばかりの作品ではありますが、スティーブ=ブシェミやクリスティナ=リッチという日本でもお馴染みのキャストが出ていることもあり、日本で劇場公開される可能性はなきにしもあらずなのではないでしょうか?
ちなみにネットワーク局のNBCが、一週間後全く同じ事件を題材にしたTV映画を放送する予定になっています。題して『The Matthew Shepard Story』。こちらは、『ララミー…』の方ではラストの公判シーンで一瞬出てくるだけのマシュー=シェパードの両親が中心のお話になっています。おそらく全く違った視点からの作品に仕上がっていると思いますので、こちらも観る予定。感想もこのページに書こうと思っています。

"Training Day"
「トレーニング・ディ」- ***3/4
Mar 01, 02

Directed by : Antoine Fuqua , Written by : David Ayer
Staring: Denzel Washington, Ethan Hawke, etc
Official Sites :
English, Japanese
日米共、昨秋公開。アメリカでは現在再公開中。

今年のアカデミー賞主演男優賞の最有力候補であるデンゼル=ワシントンの演技を一目観るためだけに観に行った映画。本当ならもうビデオも発売されているので、わざわざ劇場で観る必要はないのですが、今とにかく他に観たい映画がないのでね〜。いや、でも劇場で観て良かった良かった。
それは、決して彼の演技が素晴らしかったからというワケではないのです。むしろ私はこの映画の映像センスがすっごく気に入ってしまったのですね〜。彼は映像派としてのご多分に漏れずミュージック・ビデオから出発し、チョウ=ユンファ&ミラ=ソルヴィーノ主演『リプレイスメント・キラー』や『ベイト』等の作品を手掛けて来ていますが、作品を観たのはコレが初めて。う〜ん私、『リプレイスメント…』観たくなっちゃったな〜。

アレは撮影監督のお手柄でもあるんでしょうかね〜。なんだか映像がすっごく重厚な感じなんですよ。影が深いし、構図も決まりすぎ。この映画、デンゼル=ワシントン演じるアロンゾとイーサン=ホーク演じるジェイクの二人のキャラクターが軸の中心になっていくのですが、二人のカットバック&めちゃクローズ・アップの多いこと多いこと。そんな下手すれば飽き飽きのショットが、「ほぅっ」と溜め息を付いてしまう程ウマイのですね。う〜ん、私にとってコレは二人の演技というより、“撮り方”にかなりおってる部分もあった様な気がするのですけれど。それにしても中盤、二人の瞳がお互い意味もなくウルウルしてるのね。コレは何とも印象的だったなぁ。

一目瞭然、このコンビは黒人&白人のコンビなのですが、この映画にいわゆる人種問題を問い掛ける様な部分は全く出てきません。細かい台詞は思い出せないのですが、イーサン=ホークがどこかで言葉に詰まっちゃう部分があって、そことか何も言わないのに、彼等の間には深くて長い河があるんだな〜と思わされてしまいましたけれど。あと、イーサン=ホークはその顔からしてアイリッシュっぽさ丸出しなのですが、途中「こんなコトなら警察官じゃなくて消防士になれば良かったな」という台詞の所では、映画館からクスクス声が漏れていました(勿論この映画は、テロ事件の前に作られていたのですが)。それにしても、黒人監督が作ると、こ〜ゆ〜部分もさらっとしててイヤ味がないですね。気概がないというか、ラスト・シーンの場面なんて白人の監督が作ったら、絶対何か言われてたに違いないけれど。
ところで、この映画でのスヌープ=ドギードッグといい、『モンスターズ・ボール』でのパフ=ダディといい、数々の映画でのアイス=キューブといい、どうしてギャングスターの役となると皆こぞってラッパー達を使いたがるのでしょうか?シリアスな話のはずなのに、何かそこだけ浮いちゃう気がするんですけどね???

余談ですが、D=ワシントンもE=ホークも自身で監督した作品が今年公開になる予定です。いい意味でこの映画が二人の刺激になってるといいですね。フークア監督の次回作にも期待です。
さてさてデンゼル=ワシントン、この映画で念願のオスカー獲得なるでしょうか???私個人としては、彼は『モ・ベター・ブルース』『マルコムX』そして『フィラディルフィア』で終わっているからなぁ。あまり応援してるワケじゃないけれど、『ビューティフル・マインド』のラッセル=クロウの演技の方が上だったと私は思うし。まぁ、結果はあと一ヶ月後のお楽しみですねっっっ。

"Harmful Insect"
「害虫」- **1/2
Feb 27, 02

Directed by : Akihiko Shiota, Written by : Yayoi Seino
Staring: Aoi Miyazaki, Seiichi Tanabe, Yu Aoki, etc
Official Sites :
Japanese
日本での公開は、3月16日より

現在リンカーン・センターで開催されている”Focus on Japanese Cinema”で、『殺し屋1』『忘れえぬ人々』『H Story』『大いなる幻影』等と並んで上映されている1本。この『害虫』は、昨年のヴェネツィア映画祭で、正式コンペにセレクトされたこともあって、かなり期待していたのですよ。いや〜〜〜〜もう完璧にハズした〜〜〜〜(^_^;)。

まず、そのラストシーン!!!!!!!なんなんですか、あの終わり方????あの〜、説明出来る人がいたら是非“ネタバレの部屋”で解説して下さい。お願いしますデス。m(_)m
私塩田監督のデビュー作『月光の囁き』って、けっこう好きだったんですよね〜。それと第2作目である『どこまでも行こう』も、ビデオでちょこっと観ただけなのですが、センスいいですよね〜。かなり好きだったのになぁ。

う〜ん、私の眼から観るとこの作品、前2作品とは全〜然違う様な気がしてしまうのですが、どうでしょう???この作品には、音楽もなければ、物語の背景も全く語られない。それはね〜、いいんですよ。ちゃんと狙っているのが明らかならね〜。けど、ソレが見えずに中途半端に見えてしまったのが、何とも私をがっかりさせてしまったたのでした。
それと、キャストがダブっているせいもあるのかな?この映画って何だか、『ユリイカ』『リリィ・シュシュのすべて』『少女』 を全部足して3で割った様な感じでね〜。そう言った既視感も私には随分とマイナスであったと思います。

登場人物だけは(?)豪華でしたけどね〜。『ユリイカ』で鮮烈なデビューを飾った宮崎あおいチャンはやっぱり良かったけど、『ユリイカ』の方が何十倍も良かったんじゃない???『リリィ・シュシュのすべて』の女の子も、この映画では全然光ってなかったし…。それにしても今、中学生役の出来る女の子ってこの二人しかいないの???
ミュージシャンの二人、スピッツの人(名前忘れた)と、私の大大大大大好きな“たま”の石川サンが出演していたのにはぶったまげましたが(同一人物だって気付かなかったくらい)、この辺はモロ『少女』みたいだったしなぁ…。
で、もって、お母さん役のりょうも下手だったな〜。いくらなんでもあんなに下手なのはないんじゃない???この辺やっぱ演出のせいだと思うんですけれど。

そしてそして、この手の作品(?)には、もうなくてはならない存在になった光石研!ちょい役だったけど、やっぱり顔観ると嬉しいですね〜。それと、最後のクレジットに寺島進と椎名英姫の名前があったのですが、出てましたか2人??????一緒に観た友達も二人の顔は知っているのですが、絶対出てなかったよね〜って。少なくとも台詞はなかったハズだし、カメオだったらめちゃくちゃ分かりにくい役。それとも、もしかすると英語バージョンではカットされちゃっていたのでしょうか???凄く気になる…。

とにかく…。好きな監督サンではあるので、次の作品に期待します。映像のセンスとか、お話のスキップの仕方とかについては、つくづくウマイな〜って思うし。やっぱり脚本家の彼女と合わなかったのが一番の敗因だったのではないでせうか…。
1作目が高校生、2作目が小学生、3作目が中学生の話だったから、次は大学生?それとも幼稚園が舞台だったりなんかして(^_^;)????

"Monsoon Wedding"
「モンスーン・ウェディング」- ***1/2
Feb 25, 02

Directed by : Mira Nair, Written by : Sabrina Dhawan
Staring: Naseeruddin Shah, Lillete Dubey, and Shefali Shetty
Official Sites :
English
日本での公開は、2002年夏

この映画のプレミア上映を観た夜、ソルトレイク・オリンピックの女子フィギュアの決勝戦があり、それを観ながら思い知らされたのが、「あぁ、コンペというのは本当に水モノなんだなぁ」ということ。言いかえれば、コンペで第一位になったからと言って、それがいつもそのプレイヤー(クリエィター)達の実力や努力と比例しているのではないということ。そこには時の運やタイミングというのが、大きく関係してきているのだなぁというコトでした。例えば、今回のオリンピックでミッシェル=クワンが尻モチを付いてしまったからと言って、彼女の努力や実力が次の日には全く無視されてしまうという状況は本当にカナシイもの(だからと言って、サラ=ヒューズに金メダルをあげるなと言ってるワケではありません。彼女の滑りは悔しいけど、本当に素晴らしかったし)がありますよね。
当然それは、アカデミー賞なんかでもそう。例えば今年、デンゼル=ワシントンは3度目のノミネートを獲得していますが、「いいかげん、もうこの辺で取らせてあげれば?」という人もいれば、「今さら“トレーニング・ディ”なんかで取ってどうする?」という人もいます。つまり誰かがある作品でオスカーを獲得したからと言って、その出演作品は必ずしも彼/彼女のベストだったというわけじゃない。そこにはその年の他の候補者達とか、彼等自身のその年のコンディションだとか、その年の社会風潮など、いろいろな要素が絡んでくるでしょう。勿論、オリンピックやアカデミー賞では毎年話題になる様に、背後にある政治的ロビー活動の存在も無視することは出来ません。

…と、作品に全く関係のないところで盛り上がってしまいましたが、まず何と言ってもこの映画のウリって“2001年度ヴェネツィア映画祭グランプリ”じゃないですか〜。けどね〜。私的感想(一緒に観た友達も含む)は、「え〜〜〜〜、何で〜〜〜?」でした。沸き上がって来る疑問は、「去年、他にマシな作品なかったの?」「ミーラ=ナイールという名前だけで受賞してない?」「たまたま時代の風潮にマッチしたのか?」「IFPやコロンビアが裏で何か手を回してた???」みたいな…。
そりゃ〜ね〜、別にヒドイ作品というワケではないのですよ、最初に言っておきますけれど。

まぁ確かにビレッジ・ボイスはかなり手厳しい評を載せていました。NYタイムスは、ライターが監督の知り合いの様でもあり、ちょっと甘い評になってはいましたが、決してベタ誉めの評ではなかったし。
ただ、ビレッジ・ボイスの様に、この映画を西側の映画と同じ土壌で比較して、この映画はいわゆる“Bollywood的な映画”だからダメというのは、かなり筋違いの意見ではないかと思います。各映画には各映画なりの独自の文法があっていいのだし、国が違えば受ける映画と受けない映画の感覚が違うのは当たり前。私の批判しているのは、この映画のBollywood的な部分ではないのです。

実を言うと、この映画の脚本を書いたのは私の行った映画学校の一年後輩でして、私は彼女のこともよく知ってるし(実は2週間前にも会ったばかり)、彼女の作った短編映画も3作品観ています。だから、前半部分のいかにも彼女らしい”キュートなキャラクター・アンサンブル”は好きなんですよ。けど、後半の一部だけ(主人公の従姉妹の秘密が開かされる部分)、明らかに彼女は“アメリカの映画文法”に乗っ取って脚本を書いていた。そこがうまく、他の部分とかみ合っていなかった様な気がするのです。彼女はもともとTVの仕事をしていたので、そのソープ・オペラ的な部分と映画的な部分が噛み合っていなかったというのもあるでしょうし。
う〜ん、それと2週間前に観た『サラ―ム・ボンベイ!』であまりにも感動してしまっていたのでね〜。どうしちゃったのナイール監督〜?という感じ。ま、映画は全体的に脚本家の書くチャーミングでコメディッシュな世界なんですけれど、後半のシリアス・シーン、みんな演技ガタガタじゃないですか〜。あそこでもう私、この映画投げちゃいましたよ〜〜(^_^;)。

父親役の俳優サンってすごくいい役者さんだと思うんですけど、あまりその良さが出てなかった様な。他の俳優サン達は、国際映画祭に出すから無理して美男美女を集めたという感じで、コレもちょっと頂けなかった。そう言った意味で一番好感の持てたのは、P.K.役の素人っぽい俳優さん。台詞やシーンのやり取りはクサ過ぎたけど、まぁあそこまでやってくれればね〜(^_^;)。
ところでこの映画では、2種類のインド語(ヒンディーともう一つなんだっけ?)、そして英語がのべつまくなしにスィッチされて行きます。脚本家も監督も二人ともNYに住むバイリンガルなんで、バイリン(トライリンガル)にしたい気持ちは分かるけど、ちょっとやり過ぎだったかも鴨(何てったって同じセンテンスでスイッチしまくったりとかね。まぁ確かにNYに住むスパニッシュ&英語のバイリンの人達はけっこうアレやってるけど、舞台は一応デリですからね〜)。

もう一つ、私がこの映画を好きになれない理由は、“ダンスとかのビジュアル&ミュージックで全てを誤魔化しちゃう所”かな。確かに観終わった時はすっきりした気分になるかもしれないけど、「え〜、じゃぁあの二人はその後???」みたいに狐につままれた様な気分が残ります。『Together』を観たときも、コレと全く同じコトを思ってしまった私…。あ、ちなみに脚本家のコもダンスシーンでは特別出演(?)してましたけど、たくさん踊っているので、分かんないですね(^_^;)。

ミーラ=ナイール監督、今年はウマ=サーマンやジュリエット=ルイスの主演する『ヒステリカル・ブランドネス』という映画も公開になるし、今月開催されたベルリン映画祭では審査委員長も務めていたし、ますますノリに乗っているという感じですね。勿論、基本的には彼女を応援している私なので、これからもどんどん頑張って欲しいと思います。それと、脚本を書いたサブリナも、現在NYを舞台にした次回作に奮闘中。頑張れ〜〜〜(^o^)。

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