評価の満点は5つ星です。
"The Believer" - ***1/2
"Salaam Bombay!" - 「サラーム・ボンベイ!」***3/4
"Ocean's Eleven" - 「オーシャンズ11」***3/4
"Metropolis" - 「メトロポリス」***
"Monster's Ball" - ****
Written and Directed by : Henry Bean
Staring: Ryan Gosling, Summer Phoenix, and Glenn Fitzgerald
昨年の国際映画祭は、アカデミー賞と同じく不作続きだったのでしょうか???カンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した『息子の部屋』は、日本ではそこそこ当たっているものの、アメリカではコケているし、第2位の『ピアニスト〜The Piano Teacher』は、何とアメリカでは結局配給先が見つからずに1日だけの限定公開(ちなみに日本では2月2日から公開されています)。
昨年のベルリン映画祭金熊賞の『Beijing Bicycle』も新聞評が悪かったので、さっぱりお客が入っていない様ですしね〜。ヴェネツィア映画祭グランプリの『モンスーン・ウェディング』については、今週末から公開になるのでまぁ様子見という感じですが…。
前置きが長くなりましたが、昨年のサンダンス映画祭で見事グランプリを獲得したこの作品。結局配給先が見つからず、昨夏SHOWTIMEというケーブルTVで限定放映されただけだったのでした。今回この作品が、3月末に決定される“インディペンデント・スピリッツ・アワード”にノミネートされた為、投票権のあるIFP(Independent Feature Project)会員の為だけに特別上映されたというわけ。さすがに他では見られない作品とあって、会場はほぼ満員の盛況でした。
お話は、自分が実はユダヤ人でありながら、ネオナチ・グループの中でメキメキと頭角を表していく若者と、彼をめぐる人達の物語。
全体的な感想。う〜ん、脚本はとってもクレバーに書けているし、演出もシャープ。役者サン達も悪くはないのです。けどね〜、この話ってもっとエモーショナルなモノじゃなかったのかなぁ。敢えてエモーショナルな部分を避けているワケではないのです。実はそういう部分をけっこう出そうとしているみたいなのですが、作り手のハートがあまりにも冷静すぎるという気がしてしまいました。
実話が元になっていて、監督自身も主人公と同じ境遇にある最近のインディー映画と言えば、『ボーイズ・ドント・クライ』がありますが、やっぱり『ボーイズ…』のパワフルさといったらなかったですからね〜。両作品とも主人公は自分の本当の姿を隠し、自分の中のダブル・アイデンティティと格闘しながら生きているのですが、その気合の入り方が『ボーイズ…』の方はハンパじゃないのデス。だから私的にはこの作品、ちょっとがっかりしちゃったかなぁ。
本当はユダヤ人なのにナチ側にいるという設定は、ヒトラー本人が実はユダヤ人であったという話から、アグニェシカ=ホランド監督の『ヨーロッパ・ヨーロッパ』に至るまで、実に数多く存在しています。また、コレを日本人の中で自分のアイデンティティを隠す在日コリアン&チャイニーズの話と照らし合わせても、もの凄く似た部分があったりするワケなのですね。例えばネオナチの中にユダヤ人の青年がいたというのと同じ様に、右翼の中に在日外国人の青年がいたなんて話はゴロゴロありますし、この映画の冒頭に出てくるユダヤ人青年へのいやがらせなんて、チマ・チョゴリを着ている朝鮮高校生のいやがらせなんかを彷彿とさせるモノもあったりします。
だからこの映画は、いろいろな面から解釈が出来るし、日本でも是非上映して欲しいんですけどね。一昨年グランプリの『ユー・キャン・カウント・オン・ミー』がいまだに公開されてないのでやっぱ無理かな???
そうそう、この映画って、スターらしいスターが全然出ていないんですよね。主人公のライアン=ゴスリングは、『タイタンを忘れない』等、ティーンズ映画にいくつか出演している様ですが、なかなか良かったです。けど、私はドレイク役のグレン=フィッツジェラルドの方が存在感あると思ったなぁ。これからが楽しみの役者さんですね〜。ヒロイン役のサマー=フェニックスは、ナントあのリバー&ホアキン=フェニックスの妹だそうですが、全然似てない〜〜〜っ。唯一の有名俳優(?)であったビリー=ゼーンですが、ただのちょい役だったしね。彼のオールバックじゃなくて前髪垂らしてるトコ初めてみましたけど、ちょっとカワイかった(^_^;)。
う〜ん、確かにこの映画。お金払って観に行ったら“損した〜”と言う人続出だと思うのですが、けど一年以上未公開ってのもね〜。映画の中にもそういうセリフが出て来ますが、アメリカ経済ってほんと〜に皆ユダヤ資本で動いているんですね〜。この作品みたいにユダヤ人に不快感を与える様な作品はペケということですか。こ〜ゆう所もちょっと日本の在日外国人モンダイに似ている様な気がしたりして…。けど、私は日本でもアメリカでも、こ〜いった作品は相手に対して腫物に触るような姿勢ではなく、もっとガンガン発表していって欲しいと思います〜。
「サラーム・ボンベイ!」 - ***3/4 |
Written and Directed by : Mira Nair
Staring: Shafiq Syed, Hansa Vithal, and Nana Patekar
『モンスーン・ウェディング』で、昨年のヴェネツィア映画祭グランプリ(=金獅子賞)を獲得したミーラ=ナイール監督のデビュー作。この作品は、1988年カンヌ映画祭でカメラドール(新人賞)を獲得しています。私、日本での公開当時この作品を観に行った時、確か立ち観ですとか言われて諦めて、それっきり観るチャンスを失っていたんですよね。う〜ん待ってた甲斐があった〜〜〜。やっぱりこの作品はビデオでなく、スクリーンで観るに限ります。今回、来週から公開になる『モンスーン・ウェディング』のオープンに先立ち、フィルムフォーラムにて1週間だけ限定公開されたというワケ。
ハイ、この映画は出来ればビデオでなく、大スクリーンで観て下さいっっっ。…と、いうのは、やっぱりそのモブ(大衆)シーンの細部をしっかりと観て欲しいので。勿論、大スペクタキュラーというワケではないのですが、非常に奥行きのあるインドのストリート風景を堪能することが出来ます。
私個人的にはインドに行ったこともないし、日本で数年前に流行ったマサラ・ムービーなどもこちらでは全く上映されることがなかったので、インド映画にはめっちゃ疎い私なのですが、なんか風景がベトナムみたいですね〜。ボンベイという街だけがそうなのか、インドの街全部がそうなのか、私には知る由もありませんが…。
ストーリーは極めて単純。ボンベイの街に住むストリート・キッズの日常を描いたもので、とりたてて何も新しいモノはないし、いかにも第一作目というような荒削りさが随所に見られるのも確か。同じストリート・キッズに関する作品なら、ブラジル映画の『ピショット』の方が何倍もリアリティに溢れているという声も何度か耳にしたことがあります。それは確かにそうなのですが、一方でとても監督第一作目とは思えないカメラワーク、演出部分が見られるのもやはり特筆すべきでしょう。
まずそのキャスト、殆どのキャストが素人なのですが、皆素人なりの素晴らしい演技を見せています。特にサーカスのボスとか駅ホームのお茶売りのオジサンとか、どう見ても素人なんですけどね(^_^;)。
子役達は明らかに皆、映画初出演か経験あっても1度か2度だと思うのですが、皆うまい〜〜〜っ。主演クリシュナ役の男の子は私が誉めるまでもないでしょう。観た人はみ〜んな彼の虜だと思うし、マンジュ役の少女もうまかった。特に彼女がクリシュナに嘘ついて一人でビスケットを食べてしまうシーン。コレは演出の力でしょうね〜。他に友人役(名前?)の彼は、素人だったんでしょうか?演技はお世辞にもうまいとは言えなかったけど、すっごく存在感がありました。英語ではSweet Sixteenと呼ばれていた彼女、日本語では何と呼ばれていたのかな?彼女、出だしは妙に硬かったけど、後半は少しずつ緊張の糸がほぐれていったという感じ。
一方ババ役の俳優サンは完全にプロの役者サンですよね。う〜ん、はっきり言ってワケわかんなり役所なんだけど、むちゃくちゃ魅力的でした。コレはもう俳優サン本人の魅力だと思う。キャラとしては全然キチンと描けてなかったんですけどね(^_^;)。少女のお母さん役との絡みのシーン、早くもナイール監督が後に監督することになる『カマスートラ』に繋がる才能を見せつけていました。
実を言うと、ナイール監督には昨年のアジアン・アメリカン映画祭を含め、NYに来てからもう2回も会うチャンスがあったのですが、デンゼル=ワシントン主演の『ミシシッピー・マサラ』以外の映画(他にナイール監督は、アンジェリカ=ヒューストン&マリッサ=トメイ主演の『太陽に灼かれて』という映画も監督しています)は観たことがなかったのです。う〜ん、これこそナイール監督の原点だったのですね〜。来週観に行く『モンスーン・ウェデイング』、ますます楽しみになりました〜。
「オーシャンズ11」 - ***3/4 |
Directed by : Steven Soderburg, Written by : Ted Griffin (III)
Staring: George Clooney, Brad Pitt, Julia Roberts, Matt Damon, and Andy Garcia
Official Site : English, Japanese
昨年早々に公開された『トラフィック』で、見事な群像劇をさばき切ったスティーブン=ソダーバーグ監督最新作。この映画の完成時(2001年秋)の試写では中々いい評判を聞いていたので、かなり期待していたのですが、批評家達からのウケはまるで芳しくなく、そのスター勢揃いでそれなりの興行成績はあげたものの、ゴールデン・グローブ賞などの賞取りレースからはまるで無視。結局ベルリン映画祭へのコンペ出品もならなかったし、来週発表のアカデミー賞ノミネートに入ってくる可能性はまずないと思います。
おそらく、そんなワケで全く期待せずに観に行ったのが良かったんでしょうね。けっこう面白かったです。まぁ、コレって好みの問題もかなりあるんでしょうけれど。『トラフィック』が、出来の良い作品として批評家達にバカ受けしたのは分かるんですよ。で、この『オーシャンズ』が甘〜っちょろ過ぎて、批評家達をがっかりさせたのも今ではよく分かります。けど、ちょっと肩の力を抜きたくて、何も考えずにちょっとオシャレな作品を観てみたいという気分の時にはお薦めの映画かも鴨。
何より、この作品が日本で受けるだろ〜な〜と思うのは、その豪華なハリウッドキャストというより、この映画が持つその『ルパン三世』的なところ。
勿論、ルパンはいつも殆ど単独行動で、せいぜい次元と五右衛門がいたとしても3人がマキシマム。11人もの大所帯でハイテク駆使してお宝を頂くのとは全然違うという人もいるでしょう。
では、この映画の何処がルパンに似ているのかと言うと、まず”絶対に人が死なない”という映画全体のトーン。もう最初からそうなんですよ。ラスベガスという何でもアリの土地を舞台にしていながら、スコセッシの『カジノ』みたいなドス暗さや、『リービング・ラスベガス』の様な湿気もなく、『センター・オブ・ザ・ワールド』の様な無機質感もない。とにか〜く“オシャレ”なんですよね〜。アノ『ルパン三世』のテーマ曲である、シロホンやバイヴを使ったジャズがよく似合う様な・・・そんな映画なのです、この作品は。
ヒロインの峰不二子=ジュリア・ロバーツ演じるテスが、敵方のボスとデキてるという設定も『ルパン三世』とおんなじ部分。女の子の方はあくまで冷静で感情にほだされず、でも・・・。という所が、にくいな〜〜〜。もう『ルパンの世界』と、勝手にこじつけまくっている私なのでした(^_^;)。この辺、アメリカ人の友達には決して理解の出来ない部分なのよね・・・(T_T)。
ともあれ、ルパンとジョージ=クルーニー演じるオーシャンは、まるで似ても似つかないキャラクターなので、その辺はお間違えなく(^_^;)。いや〜、いい味出しまくってます〜彼。私的にはどう転がってもジョージ=クルーニーというのは全く好みのタイプではないのですが、彼がちょっとはにかんで笑うだけで、女性がコロ〜っといっちゃうのって凄く分かる気がします。私としては、『アウト・オブ・サイト』の時の彼の方が何倍も良かったけど(そう言えば、あの映画でも彼の職業はドロボーでしたね)、この映画でもめいいっぱい味だしてますよ〜。ファンにはもうたまらない作品だと思います。
彼は昨年『オー、ブラザー!』で、ゴールデン・グローブ賞コメディ部門の主演男優賞を受賞していますが、私個人としてはこの映画の彼の方が好きかなぁ。つまり、ソダーバーグ監督とG=クルーニーのコンビの方が私は好きだということですね。それにしても、『オー、ブラザー!』での彼も前科モノだったなぁ。もしかして、コレもタイプキャスト化してきてる???G=クルーニーと言えば、勿論一般的には、『ER』のロス先生として有名ですが、あの役だって実際医者のクセにドラックばっかやってたもんね(^_^;)。
さてさて他のキャラクター。次に出番が多いのはブラッド=ピットでしょう。この映画での彼、かなりオイシイ役ですよ。ファンの方は必見です。私は個人的に言って、別にファンというワケではないのですけれど(けど、『12モンキーズ』での彼は良かった〜)。そう言えば、先日たまたま彼がTV番組にちょい役出演していたのを観てしまいました。"thirty something"というドラマでなんと1987年放送!!!今から15年前ですよ〜。なのに全然変わってないっっっ!今気付いたけど、彼ってけっこ〜歳なんですねー(下積みが長かった点では椎名サンとおんなじだ〜って全部こじつけ(^_^;)。この映画でまた新しいファンが増えるかな???
マット=デーモンは、頭のイイ生意気なお坊ちゃまという点で、キャスティング的には合っているのですが、全く魅力なし(私が彼を嫌いというのもあるかもしれませんが)。ジュリア=ロバーツもね〜。一応役には合っているんですけれど、出番殆どないんであまり印象に残りません。アンディ=ガルシアって、昔すっごく好きだったのに、悪役の味が全然出てないよ〜〜〜。
その他の役で一番印象に残ったのがカール=ライナー。ナントこの人、あのロブ=ライナー監督のお父様なのだそうで。私的には一番印象に残ったかな、彼の存在感が。最後、ベラージオホテルの噴水の前でネタバレ→皆が一人一人散らばってゆく時、最後に去るのも彼でしたし…。
それから、冒頭のラウンド・テーブルを囲む面々が、Once and Againのショーン=ウエスト等、今をときめく若手俳優勢ぞろいっているのにも大注目。いや〜、ハリウッドAスターだけじゃなくって、いろんなレベルでのスター達が揃い踏みしているのが、この映画のスゴイ所です。
軽業専門(?)のチャイニーズを演じたシャボ=クィンですが、データを見ると以前の映画出演がないんですよね。もしかしてもしかすると彼って、この映画の舞台になったホテル・ベラージオで公演されているシルク・ド・ソレイユの“O”とかに出演してる軽業師だったりして???このラスベガス随一(アメリカ随一かも?)の人気ショー、もう始まって数年経っていると思うのですが、いまだにダフ屋を通して数百ドル払わなければチケットの手に入らないショーなのだそ〜で。私も“O”が観られる可能性があるなら、ラスベガスに行きたいな〜〜〜。あ、あと余談ですが、ジュリア=ロバーツ演じるテスがキュレーターを務めるホテル・ベラージオのギャラリーは本当に存在します。確か1〜2年前にオープンしてコレも話題になってたんですよね。でも、作品の傷む可能性があるにも関わらず、映画撮影の許可を出すなんて、もしかしてこのホテル、あまり儲かってない???とにかく、この映画、実はある意味“ホテル・ベラージオ・プロモーション・ムービー”として観るコトも出来るのです(特にラストの噴水シーンとかね。これだけのスターが来た所なんだということで、このホテルを訪れるファンが増えるのは、想像に難くないでしょ〜)。
で、ラストですが、何だかまとまり過ぎてたかな?っていうのが私の感想。あの終わり方(ネタバレ→敵との追いかけっこで終わる)ですら“ルパンみたい”と思ったのは、やっぱり私だけかなぁ(ちなみに私はルパンのファンでも何でもありません。映画だってTVシリーズだって3分の1くらいしか観ていないですから)。だからますます日本人にはウケるよね、って思ってしまうのですけれど(^_^;)。
とにもかくにも(?)ソダーバーグ監督はは他人の脚本でやる方がうまく行く様ですね。『セックスと嘘とビデオテープ』は自分の脚本だったけど、その後はさっぱり当たらず、『アウト・オブ・サイト』に至るまで長〜い下積み時代を送って来た様ですし…。
で、次回作はこれまた違う脚本家と組んだデビッド=デカブニー主演の『Full Frontal』、そしてナント次次回作は、『ソラリス』のリメイクなんだよ〜で。うひゃ〜〜〜、ソダーバーグとタルコフスキー?ソダーバーグとSFモノ???コレはもう、全然予想が付かなくって、その分いろいろ期待も膨らみまくってしまうのでした〜〜〜。
「メトロポリス」 - *** |
Original Story by : Osamu teduka
Directed by : Rin Taro, Written by : Katsuhiro Ohtomo
Official Site : English
昨年夏、日本では3本の超大作アニメ映画が公開になりました。その筆頭に来るのは言うまでもなく『千と千尋の神隠し』、続いてアメリカでもほぼ同時期に公開された『ファイナル・ファンタジー』、そして忘れちゃいけないのが、ご存知手塚治虫原作であるこの『メトロポリス』。
そして昨年秋、ニューヨークではほぼ同じ時期に全く別のアニメフェスティバルが二つ開催されました。その頃『ファイナル・ファンタジー』の方はすでに劇場公開中だったのですが、「New York – Tokyo Anime Festival」で『千と千尋の神隠し』の予告編が、そしてもう一つの「Big Apple Anime Festival」では、DGA(アメリカ監督協会)を会場に、この『メトロポリス』が上映されていたのです。
Made in Japan のアニメ=Japanimationは、おそらく10年くらい前から一部のおたくマニアを中心に、アメリカでも知られることは知られていたのですが、一般の劇場でアニメーションが堂々とかけられる様になったのは、5〜6年前の『攻殻機動隊』や『オネアミスの翼』辺りから。その後、ポケモンが爆発的な人気を博したのは一応置いておいて、いわゆる映画批評家達からも大絶賛され、その年の年間ベストテンにも軒並みベストテン入りを果たしたのが宮崎監督の『もののけ姫』。この映画は、劇場公開前年のニューヨーク映画祭でも堂々公式上映されていました(宮崎監督の舞台挨拶もあったので、しっかり会場に駆けつけたミーハーな私(^_^;)。
ってなワケで、『千と千尋…』のアメリカ劇場公開を今か今かと待ち続けている私ですが、このNYタイムスの記事を観る限り、フランスではすでに4月からの公開が決まっているものの、アメリカでの公開はまだまだっぽいですね〜(T_T)。それにしてもこの記事の最後、かなりボロクソに書かれてますよ(作品の内容についてではなくて、単なる筆者のやっかみなんですけれど^_^;)。
けど、皆さんすでにご存知の通り、『千と千尋の神隠し』、アニメーションとしては初めて、ベルリン映画祭の正式コンペに入賞しています。ま、去年のカンヌ映画祭で、『シュレック』がアニメーション作品としては初めて正式コンペ入りを果たしたので、おそらくその流れもあるのだとは思うのですが。
ま〜そんなこんなで今、アメリカではますます人気急上昇のジャパニメーション、やはりNYタイムスにもの凄〜〜〜く長い記事も掲載されて、その注目度も鰻上りという感じ。今回一緒に『メトロポリス』を観に行った連中(6人中、日本人は私一人でした)も、皆このNYタイムスの記事を読んでいたので、かな〜り期待も膨らみまくっていたのでした。いや〜〜〜〜ん、がっかりだったな〜も〜〜〜。
まず最初に、私って原作の手塚治虫に対する思い入れが少なからずあるんですよね。手塚作品が全部好きというワケではないので(おそらく読んでない作品の方が多いくらいだと思うし)、手塚ファンとは言えないんじゃないかと思いますが、私、彼の60〜70年代くらいの政治的作品がすごく好きなんですよ。高校生の頃は、核に反対した内容だという理由で検閲によって何度も書き直させられた『火の鳥:羽衣編』(なんと3バージョンもある)のオリジナルを探して友達と東京中の古本屋さんを探し廻ったりとか、そういう所にエネルギー燃やしちゃうヘンな奴だったので(^_^;)。
話が飛びますが、世界的に有名な映画やアニメの監督って、実はかなりサヨク的な人が多いんですよね。私が小学生でまだ共産主義のキの字も知らなかった頃、「私も応援しています」とか言って、黒沢明や手塚治虫がにっこり笑っている共産党の街頭ポスター、今でも頭に焼き付いているしな〜。宮崎駿監督のプロレタリア志向については、私がいまさらここで書くまでもないでせうし。
で…、やっと『メトロポリス』の話に移るのですが、ここには黒沢・手塚・宮崎世代とは一世代下がったサヨク・ジェネレーションの悲哀を観ることができます。アトラスのアジトとか、背景画をみるとあちこちにチェ=ゲバラの写真とか貼ってあるし…(^_^;)。中盤の部分なんて、モロ押井守監督『人狼』の世界だし〜。
この映画は、もちろん手塚ワールドのレトロ世界という視点から観ることも可能です。うん、少なくとも前半は…ですけれど。言わずと知れたフィリッツ=ラングの『メトロポリス』、そしてグリフィスの『イントレランス』をモチーフにしたオープニングセット。そこにちょっぴりアールデコ調の味付け。私的に言うとどれも全然新しくなくってけっこうがっかりしてしまったのですけれど。
それが中盤、地下世界に入っていった辺りから、今度は『ブレード・ランナー』のモロ真似。アニメなんだから、もう実写CGで出来る範囲のことはしないで欲しい〜。
アトラスが出て来た辺りで、上でも書いた様に『人狼』の世界。後はクライマックスに至るまで、ひたすら血と革命の世界が展開してゆくのです。
『BLOOD』の感想の所でも書いたのですが、ホントにこの世代(60年代に青春時代を送った世代)のクリエーター達って、あの頃のトラウマから抜け出せていないんですね〜。あの無意味なペシミティズムと、取って付けた様な希望的な終わり方は、いいかげんにやめて欲しい。彼らって、宮崎駿世代と庵野秀明世代のちょうど中間世代に当たるんですけれど、この3世代、自分と世界の関係(またはそのもの)を疑問視し続け、問い続けている点では皆同じ。けど、問い続けることをもはや怖れぬ宮崎監督や、問い自身についてさえ分からぬまま、それでも突っ走るしかない庵野監督に比べ、この真ん中の世代の中途半端さは一体何?そりゃ〜深く傷付いているのは分かります。いまだにトラウマから抜けられないのも分かる、けど、大作作る気があるなら、その中途半端な気持ちのままでお金だけ無駄になんてしないで欲しい。何なんですか?あの「I Can’t Stop Loving You」は???ただのウケ狙いにしか思えないよ〜。申し訳ないけどあのシーン、こっちのお客からは失笑しか漏れてこなかったです。やるならもっときっかりやって欲しかった。
それにこの映画、どの部分を切り取っても「あ、もうあの映画で観たよ」というパクリまくりのオンパレード。冒頭の『メトロポリス』や『イントレランス』はわざとだとしても、後半はもう、『ブレードランナー』『A. I.』『AKIRA』『銀河鉄道999』『天空の城ラピュタ』を全部足して割っただけだもんね。まぁ、脚本が『AKIRA』の大友克洋氏、監督が『銀河鉄道999』のりんたろう氏だからある程度はしょうがないにしても、人間になりたい機械の子供が主人公という点では、『A.I.』の設定もそのまんまだしな〜。
不思議な力を持った女の子&その娘を守ろうとするごく普通(?)の男の子という点では、ラピュタの設定とも全く同じ。第一ティマが白鳩と一緒に空を仰いでいるシーンなんて、ラピュタのシーン、モロ真似真似じゃないっっっ!!!私はその前に二人が地下に落ちて話をしているシーンから「これってラピュタそのまんま」と思って観ていたのですけれど…。フィフィだって、ラピュタのスクラップ・ロボットそのまんまだし〜。
ネタバレ→最後にメトロポリスが崩壊するのも、『銀河鉄道999』そのまんまだしな〜。ネタバレ→親子の愛情や機械&人間の愛情が絡んでくるのも根本的には同じテーマですしね〜(^_^;)。
え〜、この映画一番のウリになってた映像も、私にはメカ趣味がないので全然アピールしませんでした。CG映像との混合っていうけれど、私にはまるっきり分からなかったし、ま、とどの詰まり、登場人物の誰にも“キャラクターがなかったこと”、コレが映画最大のダウンサイドだったと思いますけれど。
それと、残念ながらこの映画、少なくともNYでは口コミヒットしないんじゃないかと思います。一緒に観に行った友達はこぞって皆ネタバレ→「いくらアニメでも、もうビルの崩壊する映像は観たくない」と言ってましたので。う〜ん、後は『千と千尋の神隠し』がアメリカで一般公開されるのを待つだけだ〜〜〜。
Directed by : Marc Forster, Written by : Milo Addica and Will Rokos
Starring : Billy Bob Thornton, Halle Berry, etc.
Official Sites : English
全米批評家賞を初め、アメリカ一の大御所批評家ロジャー=エバートが2001年の映画第一位に選ぶなど、何かと話題の多いこの映画。正直言うと、ロジャー=エバートが2000年の第一位に選んだ映画『あの頃、ペニー=レインと』にはがっかりした覚えがあるので、あまり期待はしていませんでした。
ただ、友達が去年から行こう行こうとせがむのと、ダウンタウンに出来たばかりの新しい映画館に興味があったので、何の気なしに観に行ったという感じです。
全体の感想…。う〜ん、私的には思っていたよりもずっと好きでした。南部が舞台の映画にありがちな“暗いけだるさ”“雷(^_^;)”“銃”みたいなエレメントが見事に全部揃っていたので、一般的にはあまりお薦め出来ないかもしれません。
中盤はね〜、すっごく良かったんですよ。泣けちゃうくらい切ないし、脚本のセットアップも無駄なく巧みに描けている様に見えたんです。それで、あのラスト。「え、コレで終わり???」とゆ〜感じ。実はあの後、まだまだ何かが起こるんじゃないかと思っていたので(そのお膳立ては十分にしてあったので)、ちょっとがっかり。ここんトコ、中盤盛り上がってラストでコケちゃう映画って多いですよね〜(最初だけで息切れしちゃう映画も困るけど(^_^;)。
『そこにいなかった男』で、シワ男の魅力を大爆発させたビリー=ボブ=ソーントンは、この映画でも女の子達のハートを釘付け(って私達にだけ???)。前にも書きましたけど、私って個人的には彼のこと好きではないのですが、やっぱ演技が深いわ〜。ひだのある演技というか、こう落ち着いて観ていられるんですよね。
相手役のハル=ベリーもこの映画で主演女優賞にノミネートされていますが、いぶし銀の様な(?)BB=ソーントンの演技の前では残念ながら、オーバー・アクティングに見えてしまうって〜感じ。ところで、この映画というのは南部の黒人問題にも触れているのですが、彼女のキャラとか、成り行きとか、BB=ソーントンとの関係なんかが、これまでの黒人のステレオタイプの次元を超えていないという意見、頭ではかなり納得の行くところです。自分が黒人女性としてこの映画観てたら、やっぱりかなり不満が残ったんじゃないかなと思いますね。
他のキャストとしては、『A Kight’s Tale 〜ロック・ユー!』のピーター=ボイルがBB=ソーントンの息子役で出演していました(最初、兄弟かと思ってましたが)。ま、これまでと全く違った役だったので、印象としては良かったです。それと、ハル=ベリーのダンナ役にパフ=ダディ…。こっ、この配役は一体???めっちゃシリアスな映画だとゆ〜のに、彼が出てくると劇場から笑いの声が漏れてきちゃったりするんですよね(^_^;)。
監督のマーク=フォースターという人は、前に何作か撮っているのでこれがデビュー作というワケではないのですが、いきなりメジャーな監督となってしまいましたね。これからの活躍が楽しみです。
最後に。関係ありませんが、今回この映画を観に行ったサンシャイン・シネマは、まだオープンしたばかりの新しい映画館。ダウンタウンのソーホー地区と言えば、それまではアンジェリカ・フィルムセンターくらいしかロクな映画館がなかったのですが、この映画館のオープンで、ダウンタウンの客引き競争が始まりそうな予感わくわく(両館とも特製グッズ売り出し中。この『Monster’s…』なんて、3スクリーンも占拠して上映していました(^_^;)、住民としては、何とも嬉しい限りです。
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