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評価の満点は5つ星です。

"In the Bedroom" - ****
"Mulholland Drive" - 「マルホランド・ドライブ」****1/2
"The Man Who Wasn't There" - 「バーバー」***3/4
"Harry Potter" - 「ハリー・ポッター」***1/2

"In the Bedroom" - ****
Dec 11, 01

Written and Directed by : Todd Field
Staring : Tom Wilkinson, Sissy Spacek, Nick Stahl, Marisa Tomei
There is no official site of this film so far

今年のサンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞、そして今年のモントリオール映画祭における唯一のスペシャル・メンションを得て、今年の全米批評家賞では最優秀監督賞&最優秀脚本賞、作品賞でも第2位を獲得ということで、映画オタクの間では今かなり話題になっている映画です。
ただね〜。配給の宣伝が下手過ぎるよ〜〜〜(宣伝の力だけでつまらない映画をヒットさせてしまうミラマックスのやり方とはとても思えない(^_^;)。NYタイムスの評がかなり良かったと言って、友人が前から観に行きたがっていたのですが、予告編観た途端「ビデオにしよ〜か〜???」とか思ってしまったくらいでしたから…。宣伝ポスターもワケ分かんないというか、何も考えてないという感じだし…(^_^;)。

まぁ、前置きはコレくらいにして、全体の感想を…。「う〜〜〜ん、最後がね〜〜〜」。この映画、中盤まではめちゃくちゃイイのですよ。始まって一時間から一時間半くらいの所なんか「こっ、コレは今年のOne of the Best 3に入るか〜?」と思ってしまったくらい!!!特に昨年"You Can Count on Me"を昨年のベスト2に持って来た私にとって、この映画は"You Can... "よりもさらに良い出来栄えにさえ見えていたのです。
しかもこの映画の中盤って、はっきり言って"The Son's Room"の舞台をそのままアメリカに置き換えてやってるだけなんですけど、今年のカンヌ映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞したこの作品より、"In the Bedroom"の方が全然良く出来てるじゃな〜い〜!!!とか思ってしまったくらいなんですよ。マジで…。

けどやっぱり、映画のエンディングって大事ですよね〜。2時間が経過した辺りからつくづくそう思ってしまいました。もしこの映画が一時間半くらいの盛り上がりの所で終わっていたら、少なくとも私にとってこの映画は"The Son's..."に勝っていたと思います。けど結局は”エンディング”において、"The Son's..."は"In the Bedroom"に明らかに勝ってしまったのですね〜。それは私が、ネタバレ→最後はやっぱりハッピーエンディングの方がいい、と言っているのでは決してありません。ネタバレ→ アンハッピーならアンハッピーなりのちゃんとしたエンディングというモノが、この映画では明確にされていなかったのが最大の難点。別にちゃんとした結末になっていなくたって、蔡明亮の映画みたいにキャラクターの変化がそれなりに見えればいいのです。けど、この映画には…。う〜ん。ネタバレ→父親が犯人を殺したことに結局何の意味があったのだろう?それで空しいってだけなワケ???やっぱりあそこで終わってしまったのは、反則の様な気がします〜〜〜。ネタバレ→で、夫婦の関係も結局はどうなったのよ、って感じだし…。

ま、ラストの文句はそれくらいにしましょう(^_^;)。あとは前半と後半で話が全然違うじゃない〜?ってコトを除けば、この映画、イイです〜〜〜!実際はかなり大好き〜〜〜。
まず、出演俳優がとにかく全員スバラシイ!!!!!フランク役のニック=ストールって、実は私がアメリカに来て初めて劇場で観た映画『顔のない天使』で子役をやっていたんですよね。彼がもう大学生の役を演っているとは、し〜みじみ、自分が歳取っちゃったな〜っなんて思ってしまったりなんかして(^_^;)。『顔の…』の子役も良かったけど、今回の彼もす〜っごく良かった!なかなか細かい演技しますよね。これからの彼にも大注目!!!
『いとこのビニー』でオスカーを獲得後、地道に舞台やインディー映画に出演して来たマリッサ=トメイですが、やっぱうまいな〜〜〜。デリでフランクの父親と話してるシーンなんか、すっごくリアルだったし…。

母親役のシシー=スペイセクには早くもオスカー・ノミネートの声が上がっていますね。正直彼女って、個人的には好みの女優サンじゃないんですけれど、やっぱりこの映画の彼女は良かった。特に中盤の喧嘩シーンは、それだけを観る為にもう一度劇場に行ってもいいかなって思っちゃったくらい良かったです。
父親役のトム=ウィルキンソンは、元々イギリスではバリバリのシェークスピア俳優なんですけれど、この映画では完璧なまでにアメリカの田舎に住むインテリ医者の役を演じていました。彼って観ていて安心出来るっていうか、演技がいっつもスティブルなんですよね。その点インパクトに欠けるのが、ディスアドバンテージでちょっとかわいそうな気もします。私的にはやっぱり中盤の喧嘩シーンがとても良かった(ま、あそこは脚本がよく書けてるってのもあるんですが)。チョコレートを売りに来た女の子とのシーンも、私にはかなり印象に残っています。
リチャード役のウィリアム=マトサーについて、あの役って、どう考えてもショーン=ペンのイメージが重なってしまうんですよね。作り手側もそれはけっこう意識していたのではないでしょうか。マリッサ=トメイを挟んでミルク飲んでるシーンの彼は、めちゃくちゃリアルで良かったです。

で…。これだけ役者が全員素晴らしいっていうのは、やっぱり監督に負う所が大きいんでしょうね。監督のトッド=フィールドは、元々俳優としてのキャリアが有名な人。私の好きなTVドラマ"Once and Again"にもレギュラー出演していたのですが、この映画制作の為か今はもうレギュラーから退いています。2年前には『アイズ・ワイド・シャウト』で、トム=クルーズを例のお屋敷に誘い出すジャズ・プレイヤーの役をやっていた人といえばお分かりでしょうか?
さすが役者生活(?)が長いとあってその演出力には驚くべきモノがありますが、もっと驚くのはその確かなカメラワーク!実は彼、自身でカメラオペレーターもやっていたのです。うう、おそるべしマルチ・タレントの新監督が、また一人誕生しました。

短編映画を含めると、コレは彼の撮った最初の映画というワケではありません。けどこの映画、制作会社である(ケチであることで有名な)グッド・マシーンの映画にしては、凄いロケーションの数なんです。脚本の段階でグッド・マシーンがこれだけのロケーション撮影にGOサインを出したということは、それだけトッド=フィールド監督の力量は、撮影前からかなり認められていたというコトになります。共同脚本のアンドレ=デュービスと共に、彼がどれだけ脚本を書いたのは分かりませんが、やはり脚本・編集の段階で2時間以上の長さがプロデューサーから認められていたというコトからして、この映画におけるフィールド監督のイニシアチブはかなり大きなモノだったのではないでしょうか。けど、やっぱり2時間以上は失敗だったかな…(^_^;)。シーン一つ一つの会話はとっても良く書けていたと思うので、何だかとっても惜しいです〜〜〜。

ともあれ、オスカー・レースに関して言うと、うまくいけば演技賞辺りにひっかかってくるくらいで、殆どが批評家賞狙いの映画だと思うのですが、このトッド=フィールド監督、劇場デビューでいきなり類まれな才能を発揮してくれました。次回作が今から待ちきれませ〜〜〜ん(^o^)。

"Mulholland Drive"
「マルホランド・ドライブ」 ****1/2
Dec 03, 01

Written and Directed by : David Lynch
Staring : Naomi Watts, Laura Harring
Official Sites :
English, Japanese
日本での公開は2002年2月から

今年のカンヌ映画祭で、コーエン兄弟の『そこにいなかった男』と最優秀監督賞を分け合った作品。『そこに…』ではちょっと拍子抜けしてしまったし、すでに観た人達から「怖いよ〜〜〜」とか「ワケ分かんないよ〜」とか「D=リンチのファンじゃないとハマれないかな」とか、色々と聞いていたので、正直全然期待していませんでした。
それがポジティブに出すぎてしまったのかな?…と思いつつ、いや〜〜〜面白かった!!!!まず最初に、私はデビッド=リンチのファンでは全くありません。彼の作品で観たのは『エレファント・マン』『ブルー・ベルベット』『ロスト・ハイウェイ』『ストレイト・ストーリー』、そしてTV版ツイン・ピークスを2〜3話観たくらい。『エレファント…』と『ブルー…』は好きだったけど、その後の作品には殆ど幻滅を繰り返して来た私だったのでした。

まず第一にこの映画…ずんごく可笑しいんですけれど(^_^;)。さすがに後半は少なかったものの、前半め〜いっぱい笑わせて頂きました。異様な可笑しさもあれば、ギャグっぽい笑いもあるし、う〜ん。蔡明亮監督の映画もそうですけど、一見暗そうな映画が思いっきり可笑しいのって、けっこう私の好みかも。
そして後半の独特な世界はやっぱしいいですね。劇場でしわくちゃのオバサンが唄うスペイン語の歌のシーンがまたイイ。前半、フツーの映画かな?って感じな分、後半のギャップにはグイグイ惹き付けられます。映画を観ながら時計を見ることの多い私でさえ(単純に飽ちゃったっていう時もありますが、大体脚本の構成を計っているのです)、この映画、たったの一度しか時計を見なかった…ホントにあっと言う間に終わってしまったという感じ。

お話に関しては、何を書いてもネタバレになりそうなので、機会があったら“ネタバレの部屋”にでもゆっくりと書きたいです。この映画、ある意味『メメント』の様なトリッキーな部分があるのですが、ほぼ全シーンに説明のつく『メメント』に比べ、この映画は、ホントにいろいろな解釈が出来るのです。私と友達の解釈も違うし…。うう、この部分については、何を書いてもネタバレになってしまう(^_^;)。

キャストはいいですよ〜。主演二人の女優サンは、どちらも女優としてのキャリアは長いながらも、この作品でやっと日の目を見たという感じ。どちらも良かった。強いて言えば、ベティ役のナオミ=ワッツの方が、より面白かったかな?それは、この映画を見れば分かります。そうそう、オーディションのシーンは面白かったですね。劇中劇として、力入ってるんだけど、タレントを見る眼の“ない”人にうまいと思わせるちょっと捻った演技をしている彼女は最高でした。それにしても二人のネタバレ→絡みシーン、もう就寝後だとゆ〜のに、どうして二人共バッチリお化粧しているんでしょう???いくら演出上キレイに撮りたいからとはいえ、やっぱリアリティが…。シャワー浴びた直後のリタのお化粧が取れてないのも、妙に気になってしまったピッキーな私です…(^_^;)。

そうそう、キャストと言えば!!!!オーディションのシーンに、私の大〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜好きなミッシエル=ヒックス(『ツイン・フォールズ・アイダホ』のヒロイン)がちょい役で出演していたので、私はもう大声で叫びそうになってしまいました!!!アレはファンじゃなきゃ分かんないですね。眼鏡してたし、台詞2つくらいしかなかったし(オタッキーですいません(^_^;)。カメオ出演と言えば、なにげに『ジャッキー・ブラウン』のマックスもちょい役出演してました。まぁ、デビッド=リンチの映画ともなれば、皆ちょっとでも出たいのでしょうね〜。

ま、この映画、やはり蔡明亮監督の作品と同じく、暗〜〜〜〜いシーンが多いですから、やはりビデオでなく劇場で観ることをお薦めします。ちなみに雷のシーンを除いては、全然怖くなかったですよ。普段ホラーは全く観ない私が太鼓判を押すのですから、大丈夫。あとはもう、“チャラララ、チャラララ、チャラララ〜〜〜♪(ミステリー・ゾーンのテーマ)”の世界にどっぷり浸って下さいね〜(^_^;)。

"The Man Who Wasn't There"
「バーバー」 ***3/4
Nov 25, 01

Directed by : Joel Coen , Written by : Joel & Ethan Coen
Staring : Billy Bob Thornton, Frances McDormand, James Gandolfini, etc.
Official Sites :
English
日本での公開は2002年2月11日から

現在日本で公開中『オー、ブラザー!』の、コーエン兄弟最新作。今年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞したとあって、半年前から待ちにまってたこの映画。う〜〜〜ん、一足先の試写で観た知人から“期待し過ぎるなよ〜”とのお達しがあったので一応期待はセーブしていたのですが、やっぱり期待し過ぎていたかも鴨。だって、予告編の印象はすっごく良かったんですよね〜。
確かに予告編の印象通り、映像的にはもの凄く懲り捲くっていた作品でした。けどね〜、それもちょっと“狙い過ぎ”の感を拭えなかったし、ストーリーの厚みとキャラクターの深みがいまイチ…で、う〜〜〜ん。

確かに、タイトル通り、そこにいた存在感でさえ希薄なキャラクター&その彼が流されていくだけのストーリーというのは、ある意味この映画の狙いでもあるので、その意図は成功しているのだと思います。けど、ソレって私の好みではないんですよね(^_^;)。
勿論、ビジュアル的にはウマイです。もしかするとアカデミーの撮影賞、少なくともノミネートくらいはいくんじゃないかと思いますし。監督賞もね〜、なんか「やりたいコトやってるだけ」って感じで、私的にはあんまり感心しなかったんですけれど。なんだかむやみやたらにドリーで近寄るシーンが多かったし。まぁ、それはあくまで好みの問題ということで。
20世紀前半映画のノワール調を狙っていたらしい(ちなみに全編白黒です)のはいいのですが、想像していた様なサスペンス調の話でなかったのはちょっとがっかり。だって、あのポスターなんて、もろフィリッツ・ラングの“M”を真似しているではないですか〜。途中出てくるいきなりのSiFiエピソードも、まぁ、ファンなら喜ぶのでしょうけれど、そうでない人には…(^_^;)。

キャストについて。う〜〜〜ん、普段は大ッ嫌いなビリー=ボブ=ソーントンがシブかったよ〜〜〜。彼って、最初の出世作『スリング・ブレイド』を観た時、すごいっ、すごい役者だ〜〜〜!と一時ハマリそうになったのですが、『スリング・ブレイド』で助監督をした人と会う機会があって、「あんなassholeなヤツ、人間じゃない」という話を聞いてからファンじゃなくなっちゃったんですよね。確かに『シンプル・プラン』の彼は良かったけど。それに女優としては好きだけど、やはりBitchとの噂が高いA=ジョリーと夫婦になったってことは、やっぱり彼も…という偏見の眼が…(^_^;)。でも、観た目はかっこ良かったな〜〜〜、この映画では!やはり撮影の仕方にも関係あるのでしょうけれど、彫りの深い顔に目の玉がギョロって感じがいいんですよ〜〜〜。上にも書いた様に、キャラのないのがキャラクターってのがちょっと残念でしたけどね。

フランシス=マクダーマントはなぁ、全然良くなかったです。私的には。 『ファーゴ』の彼女と比べ物にならないのは勿論のこと、『ワンダー・ボーイ』の方がまだましだったかも。彼女に白黒イメージはあんまり似合わない様な気が…。期待のジェームズ=ガンドルフィニー『ザ・ソプラノズ』主演)も全然良くなかった。う〜ん、一体どうしたの???ちなみに『ザ・プラクティス』のマイケル=バタルッコ等、コーエン兄弟の映画には太った男の人のキャラクターがサブとして必ず出てきますよね〜(^_^;)。
『ゴースト・ワールド』スカーレット=ヨハンセンは、友達の評によると“いつもの様な棒読み状態”。うん、確かに。私としてはけっこう好みの女優サンなのですが、なんだかプクプク太っているのが気になりました。あれでもうちょっと痩せてて魔性系なら、ロリータを地でやれたのに。ちなみに彼女、今GAPキャンペーンのタレントもやってます。あの写真だと痩せて見えるんだけど(^_^;)。

最後に、この映画の中では“Jap”という日本人の蔑称が4回も出て来ます。まぁ、時代柄、日本は敵だったので仕様がないと言えばしようがないのですが、ナチとかロシアの悪口って、私が覚えているだけでは一回ずつしか出てこなかったのに、どうして日本人ばっかり4回も???だってコーエン兄弟の次回作”To The White Sea”の撮影って日本なんでしょ?Co-Producerとか怒らせたりしないんでしょうかね(^_^;)?
まぁ、それだけ才能のある人は何言っても、何やっても許されるというコトなのでしょう。で、新作の主演はブラピとか。確かにコーエン兄弟って、この作品の様に意外な男性俳優を全く違った役柄で引き立てるのウマイですもんね。私はブラピのファンではありませんが、コーエン兄弟@日本ロケでお次はどんな作品が出来上がるのか、ちょっと興味津津です。

"Harry Potter and the Sorcerer's Stone"
「ハリー・ポッターと賢者の石」 ***1/2
Nov 23, 01

Directed by : Chris Columbus, Written by : Steven Kloves
Staring : Daniel Radcliffe, Rupert Grint, Emma Watson (II), etc.
Official Sites :
EnglishJapanese
日本での公開は2001年12月1日から

私にとっては、2年以上待ち望んでいたこの映画。ちょうど2年前の感謝祭の休日、友達の義妹に借りて原作を読んでいたので、感謝祭の日に劇場で観ることが出来たのは、ある意味感無量(大げさ?)のモノがありました。11月22日の日記にも書いた通り、この映画は劇場公開以来次々と興行記録を塗り替えている為、普段の日なら劇場に行ったってすぐには到底観ることが出来ないくらい。それを感謝祭という日本でいえば元旦にあたる日にマンハッタンで観たので、何とか観ることが出来ました(それでも2回分、満員売り切れの回を見送らなければなりませんでしたが)。

夜10時からの回ということで、さすがに子供の数は少なかったものの、やはりいることはいましたね。それにしても、私の左隣で観ていたオバサン2人組は原作本の大ファンらしくって、「あ、次は○○ね」とか「あのプレゼントは○○なのよね」とか大きな声でいうんですよ。私は原作読んでたからまだ良かったものの、話の展開を楽しもうとわざと原作読まないで観に来た人だったら、相当怒りますよ、アレは…(^_^;)。

え〜、私の場合、2年前と去年の頭にちょこっと読みなおしただけなので、細かい所は殆ど忘れてしまっているのですが、”原作を先に読んだ者”の感想としては、「かなりモノ足りなかった」という感じです。
一つは、「あまりにも原作に忠実に作られ過ぎている」ということ。多分シーンの順番も殆ど同じだったと思います。だから、隣のオバサン達じゃないけれど、次に何が来るのか全部分かっちゃうんですよね(^_^;)。やっぱりうるさいお客としては、せっかくなんだから何か”プラスα”が欲しいじゃないですか(^_^;)。で、人間の頭の中にあるイマジネーションに勝てるモノなんてないのですから、先にイメージを膨らませてしまった後で、予算・スペース・時間・才能の限られたビジョンを見せられてもね〜。魔法学校なんか私にはもっともっと暗くておどろおどろしいイメージがあったし、出てくる怪物&悪者、コレが全然怖くない…(^_^;)。中盤に出てくる怪物なんてホント『シュレック』そっくりなんですよ〜。コレって偶然なのか必然なのか…。
例えば原作のハリー・ポッターで私が好きだったのは、子供達の集める魔法のお菓子とか、そういった細かいディテールの部分なのです。確かにお菓子の部分もちゃんと映画には登場したのですが、なまじその部分の想像がすっごく膨らんでいたモンだから、「アレだけ???」ってけっこうがっかりしてしまいました。

二つ目は、これも一つ目に関連しますが、原作に忠実になるあまり、話の展開がもの凄く駆け足になってしまっているのです。このお話、ホントに原作通り丁寧に全て映像化したらそれこそ4時間以上の映画になってしまうと思うのですが、それをさらっと流しながら何とか2時間半でまとめているんですよね。だから、1つ1つのエピソードがもの凄く上滑りになってしまっている。
例えば最初の部分でハリーが叔父さん&叔母さん、そして従兄弟からいじめられる部分って、ホントは涙なくしては読めないのですよ。私なんか「こんな暗〜いイジメの話、いたいけな子供達に読ませてもいいのかな???」なんて心配してしまったくらいなのですから。それが映画になると、”単なる状況説明”にしかなっていないんですよね。感動も何もないうちに、話がどんどんと先に行ってしまうのです〜(T_T)。

三つ目は、この映画が”誰にでも観やすい様に、最大公約数的”に作られているということ。これが私にはつまんなかった。私はポッターおたくでも何でもないので、詳しいことは分かりませんが、ハリー・ポッターの何がこんなにウケたかって、私から言わせると多分、”すっごくヘンな本”だから、だったんじゃないかと思っているのです。例えば、ハグリッドというキャラクター。原作ではもっとすっごくオドロオドロしいヤツで、ほとんど方言みたいというか、何だか分かりにくいヘンな言葉を喋っているのですよ。ただでさえイギリス英語を読むのに七転八倒していた私にとって、彼の台詞ほど理解に苦しむモノはなかった。それが映画になったら彼、いきなり聞き取り易い英語(=アメリカ英語に慣れてる人には聞き取りにくい、コテコテのイギリス英語ではないという意味です。一応イギリス英語ではあるのですが)を喋っていたのです。コレにはまいった。コレって、全員を英国俳優でキャスティングしていながら、結局はアメリカ人の子供達にも分かり易い様にってことでやってたんでしょうか?でも、彼等、本の中ではちゃんと理解していたんでしょう???だったら、おそらく平気だったと思うのですけれど…(^_^;)。
ハグリッドのキャラクターだけでなく、他にも数々の魔化不思議な呪文とか、私が本を読んでいて苦労した部分=子供達には面白くてたまらなかったに違いないディテールが、けっこうスキップされてしまっていたんですよね。ハリー・ポッターのカルトサイトなんかに行ったら、怒っている人けっこういたりして(^_^;)。

そして四つ目に、これは原作を読んでいる時も不満に思っていたのですが、ハリーのキャラクターって実はいまイチ弱いんですよね。父母と死に別れたかわいそうな孤児、それでいて最強の魔力をその小さな身体の中に秘めている…コレって全部”お膳立て状況”でしょ?物語の中でハリー自身はそんなに成長しているワケではないのです。力だって正義感だって、彼は最初から持っていたのだから。ココが私にとっては、このハリー・ポッターというお話に関する最大の弱点。すでに4作目までの映画化が進んでいるそうですが、もしこのパターンが続く様だったら、私途中で観るのやめるかも…(^_^;)。

最後に。ビジュアル面、確かにお金かけてるんですけどね〜。なんか全然びっくり感がないんですよ。「だって作りモノだから…」の域をやっぱり超えてない。予算が少なくたって、ちゃっちい素材しか使えなくたって、頭の切れる人が作ったセットやCGはやはり一味違いますから。私なんか逆に「金使いまくってこれだけ?」なんてがっかりしたくらいでしたもん(見てる方は気楽にあ〜だのこ〜だの言えるんですけどね(^_^;)。

でも、原作を読んでいた私にとっても、子供達のキャスティングはかなりイケていたと思います。ハリー役のダニエル=ラドクリフは、もうそれこそパーフェクトに近かったし。あと、実は原作のイメージとは違っていたんだけれど、ロン役のルパート=グリントはすっごく良かった。あれで子役初体験なんて全く思えない程、最後の方では細かい演技を見せていました。ハーマイオニー役のエマ=ワトソンも、つっぱった生意気さ&心の奥での自信なさげな彼女の役をうまく演じていたと思います(原作と比べると、ちょっとキュート過ぎますけどね(^_^;)。さすが『ホーム・アローン』のクリス=コロンバス監督、子供の扱いはお手の物ってトコなのでしょうか。コレで別に“ビジュアル担当監督”みたいな人がいたら完璧だったのかも(^_^;)。

最後はまぁ予想通り、続編アリっていうのを匂わせ捲くって終わっていました。古くは『バック・トゥ・ザ・フィーチャー2』から、『ジュラシック・パーク』まで、こ〜ゆ〜あからさまな続編つなぎは個人的にあまり好きではない私です。だって一応、一つ一つの作品は独立してるんですから、やっぱり終わらせる所はさっぱり終わらせてね、って感じ。まぁ、このヘンの責任は原作にも随分とあるんですけどね(^_^;)。
私の場合、怠慢なヤツなので原作より映画の方を先に観てしまうパターンの方が圧倒的に多いのですが、この『ハリー・ポッター』。あまりにも、ストーリーが原作に忠実に作られすぎているので、もし映画を先に観てしまったら本なんか読む必要性全然なかったかも鴨。それより映画を先に観てしまうと、本を先に読んだ時のあの“オドロオドロしい感覚”を楽しめなくなってしまうかもしれません。日本語版がどう翻訳してあるのかは分かりませんが、私的にはこの映画、先に原作を読んでから観に行くことをオススメしたい作品です。

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