*** Just Watched 24 - 最近観た映画 24 ***

評価の満点は5つ星です。

"The Son's Room" - 「息子の部屋」****1/4
"DOG" - ***3/4
"BARAN" - ****1/2
"Time Out" - ***1/2

"The Son's Room"
「息子の部屋」 ****1/4
Oct 15, 01

Written and Directed by : Nanni Moretti
Starring : Nanni Moretti, Laura Morante, Jasmine Trinca, Giuseppe Sanfelice
Official Site : French
Seen at New York Film Festival
Opening at Theater in NY and LA Feb 1st, 2002, 日本での公開は2002年

今年のカンヌ映画祭で、最高賞のパルムドール受賞。まぁ、確かに非常に水準の高い映画ではありました。でも、あまりにも”洗練され過ぎていて”、私にはちょっと物足りなかったかな〜(うるさい観客ですよね、私って(^_^;)。確かに泣かせてもらったし、出来のよい映画だから金返せとはいいません。けど、”クセがないから”さらっとし過ぎちゃって、あまり印象に残らないのですよ。これはあくまで、私的に観た感想ですけどね。私って、蔡明亮監督の作品みたいに、ヘンな映画が好きなので(^_^;)。

まず最初に、この映画ってイタリア映画なのですが、イタリア映画という感じがまるでありません。たま〜に私の知ってる「ラファンクーロ」とか「カッツゥオ!」とかいう単語(英語でいうFuck Youに当たる言葉です。こ〜いう言葉ならよく知ってる私(^_^;)が出てくると、「あ、そう言えばイタリア映画だったんだっけ???」って気が付くくらいで…。
う〜ん、この映画がフランス資本っていうのも関係あるのでしょうか?なんかフランス映画っぽい雰囲気もプンプンするのですが、アメリカの中の上階級家庭っていう感じにも見えるんですよね。そう言うところがカンヌでも受けたのかな???

繰り返しますが、勿論すんごく良く出来た映画です。何てったって脚本がとてもよく書かれている。非常にオードソックスなんですけれど、無駄がない。どの展開もありがちといえばありがちなんですけどね〜。ストーリーは、何を書いてもねたバレになりそうなので、書きません(^_^;)。
キャストは全員素晴らしかったです。恥ずかしながら私、ナンニ=モレッティの映画って初めて観たのですが(『僕のビアンカ』は、いつか是非見てみたいと思っています)、彼はいいですね〜。前はコメディをやってたそうで、ギャグ系の彼の方が味がありそう。う〜ん、観てみたい…。妻役のLaura Moranteは、女優なら一生に一度はやりたいネタバレ→子供を亡くした母親の演技を非常にそつなくこなしていました。息子役のSilvio Orlandoもかわいかったし、娘役のJasmine Trincaも最高。GF役のGiuseppe Sanfeliceも、役にぴったりはまっていて、とても良かったです。

実を言うと、この映画で一番印象に残ったのは、ナンニ=モレッティ演じるジョバンニが、「あの時に戻れたら…」という悲痛なシュミレーションを何度も繰り返してみるシーン。コレって、9月11日のテロ事件がなかったら、もっと印象の薄いシーンだったと思います。人は悲しみのどん底に落ちる時、「if」に逃げたくなってしまうのかもしれない。けれど、いつか人は前に進んでいかなきゃいけないし、歴史はいつも同じ様に時を刻んでいる。もしかしてもしかするとこの映画は、そういった意味で、傷ついた今のアメリカ人の心に入り込む、ユニバーサルな作品になってゆくのかもしれません。

"DOG"
Inja ***3/4
Oct 10, 01(English version will come soon!)

Written and Directed by : Steve Pasvolsky
Related Site :
AFTRS National Screening Tour
Seen at New York Film Festival

この映画はショート・フィルムだったのですが、非常に感動したので、感想を書いておきます。

舞台は10数年前の南アフリカから始まります。主人公である黒人の男の子は、白人である地主の買っている闘犬の子犬が大のお気に入り。旗を掲げるヒモでそっと子犬の首輪を作ってやったりしています。それを気にくわない地主は子犬を袋詰めにし、子犬を殴るわ蹴るわ の大暴行。袋から出す時、わざと男の子から出させた為に、子犬はその男の子が自分に暴行を加えたのだと思い込んでしまうわけですね。
それから10年後。冒頭で男の子が揚げていた旗は、植民地下の南アフリカの旗から、ANC(アフリカ国民会議)の旗に変わっていますが、地主と成長した青年の関係は殆ど変わらぬままになっています(ちょっとだけ二人の仲が接近した様にも見えるけど)。ある日、地主は持病の発作で常備薬を飲まなければ死ぬ羽目にまで追いやられますが、地主に薬を渡そうとする青年の前に、何も知らない例の犬が立ちはだかって彼を寄せつけません。いわばコレは、地主が10年前に少年へいじわるをした事に対する自業自得の場面になるわけですが、結末がまた哀しいんですよね...。

う〜ん、コレはスゴイ話だな〜と思いました。犬を通して、人種差別というものをかくも関節的に、それでいて核心的に語っているのです。少年役も、青年役も、どちらの俳優サンもすごく良かった。ワンちゃんの演技(?)も最高でしたね。
コレは、今年のNY国際映画祭で上映されまして、監督さん本人も会場に姿を見せていました。Q&Aのなかったのがとても残念。監督さんって、とっても若い白人でしかもオーストラリア人(そこの学校へ行っただけかもしれないけど)なんですよ。だから、主人公の男の子は、自分がモデルというわけではないのですよね。この話って、一体どこから来たのでしょう???

"BARAN" ****1/2
Oct 10, 01(English version will come soon!)

Written and Directed by : Majid Majidi
Starring : Hossein Abedini, Zahra Bahrami
Related Site :
New York Times
2001年NY国際映画祭にて。日本でのプレミア公開は、2001年9月の福岡国際映画祭。

今年のモントリオール映画祭でグランプリを受賞。コレは日本でも公開された97年『Children of Heaven 〜運動靴と赤い金魚』、99年『The Color of Paradise 〜太陽は、ぼくの瞳』に続くナント3度目の受賞なのだとか。日本でもすっかりお馴染みになったイラン映画、恥ずかしながら私はまだまだ全くのビギナーでして、国際的には最初にポピュラーになったキアロスタミ監督の作品を除いては、それまでとんとご縁がなかったのでした。
キアロスタミ監督に続くのは、おそらく去年のヴェネツィアでグランプリを受賞した『The Circle』のジャファール=パナヒ監督(『白い風船』の監督さんです)が来るのかなと思いますが、その次の三番手に来るのがこのマジット=マジディ監督なのではないでしょうか?マジディ監督の『太陽は、ぼくの瞳』は、一昨年のNY国際映画祭でも上映されています。

そういった理由で、もともと絶対観ようと思っていたこの作品、今回の同時多発テロ事件とその報復行動によって、世間の注目を一挙に集めることになりました。と言うのも、舞台がイランでありながら、この作品の主人公がアフガニスタンからの難民である為。私が行った10月9日の上映では、キャンセル待ちの長〜い列が出来ていましたし、入場する人達に、アフガニスタン難民の現状を書いたビラを配っている人もいました。
見る前は、もっと政治的な内容を含んでいたり、アフガン難民に対する憐れみ的な映画なのかなと思っていました。けど、この映画は、その同情と紙一重ギリギリの所で胸に染み入るモノを訴えています(おそらく話の中盤で、コレはイラン人によるアフガン難民への憐れみの映画だと思う人もいるかもしれません。でも、最後までちゃんと観て下さいね〜)。う〜ん、久々に静かに泣けたな〜。イギリス映画『ブラス!』を観た後の静かな感動に似た感じ。おセンチな次元ではないのですよ。それぞれの人達の”おだやかな威厳”が胸を打つのです。後引くわ〜。だって映画を観てもう一日経った今でさえ、映画のことを思い出すと、どうしようもなく泣けてきてしまうのです(マジです〜)。思い出すのは、とっても小さな、たわいもないシーンの数々なんですけどね。不思議な力を持った希有の映画だと言わなければなりません。

映画作り的にも”隙のない作り”になっています。最初の工事現場のクレーンシーンなんかは圧巻ですよ。ストーリー的には、中盤ちょっと弛むかなとも思うのですが、それは映画を最後まで見ると全て許せてしまうんですね、コレが(少なくとも、私にとっては)。
勿論、この映画を観て不満を漏らす人もいるでしょう。それは例えばネタバレ→ラティフがバランのことを好きになるプロセスが曖昧であるということ。彼女が女の子だって分かった次のシーンで、彼はもう恋に落ちていますもんね。コレは私も、この映画の舌たらずな部分であると思っています。それから、ネタバレ→ラティフがバランに貢ぐ(?)お金は、もう度を越しているとさえ言えるかもしれません。自分の3ヶ月分の給料を捧げちゃうとか、自分のへそくりを彼女の父親の松葉杖を買う為に使うとか、(イランではとても大切なものらしい)自分のIDまで手放すなんて、正気の沙汰ではないですよね?(え?それって、私がピュアじゃないってこと???)だって、バランは彼のやってるコト、何も知らないんですよ?それがこの映画のいい所と言えばいいところなのですが...。

ただ、やっぱりこの映画って、最後まで観ると全て許せてしまう様な不思議な魅力があるのですよ。それはまた、主演二人の俳優サンに依っている所もかなり大きいと思います。ラティフ役の俳優サンは、最初正直言って、「うげげっ、彼が主人公???」って思うくらい魅力がなかったのですが、映画が進むにつれてどんどん魅力的になっていくんですよね。こういうパターンの映画って沢山あるけど、ホント不思議です。
そして、最初から最後まで、殆ど無言(一言くらい喋ってました???)で通したバラン役の女の子!!!いや〜、彼女も最初と最後のギャップが凄いっっっ!!!特にネタバレ→ラストでイスラムのベール(何ていう名前でしたっけ???)を被ってしまう彼女は、もう冒頭の少年姿とは似ても似つかないくらいです。う〜ん、こういうストーリー展開の映画って、今までに山程あると言えばあるけど、いいモンはいいんですっ!

まぁ、同時テロ事件後のおセンチな気分が、私をいつもよりもっとエモーショナルにしていると言ってしまえばそれまで。確かに普通の評価(?)よりは随分と点が甘くなっているかもしれません。
アフガンの難民問題に限らず、アジアからの出稼ぎ労働者を抱える日本でも、この映画から読み取れることは沢山あると思うのですが。ところで、アフガニスタンの人達とイランの人達って、言葉の問題はどうなっているのでしょう?イランの人達はペルシャ語を喋っているというし、アフガニスタンも地域によっていろいろな言語があるのだとか。前、大学に来ていたマレーシアとインドネシアの留学生が、お互いイスラムの言葉でコミュニケーションを取っていましたが、実際日常会話にはあまり使えないみたいだし...。この『BARAN』では、言葉のコミュニケーションがあまり問題になっていないみたいだったので...。もし知っている方がいたら教えて下さい。m(_)m
最後に。また内容とは関係ない話なのですが、この映画3シーンに一回は雷のシーンが出て来ます(雷がダメな私(^_^;)。イランって、そんなに雷多いのでしょうか(雪のシーンもけっこうありましたけど)?それとも、マジディ監督が雷のシーンを好きなのかな???知ってる方いたら教えて下さい。m(_)m

"Time Out" 
L' Emploi du temps ***1/2
Oct 10, 01(English version will come soon!)

Written and Directed by : Laurent Cantet
Starring : Aurellien Recoing, Karin Viard, etc
Related Site :
New York Times
2001年NY国際映画祭にて。フランスでの公開は、2001年11月から。

一昨年のニューディレクターズ・ニューフィルム映画祭で上映された”Human Resources”が大好評を得たローラント=カント監督の最新作。ヴェネツィア映画祭の現代映画部門グランプリ、トロント映画祭、オフィシャル・セレクションを経て、今年のニューヨーク映画祭で上映されました(もう一週間も前に観たので、記憶もおぼろですが)。
お話は、リストラされたことを妻や家族に言えず、仕事をすると言ってはありとあらゆる場所で時間を潰し、果てはお金に困ってかつての同僚を騙すまでになってしまう出口の見えない中年男性の悲哀。コレは、フランスで実在した男性がモデルになっているのだそうです。実在のモデルは10年だか20年だか家族を騙し続け、ネタバレ→しまいには家族を殺して自分も自殺を図るらしいのですが、このお話では、最後自殺しないで終わるんですよね。私としては、ネタバレ→『セールスマンの死』みたいなノリになるのかと思っていたのですが、そうならなかったのは、良かったのか悪かったのか...。

主役を演じたオーレン=レクーニンの演技は、素晴らしいというより、すざまじかった様な気がします。上映後に監督とレクーニンを招いてのQ&Aがあったのですが、レクーニンは、キャラクターをより深める為、撮影前のリハーサル期間だけで数カ月間を要したと言っていました。もうその役になり切ってしまって、しばらくは抜けるまでが大変だったとか。子供達も殆どが素人を使ったそうですが、なんか皆キテましたね〜。レクーニン演じるヴィンセントが、ネタバレ→おそらく自殺を決意して、家族へ会いに来るシーン、すっごく空気が張り詰めていました。実を言うと、全体的には長ったるい映画だな〜と思っていたのですが、このシーンはめちゃくちゃテンション高かったです。

奥さん役のカリン=ヴィラードも良かったし、何と言っても闇商人のボス・ジャン=ピエール役(Serge Livrozet)が最高でしたね。もう少し、あの二人の話が広く深く展開されていたらなぁと思います。
まぁ、この映画、スターもいないし、暗い話だし、日本での上映は期待が薄い様な気もしますが、ローラント=キャンテ監督、これからも注目のヒトですよ〜。

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