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評価の満点は5つ星です。

"What Time is it There?" - 「ふたつの時、ふたりの時間」****3/4
"Warm Water Under the Red Bridge" - 「赤い橋の下のぬるい水」***3/4

"What Time is it (Over) There?"
Ni neibian jidian
「ふたつの時、ふたりの時間」 ****3/4
Sep 29, 01
(Jan 25, 02 - 2回目に観た感想をアップしています)

Written and Directed by : Tsai Ming-Liang
Starring : Kang-sheng Lee, Shiang-chyi Chen, Cecilia Yip, and Jean-Pierre Léaud
Official Site : French, Japanese
2001年NY国際映画祭にて。日本でのプレミア公開は、2001年10月の東京国際映画祭。
アメリカでの一般公開は、1月11日から。日本での一般公開は2月23日から。

う〜〜ん、私、もぉ溺愛しちゃってます。蔡明亮監督の映画!!!当然このページは数百%贔屓しまくりで書いていますので、くれぐれもご注意を。

今年のカンヌ映画祭正式コンペ入賞を皮切りに、ベニストロントモントリオール等、主要国際映画祭のほぼ全てで上映されて来たこの作品、待ちに待ってたNY国際映画祭での上映です〜〜〜。
や〜、またも“蔡ワールド”、思いっきり炸裂しておりました〜〜〜。コレはファンにとっては、本当にたまらない作品ですよ〜。私の作った“蔡明亮リスト”をチェックすると、2)と5)以外の項目は全て満たしていますね〜。私ったら、上映時間中ウキウキ・ワクワクしまくっちゃって、一緒に観ていた友達に、気味悪がられてしまったくらい。もう、異常にハマっております(^_^;)。その一緒に観た友達は、ただ一言「Weird…(ヘンだよ〜)」とだけ感想を述べていたので、やっぱり誰にとっても好きになれる映画ではないと思います。確かにファンでない人にとっては、やたらと長回しが多くて退屈な映画となってしまうかもしれません(私から言わせてみると、好きな映画をゆっくり延々と観ていられるってことは、それだけで至福の時間なんですけれど(^_^;)。

まず、私からのアドバイスとしては、この映画から蔡監督の映画には入らない方がいいと思います。この映画って、すっごくオタッキーな所があって、他の作品との関連性が凄くあるんですよ。ファンとしては、他の人にもその辺りをやっぱり楽しんで欲しいので…。
おそらく蔡明亮監督の作品の中で一番とっつき易い作品は「Hole」、そして国際的に最も知られている作品は、ベネチアでグランプリを獲った「愛情萬歳」でしょう。でも、この「ふたりの時…」に一番近いのは、暗いくら〜い「河」なんですよね。もう、殆ど続編とすら言える部分もかなりあります。

どの辺が続編なのかと言いますと、まず、蔡監督の長編映画5作品全てに主演している李康生(役名も同じく、リー=カンシエン。通称:小康=シャオカン。“カンちゃん”みたいなニュアンスです。)と、その両親。ここまで親子役をずっと続けてくると、彼等、本当の親子ではないのかと錯覚すらしてしまいます。しかも撮影場所、どの作品も同じロケーションですしね〜。実は今回、映画上映が終わった後に監督へのQ&Aがありまして、私、質問したんですよ。「あのロケーションは、撮影用にずっとキープでもしているんですか?」って。そうしたら、蔡監督による答えはナント、あのアパートは李康生と彼のお母さんが実際に住んでいるアパートなのだそうで。うわ〜、文字通りの“アット・ホーム”ってやつですね(^_^;)。お父さんも勿論いいけど、今回はお母さんがめっちゃ良かったですね〜(特にあの最後のシーン、スゴすぎる〜〜〜〜〜〜)。
そして、やはり「河」にも出演していたチエン=シアンチー(漢字?)。今回出演しなかった蔡作品のヒロイン、楊貴媚が「愛情萬歳」や「Hole」でやっていた役を見事にこなしていました(実際、「愛情萬歳」のラストそっくりのシーンが、この作品でも繰り返されています)。彼女もこの先、ずっとレギュラーになっていくのでしょうね。すっごくフォトジェニックで個人的にはとても好みの女優サンなので、私としては嬉しい限りです。
それにしても、陳昭榮のカメオ出演には超笑えました。パリの地下鉄で、チエン=シアンチーの反対側のホームにいるんですけど、あのシーン、めっちゃピンぼけしているので(プロジェクターのせいだったのかもしれませんが)、蔡監督か陳昭榮のファンじゃなきゃ絶対わかんないですよ。嗚呼、オタク過ぎる〜〜〜(^_^;)。「河」でも、彼はカメオ出演していましたしね(でも、パリまで行くか?フツー???)。あの作品では楊貴媚もカメオ出演していましたが、さすがに今回、彼女のカメオ出演はありませんでした。ちょっと淋しかった様な気も…。

で、もしかしてもしかすると楊貴媚のやるはずだったその役を(やるはずだった方に私は賭ける!!!)、今回は香港女優、セシリア=チャンが演じていました。う〜ん彼女、正直私的にはいまイチだったかな〜。ゲイのシーンが多い蔡監督の映画にして、初めてレズビアンのシーンが出て来るのですが、あの微妙なシーン、もし楊貴媚がやっていたらと思うと…。まぁ、悪くはなかったですけどね。シーンそのものとしては、けっこう好きでしたし。

それにしても!!!この作品での最大のカメオはやっぱりジャン=ピエール=レオでしょう!!!!(写真左)誰のコトって?そう、あの「大人は分かってくれない」の子役をやった俳優さんです!!!いや〜、当たり前だけど、すっかりもうオジサンなのですね〜。このシーン、すぐさま会場から笑いが沸き起こったのですが、私、友達に聞くまで気が付きませんでした。う〜〜〜ん、キテルなぁ。前にもどこかに書いた様な気がしますが、蔡監督が一番好きな映画は、他でもなくこの「大人は分かってくれない」。この「ふたつの時…」にも、「大人は…」の劇中シーンが何度か出て来ます。オジサンになった彼は、俳優でも何でもなく、“ただの気味悪いオッサン”として登場してくるのですが、この映画の中では、台北とパリを繋ぐ、天使みたいな役廻りんですよね〜。いや〜、単なるオマージュにしてはスゴすぎる〜〜〜。

あっ、またまたストーリーの紹介が後回しですみませ〜ん(^_^;)。「河」「洞」と、近頃エレメントがテーマとなってきた蔡監督の今回のテーマは「時」。
父親を亡くしたばかりのシャオカン。台北の街へ出ては出店で安時計を売っています。ある日、売り物ではなく、自分のしている時計を気に入って買っていった一人の女の子(チエン=シアンチー)がパリへ発つと聞き、まるで何かにとり憑かれた様に台北中のありとあらゆる時計をパリ時間に直し始めるのです。そのエスカレートぶりが、もう蔡作品なんですよ〜〜〜。台北とパリがメビウスの輪かなんかの様に、繋がっているんだけど、延々に平行線を辿っていくみたいなとっても不思議な物語です。前述した「大人は分かってくれない」のジャン=ピエール=レオや、父親役の苗天が、この二つの世界を輪廻的に繋ぐ“天使役”の様な役柄で登場。冬の裾長コートを来たオッサンが天使というのは、ちょっと「ベルリン・天使の詩」みたいな所もありますね。

多分、蔡監督の作品を見慣れていない人達にとって、この映画は“不条理映画”または“ワケの分からない、ファンタジー映画”の様に映ることでしょう。けど、蔡作品を全て観てきた私にとって、これ程ラストのすっきりした彼の作品はないって感じです。これまでの5作品全てを総合すると、ちゃんと辻褄が合うんですよね。う〜ん、言ってみればホントにオタッキーなんですけれど、彼の映画って…(^_^;)。

ま、それはさておき、今回初めて台湾から出て海外で撮影をした蔡監督。上映後のQ&Aでも自身の生い立ちについて語って言っていましたが、マレーシア生まれで台湾に20年以上も住んでいるという彼自身の持つ「二国間での浮遊感」は、やはり異国の地に8年以上も住んでしまっている私にとって、かなりグッと来るモノがありました。特に“どっち付かず”で常に二つの時間を生きている、という部分がね。殊に日系の会社で働き始め、日本と常に繋がっているインターネットの世界にハマっている今の私は、2〜3年前と比べても、かなり“二つの時間”を生きているんじゃないかなぁと思います(実際、日本から買って来たこのノートパソコンは、いまだに日本の時間を刻んでいますし)。私が普通以上に(?)異常に蔡監督にハマってしまうのって、こうした無意識の中にある、彼と似た様な感覚にもあるのかもしれません。

ともあれ、彼の作品に受け継がれ続けている細部のディテール&リアル感、そしてその天才的な映像構図は勿論のこと、今回も蔡’s センス・オヴ・ヒューモアは健在でしたよ〜。も〜、とにかく笑わせて頂きました〜〜〜。う〜、シリアスでリアルで、しかも面白いなんてオイシすぎるぞ〜〜〜、蔡作品!!!!…と、コレははっきり言って誉めすぎですが、少なくとも私の中ではそれくらい愛すべき作品なのであります。う〜ん、これだけ自分の好きな世界を作りまくって、それで他の人をも楽しませてしまうのだから、蔡明亮とゆ〜人は、つくづく幸せな人ですね〜。

最後に。この作品には、(私から言わせると)たった一つだけ他の全4作品にはこれまでなかったシーンが出てきます。それは、シャオカンと母親のネタバレ→喧嘩 のシーン。コレには私、ちょっとビックリしました。コレは、それまでの作品、特に「河」とは全く正反対の部分だったので…。
監督本人も言っていた様に、このストーリーは、監督自身の父親が亡くなってからの自分自身、そしてその周りが随分とモデルになっているのだそうです。だとすると、このストーリーが、シャオカンと母親の関係、シャオカンと父親の関係に、何らかの“結末”を付けて終わっている…それは、監督が、監督なりに、自分の両親との間に、何らかの折り合いを付けた…ということの現れなのではないかと思います。言い換えれば、この作品は、監督自身の成長物語でもあるワケで…。
う〜ん、そ〜いうモノを作りながら、“その全て〜孤独・悲しみ・怒り・笑い”を観る人達にも“を分け与えてしまうなんて、蔡明亮とゆ〜人は、本当に、本当に幸せな人なんだなぁ〜と、つくづく私は思わずにはいられません!!!(ぐわ〜、誉めすぎちゃってゴメンなさ〜〜〜い)。

2回目(Jan 21の感想)

…と言うわけで(?)、先々週からニューヨークの一般公開が始まりました。ニューヨーク・タイムズでは相も変わらず絶賛評を書いているし、今度は去年の『河』の時の様な限定公開とは違い、それこそポピュラーなアンジェリカ・フィルム・センター&リンカーン・プラザでの上映となったので、お客の入りはけっこう上々。けど、やっぱり蔡作品って“好き嫌いの分かれる映画”なんですよね〜(^_^;)。
私の友人で3人、この映画で“蔡明亮初体験”をした人達がいるのですが、“やっぱりダメだった”そうで。私がアレほど「この映画から観始めるな〜〜〜〜〜」と言ったのに〜〜〜〜。上でも書きましたが、この映画は多分に過去の作品群の続編的な部分を含んでいるので、いきなりこの映画だけを観てもワケ分かんない部分とゆ〜のが沢山あるんですよね。

繰り返しますが、蔡明亮監督の作品は、いつまで経ってもどこまで行っても、“私小説”ならぬ“私映画”であって、その背景を知るのと知らないのとでは多分に見方が変わってくる所があります。この映画は、1992年に亡くなった蔡監督の父親と1997年に亡くなった主演の李康生の父親とその家族が話全体のモチーフになっていまして、その部分については私も前回観た時から知ってはいたのですが、李康生の父親の死が自殺であったことは、今回2回目を観た前日に初めて知りました。
1回目に観た時にも思ったのですが、この映画は、父親の死後残された家族の葛藤…そして“その後”を描いている。『河』でも、“父親との関係”というのは大きなテーマとなって現れてくるのですが、『河』ではまだ“その後”にまで至っていない。ノスタルジックな部分に止まって、ふっきれる所にまで至っていないのです。そう言った意味で、この作品での蔡明亮というのは新しい、大きな一歩を踏み出しているんですよね。この辺り、ホントに蔡作品を最初から丁寧に観てきて、本当に愛しんでるファンにしか分からない部分なのです。残念ながら…。

“小説は現実逃避の為にお金を払って楽しむ娯楽”と思っている人達にとって、なぜわざわざお金を払って柳美里作品みたいな楽しくない“私小説”を読まなきゃならないのか?という意見があるのと全く同じ様に、“映画は現実逃避の為にお金を払って楽しむ娯楽”と思っている人達にとって、なぜわざわざお金を払って蔡明亮作品みたいな楽しくない“私映画”を観せられなきゃならないんだ、という意見があるのは当然です。
何度も繰り返しますが、蔡監督の作品は、一部の蔡フリークの為の映画でしかありません。『映画瓦版』にも書かれている様に、蔡作品というのは、独特の強い匂いを持っていて、それがダメな人はダメ。けど何かの拍子に愛に変わり、同じ人が信奉者に変わってしまうことも有り得ないワケではないのです。そこにはとにかく1か100というのしかなくって、50くらいとか、60くらい好きかなというのはないんですけどね。

まぁ、日本にはすでに蔡明亮ファンはかなり存在している様ですから、アメリカよりはずっとヒットすることでしょう。今回2回目を一緒に観に行った友達は『青春神話』『愛情萬歳』『河』『HOLE』を全て観ている、けっこうな蔡ファンではありますが、「やっぱり前の作品に比べるとインパクトは落ちるよね」と言っていました。私もそれには同感です。確かに『愛情萬歳』の時の様な荒削りな衝撃はもうないし、今回の映画では“繰り返し”の部分が幾つか出てくるので、“またか”と思う人がいるのは当然でしょう。けど、それは言い換えれば蔡明亮が“ワンステップ上がった成熟の時に入り始めている”とも言えるのかもしれません。
コレも考え様によっては、私にはちょっとコワイんですけどね。なぜかと言うと、私ってこの手の“私映画”に嵌りやすいタチで、以前はスパイク=リーとか候賢孝に嵌ったこともあるのですが、彼らが“成熟期”に入ってしまってから以降は“もうイイや”みたいなのがあって…(^_^;)。ま、蔡監督というのは、どこまでも曲者っぽそうな所があるので、このままカルトの道をまっしぐらで突き進んで欲しいです〜〜〜。…という、とってもワガママなファンからのお願いでした(^_^;)。

"Warm Water Under the Red Bridge" 
「赤い橋の下のぬるい水」 ***3/4
Sep 30, 01(English version will come soon!)

Written and Directed by : Shohei Imamura
Starring : Koji Yakusho, Misa Shimizu, and Mitsuko Baisho
Official Site :
Japanese
2001年NY国際映画祭にて。日本での公開は、2001年11月から。

一言で言ってしまうと、この映画は、「エロティック・ファンタジー映画」です。う〜ん、今年のカンヌ映画祭では、そこそこの評価を得ていたので、かなり期待していたのですが…。まぁ勿論、悪くはないです。良く出来ています。う〜ん、でも期待が大きすぎたかも鴨。
あ、でも同じく役所広司&清水美砂のコンビでカンヌのグランプリを受賞した「うなぎ」より、個人的にはこっちの方が断然好きです。第一「うなぎ」って、なんでグランプリ取ったのか全然理解出来なかったし…(^_^;)。

この作品の良い所は、やはりその原作に依る部分がかなりあると思います。私は辺見庸氏の原作本を読んでいないのですが、多分原作を読んだ人は物足りないと思っていると思う。最初はかなりイイんだけど(最初のエッチシーンの後の、水が流れていくシーンはかなりのドキドキもんでした)、最後の海辺のシーンがなぁ〜。う〜ん、ちょっとパワーが足りなかった…。やっぱり“エロの今村昌平”なら、もっと大胆に笑わせて欲しかったです。コレも時代の流れなのか、今村監督がお歳を召してしまったからなのか…。

役所広司サンはね〜。このHPでは何度も書いている様に、「またこの人〜〜〜???」ってな感じなんですけど、実は意外に彼の演じるこういったピュアなラブ・ストーリーはあまり観たことがなかったので(映画版「失楽園」観てないんですけど、私)、ある意味新鮮な部分はありました。いや、それにしても彼、大胆なヌードが多かったですね(^_^;)。
それに引き換え、全くヌードらしいヌードを見せてくれなかった清水美砂は、事務所の方針かなんかだったのでしょうか???男の方にあれだけ脱がせておいてね〜(^_^;)。
脇役サン達は、賠償美津子、中村嘉葎雄を初め、スゴイ顔ぶれのオンパレードだったのですが、インパクト的には皆いまイチでした。クレジットに田口トモロヲってあったんだけど、何処に出てました?マラソンのコーチだったのかな???そうそう、あのアフリカからの留学生って、絶対に今村監督の息子、天願大介氏(共同脚本)が入れたシーンだと私は思う。あそこだけ、なんか妙に浮いてたもんね〜〜〜(^_^;)。

ともあれ、このところ市川崑監督と、とかく比較されたり(間違われたり)しがちな今村昌平監督。何が何でも今村派の私としては、まだまだ次回作も意欲的に頑張って欲しいです〜〜〜。

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