評価の満点は5つ星です。
"Chin Goo" - 「友へ/チング」***3/4
"Big Mama" - 「かぁちゃん」***1/2
"Together" ***1/2
「友へ/チング」 - ***3/4 |
Written and Directed by : Kyung-Taek Kwak
Starring : Ohsung Yoo, Dong-Kun Jang, Tae-hwa Seo, Un-taek Jeong
Official Site : Korean, English (Cineclick Asia)
日本での公開は、2002年春
韓国では今年3月末にオープンし、「風の丘を越えて〜西便制」「シュリ」「JSA」の暦代興行記録を次々と塗り替えたこの「チング〜友人の意味」。私にとっては期待もかなり大きく、今回のモントリオール映画祭は殆どこの映画を観に行ったと言っても過言ではありません(^_^;)。けど……。う〜〜〜ん、やっぱり期待が大きすぎたよ〜〜〜ん(T_T)
この映画を一言で言うと、韓国のTVドラマ「砂時計」meets「情け容赦なし」って感じかな?(観ていない人には分らなくてスミマセン)基本的には好きなタイプの映画なのですが、う〜ん、格別新しい映画という部分が見受けられなかったので、そこの所がちょっとがっかりだったかなぁ〜。確かにコレは、韓国のノスタルジックな文化背景を知らない人が観るとツライ映画かもしれません。つまり、海外には売りにくい映画ということで…(^_^;)。
基本的なストーリーは、少年時代を一緒に過ごした4人の男達の物語。彼等が大人になっていくにつれ、それまでの4人の関係が段々と形を変えていってしまうというもの。出だしのセピア・シーンは、何だか侯孝賢かなんかの台湾映画的な雰囲気が漂い、学園不良ドラマ(?)から、段々と仁義なき戦いの世界(笑)に入って行きます。最後はホンッとに、男の世界のおセンチ映画だったな〜。
まぁ、気に入った部分を幾つか挙げますと、まず、オープニングのセピア・シーンが醸し出していたコミカルさ。この最初の5分では「おお〜、コレは面白そうな映画だ!」と思っていたのですけれど。それから、学園祭バンドのコンサート。そうそう、このダサさは日本人にも通じるモノがありますよ〜。そして、映画館での乱闘シーン。う〜ん、このシーンを観ると、この監督、力あるよな〜と思います。私、このシーンはかなり好き。そして、ネタバレ→ チャン=ドンゴンが殺されるどしゃぶりの雨のシーン。このシーンの雨の効果はもろ「情け容赦なし」のクライマックスって感じでした。もしこの映画の方を先に観ていたら、もう少し印象も変わったかな?あのザラついた映像ってどうやって撮っているんでしょうね???うん、やっぱりこの監督サン、ビジュアル的な才能はあると思う。それと最後に、ユ=オソンとソ=テファがガラス越しに手をかざし合う場面ね。ここは役者サン二人の勝利だ〜。
何と言っても素晴らしかったのが、その役者サン達!!!「アタック・ザ・ガス・ステーション!」で強い印象を残したユ=オソン(写真左)。この映画では、さらに味わい深い演技を見せていました。今回の映画祭では舞台挨拶にも姿を見せていましたよ。実物の方が全然かっこいい〜〜〜。
そして、驚きのチャン=ドンゴン(写真左から二番目)!!!実は私、彼があの「情け容赦なし」の若い刑事役の彼だなんて全く気が付きませんでした。映画の後、一緒に夕食を食べに行った友達と話をしていて、「彼って、“情け容赦なし”の刑事役になんとなく目が似てるよね〜」、なんて話しているうち、「アレっ、もしかして???」と初めて気が付いたとゆ〜くらい(^_^;)。あの坊ちゃん坊ちゃんしていた彼が、あのギラギラした目のやくざに???う〜ん、変わるモノですね〜、役者さんとゆ〜のは。でも、彼「情け容赦なし」の時よりもずっとずっと良かったと思います。
「飛天舞」では悪役をやっていたソ=テファ(写真右から二番目)は、この映画ではアメリカに留学するエリート役。ソ=テファ自身もNYに音楽留学していたそうで、彼は同じ時期NYに留学していたクヮク監督の分身でもあるのでしょうね。
ま、メロドラマ・シーンでの馬鹿デカイ音楽だけはやめて欲し〜な〜と思いましたけど、それ以外、フィルム・メーキング的(映画の技法的)にはあまり非の付け所のない映画なんですよね。でもやっぱり、海外セールは難しいだろ〜な〜(^_^;)。上にも書きましたが、クヮク監督は6年前にNY大学映画科を卒業した留学組。次回作はラスベガスと韓国で撮影する作品だそうなので、こちらもまた楽しみですね〜。
「かぁちゃん」 - ***1/2 |
Directed by : Kon Ichikawa, Written by : Natto Wada, Hiroshi Takeyama
Starring : Keiko Kishi, Ryuji Harada, etc
Official Site : Toho
日本での公開は2001年11月から。
今年のモントリオール映画祭で、コンペ入りを果たした唯一の日本映画。今年は今月からNYのMOMA(近代美術館)やモントリオールのシネマ・テーク等、世界各地で市川監督のレトロスペクティブが開催されるので、てっきりこの作品がすんごいからなのかと思っていました。う〜ん、でも単なる功労賞だったのですね、コレが(^_^;)。これでナント75作目という多作な市川監督。彼自身については、レトロスペクティブの後にでもまた詳しく書こうかなと思っています。
いや〜、それにしてもこの映画はヒドかった(^_^;)。始まって3分くらいして、「あ〜、ダメだわコレ…」と思ってしまったくらい。とにかくテンポ&リズムが、完全にツボをはずしていましたモン。かつて巨匠と呼ばれた人達が、段々とパワーを失っていくのを観るのは、悲しいモノですね(T_T)。
あ、でもそれは私の映画の好みが「何か新しくて、パワーの充満している映画」だからなのかも鴨。やはりこの映画を観たアメリカ人男性は、「テンポはスローかもしれないけど、無駄な部分が一つもない」とかなり誉めていましたし。それは確かにごもっとも。やはり“洗練された巧さ”みたいなモノはありますよ、この映画。う〜ん、でも新しくないっっっっ!!!
お話は、5人の息子&娘を持つ肝っ玉かぁさん:おかつと、その家へ泥棒に入る身寄りのない勇吉の大江戸ハートウォーミング・ストーリー。ま、基本的にはほのぼの系コメディです。う〜ん、40年前だったらきっと流行ってたと思うんですけどね〜(^_^;)。
まず、私的にダメだったのが、往年の大女優:岸恵子の“かぁちゃん”。確かに彼女は主役としての華を持っているし、彼女自身もこうした汚れ役みたいなモノ(悪役ではないですが)もやってみたかったのでしょう。ある意味、彼女が日本アカデミー賞辺りで最優秀主演女優賞を取る確率は、非常に高いと思います。でも、「一所懸命に演技してる」っていうのが見え見えで、私にはとてもうまい演技だとは思えなかった。ちなみに彼女、この映画の中では55歳の役を演じていますが、実際は75歳なのだそうで!!!彼女、まさに日本のソフィア=ローレンですよね。映画祭では、過労で入院してしまった市川監督の代役として、ご自慢のフランス語を堂々と披露していました(^_^;)。
勇介役の原田龍二ってこの映画で初めて観たのですが、うまい人ですね〜。ルックスもそれなりに整っているので、これからの活躍に期待かも?息子&娘達の印象は薄かったな〜。「CURE」でなかなかの好印象を残した、うじきつよしのヅラ姿には笑えましたけど(^_^)。
それにしても脇役陣は凄いっ!飲み屋の四人衆に春風亭柳昇、中村梅雀、江戸屋小猫に、なぜかコロッケ。この世の人とは思えない(?)長屋の大家に小沢昭一。そして、盗っとを追う同心にこの映画の作曲も担当した宇崎竜童。うう〜ん、個性的すぎるぅ。難を言えば、それだけの個性が一人一人クリアーに現れてこなかったのが残念でしたが…。
スタッフはさすがに重鎮のお仕事という感じでした。「御法度」や「梟の城」も手掛けた西岡善信氏の美術は、全然新しくないし斬新さのかけらもないんだけど、安心して観ていられるし、
「EUREKA」でも使われていたシルバー・カラー(セピア色の様な銀残しをしたもの)の映像は、ストーリー的に言っても、時代背景的に言っても、かなり効果的だったと思います。
ともあれ、現在過労で入院中の市川監督。すでに76作目の制作も始動しているそうですので、原点に帰って、まだまだパワフルな映画を作って欲しいな〜と思いますぅ。
Tillsammans - ***1/2 |
Written and Directed by : Lukas Moodysson
Starring : Lisa Lindgren, Michael Nyqvist, Emma Samuelsson, Sam Kessel
Official Site : IFC Film
スウェーデンと言えば、長年私が一番行きたいと思っている国、でも一度も行ったことのない遠い国…。どこかの国について知りたい時、その国の映画を観るというのは一番手っ取り早い方法なのですが、スゥェーデン映画なんて言うと、イングマール=ベルイマンとか、それまではけっこう暗いイメージが付きまとっていましたよね(それって私だけ???)。おまけに北欧では、ラース=フォン=トリアー監督&ドグマ95の出現により、すっかりお隣りの国デンマークの影に潜んでしまった感がありました。
それが、ラッセ=ハルストレム監督の出現辺りから、スウェーデン映画も少しずつ日の目を見始めてきて(彼は今、もうすっかりミラマックスのお抱え監督になってしまいましたが(^_^;)、日本では「ロッタちゃんシリーズ」ですっかりお馴染みになったのではないでしょうか?この「Together」のルーカス・ムーディソン監督が一作前に作った「Show Me Love」も、2〜3年前、日本ではけっこうヒットしていたのですよね(勿論アメリカでも公開されたのですが、私は見逃してしまいました)。「Show Me…」の方は、随分と良い評判を聞いていたので、「Together」にかなり多大な期待を抱いてしまったのですが、私残念なことに、何度も居眠りこいてしまいました…(^_^;)。でも、それは決してこの映画がつまらないということではないのですよ。だって一緒に観ていた友達にはかなり受けてたし、彼女は相当気に入ったみたいだったので。
お話は、1970年代中盤の、いわゆるフリー・コミュニティに住む子供達、そしてその親達の群像劇。私がこのお話にいまイチのめり込めなかったのは、群像劇だからっていうのもあるのかな?私個人的に、群像映画はダメな人なのです。子供達は皆すっごく良かったし、一つ一つのエピソードもかなり笑えるんですけどね〜。うう、もう観てから一週間も経ってしまったので細かいことはあまり覚えてない…(^_^;)。
今年10月NYにも上陸する「Mama, Mia!」というミュージカルの影響もあってか(すでにロンドン、LAではかなりのヒットを飛ばしています)、今年はなぜかABBAブーム。それに関連してだかどうだか、「ストロベリー・オン・ザ・ショートケーキ」でエンディング・テーマに使われていた“S.O.S”がこの映画でもテーマソングに使われていたのには、ちょっと笑ってしまいました(勿論本場はこっちの方なんですけどね(^_^;)。ただ、二つの作品・作者に接点はまるでないはずなのに、その曲のヴィジュアル化がなんだかよく似通ってことは興味深かったです(それでもって二作品とも、テーマがこの曲に負うところがもの凄く大きい)。二つの作者共、まずこの歌があっていくつかのシーンが出来ていったんじゃないでしょうか。「Together」に関していえば、「ズルイ終わり方だな〜」って思いましたけどね(観た人には分かる(^_^;)。
ともあれ、ここ数年アカデミー賞外国映画賞のノミネートに入る頻度がいよいよ高まってきているスウェーデン映画。各国際映画祭の出品数も年々増えて来ている様ですので、ますます頑張って“スウェーデンの今”、そして“私達の今”を伝えて欲しいな〜。
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