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"Himalaya" - 「キャラバン」***1/2
"Hole" - 「Hole」 ****1/2
"Revels of Neon God" - 「青春神話」 ***3/4

"Himalaya"
l'enfance d'un chef
「キャラバン」 - ***1/2

July 16, 01 (日本語は下を見て下さい)

Directed by : Eric Valli
Starring : Thilen Lhondup, Gurgon Kyap, Lhakpa Tsamchoe, etc
Official Sites :
English, Japanese, French

This is exactly the same kind of film as ”The Road Home”, which got a huge long-run hit in Japan but totally failed in the US box office (both were played at American theaters only for a couple of weeks). So, I was very worried about that if I would hate this film like “The Road Home”.
Well..., it was definitely not my kind of film, but I quite liked it. I think the director did a pretty good job for his first feature.

In a word, this film is a “moving National Geographic pictures”. No wonder that the director, Eric Valli, is a famous photographer of “National Geographic”. This is the picture you don't want to see on video with a small monitor. Needless to say about the opening with bunch of Yaks, those colors of the nature were magically shot. I especially loved the scene by the lake.

Actually, I was more interested in those actors, who are really native Himalayans. Of course, they don’t know how to act, but just showing their rough hands gives you much more reality than showing a perfect acting. (Still, the boy was amazingly acting well!!!)
I haven’t seen the film, “Seven Years in Tibet”, but I know they used Asian-American actors such as Mako and B. D. Wong as Tibetians. It’s just because they have similar faces and speak English. I’m sure Eric Valli was frustrated working on that kind of film as a crew. I’m not saying that you have to live the location for 10 years to make a film in such an isolated place, however, you can at least show some effort to get close to the native people there, you know?

The director had decided to make this film, when he show “Seven Samurai” by Akira Kurosawa to some Himalayan. Luckily, this film didn’t become a National Geographic “Anthropological” docu-drama because of the Kurosawa spirit I think.
This film won best cinematographer and best music (of course!) for the Cesar award besides getting nominated best foreign language film for Academy award 1999. I have no idea what his next project is, but I hope he will make a real good film for the next one not just with the “beginner’s luck”.

この映画も、「初恋のきた道」と同じく昨年日本でロングラン・ヒットを飛ばしたものの、 アメリカではその地道な宣伝活動にも関わらず、思っていたよりもコケてしまっていたので、観る前にはちょっぴり不安もありました。
で、感想は…、決して私好みの映画ではありませんが、なかなか好感の持てる作品でしたよ。長編映画第1作目ということで、 甘くなってしまう部分はかなりありますが…。

日本では「山と渓谷」なんて読んでる人達を中心にお客さんが沢山入ったそうですが、アメリカでは「ナショナル・ジオグラフィック」の読者層が中心だった様な感じです。…それも、そのハズ。監督のエリック=ヴァリは、もともとナショジオお抱えの有名な写真家なのだそうで、確かに映像は美しかった。冒頭のヤクの群れのシーンは圧巻で、やはりこの映画をビデオで観てはいけません(^_^;)。 砂ぼこりの荒野、蒼蒼とした湖、 真っ白な雪の世界、そして群青の夜の世界と、 その豊かな色彩もフィルムならでは。まさに、「動くナショジオ」(笑)にふさわしい映画です。特に、崖のシーンは素晴しかったですね。やっぱり苦労して撮影しただけあって(^_^;)。

私にとって、やはりそれよりもっと関心したのは、シロウトであろうと俳優達ではなく、あくまでも実際現地に住む人達を採用したということ。そりゃ〜勿論、演技ぜんぜん出来ませんよ、彼等は(子役の男の子は、シロウトとは信じ難い素晴しい演技を見せていましたが)。けど、彼等のごつごつした手をアップで見ているだけで、 彼等の過酷な生活感をかい間見ることが出来るのもまた事実。
私は「セブン・イヤーズ・イン・チベット」とかって、見ていないのですが、 現地のチベット人を使わず、日系アメリカ人である(「パール・ハーバー」の )MAKOや、中国系アメリカ人のB.D.=ウォンを安易に使ってしまう辺り(つまり英語が通じるからという理由だけで)、 もうフィルムメーカー達のチベット人に対する気概がまるでないことが見え見えではないですか。(実際、エリック=ヴァリ監督は、この映画にコーディネーターか何かで参加していたそうなので、この映画に対する不満は凄かったでしょうね。映画制作の盗めるトコだけ盗んで復讐してたりして…(^_^;)
う〜ん、私は何も、このヴァリ監督の様に何十年も現地に住み込まなければ彼等の映画を作る資格がないと言っているのではありません。でも、やっぱり何でも、気の持ち様でしょう〜。

それにしても監督は、最初彼がヒマラヤの人達に黒沢明の「七人の侍」を見せた時、この映画を作ろうと決心したのだとか。さすがに「七人の侍」の様な濃いドラマとは言わないまでも、この映画が、まかり間違えばヒマラヤの”文化人類学的ドキュメンタリー”にならなかったのは、黒沢精神のお陰なのでしょうね(ちょっとドキュ・ドラマっぽいところもなきにしもあらずですが…)。
この映画、昨年度のアカデミー賞でデビュー作としては堂々の外国語映画賞ノミネート、 フランスでも撮影賞や音楽賞等で、数々のセザール賞を受賞しています。さ、正念場の第2作目、ヴァリ監督、お次はどんな作品を作ってくれるのでしょうか???

"The Hole"
Dong 洞
「Hole」 - ****1/2

07/08/01 (See the English version
Here)

Written and Directed by : Tsai Ming-Liang
Starring : Kuei-Mei Yang, Kang-sheng Lee
Seen at : The Cinema of Tsai Ming-Liang

“クセのある”蔡明亮作品の中で、彼の作品の特徴を盛り込みつつ、とっつき易く、それでいて今までにない新しい分野も開拓しているという意味において、アジアではおそらく一番沢山観られている作品だと思います。確かに私の好きな「愛情萬歳」は、いくらベネチアのグランプリを獲得したからといって、あれはまだ2作目でしたからね。劇場まで観に行った人、殆どいないんじゃないでしょうか。
この作品は、ある意味蔡明亮映画の集大成ともいえるべき作品で、私の作った“蔡明亮チェックリスト”では、15項目全てをクリアーしています。まぁ、各項目については、作品を観て頂ければ分かるので、ここでは取り合えず飛ばすことにしますね(分からない部分があれば、ゲストブックで聞いて下さい。解説しますので(^_^;)。

まず最初に、この映画、台湾で1997年に公開されたということは、96年くらいに撮影されたのでしょうか?この現実と交錯する強烈な“ミュージカルシーン”の挿入は、はっきり言って「ダンサー・イン・ザ・ダーク」ですよ!!!「Hole」がカンヌで上映されたのは97年か98年だったはずだから、ひょっとしてラース=フォン=トリアー監督、この映画のアイデア盗んでない???確かにダンサー達の数や規模は圧倒的に「ダンサー」の方が勝っているけれど、私は個人的にこっちの方が好きだなぁ。第一どちらもヒロインの“病状”が悪化していくにつれて“夢の国=非現実”の世界であるミュージカルシーンがエスカレートしていくなんて所、まるっきり同じ発想じゃない???こりゃ〜盗まれたか???
そしてこのミュージカルシーンが、モロ「キャンプ的ワールド」(「ムーラン・ルージュ」感想文の第3パラグラフを読んでみて下さい)なんですよね。とにかく翔んでる(これも死語?)。このミュージカル・シーンに使われている曲は全て50年代の唄って踊れるミュージカル女優、グレース=チャンの曲を使っているのですが、うぉ〜、台湾にもキャンプ文化は存在していたのか〜〜〜。衣装といい、色使いといい、とにかく観客の眼を楽しませてくれます(歌は格別うまいとは思わなかったけど)。

そして、その夢のミュージカル・シーンとの対比をなす、これでもか、というくらいの暗い現実。今回は、もう蔡監督お得意の大雨と床下浸水が全編に渡って繰り広げられます。このジメジメさに加えて、世紀末のゴミ地獄とゴキブリ病。どしゃ降りの雨と一緒に、のべつまくなしに落ちてくるゴミ袋を見ていると、「ボクと空と麦畑」冒頭シーンの、まるで匂ってくる様なゴミ地獄のシーンを思い出します。
廃墟と化した市場に、いきなり清掃員が消毒液を散布しに来るシーンも、かなり世紀末感が溢れていますよね。猫が逃げてしまうシーンがとても切なくて哀しいけれど…。
市場のシーンと言えば、父親役でお馴染みの苗天が、長髪で登場して来たのには笑えました。世紀末だからこそ調味料のブランドに固執してしまうってのも、可笑しいけれど、妙にリアルだなぁ、なんて思ってしまったりして。

この映画では、蔡監督作品独特の、もの凄くリアルな現実部分と寓話的な程までに非現実的な部分が絶妙な割合で交錯しています。
現実的な部分とは、「愛情萬歳」の続きかと思われるくらい、同じ様なキャラクターを演じる楊貴媚の存在。実際、「愛情萬歳」のラストシーンと殆ど同じ様なシーンがこの映画にも出てきます。一人暮らしで何か不都合があった時、一人で頑張って地道に後片付けをするんだけれど(床上に浸水した水をひたすらフキフキするシーンとか)、それも段々キレてきちゃって、しまいには自分で壁紙を剥がし始めてしまうところとか。そういった何の変哲もないシーンの積み重ねが、この映画に妙なリアルさを与えています。
一方、大きくなったり小さくなったり、塞がれたり開かれたりする、この「洞」の存在が二人の気持ち、二人の関係、引いては世紀末の気分までをも表現していて、蔡監督という人の非凡さを如実に表してしまうんですよね。この「洞」は、彼らの欲望&渇望が押し込められた現実から、解き放たれた非現実へと彼らを繋げてくれる、タイム・トンネルの様なモノ。「水」と「洞」だなんて、なんてエロティックな世界なんでしょうね〜〜〜(^_^;)。

この映画が、他の映画と比べて日本で指示されやすい理由は、そのラストにも関係していると思います。
以下ネタバレ・パートですので、ドラッグして読んで下さい。
引っ張って引っ張って、ラストになって初めて、その「洞」からやっと二人が繋がり合う感動的なシーン。蔡監督というのは、オフ・スクリーンから“にょきっと”何かサプライズを出してくるのが、めちゃくちゃ巧い人ですよね。構図もタイミングも絶妙。
二度目に差し出された手が、「コップ返して」的なのもウマイ。ここで殆どの観客は、彼女がコップを返すと思うでしょう。なのに彼女が自分自身を差し出してしまい、その後に奇跡が起きる…。彼女が自分の手を差し出した瞬間、会場からどっと笑いが沸き起こったことからして、おそらく他の観客も、その手を「コップ返して」と思ったのだと思います。だからこそ、この奇跡が素晴らしきサプライズになるのですよね。
↑くぅ〜っ、天才だぜ蔡明亮。私が彼を好きで好きで仕様がないのは、彼がこうしたパントマイム的な演出で、全てを語らせてしまうことが出来る才を持っている人だということ。そうなんです。映画とは、もともとサイレントから生まれたもの。セリフで語る必要なんてないんです。「愛情萬歳」感想文の冒頭でも書きましたが、私にとっては、こういった作品こそが「映画の中の映画」なんですよね。

ともあれ、この「Hole」から3年のブランクを経て制作された「What Time is it Now?(英語タイトルしか分かりませんが)」、結果的には録音賞しか受賞しませんでしたが、今年のカンヌ映画祭で、正式コンペに入賞しています。
「Hole」である意味、メジャー化&集大成してしまった彼の作品が、この先どんな風に展開していくのか、いきなり蔡作品の大ファンになってしまった私としては、不安半分、期待半分ですが、これからも眼を離さずにすっと見守っていきたいと思っています。

"Revels of the Neon God" and two other video pieces
Ch'ing shaonien na cha - 青少年那咤
「青春神話」とビデオ二作品 - ***3/4

07/08/01 (See the English version
Here)

Written and Directed by : Tsai Ming-Liang
Starring : Kang-sheng Lee, Chao-jung Chen (Revel of the Neon God)
Seen at : The Cinema of Tsai Ming-Liang

この10日間で、とにかく作品を観て観捲くりまくった蔡明亮監督の長編映画デビュー作である「青春神話」。実は、この映画をもう一度観る直前に、今回のレトロスペクティブで上映された彼のTVドラマ「All the Corners of the World」を観たので、まずそちらの感想から書くことにしますね。

”All the Corners of the World”(「海角天涯」) - 1989

台湾のTVドラマで全74分。この作品が高い評価を受け、多くのTVドラマ賞を獲得した為に、監督は「青春神話」の制作を開始することが出来たとか。
ストーリーは、貧しい4人家族の不幸な姉(中学生)と生意気で賢い弟(小学生)のお話。まず冒頭でいきなり、この家族が映画チケットのダフ屋をやっているところがスゴイ。しかも買占めているチケットが「非情城市」だったりなんかして、これがまた笑える。姉の部屋には、「非情城市」のトニー=レオンのポスターが貼ってあってあるし、当時この映画がいかに台湾で大ヒットしたのかが伺えて、ちょっとマニアックに楽しめます。そう考えてみると、
今年のカンヌ映画祭で、この「非情城市」の監督である候孝賢と一緒に正式コンペに入賞した蔡監督の感激はひとしおのモノだったでしょうね。

大雑把な感想でいうと、いかにも“TVドラマ的な作品(そりゃ〜、TVドラマなんですけれど)”で、もしこのドラマを全くの予備知識なしに観ていたら、蔡作品だなんて気が付かなかったんじゃないかと思います。でも、こまっしゃくれた(?)子供が主人公である所は「ヤンヤン・夏の思い出」を彷彿とさせるところがあるし、話の終わりはモロ、彼の好きな監督であるフランソワ=トリフォーの「大人は分かってくれない」なんですよね(私には、ロッセリーニ監督の「無防備都市」に見えたけど)。
家族の描き方は、後の作品群に比べればまだまだ弱いし、非現実な寓話的部分や、あの独特な暗い照明も、天才的な構図も、いわゆる長回しのカットもない。それより何より、蔡作品にはなくてはならない李康生を初めとした、常連俳優さんのいないことが、この作品を全く別のモノにしているのかも鴨。

それでも、タイトル(=「世界の片隅のあちらこちらで」)が示す通り、都会に住む光りの当たらない人達に焦点を当てているという点は、やはりまごうことなき蔡明亮の作品です。
今回、上映会に蔡監督が来ていたので「キャラクター達にモデルはいるのですか?」と聞いてみたのですが、はにかみながら「特にいません」と答えていました。多分自分自身がモデルだったんでしょうね〜(^_^;)。
それにしても、今回、台湾のTVドラマというのを生まれて初めてみたのですが、何だか韓国のTVドラマに凄く似てる!!!う〜ん、コレって12年前の作品なのですが、今はどんな感じなんだろう???ちなみにこのお話の舞台になっている地区(名前忘れてしまいましたが)は、今再開発地区となって跡形もなく変わってしまっているんだそうです。台湾に行ったら、是非とも訪れてみたかったんですけどね…。

”Revels of the Neon God”(「青春神話」) - 1992

この映画を観たのは、今回が2回目。1度目は映画学校のクラスで観たのですが、「な〜んか照明の暗い映画だな〜」というのがやけに印象に残っていました。
今回蔡監督の全作品を立て続けに観てきて思ったのですが、よく言われる様に「青春神話」「愛情萬歳」「河」が初期の三部作であるというのは、ある意味では間違いで、「All the Corners of the World」「青春神話」「河」というのが彼の初期三部作なんじゃないでしょうか。「All…」・「青春神話」・「河」には、こじつけかもしれないけれど、沢山の共通点があります。

まずは、出来そこないの子供を心配する親の存在。「All…」「青春神話」どちらの作品でも娘/息子は塾/予備校に通っています。まぁ、台湾ではそれが日常風景なのでしょうけれど。
それにしても、タクシー運転手である父親が、普段会話のない息子に「映画でも観に行くか?」というシーンはなかなかグッと来ます(その後に起きる出来事と合わせると、さらにそのシーンは印象深い)。
また、ダメ息子に屋台で買った果物を必要以上にあげているシーンは、「河」に出てくる屋台で父親が息子にお粥を食べさせてやるシーンに通じるモノがありますね(まぁ、この二作品では、共に同じ役者さんが父と息子を演じているんですけれど(^_^;)。「All…」の場合は、それが母親と娘という形で現れてきています。
「All…」「青春神話」「河」の三作品を通して家族の繋がりというものを見ていくと、台湾(もしかすると全アジア、いや全世界)の家族がいかにして壊れていくかの過程を見ている様な気さえしてしまいます。「All…」がトラディショナルな形で、「河」が行き着くところまで行ってしまったシュールな家族の形だとすれば、この「青春神話」は80〜90年代のよりリアルな核家族の形なのかも鴨。

共通したロケ場所が出てくるのも、この三作品をそれとなく繋げています。「All…」で使われた全く同じローラースケート場を使っているのに、こうまで違った撮り方が出来るのかという「青春神話」のローラースケート場シーンも超オドロキ。これって、やっぱりTVドラマと映画撮影の違いなんでしょうね〜。立て続けにこの二作品を見たので、ちょっとびっくりしてしまいました。
そして「青春神話」と「河」で使われている、アパートのセットがまるっきり同じというのもスゴイ!(壁の色とか塗り替えてありますが、あれは絶対同じロケーションだ!!!)母親役もまったく同じ女優サンだし(キャラクターとしては違う設定なのですけれど)、なんだかこれらの作品がメビウスの輪か何かで繋がっているみたいで、ファンとしてはたまらないディテールですね。

というワケでこの作品、「愛情萬歳」や「Hole」との繋がりで見てしまうと、それこそ浮いた作品に思われてしまうかもしれませんが、ココに挙げた“蔡明亮のキーワード”を見てみると、2)だけを除いた1)、3)〜15)と、蔡監督作品の特徴をほぼ全てクリアーしています。特に、陳昭榮の住むアパートが床上浸水していたり、彼のアパートのエレベーターが、必ずいつも誰も住んでいない4階で止まってしまうところなど、小さいながらも、すでにそこには“蔡ワールド”が広がっているのです。

まぁ、タイトルが示す通り、基本的には“若者のすべて”…ってな感じのストーリーなんですけどね。この作品では、「愛情萬歳」以降、蔡作品の常連となる楊貴媚の代わりに、王渝文がヒロイン役で出演しています(余談ですが、二人共アン=リーの「食飲男女」で主演していますよね)。
李康生演じるシャオカンは、これが最初の役ですが、すでに出来上がってるなぁ。監督がゲーセンで素人だった彼をナンパしたらしいのですが、確かにゲーセンで一人プレイしている彼の姿、ハマってるわ・・・(^_^;)。

陳昭榮の役は、「愛情萬歳」のジゴロ役(?)を前日に観てしまっていたので、髪の毛を立てた不良少年の役にはなかなか笑えた。けど、ルックスだけじゃなく、性格的な部分で、もの凄く「女を虜にする男」ですよね〜、このキャラは(^_^;)。本人全然分かってないし、「男世界のルール」の中で生きているから、女の子がむしゃくしゃしてしまうのも、すっごく分かる。こ〜いうのって、下手するとただの若者向けラブストーリーになってしまう部分と紙一重なのですが、私には妙にリアルだったな〜(もしかして、単に贔屓してるだけ???)
それにしても、台湾のチンピラ達の喧嘩っていうのは、皆あんな感じなのでしょうか?あれじゃ、候孝賢「風櫃の青年」の世界だよ〜。なんか掛け声とか、リズムが“台湾的(?)”で、日本のチンピラ同士の喧嘩とは全然違うんですよね。

最後に。この映画では基本的に1〜2種類の音楽しか使われていないのですが、そのうちの一つ、テーマ音楽とも言えるようなポヨンポヨンしたBGM(どんなんだ?)は、けっこう印象が強いです。この映画を1回目に観たのは、もう6年も前だったのですが、この音楽のサワリが出てきただけで「お〜、懐かし〜」と思ってしまいました。
はっきり言って、今でもそのメロディ口ずさめますよ。そういう人、絶対に多いと思う…(^_^;)。

”Conversation with God” (「Fish, Underground」) - 2001

最新作「What Time is it Now?」の撮影直後に制作された、韓国資本のアバンギャルド・ドキュメンタリー。彼は、今回のレトロスペクティブでもプレミア上映されていた「My New Friends」という、台湾で初めて制作された「ゲイ&AIDS」のドキュメンタリーも1995年に監督しています。今回その作品を観るチャンスは逃してしまったのですが、いや〜、ドキュメンタリーも彼が撮るとアバンギャルドになってしまうんですね(^_^;)。

この作品は、前半と後半で全く違うモノを撮っているのですが、前半は、私の書いた“蔡明亮チェックリスト”の4)「宗教」と「台湾の伝統文化」。冒頭では、タイトル通り、神と会話する若いメディア(日本語だと…?)が、血まみれになって灯の中を踊ります。その後に出てくる踊り子(?)達は、「Hole」(↑)のミュージカル・シーンに出てくる踊り子達の原型でもあるのでしょうか。日本の演歌を中国語で歌う場末の歌姫達の姿は、「一条ゆかり」の世界にも通じるものがありました。
それが後半になると、“蔡明亮チェックリスト”の5)、「水」と「廃墟」と「世紀末」の世界になってしまうんですよね。この部分はまた、美術館なんかで見るビデオアートの世界にまでいっちゃってて、つくづく蔡監督というのは、“わけわかんない映像派”の監督サンなんだな〜などと思ってしまうのですが(^_^;)。

ただ一つ気にくわなかったのは、この作品が全てデジタル・ビデオで撮影されているということ。やっぱり蔡監督の作品が持つ、あの独特な暗さを信奉している私としては、ああいう陰影のない“デジカメ・ワールド”は頂けないです。
何でもお手軽に撮影出来るってのはいいコトなんですけどね。この作品、全長約30分なのですが、蔡監督の全作品で主役を張っている李康生が撮影補助をしていたそうです(^_^;)。こういった作品、日本ではフィルム・フォーラム辺りで上映されるかな???蔡作品を全く観ないでいきなりこの作品から観始めてしまったら、何が何だか分からない映画だと思いますけど、彼の映画世界へしっかり嵌っている人にとっては、一見の価値があるかもしれません。

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