*** Film Festivals 2001 b***

2001年に開催される各地の映画祭について、
自分の行ったモノ、行かないモノいろいろ。

"When Korean Cinema Attacks! - NY Korean Film Festival 2001"
“NY韓国映画祭 2001”

Aug 27, 01

日本では「シュリ」の大ヒットを皮切りに、ここ1〜2年韓国映画が次々と公開されて来ていまして、昨年の秋には「ペパーミント・キャンディ」「春香伝」「カル」「美術館の隣りの動物園」、「スプリング・イン・ホームタウン」、「太白山脈」、「グリーン・フィッシュ」、「バッド・ムービー」、そして今年は「シュリ」以上のヒットを記録した「JSA」を筆頭に、「アタック・ザ・ガス・ステーション」「反則王」「LIES/嘘」「魚と寝る女」、「ユリョン」等が次々と劇場公開されています。
アメリカでは、それまで韓国映画と言えば映画祭くらいでしか観るチャンスがなかったのですが、昨年末に「春香伝」「LIES/嘘」、「情け容赦なし」が同時期一斉に一般劇場公開となり、この秋には「カル」、そしていよいよ「シュリ」も公開予定。日本より一足遅れ、今までの遅れを取り戻すかの様にここ数年話題になった韓国映画を一挙に上映したのが、今回の韓国映画祭=When Korean Cinema Attacks!だったのでした。

この映画を企画したのは、アメリカで香港映画などのアジア映画を配給しているSubway Cinema。それにサムソンやコリアン・エアー等が協賛して、マンハッタンにある企画映画上映会の殿堂(?)、アンソロジー・フィルム・センターで10日間に渡って行われました。

上映作品は次の通り…。

”Joint Security Area - JSA” 2000年
”Tell Me Something – カル“ 1999年
”Attack the Gas Station! - アタック・ザ・ガス・ステーション!” 1999年
”The Foul King – 反則王” 2000年
”The Isle – 魚と寝る女” 2000年
”Barking Dogs Never Bites – 吠える犬は噛まない” 2000年
”Art Museum by Zoo – 美術館の隣りの動物園” 1998年
”Christmas in August – 八月のクリスマス” 1998年
”Memento Mori – 女校怪談2” 1999年
”An Affair – 情事” 1998年
”My Heart – 情” 1999年

「吠える犬は噛まない」「情事」「情」以外は全て日本でも公開済の作品ですね。ちなみに「情事」は、日韓合作映画「純愛譜〜スネボ」を監督したイ=ジェヨン監督の長編デビュー作。「情」は、「鯨とり〜コレサニャン」「神様、こんにちは」「ディープ・ブルー・ナイト」などの作品でお馴染み、ぺ=チャンホ監督の最新作です。
それにしても「JSA」の人気は凄かった!当初、全部で計3回の上映が予定されていたのですが、とにかく連日チケットが売り切れ状態で、特別に2回上映を増やしてもまだ収まり切れないという始末(^_^;)。
後は、去年のヴェネチア映画祭の評判を受けての「魚と寝る女」が人気、他に私は観なかったけど、「女校怪談2」もかなりの人気があった様です。
私的ベストは、「アタック・ザ・ガス・ステーション!」と「美術館の隣りの動物園」かな。「魚と寝る女」や「吠える犬は噛まない」もかなり好きだったんですけどね。

現在、韓国映画をしょって立つ監督達の世代は、386世代(現在30代で、80年代に学生運動を経験し、60年代に生まれた世代)と呼ばれているのですが、彼らは学生運動の時代のハングリー精神を継承しつつ、民主化後の政府による映画後援政策にうまく乗っかっている世代の様な気がします(それより後の世代だとハングリー精神を知らないし、それより前の世代だとこの新しい韓国映画システムの波に乗り遅れてるのでは…?(^_^;)。ちょうど10年前、中国映画の第5世代(チャン=イーモウ、チェン=カイコー等)の映画が、世界で大躍進したのと同じ様な状況が、今韓国映画界に起こっているのではないでしょうか。
ここ最近の韓国映画に対して私が特に感じているのは、どの作品も脚本が非常によく書けているということ。386世代の監督の多くは、韓国映画アカデミーを卒業しているのですが、同時にアメリカやフランス帰りの留学帰国組みが多いのも特徴。確かに細部に眼をやってしまうと、韓国映画独特のおセンチ・シーンやギャグ・タッチのトーンも見受けられるのですが、なにしろ脚本の根本的な着想がいいし、構成もよく練られている。この1〜2年、韓国映画の脚本リメイク権が次々に日本へ輸出されているのも合点が行きます。それはやっぱり、脚本を書く彼等がユニバーサルな眼で世界を見、客観的な構成力で脚本を執筆しているからなのでしょう。

金大中政権による映画後援政策もさることながら、近年、老若男女がこぞって劇場へ足を運び国産映画を観る様になったという根底からのサポートも、韓国の映画産業に活気を与えている一員なのでしょうね。
その点、日本の映画は「後でビデオで観ればいいや」ってな感じの作品が多くて悲しいな〜。確かに数的に言うと、現在、日本映画と韓国映画は同じくらい国際映画祭に作品を出品しているのですが、日本映画の方は、どれも何だか皆おんなじ。ひと昔前を郷愁する様な作品があまりにも多くって、ちょっと情けなくなってしまいます(T_T)。やっぱりその国のハングリー精神っていうのは、いい映画が生まれるかどうかのエネルギーに比例しているのでしょうか…。
ともあれ、ますます注目作品が目白押しの韓国映画。これからもどんどん新しい境地を切り開いて、お隣りの日本映画界に渇を入れていって欲しいです〜。

韓国映画祭2001:公式サイトはこちらから。

"Asian American International Film Festival 2001"
“NYアジアン・アメリカン国際映画祭 2001”

July 30, 01

Official Site : Asian Cine Vision
Related Site : Village Voice

<<過去6年間の映画祭を振り返って>>

…というわけで(こればっかし)、1週間余りに渡るNYアジアン・アメリカン国際映画祭が閉幕致しました。個人的にはこの映画祭、ナント1995年から毎年参加している、私にとっては一番大切な映画祭でもあります(1998年はスケジュール的にマンハッタンの部分に参加できず、ブルックリンでの上映に一部参加しただけでしたが)。アジアン・アメリカン映画祭というと、他には最大級のLA、サンフランシスコ、ハワイ、そして6年前からシカゴでも開催されています。殆どの映画祭が春から初夏にかけて行われているので、時期的にはNYが一番遅いのではないかと思いますが…。

さてさてこのNYAA映画祭、実は今年で24年目なのですが、私が見てきたたったの6年間だけでも随分と変わって来ました。まずスポンサーが毎年変わる変わる…。コレってけっこう大きいんですよ。1995年はMCI(長距離電話会社)で、翌年は同じく長距離電話会社のAT & T、これだけでパンフレットの大きさが半分くらい小さくなりました(95年の分が大きすぎたということもありますが)。で、さらにその翌年からはローカル電話会社のBell Atlantic(現Verizon)。パンフレットの紙質が俄然落ちましたね〜(^_^;)。現在、一番の大きなスポンサーはNYタイムズ。う〜ん、予算はかなり少ないらしいです。3年前までは、マンハッタンで上映していた同じ映画を、ブルックリンやクィーンズでも上映していたのですが、2年前からマンハッタンでの上映オンリーになってしまいました。
いやはや、日本やアジアの経済不況が、実はこんな所にも響いているのですよ。それまで大きなスポンサーであったアジア・ソサエティやジャパン・ソサエティが次々とスポンサーから撤退し、金銭的なサポートのみならず、上映作品のルートも随分狭まって来てしまいました。映画祭の母体団体であるアジアン・シネヴィジョンの内部事情も、年々いろいろと複雑化してきている様で、一口に映画祭と言っても、やっぱり裏はお金と政治の世界なのです(T_T)。今年何が一番悲しかったって、各作品の前に挿入されるクリップが昨年の使い廻しだったんですよね。最初に観た時、ちょっと絶句してしまいました。とほほ…。

<<ウーマン・パワーの爆発!!!>>

でもっっっ!!!そ〜んな逆鏡を吹き飛ばし、今回の映画祭を成功にまでこぎつけたのは、何と言ってもアジアン・ウーマン・パワーでしょう!!!
今年のエグゼクティブ・ディレクター、エンジェルはかつての私の先生、フェスティバル・コーディネーターのリサは前にある長編映画で知り合っていたし、プログラム・ディレクターのヴィヴィアンも顔見知り、おまけにプログラム・コーディネーターのナリは一緒に学校を卒業した親友だったりして、皆、数年来気心知れた人達なのですが、いや〜今回は彼女達のパワーがもう爆発していましたね。ボランティアの面々には男の子達も沢山いましたが、全体的にはやはり女の子が多かったです。
初日にはレセプションの後、盛大なオープニング・ガラがあったのですが、ここでの司会は「ジョイ・ラック・クラブ」等でお馴染みのタムリン=トミタ。そしてスピーチが前述のエンジェル=ショウとリサ=モリモト、スポンサーを代表してニューヨーク・タイムスのジェニファー=ポーリー、そしてオープニング上映された「JSA」のプロデューサービキョン=シムと、壇上に登った全員が女性!!!別に男性をつま弾きにしていたのではないと思いますが、それはそれは壮観な眺めでした(^_^;)。

<<初のアジア系アメリカ映画公開から20周年>>

映画祭では毎年アジアン・アメリカン映画に貢献した人達へ贈られる賞の受賞式もあるのですが、今年の受賞者はウェイン=ウオン監督。今年は、ウォン監督の長編デビュー作「Chang is Missing」が公開されてから、ちょうど20周年記念にあたる年なのです。この映画は、アジア系アメリカ人による初のインディペンデント映画として、今も伝説的な作品となっています。残念ながらこの作品、日本ではビデオ化されていないのですが(ちなみにアメリカではされています)、20年経った今観ても、本当に斬新でユニークなドキュメンタリー・スタイルの野心作。
今回はこの作品に加え、ウォン監督の長編作品としては唯一ビデオ化されていない 「Life is Cheap… but Toilet Paper is Expensive」も上映されました。香港に迷い込んだ中国語の喋れないチャイニーズ・アメリカンの話で(ちなみにウォン監督は16歳まで香港にいたので、広東語はペラペラです)、さすが画家を目指してアメリカに渡って来たウォン監督らしい、ビジュアル的にはかなり懲り捲くった映画でした。香港を舞台にした作品としては、ゴン=リー&ジェレミー=アイアンズ主演の「Chinese Box」より、私はこっちの方がず〜〜っと好きだなぁ。その他、やはり日本ではビデオ化されていない「Dim Sum」も上映されていましたが、私はこちらに来てからビデオで観ていたのでパス。そう言えば、やはりウォン監督の作品である「夜明けのスローボート〜Eat Bowl of Tea」は、3年くらい前、ラッセル=ウォンがこの映画祭で賞を受賞した時の特別上映会で観ました。ウォン監督については、この後のパネルのところで、もうちょっと書きますね。

<<観た映画、観られなかった映画>>

さてさて、これまで私の知っている限りでは、ほぼ100%が香港映画であったオープニング上映、今年は「JSA」が、初の韓国映画としてのオープニングを飾りました。昨年オープニングを飾った「暗戦:デッド・エンド〜Running Out of Time」のジョニー=トウ監督「Wu Yen」もなかなか好評で、計2回の上映。日本からは、“もうひとりのクロサワ”こと黒沢清監督の「CURE」と、アバンギャルドの旗手、和田淳子監督の「ボディ・ドロップ・アスファルト」、詳しくは各感想ページを読んで下さいませ。
中国からは「X-Roads」と、タイからは日本でも今年公開になった「アタック・ナンバー・ハーフ〜Iron Ladies」が上映され、特に「アタック…」の方はめちゃくちゃ観たかったのですが、「ボデイ・ドロップ…」と時間が重なってしまって観られませんでした(T_T)。

以上はいわゆる“アジア各国”からの招待作品ですが、勿論アジア系アメリカ人監督による長編映画も上映されていましたよ。
私が観たのは、シンガポール系メン=オン監督の「Miss Wonton」と、韓国系エイブラハム=リン監督の「Roads and Bridges」。クロージング上映であったフィリピン系ロッド=プリド監督の「Flip Side」は見逃してしまいましたが…。以上三作品は、全て今年のサンダンス映画祭の出品作品です。

「Miss Wonton」は、中国から移民して来た20代前半女性のNYテール。そこに彼女が中国で体験して来た出来事が、少しずつ間に挟まって行きます。個人的にはキャラクターの誰にも好感が持てなかったし、話の展開自体もあまり好きではありませんでしたが、撮影自体はとてもきれいに撮れていました。オン監督は、自分の母親をモデルにしてこの話を書いたと言っていましたが、やはり男性の書く女性のストーリーは難しいですね(^_^;)。
「Roads and Bridges」はカンザスを舞台にしたお話で、雰囲気的には「ボーイズ・ドント・クライ」に通じるものがありましたが、お話自体は、父親の死によって心を閉ざしてしまったコリアン・アメリカン(でも全編を通してチャイニーズだと思われている)と、孤独なアフリカン・アメリカンの奇妙な友情。カンザスで生まれ育ったというリン監督が、自身で主役も演じていました。お話的にはこっちの方が好きだったけど、映画全体の出来としてはいまイチだったかも。ちなみにこの映画のエグゼクティブ・プロデューサーは、ロバート=アルトマン。リン監督は、アルトマン監督の数作品をエディターとして手伝っています。

ドキュメンタリー作品としては、日系アーティスト:ヘンリー=スギモリを追った 「Harsh Canvas」や、オスカー受賞者:トリ=ミンハ監督の最新作として日本で撮影された「The Firth Dimension」、チャイナ・タウンの歴史を綴った「Chinatown Files」辺りを観たかったのですが、時間が合わなくてやっぱり観られなかった(T_T)。特に「Chinatown Files」は2回も上映があったのですが、口コミの威力でどちらも満員盛況でしたよ。
短編作品に関して。これまでの映画祭ではけっこう観る様にしていたのですが、結局今年観られたのは「Sex, Love, and Kung Fu」の一本だけ。有りモノ・フッテージとデジタル編集を駆使した(見るからに)低予算コメディ・ドキュドラマ、でもすっごく面白かったです(^_^)。

<<監督を招いてのパネル・ディスカッション>>

今年私は2つのパネル・ディスカッションに参加しました。一つ目は題して「Generation A: The New Wave in Asian American Filmmaking」。Independent Feature Projectのエグゼクティブ・ディレクター、ミッシエル=ベィドをモデレーターに、「ガール・ファイト」のカリン=クサマ監督、「ニューヨーク・ディドリーム」「e-dreams」のウヲンソク=チン監督、「The Art of Woo」のヘレン=リー監督、「Too Much Sleep」のデビッド=マキュリング監督、そして前述した「Miss Wonton」のメン=オン監督という面々。
殆どの監督が、サンダンス映画祭やトロント映画祭などへの映画祭出品経験者なので、映画祭の裏話で盛り上がったり、アジア系アメリカ人監督の映画にスパイク=リー映画の様な“怒り”は必要か?とか、挙句の果てにはアン=リー監督やウェイン=ウォン監督の様に白人を主人公にした映画を作るアジア系監督に対してどう思うかなど等、後半はかなり盛り上がりましたね。K=クサマ監督やW=チン監督、そしてD=マキュリング監督とM=オン監督が、長編デビュー作に、敢えて自分のエスニシティとは違ったキャラクターを主人公に持ってきたことと合わせると、この議論はキリがないくらい果てしないのですが、非常に興味深いトピックです。

そしてもう一つのパネルは、題して「How Independent Film Has Changed Since 1981」。アジア系映画監督としては先輩格で、スタジオ映画監督経験者の、香港系ウェイン=ウォン監督(「ジョイ・ラック・クラブ」「スモーク」「ここより何処かで」等)、こちらもスタジオ映画監督を経験済のインド系ミーラ=ナイール監督(「サラーム・ボンベイ」「ミシシッピー・マサラ」「カマ・スートラ」等)、そして「ヤンヤン 夏の思い出」「河」をアメリカに配給したWinstar Cinemaのバイス・プレジデント、ウェンデイ=リンデルの面々。モデレーターは、「Yellow Peril: Race, Sex, and Discursive Strategies in Hollywood Fiction」の著者、ジーナ=マッチェッテイが務めました。
いくら興行的にヒットした作品を作っても、次回作への金策は厳しく、ウォン監督の最新作「The Center of the World」は、デジタル・カメラで殆どゲリラ的に撮影されたのだとか。1つ目のパネルとも話題が重なるのですが、金策の為に主要キャラクターを非アジア人にするのは、勿論彼らもそれがベストだとは思わないまでも、やむない場合もある等々…。
印象に残ったのは、ウォン監督の最後近くの言葉。今でこそジャッキー=チェン、ジェット=リー、チョウ=ユンファ等がハリウッド映画で主役を張っているが、それらにはいつも“アクション映画に限る”という条件が付いているし、彼らには香港映画界で何百本もの映画に主演して来たという長年のキャリアと土壌がある。アジア系俳優(特に男優)が、経験を積んでハリウッドだけでなく世界に通用する様になるには、まだまだもう少し時間が必要だろうとのこと。う〜〜〜ん、確かに。この話は長くなるのでまた別の機会に譲りますが、アジア系俳優の場合、男優ならアクション系、女優なら貞淑で才色賢母系というステレオタイプが常について回りますからね〜。まずこの枠を取り外すところから始めないと…。う〜ん、先はまだまだ長い様です(^_^;)。

各映画やパネルについてもっと詳しく書きたかったのですが、もうキリがないので、この辺でやめておきますね。この映画祭も来年で25周年記念。お次はどんな新しい映画や面白い企画が飛び出すのか、今からもう楽しみです〜〜〜。

"Cannes International Film Festival 2001"
“カンヌ国際映画祭2001”

05/21/01

11日間に渡る今年のカンヌ映画祭も、昨日で幕を閉じました。結果は新聞・ウエッブ等で皆さんすでにご存知の通り、最高賞のパルム・ドールにイタリア・ナンヌ=モレッティ監督の“La stanza del figlio (My Son’s Room)”、次点のグランプリと主演男優&女優賞にオーストリア(&フランス制作)・ミヒャエル=ハネケ監督の“La Pianiste (The Pianist - The Piano Teacher)”。脚本賞は、ボスニア・ダニス=タノヴィック監督の”No Man’s Land”、監督賞は、デビッド=リンチ監督の”Mullhomland Drive”と、コーエン兄弟の“The Man Who Wasn’t There”が揃って受賞…という結果になりました。

<<ヨーロッパ勢の復活?>>

意外なことに、今回のモレッティ監督のパルム・ドールは、なんと23年ぶりのイタリア映画なのだとか。観客の90%が泣いたという、家庭崩壊のハート・シュリンキング・ストーリーなのだそ〜で、公開の日は近いでせう。ハネケ監督の「ピアノ教師」は、同名小説の映画化。ウィーンを舞台にした、のぞきとマゾキズムがテーマで、かなりコントラバーシャルな内容だそうです。
今回、下馬評では以上二作品に加え、何とカンヌに5度目の挑戦というJ=L=ゴダール監督の“Eloge de l'Amour”、もしくは史上初のコンペ入賞ボスニア映画を初監督した“No Man’s Land”のどれかが取るだろうと言われていました。う〜ん、またも選外となったゴダール監督も可哀想だけど、私は”No Man’s Land”に取って欲しかったなぁ。ま、でも彼ならきっと次回作で挽回してくれると信じましょう。それにしても主要賞、全部ヨーロッパ映画で独占した割には(純)フランス映画はどうしてしまったのでしょうか???

<<ハリウッド映画全滅す>>

鳴り物入りでオープニングを飾った「ムーラン・ルージュ」も、華やかな話題性はあったものの(トム=クルーズと離婚したばかりのニコール=キッドマンにパパラッチがたかりまくったし…)、やはりカンヌ好みではなかった様ですね。アニメ作品としては初のコンペ入賞を果たしたドリーム・ワークスの「SHREK」(先週末全米でオープンし、アニメ映画としては史上第2位の初日興行記録を樹立)も、結局は無冠だったし(^_^;)。
全部で200分以上(3時間30分)にも及ぶ「地獄の黙示録:特別版」や、コッポラ監督の甥が初監督した「CQ」も、それなりに話題は取ったんですけどね。まぁ、結局は話題だけでした〜。
英語圏の作品としては、映画祭開催中、堂々とアンチ・ハリウッド宣言の声明を出したデビッド=リンチ監督と、今やインディーのトップをひた走るコーエン兄弟が監督賞を取ってなんとか面目を保ちましたが、その他、新人賞にあたるカメラ・ドールを受賞したカナダ・ザカリアス=クヌック監督の「Atanarjuat, the Fast Runner」は、初のイヌイット(カナダの先住民)作品でもありました。
あと、賞取りレースからはハズれたものの、話題になった作品と言えば、ミュージカル「キャバレー」で共演したアラン=カニング&ジェニファー=ジェィソン=リーが共同監督した「The Anniversary Party」、前回のカンヌ(98年)では「ハピネス」で審査員特別賞を受賞していたトッド=ソロンズ監督の「Storytelling」、やはり前回のカンヌでは脚本賞を受賞していたハル=ハートリー監督の「No Such Thing」も上映されていましたが(以上、全て「ある視点」部門)、どれも反応はいまイチだった様で・・・。

<<日本&台湾、他のアジア勢も全滅〜〜〜>>

今年は正式コンペに是枝和宏監督「DISTANCE」、青山真治監督「月の砂漠」、今村昌平監督「赤い橋の下のなまぬるい水」という三作の日本映画、候孝賢監督「Millennium Mambo」、蔡明亮監督の「What Time is it There?」という二作の台湾映画がコンペに入賞しましたが、両台湾作品が音響技術賞を取っただけで、後は全滅でしたね〜(^_^;)。
殆どの作品が最終日近くに上映されたので、まだレビューが出ていないのですが、2日目に上映された是枝監督の「DISTANCE」の評は、それこそけちょんけちょんでしたよ(T_T)。
コンペ外の作品として、日本からは、黒沢清監督の「回路」、小林正広監督の「歩く人」、諏訪敦彦監督の「H Story」、橋口亮輔監督の「Hush!」、押井守監督の「アヴァロン」、万田邦敏監督の「UNLOVED」等が上映されていましたが、黒沢監督の批評家連盟賞と万田監督のエキュメニック賞受賞以外は総スカン。それにしてもこの2つの賞は、昨年青山監督が「EUREKA」でダブル受賞しているのですが、特に批評家連盟賞は、一昨年の諏訪監督「M/OTHERS」の受賞も入れると3年連続の受賞なのだとか。それって、やはり同じ製作・プロデユーサーのネゴの力が効いているってことなのでしょうか???ちなみに万田監督の作品も、同じく仙道武則氏がプロデュースしています。
それと、短編部門でパルム・ドールを取ったデビッド=グリーンスパン監督「Bean Cake」の主演(?)は、かの松田聖子の娘だそ〜で。コレも一応日本勢の一部に入るのかな?

それにしても昨年あんなに元気の良かった中国・韓国勢が今年はどうしてしまったのでしょう???中国・香港からは、スタンリー=クワン監督の「Lan Yu」が“ある視点”部門で上映されただけ。一応中国系アメリカ人のウェイ=ウォン監督「The Center of the World」が、選外特別上映に入っていましたが、評判は悪いですしね〜(^_^;)。驚いたことに韓国勢、今年は全くのゼロでした。う〜〜〜む。
アジア映画で今年良い話題に上ったのは、イラン映画の「Kandahar」タイ映画の「Tears of the Black Tiger」くらいのモノでしょうか。この2本、少なくとも日本ではすでに配給先が決まっていたと思います。「Kandahar」辺りはNY国際映画祭でやるんじゃないか、と期待している私。そういえば一応、キアロスタミ監督の新作も選外上映でかかっていたと思います(でも、殆ど話題になってなかった…(^_^;)。

<<パルム・ドールだけがカンヌじゃない!>>

おそらく日本の一般誌では、主要部門の受賞リストを書くだけで終わってしまうんじゃないかと思いますが、カンヌ映画祭の全ては、それだけじゃないのです〜〜〜!

まず主要部門にノミネートされる作品は、“Competition (Candidates)”と呼ばれ、このコンペ部門に入賞出来なければ、最高賞のパルム・ドールを獲得する資格はありません。パルム・ドール、グランプリ、主演男優&女優賞、監督賞、脚本賞、技術賞までは、正式コンペ作品の中から、10人の審査員(Jury)によって選ばれるというわけ。
これは毎年言われることなのですが、審査員の面々、特に審査委員長が誰になるかによって賞レースの結果は大きく変って来ます。今年の審査委員長には、当初ジョディ=フォスターが指名されていたのですが、スケジュールの都合がつかないとか何とかで、ノルウェーの女優・監督リヴ=ウルマンが務める事になりました。そのせいか、今年の結果は至極堅実なものになったかなという印象がありますね。ちなみにアジアからは、昨年監督賞を受賞したエドワード=ヤン監督が審査員のメンバーに入っていました。

この他、“Out of Competition”と呼ばれる選外上映、“Un Certain Regards(ある視点)”という部門までがいわゆるOfficial Selectionと呼ばれる作品群。そしてさらに“Panel Selection”と呼ばれる、“Directors Fortnight”(監督週間)、“Critics Week”(批評家週間)、“Specials”(特別上映)等のスクリーニングがあります。新人賞に当たるカメラドールは、批評家週間の中の作品から選出。日本では現在公開中「火垂」の河瀬直美監督が1997年、史上最年少でこの賞を受賞したことは、まだ記憶に新しいのではないかと思います。

<<マーケット・マーケット>>

以上のカテゴリーに入れなかった(または、応募までに完成しなかった・最初から応募する気もなかった)映画は、制作・配給会社などによって、マーケット上映されることになります。今年最大のマーケット映画は、何と言っても12月公開予定の「The Load of the Rings〜指輪物語」。まだ撮影途中で、20分しか完成していないというのに、主要キャストをカンヌに連れてきて、近郊の古城を貸し切りに。シャトルバスまで出して客引きをしていたというのですから、まぁよくやりますよね〜(^_^;)。
こちらもゲストブックの方に書きましたが、イーサン=ホークの初監督作品「Chelsea Walls」のスクリーニングにQ=タランティーノ監督が姿を見せ、彼が現在同時進行で制作しているうちいずれかの作品がカンヌで極秘上映されるのではないか、という噂が流れまくったとか。結局は何も上映されなかったんですけどね…(^_^;)。
後は、ロバート=アルトマン監督の新作「Gosford Park」が、まだ完成前だというのにマーケットで取引きされていたそうで。日本では、東北新社が買ったと聞きましたが。

今回Official Filmには1本の出品もなかった韓国映画、マーケットではかなり熱かった様ですよ。「シュリ」「JSA」の暦代興行記録を塗り替えて今話題の「チング〜友達」や、「グリーン=ディステニー」のヂャン=ヅィイー主演の「武士」、シリアル・キラーを題材にした「Nightmare」など。これらの映画が日本やアメリカで公開される日もすぐ間近だと思います。
それと、日本映画では 黒沢監督の「回路」、中田監督の「リング」、原田監督の「狗神」、及川監督「富江」辺りが売買されていたらしいですね(どれも全部ホラーだ(^_^;)。さてさて、アメリカではどの映画が観られるのやら???

<<その他のイベント>>

カンヌと言えば、やはり世界中からフィルムメーカー&プロデューサー、バイヤー&セールスが一同に会するということで、毎年パネル・デスカッション等もさかんに行われています。
今年はF=F=コッポラ監督を始め、ウォン=カーウワイ監督、デビッド=リンチ監督、ティム=ロビンス監督などが参加(どれも別々のパネルです)。会社としては、ソニー・ピクチャーズ、ウィリアム・モリス(世界最大級のタレント・エージェンシー)、Good Machine(アン=リー監督やハル=ハートリー監督を世に出したインディー映画の制作・配給)、Artian Entertainment(「ブレアウィッチ・プロジェクト」で大儲けしたインデイー系会社)、Troma Pictures(B級映画の老舗会社)、IFP(インディペンデント・フィーチャー・プロジェクト)、AMF(アメリカン・フィルム・マーケット)、そしてHollywood Reporter(二大業界紙の一つ)等がディスカッションに参加していました。昨年、一昨年に比べると、ドットコム企業の参加が激減したということで、ここにもネット不況の影響がじわじわと表れている様ですね。

<<カンヌに行こう〜♪>>

最後に。カンヌ映画祭というと、世界の国際映画祭としては文字通りその頂点に立つ最大の映画祭でして、会場には特別な人しか入れないのではないかと思われがちですが、基本的にはどの上映のチケットも、一般に売りに出されるというのが“タテマエ”になっています。勿論、人気のモノは事前に全て買い占められてしまうのが現状と言えば現状ですが、Panel Selectionのチケットは比較的簡単に手に入るそうですし、運が良ければひょんなことから余ったチケットが手に入らないとも限りません。
この時期、カンヌ周辺の宿泊施設が満室状態になるのは勿論のことですが、車を借りてちょっと離れた場所に宿を取り、毎日会場に通うという手もあります。この辺りのことについては、このサイトをよく読んで、詳しく計画を立ててみて下さい。いわゆる初心者の為のカンヌ映画祭ガイドだそうです。友人・知人にはカンヌに行った事のある人が何人かいるものの、自分自身はいまだに行ったことがないので、将来は絶対に行くつもりでいまぁぁす。出来れば自分の作品でね(夢は大きく持たなくっちゃ〜(^_^;)。

<<カンヌ映画祭・関連サイト>>

Official Site

Film Festivals.com

Indie Wire

Hollywood Reporter

Film.com

E! Online

New York Times

mookの映画祭ウオッチング2001 aへ 

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