*** mook's Favorite Films 7***
mookのお気に入り映画 7

お気に入り映画のリストから、ランダムにピックアップして紹介していきます。

I'll introduce some films from my favorite films list
time to time.

"Storytelling"

Oct 02, 01(English version will come soon!)

Written and Directed by : Todd Solondz
Starring : Selma Blair, Mark Webber (II), and John Goodman
Official Site : English, Todd Solondz
2001年NY国際映画祭にて。アメリカでの一般公開は、2002年2月。

う〜ん、おそるべしトッド=ソロンズ監督。またまたやってくれました!!!今、アメリカ人監督の中では、もうめちゃめちゃ大〜〜〜〜好きな一人です(…と、いうことで、このページもご贔屓入りまくって書いてますので、要注意)。

1995年のサンダンス映画祭でグランプリを獲得した「ウェルカム・トゥ・ザ・ドールハウス」に始まり、カンヌ映画祭での審査員特別賞を初め、「プライベート・ライアン」に続く1998年NYタイムスが選ぶベスト映画に選ばれる等、多くの賞を総ナメした「ハピネス」に続く、トッド=ソロンズ監督、待望の最新作。
今回はニューライン・シネマというハリウッド資本をひっさげて来たものの(配給は同グループのインディー系、ファインライン・シネマ)、その野心作ぶりには本当に感心してしまいます。う〜ん、実にまたまたコントラバーシャルな内容!!!!!今年のカンヌ映画祭では「ある視点」で上映され、批評家達の絶賛を浴びたものの、やはり一般公開にはかなりの苦戦を強いられている様です。

前作「ハピネス」でも、近親相姦や少年好きの中年男性、バラバラ殺人や変態男などを描いて、当初配給をするはずだったパラマウントが降りてしまい、結局制作を担当したグッド・マシーンが配給にまで手を出すという異例の事態が起きました。この「Storytelling」も、実は10月中旬の公開が一旦決定されてはいたものの、同時テロ事件以来の公開自粛ムードにより、来年以降へ公開が持ち越しになってしまっています(映画の内容は、テロと全然関係はないのですが。殺人などのコンテンツが絡んでくるので)。

今回の作品で、一番ネックとされているのが“人種的なコンテンツ”。前半、白人女性と黒人男性のセックス・シーンがあるのですが、これが検閲に引っかかってしまったのですね。なので、私達がNY映画祭で観たバージョンでは、二人がセックスしている部分に大きな赤い四角が現れ、二人の裸体を隠しているのです(ちなみにカンヌ映画祭で観た人は、カンヌバージョンに、そんな赤い四角はなかったと言っています)。コレって、凄いプロテストだな〜と思う。だって、この方がよっぽどインパクトがあるじゃないですか。
映画祭の上映後、監督とのQ&Aの中で、監督は「勿論、そのカットそのものを取り除く様にと言われた。けど、僕はキューブリック監督の”Eyes Wide Shout”の様なことだけはしたくなかったんだ。」と言っていました。つまり、その部分だけをぼかしたり、短いカットを取り除いてしまう事だけはしたくなかったということです。

それにしても私には、白人女性と黒人男性のセックスシーンが、いまだにカットの対象になっているという現実のことの方がよっぽど衝撃的でしたよ。友達の話によると、黒人女性と白人男性の場合はまだ不快度が随分と低いらしいのです。それってつくづく、アメリカ社会というのは、いまだに白人男性を中心に動いているってことを証明しているわけですよね。
この辺りの話は、またし出すと長くなってしまうのですが、つまり白人男性が他の類(?)の女性を手篭めにするのは、お遊び感覚で全然かまわないんだけど、黒人や他の人種の男性が、自分達の白人女性を奪ってしまうのはダメ、というコトなんです。だから白人男性&アジア人女性のラブ・ストーリーは山程あっても、アジア人男性&白人女性のラブ・ストーリーは殆ど皆無だということ。後者は大抵、企画の時点で潰されてしまいますからね。

おっと、話が随分と横にそれてしまいました。とにかく、トッド=ソロンズ監督作品のキーワードの一つは“タブー”。でも彼はそうした内容を、奇をてらうつもりでだとか、スキャンダラスにして世間の注目を引こうとしているワケではない所が、私はとても好きなのです。あくまでも、彼の中でのリアルさに忠実でありたい。正直でありたい。その“当たり前さ”が、アメリカの映画界と言えども、意外と大変なのですけどね、コレが。
今回は、おそらくそのセックスシーンだけでなく、ラティーノの家政婦さんのキャラクターについても、監督に対し、さまざまな批判&議論がふっかかるであろうことは、容易に想像することが出来ます。彼の廻りのスタッフも、それはやめたら?という人がゴマンといたことでしょう。でも、それを敢えて果敢にやり通してしまう、その“Bold”さを、私は特に気に入っているワケなのですね(うう、ついつい誉めすぎてしまう…)。

またまたストーリーの紹介が、後まわしになってしまいましたね(^_^;)。この映画は2つのストーリー構成になっていて、一つ目が「Fiction」。ライティング(Writing)・クラスの生徒達とその先生との絡み合い。二つ目の「Non Fiction」は、インデイーのドキュメンタリーを作る(それもデモ用)にわかフィルム・メーカーと、その題材になっている家族のお話です。

実はトッド=ソロンズ監督は、私の母校で半年間、映画科の特別講師をしていました(私の卒業した年だったので、私はそのクラスを取ることは出来ませんでしたが)。おそらくどこの学校でも皆そうだと思うのですが、うちの学校のクラスは10人前後。毎週、前の週に書いてきたショートストーリー(短編映画用)を発表し、クラスメート達の間でお互いに批評をし合います。その描写があまりにもリアルだったので、あ〜、「Fiction」のパートって、もしかしてうちの学校での実体験から来ているのかしらん、と妙に内輪受けしてしまったりなんかして…(^_^;)。それにしても彼って、天才だなぁぁぁっっっ!!!こんなあきたりの風景、私達が4年間いやと言うほど繰り返してきた日常に、スマートでウィットの効いた台詞をズバズバ入れ込んでしまうなんて。う〜ん、コレが教師と教え子の違いなのか…。ちょっと悔しくって、とほほな私です。

「Non Fiction」の部分は、多分に監督自身や監督の周りの人達がモデルになっているんだろうなぁ、と思います。サンダンスやHBO等にピッチ(売り込み)をする“自称:フィルムメーカー”は、やはり昔の彼や彼の周りの姿なんだろうし(私も、ああいう人達ならゴマンと知ってマス)、リビングストン・ファミリーは、モロ監督の家族の姿なんだと思います。
余談ですが、私は監督の前作「ハピネス」で、アート・インターンをしていたので、「ハピネス」のメイン・ロケーションである監督のお兄さんの家に、当時一ヶ月以上出入りしていました。いや〜、本当にあんな感じの、“厳格なユダヤ人家庭”って感じでしたね。ちなみにリビングストンとは、彼の生まれ育ったニュージャージー州、リビングストンの地名から来ています。

いわゆる“Loser”達のオムニバス的人間模様の「ハピネス」と同じく、この「Storytelling」でも、メインのキャラクター達は皆、社会の敗者達。それでも、私としての感想は、この作品の方が、「ハピネス」よりずっと前向きの終わり方をしている様な気がしました(ストーリー的には、実はそうでもないのですが。コレはあくまで私の解釈です)。
そう、おそらく一般的には暗い暗いと言われているトッド=ソロンズ監督の作品。でも、私にはとても、彼が世をはかなみ、悲観し、斜めから物事を見ている様な人にはとても思えないのです(ま、一見、すんごいヘンな人ではありますが…)。彼は自分が世の中から「ヘンな奴」と思われていることをよく知っている。けれど、それで卑屈になったり文句を言ったりしているのではない。むしろ、その“ヘンなまま”で突き進んで行こうとしている姿勢が私はとても好きです。まぁ、彼くらいの天才だと、ホント〜に、何だって出来るんですけどね〜(^_^;)。

え〜、キャストは皆良かったです。特にスクービー役のマーク=ウエーバーは、めちゃめちゃ最高でした。いや〜〜〜、将来の期待二重丸でっす。う〜ん、うますぎる〜〜〜。「フリーンストーン」等でお馴染みの、ジョン=グッドマンは、最初トッド=ソロンズの映画には場違いでは???とも思ってしまいましたが、いやいやなかなか素晴らしかったです。マイキー役の子役もうまかったし…(トッド=ソロンズ作品の子役は皆、め〜っちゃうまいのですっっ!!!)。
あと、何と言ってもそのカメオ陣が凄い!本人役で出演のコナン=オブライアン(NBCのトークショウ・ホスト)を初め、「ラン・ローラ・ラン」のフランカ=ポテント(すっごく太っていたので、最初分からなかったけど)や、ドキュメンタリー映画「アメリカン・ムービー」(これ、名作です!)のマイクなど。いや〜、映画ファンにはオタッキーに笑える部分が沢山ありました。あ、あと「アメリカン・ビューティー」のパロディ(本人は“オマージュ”と言って誤魔化していましたが(^_^;)もあったりなんかするし…。

トッド=ソロンズ監督のフィルム・メイキングというのは、いつも同じ様なテーマの焼き直しで(まるで私の大好きな、蔡明亮監督みたい)、嫌いな人から観れば、ただのマスターベーション作品に見えてしまうことと思います。だからまず、「ハピネス」を観てみて下さい。「ハピネス」が好きなら、多分この「Storytelling」も好きになると思います。私に言わせてみれば、こちらの方がスキル的にもずっと洗練されているし、予算にも余裕があるので安心して観ていられます(もしかすると、キッチキチの予算や舞台裏を知っている私だから「ハピネス」を観るのは、けっこうツラかったのかもしれませんが)。

アメリカでは先に書いた様な理由で、公開が来年に持ち越されてしまいましたが、「ハピネス」が意外に好評だった日本では、アメリカよりも先に公開されるかもしれませんね。また、検閲の基準も違うから、もしかすると赤い四角のシーンも、日本では違うバージョンで観られるかも鴨…(^_^;)。


2回目(Mar 12, 02)の感想

毎年1月から3月にかけてというのは、一年で一番つまらない映画ばかりが上映されるのですが、いや〜、今年は酷すぎ〜!!!とにかく10ドル払ってわざわざ劇場で観たいという映画が一本もないんですよ(『トレーニング・ディ』&『害虫』は5ドルだから観たし、『モンスーン・ウェディング』&『The Believer』はタダだから観たんです(^_^;)。
…とゆ〜わけで、昨年10月すでに観てしまったこの映画を懲りずにもう一度観てしまいました。まぁ、この映画ってけっこうビデオでもいいかな、という作品なのでもう一度観るというのにもあまり乗り気がしてなかったのですが、先日観た『The Laramie Project』に出演しているマーク=ウェバーを観て、ますます彼のファンになってしまったので、ほとんど彼を観に行ったという感じです(^_^;)。

う〜ん、2回以上観ると前の感動が薄れてしまう映画の多い中、この映画は2回観てますます好きになりました。でも、やっぱりかなりオタッキーな映画なので、誰にでもお薦め出来る作品ではありません。特に2話目の末っ子&家政婦さんのエピソードなど、私ですら腑に落ちないというか、納得出来ない部分なので、普通にただストーリーを楽しもうという人が見たら「何なんなの???」って感じになっちゃうんじゃないかと思います。
けどね〜、トッド=ソロンズ、やっぱ天才ですよ〜〜〜。今回ストーリーが全部分かっている分、細かい台詞の言い回しだとか、カットの繋ぎ方など、些細な部分をとっくり堪能することが出来ました。この人の笑いってほんっとブラックなんですけど、好きだな〜、私のツボ抑え捲くりですよ〜。でも相当好き嫌い分かれるタイプなんじゃないかと思います(^_^;)。“21世紀のウッディ=アレン”(NY…というか彼の場合、NJなんですけれど。で、ユダヤ人色バリバリ)は、…やっぱ無理かな???

1話目の”Fiction”ですが、改めて観ると本当によく出来た短編映画なんですよね(長さ20〜30分前後だと思います)。非常にありがちな話で、何の変哲もなく、誰もが「な〜んだ、こんな話なら私にも撮れるよ」と愚痴りそうな話。けど、コレが出来そうでなかなか出来ないんですよね〜。
それから改めて、主演女優のセルマ=ブレアーって凄いと思う。彼女、『Legally Blond』で、全然違うタイプの役をやってたんですよね。まるっきり気が付かなかった!!!あの映画ではあまり良くなかったけど、やっぱこの映画ではスゴイ!!!今年はキャメロン=ディアスと共演する『The Sweetest Thing』や、ジュリア=スタイルズと共演する『The Guy Thing』など出演作も目白押しで、毎年恒例バニティ=フェア誌が選ぶ若手女優の一人にも選ばれていました。これからが楽しみ!!!

そして、マーク=ウェバー!!!!!!!!!!!彼は天才役者だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。…っていうか、彼みたいな演技、どこでも見た事ないっていうくらい、個性的な役者さんなんですね。特にこの役、殆ど全編でいかにも”Stoned(直訳は“石みたい”ですが、ドラッグでラリってる時などに使います)”ってな表情をしているのですが、ただの“ボーッ”でもない、闇雲にふて腐れているわけでもない…微妙な表情。大抵こうした役の場合、役者はこの両者のどちらかを演じてみせると思うのですが、彼はその二つを同時に出来る!!!!そして、この”Stoned”状態が出演シーンの8割である彼にあって、ほんのワンシーン、彼が笑顔を見せる場面があるのです。お〜〜〜〜っ、コレはもう別人の顔だよ〜〜〜〜〜〜〜!それとね〜、自宅でゲイの友達といる場面、この場面なんか見てると「ああっ、コイツなんていいヤツ!!!!!!!!!!!!」っとか思ってしまうのです。つまり、このスクービーという高校生がこれだけ三次元のキャラクターとして生き生きと見えてくるのは、やっぱりM=ウェーバーの魅力以外の何モノでもないでしょう!!!!!!!!!
ネタバレになるので、あまり書けないのですが、彼がラストの台詞”Don’t Be”を言う時の表情!!!!!う〜〜〜、私が監督や編集者だったら、このカットの彼、何度も何度もリプレイして見ちゃいますよ。素晴らしいっ!嗚呼、ボキャブラリーが足りないっっっ!数々のブラック・コメディのシーンも、ソロンズ監督ったら一体どんな風に演出したんだろう?というくらいパーフェクト。もし、脚本を読んだだけで、彼があれだけのBeatを理解していたのだとしたら、マーク=ウェバーという役者は驚くべき天才だと思います。ここまで言うと大袈裟かな?ま、『Laramie…』の方だと、彼はこの作品ほど素晴らしくはなかったので(けっこうちょい役だったし)、これからもっと彼の出演作品を観て、彼の才能がどれだけのものなのか見極めて行きたいと思います。

この作品、『ハピネス』に比べるとさらに有名スターがいないので、日本では上映されないかな〜。う〜ん、一部インディー映画のファンがいる日本とは言え、たしかにマーケティング的には売りにくい映画ですね…(^_^;)。

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