I'll introduce some films from my favorite films list
time to time.
Bakka Sataung 「ペパーミント・キャンディ」 |
Written and Directed by : Chang-dong Lee
Starring : Kyung-gu Sol, Yejin Kim, So-ri Moon
Official Site : Korean
Seen at New Directors New Film Festival
いや〜〜〜、この世には素晴らしい映画があるものです。まずこの映画、私がこれまでに観た韓国映画(30本そこそこくらいかもしれませんが)の中では文句なしのNO.1、そして“脚本”という面ではこれまでに見た全ての映画の中でもベスト3に入るくらい大好きです。勿論コレは、個人的な好み以上の何モノでもないのですけれど。
ちなみにこの映画、日本では昨年10月下旬に公開され、現在ではすでに日本語字幕付きのDVDも発売されていると聞きました。
この映画はまず現代=1999年に始まり、約20年という月日を少しずつ遡って行きます。こういった“遡り脚本”は、先々月観たお芝居「Betrayal」でも使われているし、現在NYで公開中の「Memento」も全く同じ手法で書かれており、取り立てて新しいモノではありません。時間を入れ替えるという点では、94年すでに「パルプ・フィクション」がやっていますしね。時間の使い方の斬新性という点では、「パルプ・フィクション」の方がこの「ペパーミント…」よりよっぽど新しくてオリジナル性があります。
私がこの映画に惹かれたのは、やはりそのノスタルジックでセンチメンタルな部分かも(つまりもうオバサン入ってるってことですね ^_^;)。20年の月日の流れの中で、彼が失って来たものは何だったのか?これがこの映画のタイムトラベルであり、時間が逆行していながら話が前に進んでいる、そしてラストが(私にとっては)きちんとコレで“ある種の到達点”であり、ちゃんとしたラストシーンになっている(つまりRewindではなくForwardとしても機能している)所がスゴイのです。
この映画は“謎解き”や“ミステリー”では決してありません。そしてまた、彼の“人生ドキュメンタリー”でもありません。だから“人生の重要な節目”は、むしろ飛ばしてあったりするんです。で、その行間は観客に想像させるんですよね。その代わり、彼の心の変化を示唆するディテールがところどころに散りばめてある。私は最初から、この映画は一つ一つのセリフ、一つ一つの動きにどれも重要な意味が込められているという予感があったので、何一つ見落とさない様に観ていましたが、ホント一つも無駄のない、それこそ隙のない脚本なのです。小さなことが、ちゃんと後から意味を持って出てくる。一緒に観た友人のうち、一人はこの上映が3回目だったそうなのですが、彼曰く、とにかく観れば観る程ディテールの細かい脚本&演出なのだそうで。これは私もビデオを手に入れて研究しなければ…。この映画が上映された当時、韓国でリピーターの観客が多かったというのには、ふむふむと頷けます。
ただしこの映画が「6センス」や「ユージュアルサスペクツ」と違う所は、あくまでもこのトリックの中心が、キャラクターの“心の動き”であるということ。繰り返しますが、これは決して謎解きミステリーの映画ではないのです。
この物語の主人公、ヨンホは歳を重ねるうちにどんどんと汚れて堕落した男になっていくのですが(映画はそのなれの果てから始まります)、彼に「同情するのか」、彼を「愛する」のか、この映画を観終わった後飲みに行った連中の間でちょっと話が盛り上がりました。
この物語の流れには、さまざまな背景が浮かび上がって来ます。1980年の光州事件(韓国軍が、全羅南道の光州地方で無抵抗の住民を大量に虐殺した事件)、朴大統領暗殺、全斗換大統領から、民主化運動、そして金泳三大統領から金大中大統領へ。その政治的背景に沿ってヨンホの職業は、軍人見習いから政治犯を取り締まる刑事、そして小さな会社の経営者へ。これらを彼の変わり行く姿への「言い訳」と取るかどうかで、ヨンホというキャラクターに「同情する」のか「全てをひっくるめて愛してしまうのか」が決まるような気がするのです。
私個人としては、彼に同情はしないですね。彼はやはり“弱いヤツ”だと思うし、“悪いヤツ”だと思う。でも、そういった部分全部ひっくるめて愛せてしまうキャラクターなのです。このヨンホというキャラクター、“男のナルシズムの塊”と非常に紙一重な部分を持っていて、下手をするとただの同情心や安っぽい共感への対象となってしまうのですが…。なかなか際どい所で私にはセーフでしたね(^_^;)。
彼の失ったものは、なにも純粋無垢な心だけではありません。言い方を変えれば、彼はその“不器用さ”をも失ってしまった。初恋の相手スニムとの恋は、“ぎこちなさ過ぎて、不器用過ぎて”どうしていいのか分からなかった。そんな若さゆえの歯がゆさ(当人達にとってみればそれが精一杯なんですけれど)を知っている人にとって、この映画は忘れられない一本となるでしょう。逆に言うと、まだ恋愛の苦さを知らない人にとっては、もう少し大人になるまで(?)お預けにしておいた方がいい映画なのかもしれません。私なんか、もろオバサン入って、ナルシーして観てたからもうハマりまくってしまいましたね(^_^;)。
この映画を一緒に観た5人(私入れて6人)、ダントツ1位で人気のあったシーンは、ヨンホが田舎町で出会った一夜限りの女の子から、「私をスニムって呼んで、何でも話したいこと話して」って言われるところで、彼が…(まだ観ていない人の為に伏せておきませう)。このシーン、もぉ泣かされましたわ〜。
なんと言っても特筆すべきは、二十歳から四十歳までのヨンホを見事に演じきったソル=ギョング。この作品でナント映画出演第2作目なのだとか。元々舞台の役者さんなのだそうで、そのせいか正直私にはオーバー・アクティングに見えた部分もあったのですが、モノ言わぬ彼の何気ない表情は最高でした。実は後になって知ったのですけれど、この映画ナント映画制作の常識からは考えられないやり方=シーン順に撮っているのだそうで(しかも時代的にはどんどん昔に戻っていく)、各時代ごとにまるで別人の様に変わっていく彼の姿には眼を見張るものがあります。特に河原のシーンは、2シーンの間を1ヶ月かそれ以上置いているのだそうで、彼、身体付きまで全然違ってしまっているんですよね。もう、こだわりまくり。
妻役のヤン=ホンジャの変貌振りも見モノ。彼女も時代と共に大きく変わっていきます。なかなかコレが難しい役どころを、うまく演じきっていました。そしてスニム役のムン=ソリ。病院のシーンを撮影する前には、ナント10日間の断食をしたのだそうです。コレも根性・気合入りまくり。それから、スニムの旦那役も出番少なかったけど、とっても良かったと思います。
監督は、ハン=ソッキュ主演の「グリーン・フィッシュ」で長編デビューしたイ=チャンドン。監督デビューの前は、パク=グアンス監督の「あの島へ行きたい」や「美しき少年」の脚本家を務めてきたため、その脚本家としてのキャリアは筋金入り(?)。私は未見ですが、日本でやはり昨年秋に公開された「グリーン・フィッシュ」は、映像的にも高い評価を受けているそうで、機会があれば是非観てみたいです。この「ペパーミント・キャンディ」では、基本的に1シーン1カット。でも、候孝賢みたいに長回しが異様に延々と続くシーンはは少ないので、殆ど気が付かない様に撮ってあります。また、つい3日前に観た「顔」でも、鏡のシーンが印象的に使われていますが、この映画でも鏡は非常に重要な役割を果たしています。
1980年代、実はこのイ=チャンドン氏は小説家として反政府学生運動の先駆者的位置にいたのだそうで、この映画の政治的時代背景が細かく、そしてアイロニックに描かれているのは、やはり彼の作品ならではのものなのでしょう。言い換えればこの映画は、学生・民主化運動からはみ出し時代からも取り残された一人の団塊の世代(?)の物語でもあるのです。ヨンホの学友達がピクニックのシーンで歌う歌は、光州事件前後に政府から禁止された歌でもあるのだそうで、その辺りを知っている韓国の人達にとっては、たまらない作品なのだと思いますよ。
とはいえ、私はこうした「失われしピュアな自分への鎮魂歌」みたいな話は、日本や韓国の人達だけでなく、世界中の人達の心に通じるモノだと信じてやみません。この「ペパーミント・キャンディ」、去年のカンヌ映画祭では「監督週間」に正式出品、その他釜山・モントリオール・福岡国際映画祭などで世界中を駆け回り、韓国国内でも大鐘賞や青龍賞など、その他多くの批評家賞を獲得しています。
ちなみにこの映画は、韓国における日本文化開放政策以降、最初の日韓合作映画としてNHKが共同出資をした作品でもありました。
This is definitely the best Korean film I've ever seen, and it could be one of the best 3 films of all time in terms of screenwriting. Of course, it is, at least, for me.
This story starts from the present = 1999 and keeps going backward for 20 years little by little. This style is, in fact, not new at all. As you know, "Betrayal" by Harold Pinter is written in exactly the same way, and I've heard the film, "Momento" (just opened in NY a couple weeks ago), is written in the same style.
However, the biggest difference between those story and "Peppermint... " is that in this film, even the time goes backwards, the story goes forward and the last scene is, in some sense, the end, the last, and the climax of his internal journey.
It is also not a mystery or tricky story such as "Sixth Sense" or "Usual Suspects". Yet if you see this film more than twice, you will find that how cleverly this screenplay is written. Every single details of this film are "paying off" to other scenes.
Meanwhile, we never see a big event or a turning point of his life in this film. Those big events are left on the audiences’ imagination, which I think it's great.
As he gets old, he loses his innocence and becomes a scamp. (We mostly see him as an asshole in entire film). However I don' t think every single person, who see this film can hate him at all. It was interesting to argue with my friends after we saw this film; some says the protagonist, Yongho is a "Sympathetic" character, and other says his character is "Loveable". I personally do not sympathize with him but cannot help loving him.
Anyway, the performance of Kyung-gu Sol, who played Yongho from in his 20 to his 40s was totally amazing. Although in some part, I thought he was overacting in the dramatic scenes (he use to be a stage actor. this is his second film), I loved him acting in very subtle way. And amazingly, I've heard that they were shooting this film in the scene orders (means the time goes backwards). You can see him totally different in every single scene.
This is the second film of the director, Chang Dong Lee who debut with a film, called “Green Fish” (starring Suk-Kyu Han). He has been writing two scripts before “Green Fish”, so this is his fourth screenplay. I haven’t seen “Green…”, but I heard it is well directed in terms of its visual context.
He was actually well known as a novelist in the 1980s and was one of the opinion leaders of the student movements at that time. No wonder you see such profoundly introduced those political backgrounds from the beginning of 80s to the end of 90s in entire of the film. Those incidents such as the Kuwanju Incident (a civil massacre by Korean military), the assassination of President Pak, and the student movements shadow the direction of Yongho’s life.
I believe that this “Lost Innocent Soul” story must be understood by not only the Korean audiences who went through these horrible contemporary history but also anyone else who once has gone through a bitter first love, which came from his / her clumsiness because he / she was too young to love someone.
Has he chosen a wrong life? Or was it just a bad destiny??? The theme of this film is not these questions and yet nostalgia either. This is a story about no more than a life, which is cruel, beautiful, and as it is.
It was the first co-production between Korea and Japan in the history, and it has been showing dozens of international film festivals including Cannes (the directors week), Pu-San, Montreal, San Francisco, Portland, etc. It has also winning the Chong-Ryang awards (the Korean Academy Awards) including the best picture, best director, best screenwriting, and best actors.
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