by 劇団燐光群 |
今年なんと4作目の燐光群観劇です(^_^;)。座長の坂手洋二氏は、他劇団の為の作品も 書き下ろしているので、今年だけで5〜6作の新作を書いているのではないでしょうか。いやはや本当に多作な人です。
多作な人というのは、得てしていろいろ違ったタイプの作品を書く人が多いと思いますが、この人の場合、よくもまぁ、こんなに同じ題材でいろんな作品が書けるよなぁと感心してしまいます。ま、一言で言ってしまうとこの作品はこれまでの坂手作品の総括的な舞台でもありました。空間としての舞台に始まり、時空を越えて太平洋戦 争の戦争責任へと至る。彼の作品はもうこのテーマにつきますよね。
今回、舞台はいつもの小劇場ではなく、紀伊国屋サザンシアターというメジャーな劇場、そして石田えり&手塚とおるという有名役者を客演に迎えての大芝居。やはりちょっと雰囲気は違いましたが、逆に燐光群がサザンシアターを乗っ取ってしまったという感もありました。
けど正直、石田えりと燐光群はちょっと違ったかなぁ。いえいえ、それは石田えりが良く無かったと言っているのではないですし、燐光群が彼女にはもの足りない劇団だったというわけでもありません。ただ・・・彼女がちょっと浮いていたというだけのことです(^_^;)。
私は彼女を舞台で見るのは始めてだったのですが、思っていた通りの彼女でした。良かったですよ、とっても。手塚とおるについては、全く前知識がなかったのですが、いや〜、スタイルのいい人ですね〜〜〜。背広姿とかスラ〜っとしててとってもかっこ良かったです(^_^)。私が見たのは初日だったのですが、お御足をくじかれたそうで、後大丈夫だったのでしょうか???
実際には会うことのなかった阿部定と睦夫。構成的に言うと二人の繋がりにそんなに無理は感じませんでしたが、人格的にはどうもしっくりいかなかった様な気がします。う〜ん、コレは石田えりと手塚とおるの相性のモンダイだったのか、それともテーマへの持っていき方がちょっと強引過ぎたのか…(^_^;)。
さてさて、来年の燐光群第一弾は、『THE LARAMIE PROJECT』。偶然にも、↓『杏仁豆腐のココロ』で主演した
佳梯かこさんが主演されるかもということで、ますます楽しみにしていま〜〜〜す。
by 鄭義信 |
うぉぉぉ〜、ブライアン=デネヒー主演『セールスマンの死』以来、こんなに泣かされた芝居は
ありませんっ!!!
そして何より、映画・小説・舞台とメディアを問わず、こんなに切ないラブストーリーって滅多にあるモンじゃ〜あ〜りません。いや〜、ラストでは会場中の人たちが号泣してた様な気がします。
『OUT』『愛を乞う人』『月はどっちに出ている』などの脚本で、すっかり映画界でもお馴染みになった鄭義信さんですが、ご存じの通り元々は劇団新宿梁山泊の座付き作家。『千年の孤独』や『人魚伝説』などの代表作では、その痛々しいまでの女心を切なく見せてくれていましたが、いや〜、彼ほど繊細でリアルな女心を描ける作家さんを私は他に知りません。
主演は、プロジェクト・ナビ『寿歌(ほぎうた)』などで知られる伝説的な舞台女優・佳梯かこと、劇団人口子宮の宇佐美亨。さすが最初から彼女の為に当て書きされたとあって、前半のだらしなっぽい所、中盤の熱い所、そして後半の切ない部分が絶妙のバランスで描かれています。また彼女とは対象的に、仕事をしないくせにキチンと主夫してて、それでいて浮気する所ではこれ以上ないっていうくらい男になる宇佐美亨の役もリアルですね〜〜〜。アレ?単に私がそういった男を具体的に知っているから(^_^;)???
お互い明らかに愛し合っているのに、もう元のサヤには戻れない。芝居の後半では、ある事実が明らかになっていくのですが、そのどつぼを乗り越えた二人であっても、人生というのは、かくも残酷なものなんですね。それがまたむちゃくちゃリアルなだけに観ている人にはツラい。まぁ、もしかしてもしかすると10代や20代前半の人達が観たらあまりピンとこない作品なのかもしれませんが、ある程度トウの立った人達には心に残る作品なんじゃないかと思います。いや〜、世の中にはハリウッド映画やトレンディドラマと言った夢物語、もしくはその対極にある様な無気力な恋愛関係が溢れ返っていますが、どうしてこういったリアルで切ないラブストーリーが少ないんでしょうかね〜〜〜。
このお芝居、もともとは一日公演の為に特別に書き下ろされた作品ですが、好評の為再演の際に名古屋芸術創造賞なども受賞しているので、またまた再演されるのは必至だと思います。けど、題材がクリスマスに絡んでいるんでね〜、夏の公演はちょっと無理かなぁ(^_^;)。
by 蜷川幸雄 |
芝居三連ちゃんの最後を飾る、シアターコクーンでの蜷川マクベス。私は蜷川ファンでも何でもないのですが、今回の公演は同キャストによる再演でして、前回の公演の評判を受けてこのお芝居がニューヨークのBAMシアター演劇祭に出品されると聞いた私は、3ヶ月も前からチケットを購入していたのでした。
う〜ん、期待があまりにも大きすぎたかなぁ。それとも単に私が蜷川作品を好きではないってこと???な〜んか、やたらと金だけかけてるのは分かるんだけど、「だから何なの?」ってゆ〜ふ〜にしか見えない。豪勢なセットも、洒落っ気が鼻についた様にしか見えない和洋折衷のコスチュームも…。そりゃ〜セットも衣装も“変わって”ますよ。けど、だからって“イイもん”とは限らない。まぁ、こ〜ゆ〜のって結局は好みのモンダイと言ってしまえば、それまでなんですけどね(^_^;)。
まずキャスト、主演マクベスの唐沢寿明、若過ぎ〜〜〜〜〜〜。あまりにも華奢過ぎて、深みも何もあったモンじゃない〜〜〜。マクベスってもっと善悪の狭間を彷徨う複雑で厚みのあるキャラなんじゃないのぉぉぉ???
いつもウマイんだろ〜な〜と安心しきって見ていた大竹しのぶ。彼女の場合、もう巧くて当たり前なワケだから、前半でなんか「アレ?いつもの巧さはどうしちゃったの?」って感じだったし、後半でのお得意狂乱シーンでも、もうどうしても巧くて当たり前としてしか見られないから、カンドーの欠片もなかったです(^_^;)。
その昔、新宿梁山泊で大好きだった六平さん。私にとって、彼はやはり昔のキャラのイメージがあまりにも強過ぎて、シアターコクーンのシェイクスピア劇とゆ〜のは、ちょっと…(^_^;)。いや、勿論うまいんですよ〜。けど、ゴメンなさい。私はやっぱり昔の彼の方が好きだな〜。
その点、やはり私にとっては第三舞台時代のイメージがこってりこびりついている勝村政信は、まだ好感が持てたかも。まぁ彼の場合、これまでコメディタッチでボケタイプの役が多かったから、あ〜んなモロに苦悩まるだしの正統派(?)キャラとゆ〜のは、今までに見たことのない新しい役だったワケで、その点はまぁ新鮮でした。
それにしても、シアターコクーンとゆ〜所は音響良過ぎですよぉぉぉ。雷嫌いの私には、稲妻ドンピシャのシーンがあまりに多くてツラかったっす(^_^;)。もう当分、蜷川幸雄のお芝居は観なくていいかなぁ…。
by 日本総合悲劇協会 |
日本演劇界の今をときめく松尾スズキによる作・演出、そして先頃話題の半自伝?『女優の夜』を出版したばかりの荻野目慶子という二人の共演とあって、いや〜苦労しましたチケットGET。チケット発売日当日友達と二人で電話かけまくって20分弱、あっと言う間に売り切れてしまいましたもんね〜。実は、松尾スズキ&荻野目慶子コンビのお芝居は初共演ではありませんで、8月5日のPARCO劇場『ラヴレターズ』に続いて今回が二度目。あの時結局チケットを取れずに涙を飲んだので、今回は粘りましたよ〜〜〜。ってゆ〜か、結局金券ショップで買っちゃったんですけどね。幸運にも1000円ちょっと高いだけで済みました。
さてさて…。いや〜〜〜、期待に違わぬ素晴らしい作品でした。今回一緒に観に行ってくれた友人も松尾スズキの作品は初めて観たそうなのですが、こんなにギャグの効いてる芝居だとは思わなかったとか。それと、ヌードのオンパレードねぇ…。大人計画ファンである同僚の女の子に言わせると、こうした小ネタギャグやヌードのオンパレードはかなり典型的な彼の作風なのだとか。
まず最初に私が感じたのは、松尾スズキって活字世代とゆ〜より、いわゆるTV世代なんだな〜って思ったこと。一昔前に観ていた第三舞台や夢の遊民社の作品とゆ〜のは、(特に第三舞台の鴻上氏の場合)題材が最新トレンドであろ〜と、クリエイターの頭の中がやっぱりモロに活字世代なんですよ。媒体は本であれ雑誌であれ新聞であれはたまたインターネットであったとしても、その情報源の大半は活字なんだろうなぁと思うし、そっから考えているのも“活字の次元”で考えている。ところが、松尾氏になると(勿論彼だってもの凄い量の活字は読んでいるのでしょうけれど)、やっぱり感覚がTV世代なんだなぁ…。何とゆ〜か、頭の思考回路がTV世代なのね。私の場合、個人的にはまるっきり活字世代ではないし、かといって次世代(現世代?)のデジタル感覚もあまり持ち合わせていない、つまり松尾氏の世代とぴったりハマって来るのですよ。だから個人的には、彼の書くお芝居って現在30代の人達に一番しっくり行くんじゃないかなぁ…と思ってしまったのですが。
そしてもう一つ、私が彼のお芝居を観ていて興味深いなぁと思うのが、ブロードウェイ・ミュージカルとの共通点…とゆ〜より、まぁ、おそらくパクリなんでしょうね。ヒトラーのシーンは明らかに『ザ・プロデューサーズ』と類似しているし、ストリップ的な所はブロードウェイ版の『フル・モンティ』、それから観てないけど、サム=メンデスの『ブルー・ルーム』を思い起こさせる部分なんかもありました。あ、あとけっこう歌や踊りのシーンがあったのには驚きましたね。あの辺もやっぱりミュージカルの影響なのかな。
…とにかく、いやまぁ話題の素っ裸シーンには度肝を抜かれました。しかも2回もあったしなぁ。アレって一番前の席に座っていたらモロに見えるよね。今回は会場が草月ホールとゆ〜、保守の殿堂みたいな所だったので、よくこんなにやらせてもらえたよなぁ、とヘンな所に感心しちゃったりして。
さて、次の大人計画は来年2月の『ニンゲン御破算』。こっちの方もチケット取るの大変そうだな〜。いや、でも観に行くぞぉぉぉぉ。
by 劇団燐光群 |
Official Site: http://www.alles.or.jp/~rinkogun/
日本へ帰って来てまだ半年しか経っていないとゆ〜のに、『屋根裏』『チャーリー・ビクター・ロミオ』に続いてもう3作目です。燐光群の作品は。実は今、同じく坂手洋二作による『ブラインド・タッチ』も劇団円によって上演されているので、この半年の間、彼は実に4作品もの新作を発表していることになりますね。いやはや、何とも多作な劇作家さんであります。
前置きはともかく、今回の作品も前2作品と同じく、“空間の共有”というモノが大きなテーマになっていました。この人のこの一定空間に対するこだわりってゆ〜のは何なんでしょうね〜〜〜(もしかして閉所恐怖症???)。そうそう今回の場合、観客は舞台の始まる前にまさにこれから自分が観る舞台の上を歩いて客席へ辿り着く様にと誘導されます。これはなかなかユニークな演出でしたね。
お話は、2002年と1987年という15年間を隔てた2つの時の2つの物語。その二つの世界を一人の劇作家が結ぶのですが、やはりこの舞台のユニークな所は2002年にいる作家が過去の1987年を描くのではなくて、逆に1987年にいる作家が2002年の世界を描いている。15年前の住人達にとっては、携帯電話も同時多発テロ事件もただの絵空事でしかない、この辺の発想は確かに観ていて面白いです。
それにしても、いくら地方大学とはいえ1987年当時の大学生があんなコテコテな政治用語使ってたワケないよな〜、アレはちょっと60・70年代くさかった。けど、岡田有希子の自殺からもう15年も経っちゃったんですね〜。全く月日の経つのは早い早い…。また、いつもの坂手節とでもいう様に天皇・教育ネタはあちこちに散りばめられていましたよ。
キャストに関して言えばやはり主演の木場勝己はダントツに良かった。さすが彼の為に書いた脚本というだけのことはあります。それから、インドネシア人留学生を演じたトニー=ブルールはうまいんだけど、“モスラーや”はないだろ〜〜〜(^_^;)。それと、在日の学生が突然しゃべってたハングル、アレは一体何と言っていたんだろう???他の燐光群レギュラーキャスト陣もなかなか良かったけど、神野三鈴は前に観たことなかったような。客演か何かだったのかな???
…ま、チラシも含め宣伝の仕方が妙に地味だったので、『屋根裏』みたいにシンプルな劇かと思っていたら、そうでもなかったです。…で、次回の燐光群は『阿部定と睦夫』。全然傾向が違〜〜〜う!しかも紀伊国屋サザンシアターだしなぁ(今までは殆ど全部スズナリだったから)。観に行こうかどうしようか、今の所考え中です…(^_^;)。
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