*** Theater, Play 5 ***

お芝居の感想ページです。
新しいモノから上に来ます。

"Metamorphoses"
by Mary Zimmerman
Mar 03, 02

昨年秋、オフブロードウェイでオープン。年末のタイム誌が選ぶ2001年の演劇ベスト10でトニー賞の最多部門獲得記録を塗り替えた『ザ・プロデューサー』を見事押しのけ、堂々の第1位に輝いた作品です。12月末、一旦オフブロードウェイの公演を閉じて、2月よりブロードウェイでの再オープンしました。

メタモルフォーゼとは、ラテン語で“変身”の意味。ローマの詩人が書いた神話『オビット』を、シアトルやシカゴを拠点に活躍する戯曲&演出家であるマリー=ズィマーマンが脚色・演出したもの。
お話は7〜9くらいに渡る幾つかの短編オムニバスですが、どれもキャラクターがなんらかのモノに“変身”してしまうという共通点があります。話の内容は殆どが神話中心であるももの、現代のエピソードなども幾つか散りばめられてあり、その辺はけっこう笑えます。

全体的な感想…。いや〜〜〜〜〜〜、お芝居でこんなに泣かされたのは久しぶりです。一緒に観た友達二人も超〜〜〜〜感動しておりました。
ただね。舞台の完成度としては、私は思っていたよりも高くないと思ったんです。演技という次元での芝居はどれも弱いと思ったし、コレだ〜〜〜っという俳優さんも一人もいなかった。もし無理矢理トニー賞に選ぶとしたら、アンジャニ=ビマニかルイーズ=ラムソンかダグ=ハラくらいのモノかなぁ。その他の役者サン達は皆似通っていてよく覚えられませんでした(^_^;)。

この舞台最大のウリであるプール上での演技も、やろうと思えばもっとアイデアが出せた気がするんですけどね〜。期待が大きすぎたかなぁ。水しぶきバシバシという点では、私は新宿梁山泊のお芝居でさんざん観てきたのでさしてオドロキもしなかったし、むしろ梁山泊の方がいいじゃんと思ってしまったくらい。ただ、照明はスゴイなと思いました。終始まったく変わらぬプールの舞台を、照明でかなり表情を変えていましたので。トニー賞、照明賞のノミネートはまず確実でしょう。

では、なぜこのお芝居がこんなにも人々の胸を打つのでしょうか?私はやはりその物語の美しさに尽きるんじゃないかなと思います。このお芝居には、私達がもう遠くのどこかに忘れてきてしまった純粋な愛、“ピュア”な心、そして文字通りのロマンチズムがある…。各キャラクター達の持つ一途さ、ひたむきさは、シニカルでサーカスティックで、そしてテロ事件の後にはHopelessにさえなってしまったニューヨーカー達の胸に、静かに染み込んでゆく様な感じなんですね。このまるでタイムリーという言葉からはかけ離れたようなお芝居こそが、まさに今のNYにとってはタイムリーなお芝居なのではないでしょうか。

私的に一番印象に残ったお話は、夫が船旅に出ていってしまうエピソードと父親を愛してしまった娘のエピソード。前者は舞台演出が良かったし、後者は演技の演出がよかった。中休みとしてのセラピー・エピソードもけっこう好きな私でした。あと、話の順序の選び方はうまいですね。ラスト2作品は冒頭に持ってきたらたいしたことない話だったでしょうけれど、最後だったからこそ、心に染入みる部分がありました。

パワフルな役者の欠如、シンプルすぎるセットデザインというデメリットがある為、今年のトニー賞で最優秀作品賞を受賞する確立はもしかして低い?と思ってもいる私ですが、ノミネートはまぁまず確実でしょうね。
あ、これからこのお芝居を観る方。30ドルのラッシュ・チケット(当日にだけ発売されるチケット)には要注意。一番前の席になるのはよいのですが、水しぶきで服や靴がビショビショになりますので、くれぐれも良いモノは着ていきませんように(^_^;)。

"The Glory of Living"
by Rebecca Gilman
Dec 26, 01

Directed by : Philip Seymor Hoffman
Starring : Anna Paquin, Jeffrey Donovan, etc

『ピアノ・レッスン』でアカデミー賞を獲得したアンナ=パキン主演、私の大好きな俳優の一人フィリップ=シーモア=ホフマン演出という、それだけで注目度の高かったこのお芝居。今年のタイム誌が選ぶお芝居ベスト10の第4位に選ばれたというので、これは見逃せない!と思い、千秋楽の日に観に行って来ました(ちなみに今年、トニー賞の伝説と化した『ザ・プロデューサーズ』の順位は第3位)。

このお芝居を書いた戯曲家レベッカ=ギルマンは、“Spinning Into Butter”や“Boy Gets Girl” などの作品でニューヨークでは評判もいいですし、劇場もけっこう由緒あるMCCシアターだったので、期待してたんですけどね〜。私の感想は”超がっかり”でした。一番がっかりした部分はその中途半端なストーリー。何であそこで終わるかな〜。そこまでのストーリーの流れというのは大方予測出来ていたので、”そこから先”ってゆ〜のをとっても楽しみにしていたのですが(だいたいこのお芝居、2時間もないんですよ〜。それで全席45ドルなんて高い〜〜〜)。

このお話は、アンナ=パキン演じる南部の不幸な少女(…と言ってしまうと身も蓋もないですが)リサが、娼婦である母親の客としてやって来たクリントと夫婦になり、いつしか彼と二人で少女の連続少女誘拐事件に手を染めてゆく様になる…というもの。その殺人部分や逮捕されてからの成り行きは、むしろこのお芝居にとっては付随的なものでしかありません。物語の中心は、リサの微妙な心の動き。フツーに見ればただのヤナ奴にしか写らない様なクリントに、なぜ彼女が魅かれていくのか。そして何故、彼の言うがままに彼女は殺人に手を染めていくのか。それはただ彼に指図されたから、というだけの理由ではないのです。

このお芝居を絶賛する人達というのは、彼女のキャラクターの複雑さが何ともよく表現されているというのですが、正直私にはそれがよく伝わって来ませんでした。一緒に観た友達も同じ感想を漏らしていたので、皆が皆感動したというワケではないと思うのですが。内容が暗くて救いのないストーリーであるというのはいいんです。それはむしろ私の好みだし、“アンチ・センチメンタリズム”を狙ってお芝居全体がローキーに抑えられているのも、私にはかなりプラス部分のはず…でした。けど、何だかど〜にもリサのキャラクターやテンションがいま一つ感じられなかった。彼女が求めてやまない、”愛への渇望”…っていうのかな。それは一体何処にあったの???コレって、私達の観た回だけなんでしょうか…(T_T)。

この戯曲の初演は1997年だそうですが、フィリップ=シーモア=ホフマン演出以外のバージョンも是非観てみたいです。舞台セットははっきり言って“学芸会”みたいだったし、ステージングも私にはけっこうお粗末に見えてしまいました。
唯一の掘り出しモノはクリント役のジェフリー=ドノバン。映画『In the Bedroom』にも出て来たような、地方のど〜しよ〜もないヤクザな男をリアルに演じていました。彼なんか見ていると、ホント悪い男と切っても切れない不幸な女のコって世の中に沢山いるよね〜、としみじみ思ってしまいます(自分のコトではありませんが(^_^;)。彼は、来年春に公開される”Purpose”という映画に出演するそうですので、これからの活躍が楽しみです。

さてさて果たしてこの作品、来年6月のトニー賞にはノミネートされるんでしょうか?一応アンナ=パキン評判いいですからね〜。他に目ぼしい対抗馬がいなければノミネートはあるんじゃないかな?今年評判がいいのは、どっちかというと男優が多いので(今のところ最有力候補は“Topdog Underdog”のドン=チードル辺りでしょうか)、何だかんだでけっこういい線行ったりなんかして(^_^;)。

"The Shape of Things"
by Niel LaBute
Dec 11, 01

Written and Directed by : Niel LaBute
Starring : Paul Rudd, Racheal Waisz, etc

1997年のサンダンス映画祭で話題をさらった”In the Company of Men”の監督&脚本ニール=ラブートが書いたオリジナルの最新戯曲。そして今回は演出も彼自身が担当しています。このお芝居は元々昨年4月にロンドンでオープンし、そこそこの評判を得て今年の10月、オフ・ブロードウェイショウとして開幕しました。

私がこのお芝居を観に行った理由は二つ。元々ニール=ラブートという人に興味があったということ。私は2年前にやはりNYで上演された、カリスタ=フロックハート&ポール=ラッド主演”Bash”も観に行っていたし、こう言った会話中心のお芝居にもとても興味があったのです。
そしてもう一つの理由は、私が主演のポール=ラッドとレイチェル=ワイズ(特にラッド)のファンであるというミーハーな理由(^_^;)。二人は今でこそハリウッド映画なんかにも出演していますが、私の場合ポール=ラッドに関しては『私の愛情の対象』以来、レイチェル=ワイズに関しては『インディアナポリスの夏』以来の大〜ファン。二人共、これまで多くの映画に出演していますけど、元々は舞台の俳優サン達なんですよね。

さてさて、全体の感想…。う〜ん、やっぱラブートの作品という感じですね〜。その会話の面白さとクレバー&スマートさはいつもの様に超一級。台詞には殆ど無駄がないし、「うう、こ〜ゆ〜ヤツっているよね〜」的な人間サンプリングをさせたら、この人の右に出る人はいないのではないのでしょうか?
けど…う〜ん、同時に彼の作品にはいつも、”エモーション”というモノがないんですよね。NYタイムスの劇評でも触れられている通り、このお芝居は同じ様に2組の若い男女が絡み合ったお芝居”The Closer"(ナターシャ=リチャードソン主演)を思い起こさせるのですが、"The Shape..." は"Closer"の様な感情の盛り上がりがまるでないのです。その理由の一つは、やはりNYタイムス評の中でも触れられていたハロルド=ピンターの"Betrayal"の様に、このお芝居もシーン&シーンの間にいちいち幕が下り、ワケのわかんない音楽がかかるってこともあるんじゃないでしょうか。その中断がお芝居のクレッシエンドというか、ストーリーの盛り上がりを大なり小なり中断しているのは確かです。
けど、それだけじゃない。やっぱり彼の作品というのは、いつも何処かに”距離”がある。それは彼と彼の作品&キャラターの間に横たわっている距離だけでなく、彼の彼自身に対する距離ではないかと思うのです。誰もが疑うことなく、彼はスマートで才能がある。けど…それだけなのです。彼のスタイルは、いい意味で言えば”シニカル”。そういったお芝居が好きな人は、ロンドンやニューヨークには沢山います。けど…、私が一つのお芝居に観たいのは(感じたいのは)、技術の巧さだけではないのです。私が観たい(感じたい)のは、作者自身の姿。映画やTV、その他のメディアにおいても、作品の中に作者自身の姿を見ることは可能です。けれど、お芝居の臨場感(勿論その分身は舞台上の役者サンであるとしても)にかなうモノは他にないでしょう(私のお芝居観については、『オーファンズの復習編』も参考にしてみて下さい)。そ〜いった期待で芝居を観に行く私にとって、このお芝居はかなりモノ足りない部分もありました。

それにしても、ポール=ラッドはやっぱりかわゆかった〜〜〜(^_^;)。その辺にいる情けない男を演らせたら、彼に並ぶモノはいませんね〜。イヤもう微笑ましいというか、何と言うか、まさに“ラヴリー”な男の子を演じていました。『私の愛情の対象』の時はゲイ役で、それでも最後はしっかりした所を見せていたけれど、”Bash”でも”The Shape…”でも、彼の情けなさはホンっとにしょ〜もないですね。彼って、ニール=ラブート自身のコンプレックスの塊なのかな???だったらもっと突き抜けて欲しかったよ〜。それにしても、いつ見ても彼は顔がデカくて短足だ〜〜〜。よくこうも次から次へと有名女優と共演してますよね(^_^;)。
レイチェル=ワイズっていうのは、いつ見ても真っ赤な口紅を塗ってバッチリお化粧してっていうイメージがあるのですが、今回髪はボサボサ、お化粧も翔んでる(死語?)し、着ている洋服もワケ分かんないアウトフィット(でも個人的にはけっこう好き)を着ている役だったので、エンディングを除いては、レイチエル=ワイズを観ているという気がまるっきりしませんでした。この役って、いわゆる“私はインテリ&クール&ヤッピーなの”的バリバリにプライドの高いアーティストなのですが、なまじ私の周りにそ〜ゆ〜女の子がけっこういたりするので、苦笑しながら見てしまいました(^_^;)。この芝居なんか見に来るような女の子で、グサっとか来てる人ってけっこういるんじゃないかな(^_^;)。

第3のスター、イギリス女優でありながらNYで撮影された数多くのインディー映画に出演しているグリッチェン=モル。実は彼女、私達の観た回は休演してしまいまして、代役のアッシュレイ=ウィリアムズがジェニー役を務めたのですが、私的には彼女の方がずっと良かった様な気がします。ロンドン公演ならモルの方が良かったかもしれないけど、アメリカの田舎娘を演じるんだたらやっぱり彼女の方がリアリティあるでしょ〜って感じで。で、第4のスター、フレデリック=ウェラーもやはり舞台俳優でありながら、今月公開の”The Business of Stranger”などNYのインディー映画に数多く出演している役者さん。「いるいる、こ〜ゆ〜ヤツっているよね〜」っていうイヤな男をうまく演じていたのですが、やっぱ彼って映画向けの俳優サンではないですよね…(^_^;)。

ちなみにエンディングには、ラブート作品ならではのサプライズというか、ちょっとした捻りが用意されているのですが、「ソコまで引いて、ソコで終わる?」みたいな、私にはどうにもいまイチなエンディングでしたね〜(^_^;)。
ともあれ、グエネス=パルトロウ主演である今秋公開の映画”Possession”で大ゴケしてしまったニール=ラブート監督、お次は舞台?それとも懲りずにまた映画でしょうか?ま、どちらにせよ、一度でいいから、彼の突き抜けたエモーショナルな作品を観てみたいモノですね。

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