*** Theater, Play 4 ***

お芝居の感想ページです。
新しいモノから上に来ます。

"The Producers"
by Mel Brooks
Oct 02, 01

Directed by : Susan Stroman
Starring : Mathew Broderick, Nathan Lane
Official Site : EnglishNew York Times

今年のトニー賞を総ナメした、お化けミュージカル。9月11日に起きた同時テロ事件によって、タナぼた的に観ることが出来ました(詳しくは、9月15日の日記を読んでみて下さい。
「カッコーの巣の上で」「セールスマンの死」「ライオン・キング」「美女と野獣」「フル・モンティ」「この街で天使はバスを降りた」等、映画化されたものが有名なミュージカルというのは、とかく映画や原作本と比較されてしまって不利なモノが多いのですが、この作品の場合、私は先にミュージカルを観てしまったので、特に違和感はありませんでした。

それどころか、後で観た映画版より、私はミュージカル版の方がずっと良く出来ていると思います。まるでこのお話が、最初からミュージカルの為に作られたかの様に…。
映画版とミュージカル版で違う所は、冒頭とラスト、そして劇中劇のヒトラー役の役者くらいのものでしょうか?あと、ミュージカル版では、ウーラの出番が随分と多くなっていました(彼女だけが唯一、トニーにノミネートされていませんでしたけど)。
それにしても、ミュージカルを観ていてオイシイなぁと思っていた部分は、もともと全部オリジナルの方に入っていましたね。勿論タイトルは良く聞いてはいましたが、どうして今までこの映画を観たことがなかったのか不思議なくらい。とにかくもう、“ポリティカリー・インコレクト”のオンパレードなんですよ〜。ヒトラーは勿論のこと、ゲイに対して、お年寄りの有閑未亡人に対してetc, etc…

歌は殆ど映画版のものがそのまま使われていましたが、振り付けはさすが2年連続でトニー賞を獲得した、スーザン=ストロマンの安心して観ていられる様で実は斬新なコリオグラフィー。そして、煌びやかなセット・デザイン&コスチューム。これらはやはり、映画版よりも断然素晴らしいです。トニー賞の受賞式を観ていた時は、何もここまで全部門獲らなくてもいいんじゃない?と思ったものですが、実際に作品を観てみると、やっぱり納得してしまいますね〜。

主演男優賞を争ったマシュー=ブローデリックとネイサン=レインの勝負は、結局ネイサン=レインの方に軍配が上がりましたが、私が観たショーでは、ネイサン=レインはテロ事件のゴタゴタでお休みしていました。でも、代役の人もすっごく良かったですよ。まるでネイサン=レインみたいな演技してました(^_^;)。マシュー=ブローデリックはめちゃめちゃ良かったし。キャストについては、映画版よりミュージカル版の方がずっと好きです。

というわけで、まだまだノッてるメル=ブルックス監督、次はどんなヒットを飛ばしてくれるのでしょうか?映画の方にも、また戻って来て欲しいモノです。

"Stones in His Pockets"
by Marie Jones
July 19, 01 (日本語は、下を見て下さい)

Directed by :Ian McElhinney
Starring :Conleth Hill and Sean Campion
Related Site :
New York Times Review

It is nothing new that two actors play a bunch of different roles in a play, however, those leads of this Oliver winning / Tony nominated Irish comedy, Sean Campion and Conleth Hill, turn to someone else in a second without any costume and prop changes! That is almost magical to see an old British film director becomes a French big movie actress (like Julia Roberts in “Notting Hill” meets Juliette Binoche in “The English Patient”) in a second as the actor just turns around.

The writer, Marie Jones, who acted Daniel Day Lewis's mother in "In the Name of Father", wrote this play for her husband, Ian McElhinney, who got small roles in "Michael Collins" and "Far and Away" to direct it. So... they both know all the Hollywood bullshit, shooting in Ireland, and you can really enjoy the cynical humor. (In fact, the idea of this story is resemble to David Mamet's "State and Main", but I bet they got the story earlier than Mamet.)

For me, who still have troubles getting understand all the Irish accents & jokes, it was so hard to figure out what was going on in the beginning of 10 min (because they turn to other character seconds by seconds!!!). But, as I got the features of all characters, I could fully enjoy their amazing performances.
Mr. Hill (the original cast since 1999) is just incredible. He's got charm, brutalness, sneakiness, and dignity all in one body. Mr. Campion seems less impressive, but his eyes are so memorable especially from acting the campish assistant director. And their "Riverdance" scene was so enjoyable.

As the NTY Times says the length is a bit too long (especially the second act), but I quite loved this simplest set, which I've ever seen on Broadway. This is a play of Irish, by Irish, and almost just for Irish (There were no other Asians and I only saw two African Americans. Others all looked Irish!). Their sense of humor, which is making fun of themselves in terms of their ethnicity and including history, reminded me, plays of a theater company in Japan, “Shinjuku Ryozanpaku”, which are of Korean-Japanese, by Korean-Japanese, and almost for Korean-Japanese.

昨年のオリバー賞(イギリスのトニー賞に当たるもの)で最優秀コメディ賞を受賞し、今年4月に成りモノ入でブロードウェイ・デビューしたアイリッシュ・コメディ。 このお芝居の何が凄いって、たったの2人だけで15人ものキャラクターを演じてしまっているところ。主演の二人はそれぞれ今年のトニー賞で最優秀主演男優賞、そして演出のイアン=マッケニーも、最優秀監督賞にノミネートされました。(最優秀主演男優賞は、「Invention of Love」のリチャード=イーストンが、最優秀監督賞は、「Proof」のダニエル=サリバンがそれぞれ受賞しています。)
1人や2人のお芝居で何人ものキャラクターを演じるお芝居は、先日観に行った「I, Anatolia」をはじめ、何も特に新しいモノではありません。 けれど、このお芝居では、何と主演の二人がのべつまくなしに次々と違ったキャラクターへ早変わりするのです。袖に一旦引っ込んだりなんていうヒマなんか全然ないんですよ。 しかも衣装を変えたり、小道具を使ったりといった細工も一切なし!!!身体の向きを変える一瞬だけで、年老いた英国人映画監督が、 フランス出身の有名女優になったり、アイルランドの田舎者エキストラになったり、それはもうめまぐるしいのなんのって…(^_^;)。

お話は、アイルランドの片田舎にハリウッドの映画撮影隊がやって来て…という、それこそデビッド=マメットの「State and Main」の世界なのですが、初演はこちらの方がずっと早いので、「State...」の方がパクった可能性もあり蟻(勿論、全くの偶然の可能性の方が高いですけれど)。
この戯曲は、映画「父の祈りを」で、ダイニエル=ディ=ルイスの母親役を演じた女優マリー=ジョーンズによって書かれたもの。演出は、彼女の夫であり、「マイケル=コリンズ」や「遥かなる大地へ」等で脇役俳優を演じたイアン=マッケニー。二人共、アイルランドを舞台にしたハリウッド映画に出演した経験があるので、その”ハリウッド映画 in アイルランド”の描写たるや、ハンパではありません(^_^;)。

主要なキャラクターは、この映画「Stones in his Pockets」でエキストラ出演する地元の中年男二人。そこに、「ノッティングヒルの恋人」のジュリア=ロバーツと「イングリッシュ・ペィシェンツ」のジュリエット=ビノッシュの二人を足して2で割った様なフランスの人気女優、GirlyなセカンドAD、まるで監督の様に振る舞うファーストAD、そして後半になってやっと登場する典型的な英国人巨匠監督、果ては地元の神父さんから女優のボディ・ガードまで、キャラクター達の幅の広さには枚挙にいとまがありません。芝居の終わりのカーテンコールでは、2人の俳優サン達が、それぞれ違った役になって挨拶したのも凄かった。お話しの脈絡がなくても、その仕草だけで何のキャラクターなのか分かってしまうんですからね〜。
小柄で小太り(失礼!)のコレス=ヒルは、さすがに彼を念頭に置いてかかれた戯曲であるというだけに、その変わり身七変化とにかくスゴイ。彼が芸能人のモノマネ大会なんかに出たら、優勝してしまいそうだなぁ(^_^;)。ホント衣装や小道具で誤魔化していない分、イッセー尾形氏にも勝っているかもしれません。女優サンの振りもうまいし、一緒に観た友人の話だと初老英国人への成りきり方もハンパじゃないらしいです。一方、背が高くて細身のショーン=カンピオンは、ヒルほどのインパクトさはないものの(ちなみに彼は99年のオリジナル・キャストではなかったそうです)、その目がとっても印象的。勿論彼の変化(衣装等が変わらないので、変身でないところがミソ)ぶりも、生半かなモンじゃありませんでした。

それにしてもこの芝居、意外にも(?)連日盛況のうちに公演が続いているのですが、観客全部アイリッシュじゃないの?っていうくらい劇場内は白人ばっかりでした。アジア人は他に全然いなかったし、黒人の人も2人見ただけ(^_^;)。
で、観に行く前の予想通り、アイリッシュ英語のアクセント&ジョークは私にはかなり難しく、最初の10分くらいは何が何だか良く分からなかったのですが(だって、キャラクターが次から次へと目まぐるしく変わるんですもの〜(^_^;)、段々と各キャラクターの掴めてくる後半になってくると、彼らの素晴しいモノマネ&パントマイムを存分に楽しむことが出来ました。それから、コレはおそらく聴覚障害者の為だったと思うのですが、舞台の右上にキャプションが出ていたのも、私には随分と助けになりましたし…(^_^;)。
また、個人的には、アメリカでの映画制作に参加したこともあるので、このお芝居に出てくる痛烈なハリウッド映画制作批判も楽しかったし、元カレがアイリッシュ・アメリカンでもあるので、典型的なアイリッシュのステレオタイプ批判(何に付けても牛、牛、牛とか、お葬式と言えばビールとかね)を観るのもけっこう面白かったです。
そうそう、本場アイルランドのRiver Danceを見逃してしまった皆々様、劇中に展開される、この「おかしな二人」のおかしなRiver Danceも、かなりの見物ですよ〜。

"The Invention of Love"
by Tom Stoppard
06/27/01 (日本語は、下を見て下さい)

Directed by: Jack O'Brien
Starring : Richard Easton, Robert Sean Leonard, etc
Official Site :
Lincoln Center Theater, New York Times Review

There are 3 reasons why I wanted to see this play. 1) It won two Tonys, which are the best actor and the best supporting actor. 2) I was very attracted by the set design, which was shown at the Tony awards on TV. 3) I just wanted to see any play by Tom Stoppard.
Shamefully, I didn't really know what kind of play he writes, although I knew he is the screenwriter of "Brazil" and "Shakespeare in Love".

As I see this 3 hour play, I found that his wit and humor were to sophisticated for me, who is a sort of anti-Western culture, have almost no idea of Western classics, and still have lots of troubles to understand British English. Out of ten times people laugh at the wit & humor, I could only laugh one or two times. However, I realized that he also writes about the basic human nature clearly such as love, agony, disappointment, and hope. Therefore, I could deeply enjoy this play unexpectedly.

Although I appreciated Richard Heston's comic-academic performance, I was a bit disappointment at Robert Sean Leonard's typecasted acting. Of course, I like him very much. I saw his acting not only in those films such as "Dead Poet Society" and "Swing Kids" but also the play "Ice Man Commes" in London. However, for me, his acting in this play looks a bit plain.

I'm pretty sure that this play will become one of Tom Stoppard's classic and will be directed by and performed with someone else.
I'll definitely see this play again but with the pre-study of Housman, Wilde, and Ruskin to be able to enjoy it deeper.

1997年ロンドン初演を皮切りに昨年ロスで上演されたものの、NYブロードウェイ初公演。当初3月から5月までの限定公演の予定だったのですが、好評だった為に6月末までに予定が延ばされたというモノ。
今年度のトニー賞では演劇部門のほぼ全部門にノミネート、最終的には主演男優賞&助演男優賞を受賞。その他、アウター・クリティックス・アワードや、ドラマ・ディスク・アワードでも、それぞれ演出賞や主演&助演男優賞を受賞しています。

私的にこの芝居を観たかった理由は3つ。1)上記の様に、主演の二人がそれぞれトニー賞を獲得したこと。2)トニー賞の受賞式で紹介されたセット・デザインがとても凝っていたので、それを見てみたかった(受賞は逃しましたが、セットデザイン部門にもノミネートされていました)。3)映画の脚本家としても有名なトム=ストッパードの戯曲であるということ。
トム=ストッパードと言えば、演劇界では今やイチ・ニを争う大御所戯曲家なんだそ〜で、映画オタクの私にとっては、「未来世紀ブラジル」の脚本家?ぐらいにしか思っていなかったのですが(勿論「恋に落ちたシェイクスピア」の共同脚本をやっていることは知っていましたが、セカンド・ポジションだったのであまり気にしていなかった)…。まぁ、私の芝居に対する知識なんて、この程度のモンなのです。

一緒に行ったのがこちらで芝居をやってる女優サンだったので、トム=ストッパードを知らないことがどれだけ恥ずかしいことかとトウトウと悟らされてしまいました。まぁ、ここで私が今回知ったトム=ストッパードについて書き出すとキリがなくなるのでやめますが、一言で言えばシェイクスピアなどの古典を捻って笑い捲くるという作品が多い(というかそういった作品群が有名な)戯曲家とでもいいましょうか。ですから、シェイクスピア様様のイギリス保守演劇層からは一部批判もあるものの、ある程度シェイクスピアを知っている人達には大人気の作家らしいです。
例えばティム=ロス&ゲーリー=オールドマン主演で映画化もされた「ローゼンクランツとギルテンスターンは死んだ」は、なんと1964年に書かれた彼の初期作品の一つ。日本では94年に「お熱いのがお好き」の生瀬勝久(そとばこまち)&古田新太(劇団新感線)でも上演されたのだそうで。う〜ん、それは観てみたかった。あと、1984年ジェレミー=アイアンズ&グレン=クロース主演でその年のトニー賞を独占した「The Real Thing」は、昨年度ブロードウェイでも再演されていました。

脱線話はこれくらいにして、まずは芝居全体の印象から。う〜ん、私けっこうトム=ストッパードって好きかもしれない。その…なんていうんでしょうか、人間性の部分がね。
私ってこのHPでは何度も書いていますが、アンチ西洋文化の人で(米在住8年たった今に至っても)、シェイクスピアなんかにはまるで興味がないし、彼の作品に関してはどれも粗筋程度の知識しかないんです。それに加えてこの作品、英国詩人でありギリシャを中心とした西洋の古典歴史文学者であるA.E.ハウスマンを主人公にしているので、西洋文学&哲学の知識を土台にしたウィットのオンパレード。加えていまだにブリティッシュ・イングリッシュにはお手上げの私なので、観客が10回笑ったら(2〜3分に1回は笑いが起こってました)、そのうち1回か2回しか笑ってない私なのでした(^_^;)。でも、その1回か2回だけですんごく面白かった!!!それに、そういった細かいウィットが分からなくても、このお話はベーシックなストーリー&ドラマの部分だけでも十分に楽しめてしまうのです

またまたストーリーが後まわしになってしまいましたが、このお芝居は上にも書いた様に、「Shropshire Lad (ショロップシャの若者)」などで有名な英国詩人A. E. ハウスマンが主人公。冒頭は、77歳の彼がギリシャ神話に出てくる三途の川を渡る場面から始まります。その後、18歳の彼がオックスフォードに入学し、二人の親友を得てそのうちの一人(勿論男性です)に恋する苦悩を描きながら、当時の政治界・学術界・演劇界などの背景を面白おかしく織り込んでいくという、何とも贅沢でクレバーで盛りだくさんの内容
見所は、77歳のハウスマンと18歳のハウスマンの20分以上に渡る二人だけの会話。18歳のハウスマンは、自分の目の前にいるのが約60年後の自分であるということには全く気付いていないのですが、77歳の方の彼は段々と気が付いていくんですよね。だから、77歳の彼のリアクションが何とも面白い。77歳のハウスマンを演じたのは、この役でトニー賞主演男優賞を獲得したリチャード=エストン。ハウスマンのキャラクターのアカデミックな部分と、それ故のコミカルな部分がよく出ていました。

一方18歳から26歳のハウスマンを演じたロバート=ショーン=レナードは、今や演劇界の若手ホープ(映画では「いまを生きる」や「スゥイング・キッズ」が有名。最近のお芝居では「Ice Man Commes」など)。やはりこの役でトニー賞助演男優賞を獲得しているのですが、彼に関してはちょっと期待が大きすぎたかなぁ。もし私がこの役で初めて彼を観たのなら、もっと好感が持てたのかもしれないのですが、何かあまりにもタイプキャスト化してきてしまっている様で、ちょっぴりがっかりという感じでした。いっつもヤサ男で苦悩する青年ばっかりというか…。それに、私には彼があまりアカデミックに見えなかったというのもある(^_^;)。でも、片思いのモーゼズとのやはり長〜い会話は良かったかな。リチャード=エストンとの部分では完全に喰われていましたから…。
あと助演で印象に残ったのは、ポラッド役を演じたマイケル=スターバーグと、オスカー=ワイルド役を演じたダニエル=ディビス。ワイルドというのは、髪型をすけべ分けにすれば皆似てきてしまうから不思議ですよね(^_^;)。

舞台になったオックスフォードは、3年ほど前に友人を頼って遊びに行ったことがあるのですが、やっぱりケンブリッジとはちょっと雰囲気が違うんですよね。うまく説明出来ないんだけど、その辺の違いがセット・デザインによく表れていた気がして、さすがと思ってしまいました。お芝居にしてはミュージカルみたいにセットがくるくる変わっていたし…。
う〜ん、それにしてもこのお芝居、A. E. ハウスマンの作品は勿論のこと、西洋文学の歴史や当時のイギリスのこと、ラスキンやワイルドのことを詳しく知っていたら、何十倍にも楽しめるお芝居なんだと思います。でもね、結局物語っていうのは、愛とか苦悩とか希望とか絶望とか、そいうったスタンダードな部分がきっちりと描かれてさえいれば、細かい部分は分からなくとも、ちゃ〜んと感動できるのでありますよ
3時間にも渡る長〜いお芝居ですが、やはりトム=ストッパードの古典の一つとなっていくのでしょうね。また違うキャストで上演されることになるのでしょうから、次回観に行く時は、ちゃんと予習して観に行こ〜っと。

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